SILVER’S BLUE (EPIC)

 HORACE SILVER (1956/07/02,19)

SILVER'S BLUE


【パーソネル】

HORACE SILVER (p) DONALD BYRD (tp) <#1,3,4,6,7> JOE GORDON (tp) <#2,5>
HANK MOBLEY (ts) DOUG WATKINS (b) ART TAYLOR (ds) <#1,3,4,6,7> KENNY CLARKE (ds) <#2,5>

【収録曲】

SILVER'S BLUE / TO BEAT OR NOT TO BEAT / HOW LONG HAS BEEN THIS BEEN GOING ON?
I'LL KNOW / SHOUTIN' OUT / HANK'S TUNE / THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES

【解説】

 新しいノートパソコンを買いました。いや、会社で使っていた2万円の中古ノートパソコンに嫌気がさしてまいりまして、「こんなパソコン、いやけー?」と自分に問いかけてみたところ、「嫌じゃけー。」という広島弁の回答が得られましたので、思い切って買ってみたんですけどね。どこに嫌気がさしたのかというと、まず第一にポインティング・デバイスがネバネバしてきたのがよくありません。以前“one finger snap”のところにもちょっと書きましたが、2万円の中古ノートパソコンはその古さにモノをいわせ、ポインティング・デバイスにアキュポイントというのを採用しているんですよね。キーボードの真ん中のところに小さな棒状の突起物があって、それをぐにぐにさせることによってカーソルを移動させるわけなんですが、その先っちょの部分のゴムが劣化して、ネバネバするようになってまいりました。棒状のモノの先っちょがネバネバするというのは日常生活においてわりとよく経験することでありますが、これはやはりフィニッシュに近い状態と言えるのではないでしょうか。

 で、他にもメモリーが少ない、イモリも少ない、ときどきディスプレイに白い線が1本入る、突然画面が消える、ダサい、むさい、臭い…など、モロモロのモロ画像が、いやモロモロの諸問題が発生してまいりましたので、前年比15%減ながらも一応は期末ボーナスも出たことだし、思い切って新しいのを買うことにしたんですけどね。ほとんど衝動買いでありましたが、衝動的にウドを買って酢味噌にするといった話と違って、パソコンというのは決して安くはありません。安くはないので、なるだけ安いのにしておいたんですが、SHARPの“Mebius” PC−CB1−R3Sというのが12万8000円くらいでした。B4のファイルサイズでCPUがAMDDuron(800MHz)、RAMが120MBでハードディスクが20GB、WindowsXP搭載で、CD−R/Wドライブ内臓…だそうです。僕はわりとカメには強いんですがメカには弱く、したがってこのスペックがどれほどのものなのかは今ひとつよくわからんのですが、スペックぅ?穴を掘る道具ぅ?…って、そりゃスコップやがな。…というくらい、ハードのことはよくわかってませんからね。ま、恐らく、我慢出来ないこともない最低レベルといった性能ではないかと思われますが、キーボードはわりと大きくて打ちやすいですね。ま、ザウルスのペン入力で原稿を書いていた身には、どんなものでもアレよりはマシやろ?…という気がするんですが、素人としてはただ単純に色々なソフトが入っているのがうれしいですね。えーと、まず最初に“Microsoft Office”が入ってます。これはオフィス・ラヴには欠かせないソフトですよね。いや、ラヴは関係ありませんか。オフィス・ワークには欠かせないソフトですよね。あと“インターネットNinja”とか“デジカメNinja”というのも入っておりますが、これは忍者には必要不可欠なものだと思われます。最近ではサラリーマンをやりながら副業で忍者をやっている人も少なくないので、その辺を考慮してのことでありましょう。

