UNDERCURRENT (BLUE NOTE)

KENNY DREW (1960/12/11)

UNDERCURRENT


【パーソネル】

FREDDIE HUBBARD (tp) HANK MOBLEY (ts) KENNY DREW (p)
SAM JONES (b) LOUIS HAYES (ds)

【収録曲】

UNDERCURRENT / FUNK-COSITY / LION'S DEN / THE POT'S ON / GROOVIN' THE BLUES / BALLADE
【解説】

引っ張って、引っ張って、酸欠シリーズの第3弾です。パンツのゴムでもあまり引っ張り過ぎると弾性限界を超えて切れちゃうことになるので、これで最後にしようと思っておりますが、まずは硫化水素ですな。化学記号で書くと“2”となりますので、「“”な人と“ukebe”な僕の3Pぷれい♪」と覚えておくとイイと思います。いや、3Pは“プレイ”の意味だから、最後の“ぷれい”は余分なんじゃないか?…とか、最後に“3Pぷれい”を付けると、化学式を“23”(←リン三硫化水素…って、そんな物質あるのか?)と間違えて覚えちゃう恐れはないのか?…とか、それに何より“2”くらい、わざわざ語呂合わせにしなくても覚えられるんじゃないか?…とか、色々な意見があろうかとは思いますが、とにかく硫化水素というのは臭いです。臭素というガスも臭いそうでありますが、硫化水素だって臭いです。俗に卵が腐ったような臭い、専門用語では腐卵臭と呼ばれる独特の臭気があります。臭いだけならまだしも、目にだって染みちゃいます。どうして硫化水素が目に染みるのかというと、非常に水に溶けやすい性質を持っているため、おめめの水分に溶け込んで刺激をするからなんだそうですけどね。そのため、濡れやすい体質の人ほど、感じやすいということになるようです。身に覚えのある人は充分に気をつけましょうね。

 で、硫化水素酸欠というのは、100円均一で買ってきたハサミのように、切っても切れない関係にあるそうでありまして。いや、最近の百均はかなり質がよくなってきているみたいなので、そんなこともないんですかね?ただ、僕がミスター・トン○チの百均コーナーで買ってきたシャーペンの芯は今ひとつでありまして、爪楊枝の替わりにして歯をホジると、すぐにポキッと折れちゃいます。…って、それはシャーペンなんかで歯をホジる僕が悪いんですかね?でも、「シャーペンで歯をホジってはいけません。」という注意書きはどこにもなかったし、折れた芯が歯茎に刺さって出血に至った暁には、PL法で訴えてやろうかと思っておりますが、それはさておき硫化水素酸欠の危険な関係。えー、僕たちは酸素がなくなると死んじゃうわけですが、世の中には酸素が死ぬほど嫌いという生物がいるんだそうでありまして。どれくらい嫌いなのかというと、酸素があると死んじゃうというくらいなので、やはり死ぬほど嫌いということになろうかと思います。このような生物は嫌気性生物と呼ばれておりまして、大昔、まだ地球の大気に酸素がなかった頃の名残を最近になっても引き継いでいるという、とっても貴重な人間国宝…というか、嫌気性生物国宝とでも呼べるような存在であるわけですな。で、こやつらは酸素があるところではじーっと死んだように大人しくしているわけでありますが、ひとたび何らかの原因で酸素欠乏の状態になると、俄然ヤル気になってまいります。グレちゃった少年は夜中になると活動を始めますが、嫌気性生物は酸素がなくなると蠢き始めるわけでございます。

 嫌気性生物…というのは長ったらしいので、嫌気(けんき)のケンを取って、ケンちゃんと呼ぶことにしますが、 酸素が死ぬほど嫌いなケンちゃんは、じゃ、いったい何を吸って生きているのかというと、何と硫黄なんだそうでありまして。 僕なんか、茹で卵を食べても喉が詰まるというのに、そんなもの吸ってもだいじゃぶなのか?と、人ごと…というか、嫌気性生物ごとながら心配になってしまいますが、ま、元素の周期表で見ると、硫黄というのは酸素の下に位置しておりますので、性格的には似たようなところもあるんでしょう。で、酸素が好きな好気性生物酸素2)を吸って、その結果として2)が出来るわけでありますが、酸素が嫌いなケンちゃんの場合は硫黄)を吸って、その結果として硫化水素2)を吐き出すわけであります。うん、理論的にも納得がいきますよね。で、あまり深く掘り下げていくとボロが出るような気がするので、ここらあたりで適当に切り上げておこうと思いますが、とにかくまあ、酸素が不足するとケンちゃんが元気になって、その結果として硫化水素を撒き散らすと。そういうことでイイと思います。