 あとは、おお!“ちょbit 3D”がありますな。これは“Vector”というオンライン・ソフトのサイトで一時期お盛んに宣伝していたので知っている人もいるかと思いますが、顔写真から3Dキャラを作るというとっても有益なソフトでありまして。ンなもん、誰がカネ出して買うねん?…と思っていたら、とうとう抱き合わせ商法で来ましたかぁ。ほとんど通信販売でコンパクトカメラを買うともれなく付いてくる精密ドライバー6本セット並みの扱いでありまして、涙を禁じえませんが、こんなものオマケにつけてくれたところでハードディスクの容量の無駄遣いではないか?…という気がしないでもありません。ま、アンインストールする前に1度くらいは使ってみてもバチは当たらないような機がするので、ちょっと試してみることにしましょう。えーと、まず最初に顔写真を用意するわけですね。残念ながら私のカオは、広く世間に公表するに耐えうるようなものではございませんので、ここはひとつ、僕の知り合いのヒロシくんの力を借りることに致しましょう。はい、これです。

ひろし


 これは本当に知り合いなのか?またどこかのサイトから無断で勝手に写真を持ってきたのではないか?…という疑念もあるかとは思いますが、すません。他意はないアルね。…と僕の知り合いのタイ人(←対人関係に悩む27歳)も言っておりましたので、大目に見てやってくださいね。ちなみにこれは、やはりオマケに付いていた“アニメdeフォト”というソフトで作ってみたものなんですが、このヒロシくんの写真を今度は3Dキャラにしてみましょう。手順としてはまず顔写真の目、鼻、口、顎、耳の位置をクリックして、顔の輪郭を切り出すところから始まります。続いて服や顔の形、髪型や動作を選ぶわけなんですが、あ、この時点でヒロシくんの顔がちっともヒロシくんらしくなくなってしまいました。これはいけません。なんのためにヒロシの顔を選んだと思ってるんだ、ちょbit 3Dっ!…と文句のひとつも言ってやりたいところですが、ま、こちらにも勝手に写真を引用したという負い目があるから、あまり強くは言えないんですけどね。で、キャラの動きとしては「基本セット男性」というのが12種類、「基本セット女性」というのが12種類あって、数的にはちょっと物足りないかな?…という感じでありますが、でもだいじゃぶ。SHARPのサイトから追加キャラをダウンロードできるようになっております。そこでとりあえず「ダンスダンスセット2」を用いて“ダンシングひろし”というのを作ってみました。このソフトでは「笑う」「泣く」「怒る」などの表情を付けれるようになっているんですが、ヒロシくんはいつも笑顔がとっても爽やかなので、今回はちょっぴり驚いた顔をしてもらうことにしました。続いて、ヒロシくんはいつも海の上ばかりで生活しておりますので、ちょっぴり空を飛んでもらうことにしました。名付けて“フライングひろし(怒り顔ばーじょん)”です。以上、2つの作品をとくとご覧ください。

ダンシングひろし フライングひろし


 うーん、無意味なソフトですなぁ。。。ヒロシくんの表情、笑ってるんだか、泣いてるんだか、怒っているんだか、驚いているんだか、パリダカ、円高、カリ高…は関係ありませんが、今ひとつよくわかりませんよね。ちなみに“逮捕された時の戸塚宏のものまね”をする際は、顔に笑みを浮かべているものの、目だけは決して笑っていないというのがポイントなんだそうです。さ、これで歓迎会の席での瞬間芸は決まったようなものですね。もうこれで、新人OLのハートを虜にしちゃうこと間違いなしって感じぃ?…と、満を持してとっておきの芸を披露した総務課の高橋正則課長補佐(37歳)でありましたが、今のヤングな新人OLが逮捕当時の戸塚宏など知ってるハズがなく、会場は寒〜い空気に包まれたそうでありまして。花見の席での丑の刻参りに続いて大ハズシしてしまった高橋課長補佐は、一足早く5月病になってしまったということです。

 ということでホレス・シルバーっす。シルバーといえばブルーノートの顔と言える存在でありますが、『ザ・ジョディ・グラインド』というアルバムのジャケットでは黄色い服のオネーサンとワケのわからんビラビラ服のオネーサンに挟まれて、なんだかニヤけた顔で写ってますよね。『フィンガー・ポッピン』でもニヤけているし、『ザ・トウキョウ・ブルース』ではさして可愛くもない和服ギャルに挟まれて、やっぱりニヤけた表情をしております。そんなことでいいのか?…という危機感に駆られた僕は、とりあえず『ザ・ジョディ・グラインド』の写真を使って“河童でキッス♪”というキャラを作ってみました。