 で、僕は今まで硫化水素をわりと舐めておりました。いや、舌でペロペロと舐めていたという意味ではなく、甘く見ていたということなんですが、硫化水素なんか舐めたら、舌が荒れちゃいそうですもんね。パイナップルを食べ過ぎても、パイナップルの形をしたアイスキャンディを食べても荒れちゃいますからねぇ、舌は。生パイナップルの食べ過ぎならまだしも、缶詰の輪切りパイナップルみたいな形をしたアイスキャンディの場合、果汁なんて一滴も入ってないので荒れなくてもよさそうなものなんですが、それでも荒れちゃいますからねぇ、舌は。で、僕が硫化水素をどのように舐めてかかっていたのかというと、「臭くてすぐわかるから、余裕ぢゃん。」とか思っておりました。…が、それは大変な間違いでありました。皆さんも経験があると思いますが、いや、中には「あたし、初めてなのぉ。」という人もいるかも知れませんが、人間の嗅覚というのはわりと麻痺しやすいものなんですよね。いくら臭い靴下でも嗅ぎ続けているうちに鼻が慣れてくるというか、麻痺してくるというか、やがてそれが快感に変わるというか、とにかくぜんぜん気にならなくなっちゃいます。硫化水素の場合にもそのことが言えまして、いくら臭くてもしばらくするとぜんぜん感じなくなっちゃうらしいんですよね。それだけでなく、硫化水素の濃度が神経に影響を及ぼして死に至る危険性が生じてくる500ppm以上になると、鼻の神経のほうも一瞬にして麻痺し、まったく臭いを感じなくなってしまうというからオソロシイものですなぁ。。。ちなみに硫黄分の多い温泉に行くと、よく卵の腐ったような硫化水素の仄かな香りが漂ってたりしますが、あれは多くてもせいぜい5ppmくらいのものなんだそうです。ま、臭いうちが華…ということでありましょう。

 えー、酸欠等(←この“等”には硫化水素発生の危険を含む)主任技術者講習も大詰めでありまして、いよいよ実習でございます。実習は2つの種類がありまして、まず最初が酸素濃度と硫化水素濃度の測定実習でありました。 これはただ測定器具で濃度を測るだけのものでものでありまして、取り立てて書くようなこともないんですが、ただひとつ検知管というヤツの取り扱いが難しく、ちょっぴり戸惑ってしまいました。痴漢なら何度かやったことがあるんですが、検知管というのは初めての体験でしたからねぇ。。。で、続いて心肺蘇生術の実習であります。これは例の心配蘇生訓練用人形を使って人工呼吸の練習をするという実習なんですが、なんせ人形との再開は15年ぶりくらいなので、果たして心肺が正しく蘇生するかどうか、とっても心配でありました。実習会場は第2会議室とかいうところだったんですが、ドアを開けると“コ”の字形に並べられた机の真ん中に3体のブサイクな南極2号が同じ顔をして寝ておりましたので、ちょっとビビりました。1体だけならまだしも、規則正しく3つが並んでいると、けっこう迫力がありますなぁ。。。で、訓練は受講生約45名が注視しているド真ん中で、人形に抱きついてガバッと唇を奪うという、わりとコーフン的なシチュエーションの元もとに行なわれたわけでありますが、いや、僕はどうせなら3体の人形と4Pでも?…と思ったんですが、梅コースの割り当ては「受講者1名につき、人形が1体つきます。」ということでありまして、3人がそれぞれノーマルなプレイをするにとどまったことが少し心残りでなりません。ちなみにレイナちゃん(…と僕が勝手に名付けた)の唇は少し冷たく、僕が優しく息を吹く込むと、「ふごぉ…」というヘンな音がしました。レイナちゃん、だいじゃぶなんでしょうか?


 ということで、ケニー・ドリューです。あ、酸欠等主任技術者講習、正しくは第2種酸素欠乏危険作業主任者技能講習と言うようですが、無事に終了証を頂きました。いや、2日目の夕方に学科試験がありまして、それに落ちたヤツは明日の実技講習にはこなくてもいい…とオドシを掛けられたんですが、蓋を開けてみれば受講者全員が合格しておりました。講習会だというのに頭にタオルを巻いている、今ひとつ了見のよくわからない作業員のニイチャンだって受かっておりましたので、あれは単なるオドシだったんでしょうな。ま、嘘も方便というヤツですかね?クソ大便ですけどね。ということでケニー・ドリューなんですが、何となくトリオよりも管入りって感じぃ?…という気分だったので、候補として2つの作品があがりました。リバーサイド盤の『ジス・イズ・ニュー』とブルーノート盤の『アンダーカレント』なんですが、聴き比べてみると後者のほうがハツラツとしているような気がしたので、前者のほうを紹介してみようと思いません。ということで、『アンダーカレント』です。タイトルの意味は「底流」といったところでしょうかね?「ああん、だから連投は駄目って言ったのにぃ。。。」 という、女子マネが肩を故障したエースを気遣う一句を詠んだことがありますが、やはり無理がきかないトシになってからは、何事も中6日くらいにしておいたほうがイイんじゃないかと思います。ということで1曲目。

 まずは「アンダーカレント」ですな。このアルバムは全曲がドリューのオリジナルと、かなり気合が入っているんですが、 中でもこのタイトル曲はドリューの底ぢからを感じさせる力強い作品に仕上がっております。えーと、油井正一センセの日本語ライナーによると、急速テンポのマイナー・チューン。サビつき32小節曲である。…とありますが、サビつき32小節といっても別に錆ついているわけではなく、ワサビが入っているサビ抜きではない曲というという意味ですよね。…って、それも違いますね。何故、曲のサワリの部分をサビと呼ぶのかは寡聞にして知りませんが、アタると蕁麻疹が出るからですかね?…って、それはサビではなくてサバですな。テーマの提示に続いて、ハンク・モブレー→フレディ・ハバード→ケニー・ドリューの順に4コーラスずつのソロがあり、テナー、トランペットの順にドラムと8小節交換をおこなってテーマに戻る。…と、油井センセの解説は簡潔にして明瞭なんですが、今ひとつ物足りないので補足を加えるとすると、まず、いきなりの急速調ウォーキング・ベースで演奏は幕を開けます。これくらいの速さになるとウォークングというよりも競歩って感じぃ?いや、もっとスピード感がありますな。失踪するチータ…って、水前寺清子が行方不明になったわけではなくて、疾走するチータといった感じであります。で、テーマはファンキーというよりむしろ、フレディ・ハバードあたりが書きそうな新主流派風ハード・バップとでも言うような作品に仕上がっております。ドリューの急速調反復フレーズをバックに、テナーとペットのユニゾンが駆け抜けます。

 で、ソロ先発はモブレーですな。この人のもさーっとしたスタイルは、この手のイカしたナンバーにはちょっぴり不向きなんですが、子供の日に食べるのは、ちまき。で、ソロ2番手はハバードなんですが、この人はきっちりとシゴトをしてますね。典型的なモード奏法によるソロでありまして、彼がこの当時、もっとも進歩的なトランペッターであったことを感じさせずにはいられません。立派なことです。で、それに引っ張られるかのように3番手のドリューもかなりイカしたピアノを弾いておりますな。この人はアップ・テンポでも決して下品になることはないんですが、それにしても見事な指さばきですな。掃除機の先っちょにつける通販グッズは「はぼき」ですけどね。…って、誰もそんなマイナーな商品、知りませんかね?で、テナー、トランペットの順にドラムと8小節交換をおこなってテーマに戻ります。実にハツラツとした、いい演奏でありました。

 はい、2曲目です。「ファンク・コシティ」という曲です。ファンクというのはわかるんですが、コシティというのは何なんでしょうね?小さな街(シティ)、もしくはコシ餡の入った茶(ティ)でしょうか?僕はコドモの頃、よくお茶に砂糖を入れて飲んでいたんですが(←加糖茶というやつですね)、さすがにコシ餡まで試してみたことはありません。つぶ餡だったらあるんですけどね。で、曲のほうはタイトルどおりのファンキー・チューンでありまして、実に日本人ウケしそうな曲調ですなぁ。ゆったりとしたミディアム・テンポが最高にグルーヴィーでございます。これまたサビつきのAABA形式でありますが、サビのパートのハモり具合が絶妙でありますな。んで、ソロはハバード→テナー→ピアノの順でありまして、中でもハバードとドリューのソロが傑出しております。油井センセも、特にフレディ・ハバードとケニー・ドリューのソロ・コンストラクションのよさが光っている…と書いておりまして、間に挟まれたモブレーは立場がありませんなぁ。。。