河童でキッス♪


 いやあ、カッパといえば戸塚宏やろ?…と思っていたんですが、なかなかラテン的な味わいがあってシルバーズ河童も悪くないですな。歓迎会の席で披露すれば結構ウケるか、あるいは思いっきりひかれるかのどちらかだと思われますが、もうちょっとこう、憂いを帯びた表情のジャケットはないのか?…と思ってしらべてみたところ、あ、ありました。エピック盤の『シルバーズ・ブルー』。なんとも地味でありますなぁ。。。1956年7月…ということは、シルバーがジャズ・メッセンジャーズのサイドマンをそっくり引きつれて独立した直後の吹き込みということになりますね。で、本作にもJM出身のハンク・モブレイやダグ・ワトキンスが参加しておりまして、トランペットは7曲中5曲がドナルド・バード、残りの2曲がジョー・ゴードンだじょー。という編成になっております。ということで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 1曲目はシルバーのオリジナルで、タイトル・チューンの「シルバーズ・ブルー」でありますな。開始からしばらく、トリオによるレイジーなピアノ演奏が披露されますが、ムードはまさしくブルーでございます。続いてバードとモブレイの、あ、日本語ライナーの岩浪洋三センセイはモーブリーと表記しておりますが、バードとモーブリーの掛け合いにより、ゆったりとしたテーマが演奏されます。ぶっかけというのはそれだけで“すけべサイト”の1ジャンルを構築するほどマニアが少なくない分野なんですが、ここでの掛け合いはぶっかけというより、もっとソフトな“いたわりあい”みたいなものを感じさせますね。やはり同じカマの飯を食ったもの同士の愛情がそうさせるのでありましょう。やっぱ、峠の釜飯ぢゃん?…みたいな。で、ソロ先発はモブレイ…じゃなくてモーブリーなんですが、彼独特の“大きくもなく小さくもなく、要するに丸いトーン”が存分に活かされた、イカしたイカ飯…といった感じのプレイが満喫出来ます。ムサくてギャルのウケはよさそうもないんですが、5月病に苦しむ中年にとっては救いの神の便所紙。そういったところではないでしょうか。続くドナルド・バードのソロはいつものように上ずり気味ではありますが、充分に歌心と京唄子を感じさせ、良好です。で、ソロ3番手のシルバーはファンキーに迫るヤンキーといった感じで、とっても良好です。あ、ワトキンスのピチカート・ソロも聴けますね。一聴すると地味な仕上がりながら、じっくり聴くとしみじみと地味。そういったナンバーでございました。

 はい2曲目です。これまたシルバーのオリジナルで「トゥ・ビート・オア・ノット・トゥ・ビート」という曲です。タイトルは洋三クンも指摘しているとおりハムレットの有名な台詞、「トゥ・ビー・オア・ノット・トゥ・ビー」をもじったものであございます。「やるべきか、やらざるべきか、それが問題だ。」というやつですな。迷ったときはとりあえずヤッちゃえばイイと思うんですけどね。その結果、「ちょっと、責任とってよぉ。。。」という事態に陥ってしまった場合は、ま、その時はその時でありますが、テーマは典型的なシルバー節ですよね。サバ節同様、ヒジョーに味がありますが、この手の哀感のないナンバーは一般日本人には今ひとつウケがよろしくないのではなかろうかと。じっくり噛みしめると、じんわりとよさがわかってくるんですけどね。ソロはモーブリー、ゴードン、シルバーの順ですが、アンダーレイティッドなトランペッター、ジョー・ゴードンのソロがアンダーヘア的に好感の持てるものとなっております。いい意味、B級の味ですよね。で、続くシルバーのソロも快調・好調・十二指腸。はい3曲目。ここでバラードを持ってきましたかぁ。「ハウ・ロング・ハズ・ジス・ビーン・ゴーイング・オン」は山本ジョージ・ガーシュインのナンバーだそうです。シルバーはバラードが弱いというのは巷間よく言われることでありますが、睾丸は蹴られると痛いんですけどね。シルバーも「それを言われると痛い。」と思っていたようでありますが、なかなかどうして、ここで聴かれるバラード・プレイはなかなかどうしての出来でございます。ま、シルバーがどうこうというより、バードの吹くミュートとモブレイのテナーとのハモリ具合が絶妙なんですけどね。それでも中間部で聴けるシルバーのピアノは充分に“泣き”が入っていて、その哀感がたまらんです。

 はい4曲目です。「アイル・ノウ」です。映画化もされたブロードウェイ・ミュージカル『野郎どもと女たち』からのナンバーで、作曲したのはフランク・レッサーパンダの男だそうです。しみじみ「歌モノだなぁ。。。」と言った感じのナンバーでありまして、特にサビのフレーズのワビサビ感が青カビ的にペニシリンの原料でありますなぁ。歌モノのうまいモブレイがいつものとおりソロを取り、ツッパリはいつものとおりソリを入れ、そして今宵も更けてゆく。バードのクリエイティヴなソロがあり、ホレスがグルーヴィーでファンキーなユーモアのセンスにも富むピアノ・ソロを聴かせる…と。あ、一通り“ソロ回し”が終わった後に聴かれるセカンド・テーマみたいなパートが、いかにもシルバー的でありますなぁ。で、アート・テイラーの控えめなドラム・ソロがあって、ちょっとしたサード・テーマみたいなパートがあって、テーマに戻って、おしまい。曲の構成もコーセー化粧品歌謡ベストテン的によく出来ていて、とっても好感の持てる股間。…といった作品でありました。で、続く「シャウティン・アウト」も典型的なシルバー節が堪能できるナンバーで、ルー・ドナルドソンの『カルテット・クインテット・セクステット』というアルバムに入っていた「スウィート・ジュース」のセカンド・テーマを発展させて1曲に仕立て直したもの…ではないかという気がします。「甘い汁」よりも若干速めのテンポ設定で、躍動感あふれるヤク、どう?…といった感じに料理しております。あ、ヤクというのはチベットあたりでよく飼われている家畜でありまして、それを「どう?」と勧めているわけですね。ソロ・オーダーはモブレイ、ジョー・ゴードン、ホレスの順で、ホレスのピアノはリズミックで躍動的であり、グルーヴィなフィーリングを盛り込みながらツッパリは今日もソリコミぃ。

 はい、あと2曲です。6曲目の「ハンクス・チューン」は中年ハンクのチューンですね。この人の書く曲というのは今ひとつ日本人ウケしないんぢゃないか?…という気がしないでもないものが多いんですが、これもまたそうです。モーブリーの快調なテナー、バードのスムーズなトランペット、ホレスの気分的に大いにのったピアノと快適なプレイが連結する。この時代のホレスは精神的悩みも少なかったのか、すっきりしたピアノを弾いている。…と、岩浪洋三センセイもそろそろ書くことがなくなってきて、かなり苦労しているようですなぁ。あ、曲自体は聴いてみたら思ったよりも悪くなく、なかなかハード・バピッシュな佳曲に仕上がっておりました。で、洋三センセイご指摘のとおりバードの流れるようなソロがなかなかでありまして、本アルバムではベストの出来と言えるのではないでしょうか。続くホレスも精神的な悩みが少なそうなプレイを展開しております。ということで、はいラストです。「ザ・ナイト・ハズ・ア・サウザンド・アイズ」「夜は千の眼を持つ」の和名、「ヨルセン」の略称で知られるナンバーです。デブ専フケ専と並ぶ“世界3大セン物”のひとつですね。ホレスの一味はこのエキゾチックな味と香りのオリエンタル・マースカレー(←また出てきた。)なナンバーをゆったりしたテンポでグルーヴィに料理しておりまして、「まあまあかな?」といった感じの演奏に仕上げております。ま、こんなところでしょう。

【総合評価】

 「何か地味。。。」という印象が強く、聴く前には「果たして原稿1回分、もつだろーか?」という危惧があったんですが、いざ聴きなおしてみると、やっぱり地味でした。が、随所にヨイショとコラショとドッコイショがあって、じっくり耳を傾ければ聴きどころは少なくありません。特にシルバー自身の出来はベストに近いと言ってよいしょ。ただ、モブレイのプレイ、好き嫌いある思うし、派手さないから、やっぱり地味ね。…って、何故かフィリピーナ風に思ってしまう作品あります。じゃ、さいなら。


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