 ということで3曲目です。「ライオンズ・デン」です。何となく、ライオンがでーんと座っているような感じのタイトルでありますが、“den”には私室、小部屋といった意味のほかに、猛獣の檻という意味もあるそうです。無論、ブルーノートのオーナー、アルフレッド・ライオンにかけたわけているですね。で、曲のほうはというと、明るく楽しい健全ハード・バップといった感じでありまして、猛獣の檻的な怖さというのはみじんもありません。これなら松島トモコだって食われることもないでしょう。…って、話題が古すぎますね。16×16小節のテーマに続いて…と日本語ライナーにありますが、ここで素直に掛け算して「計256小節かぁ。。。」と答えを出してはいけません。16小節のテーマがAA形式で2回という意味ですよね。虎ンペット…って、いくらライオンが出てきたからといって、わざわざこんな変換をしてくれなくてもイイんですが、トランペット→テナー→ピアノの順に、スイングゆたかなソロが続く…と油井先生も言っておられますが、スイングゆたか。何だか、日系2世の演歌歌手の芸名によさそうですなぁ。。。

 4曲目「ザ・ポット・オン」「ざ・ぼっとん」ではありません。それは昔の汲み取り式の便所ですよね。で、この曲も前曲に続いてニコ健路線でありまして、構成としては8小節のインタールードがついた32小節曲だそうです。えーと、インタールード、インタールード…、特にボケを思いつかなかったので内容のほうに進んでいきたいと思いますが、各ソロの間に8小節のインタールードが挿入されるという、そうにゅうところがとっても凝っていると思います。お豆のおちちは豆乳ですけどね。

 はい、残すところあと少しです。2曲ほど明るいナンバーが続きましたので、ここらでひとつ、グルーヴィーなブルースが聴きたいところでありますなぁ。…と思っていたら「グルーヴィン・ザ・ブルース」という曲でありました。実にわざとらしい話の持ってきかたでありますが、これがまた、実にグルーヴィーなブルースなんですよね。看板に偽りなしといったところでしょう。ゆったりとしたテンポのブルージーなナンバーでございます。ソロ先発はモブレーなんですが、お、ここにきてようやく彼の持ち味が発揮されましたな。デクスター・ゴードンを思わせる極度にレイドバックした後ノリがハンクのファンクなんだと思います。いや、何だかよくはわかりませんけど。で、続くハバードは細かいフレージングで若さを強調し、ドリューは叙情性という武器を持ってこの哀愁味を帯びた素材を料理しております。…って、いや、何だかよくはわかりませんが、それっぽい曲解説ではありますな。で、このアルバムで唯一、サム・ジョーンズのピチカート・ソロだって満喫できちゃいます。無伴奏のベース・ソロって、下手な人がやったらまさしく「ザ・拷問」といった世界でありますが、さすがはジョーンズですね。とってもお上手です。以上、「ファンク・コシティ」「グルーヴィン・ザ・ブルース」。日本人にはこの2曲だけでも充分でありしょう。

 はい、ラストです。アルバムの最後はしっとりとバラードを聴きたいところでありますなぁ。…と思っていたら「バラッド」という曲でありました。もう、ドリューのロマンチシズムが満開って感じぃ?ちなみにこの曲はドリューが“ある若い女性”に捧げた曲だそうでありますが、口説くときの定番ですよね、こりゃ。AABA型だがBのサビが4小節で出来ていると。フリー・テンポのピアノ・ソロ、いわゆる“フリテン・ピアノ”のイントロに続いて、フレディ・ハバードのトランペットがリードをとってテーマを吹き、ドリューのワン・コーラスを経て、AAの部分を再提示して終わっている…って、いや油井先生の曲解説は実に簡潔にして要を得ておりますなぁ。ライナーノートというのはかくありたいと思う次第でありますが、いや、ヤックンの天才的に意味不明な比喩だって、あれはあれでイイと思うんですけどね。ということで、今日はおしまい。

【総合評価】

 曲、演奏、サイドマンとも文句のつけようがありません。ホーン入りというのは初心者やギャルにはちょっと難しいところもあるかも知れませんが、そういう人は『パリ北駅着・印象』でも聴いてくださいね。…って、僕はこのアルバムに並々ならぬ敵意を抱いているんですが、いや、聴いたことはないんですけどね。聴いてみて物凄くよかったりしたら、嫌だしー。ちなみに『アンダーカレント』フレディ・ハバード好きの人にも激しくお薦め出来る1枚だと思います。モブレー好きの人には、どうかな?…という気がします。


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