THE AMAZING BUD POWELL VOL.2 (BLUE NOTE)

 BUD POWELL (1949/8/9,1951/5/1,1953/8/14)

THE AMAZING BUD POWELL VOL.2


【パーソネル】

BUD POWELL (p)
GEORGE DUVIVIER (b) ART TAYLOR (ds) <#1,2,3,5,6,7,8,10>
CURLY RUSSELL (b) MAX ROACH (ds) <#4>
TOMMY POTTER (b) ROY HAYNES (ds) <#11,12>

【収録曲】

REETS AND I / AUTUMN IN NEWYORK / I WANT TO BE HAPPY
IT COULD HAPPEN TO YOU / SURE THING / POLKA DOTS AND MOONBEAMS
GLASS ENCLOSURE / COLLARD GREENS AND BLACK-EYE PEAS
OVER THE RAINBOW / AUDREY / YOU GO TO MY HEAD / ORNITHOLOGY

【解説】

 ヌートリアという生き物をご存じですか?僕は知りません。どうやら齧歯類の一種らしいんですが、それにしても難しい漢字ですなぁ、齧歯類。現場監督というシゴトをしているとよく工事写真を撮るために黒板に字を書くことになるんですが、ほら、アレです。先日、下水道のマンホールで工事をしていた人が硫化水素中毒で5人も死んじゃった事件がありましたが、現場には「完成」という字の書かれた携帯用黒板が残されていたという報道がありましたよね。そんなふうに工事のしんちょく状況を黒板に書いて写真に撮っておくわけなんですが、、ある日、現場で齧歯類の死体に遭遇し、「写真、撮っとけよー。」と言われたとしたら、僕はとてもじゃないけど正しく「齧歯類死体状況」と書ける自信はありません。おそらく「げっ歯類死体」と平仮名で書くか、あるいは「動物死体」といった広範囲な表現でごまかすことになろうかと思いますが、ほら、さっきの「しんちょく状況」というのもそうですよね。「進捗」なんて漢字、急に言われても書けないしー。

 ま、最近では携帯電話の辞書を使って漢字を調べるという手もあるんですが、なかなか齧歯類までサポートしている機種はないんですよね。でもまあ、現場で齧歯類の死体の写真を撮るようなことはなかろうとタカをくくっていたんですが、先日、ついにそのような機会に遭遇してしまいました。今は無き “one finger snap” のコーナーでしたか、排水機場の除塵機に引っかかって地上に打ち上げられ、干物と化してしまった『哀しみのテラピア』の写真を掲載したことがありますが、今度は他の現場でヌートリアが打ち上げられておりました。毛皮を取るために日本に連れてこられたのが脱走して、で、動物界の中でもお盛んなことで知られるネズミの一種だからネズミ算的に増えてしまい、今や全国各地にはびこっているらしいヌートリアという齧歯類が川で気持ちよく泳いでいるうちに除塵機に引っかかって地上に打ち上げられ、干物と化してしまったようでございます。いや、発見された当初はまだ死にたてだったようで、わりと生々しい状態だったんですけどね。

 そのヌートリアの死体はやがて腐り始めて、何日かするとハエがたかって周囲に異臭を放つようになってまいりました。ま、それは別にいいんですが(←よくねーって。)僕はある重大な事実に気が付いてしまいました。それは何かというと、死体が移動しているということなんですけどね。このヌートリアは除塵機によって打ち上げられたものだから、発見された当時は除塵機の前のところに転がっていたんですが、次の日に現場を訪れてみると、死体が微妙に南に移動しているんですよね。最初は気のせいかと思ったんですが、5日もすると最初の位置から10メートルも離れたところまで移動しておりまして、もはや異変は誰の目にも明らかでありました。それも次第にクルマの通路のほうに向かって動いてくるもんだから、敷地に入る時に死体を轢きそうになって、とっても邪魔なんですよね。ま、死体が移動する原因としてはカラスがつついた等の理由が考えられるわけでありますが、それだったらたまには北のほうに向かって逆行してもよさそうなものですよね。ところが死体の移動はいつも必ず南向きでありまして、僕の目にそれは南方生まれのヌートリアが少しでも故郷に近づこうと必死になっている姿に思え、涙を禁じ得ることが出来ませんでした。

 そしてある日を境に、死体は東へと移動の方向を転じました。別に南方にはこだわりがなかったんでしょうか?あるいは東南の方向に未練があったのかも知れませんが、ヌートリアはL字型に伸びる通路に合わせるように移動の向きを変えたのでありました。そしてある日の朝、こりゃ、よっぽど注意しないとクルマで轢いちゃうな。。。という場所にその姿を見ることが出来たわけでありますが、いや実際、その日に初めてやってきた4トン車の運転手はすんでのところで死体の存在に気付き、慌ててよけてましたからね。が、昼少し前にトラックを移動させる段階になって、ヌートリアの存在を忘れていたのか、それともどう頑張っても除けられないと観念したのか、あるいは午前中のシゴトで何か嫌なことがあって荒んだ気持ちになっていたのか、彼は通路に横たわる物体をまったく意に介さない風情でクルマを前進させたのでありました。ばりばりばりと骨がくだける嫌な音がしたと思ったら、続いて彼はおもむろにトラックをバックさせ、ご丁寧にもヌートリアを再びばりばりばりと蹂躙したのでありました。いや、そのおかげでヌートリアの死体の腐った成分が一掃されちゃったのか、かえってさっぱりして異臭も和らいだくらいなんですけどね。思い切って轢いてくれて、よかった!…と、僕は彼の勇気に感謝した次第でありますが、異国の地で除塵機に引っかかったあげく、最後はトラックに2度轢きされたりして、思えば哀れなものでありますなぁ。。。いや、轢かれる前にもっと安全な場所に葬ってやるべきではなかったのか?…という意見もあろうかとは思いますが、ヌートリアが自分で勝手に轢かれやすい位置に移動したあげく輪禍にあった次第でありまして、ある意味、自業自得と言えるのではないでしょうかね?

 そしてヌートリアの死体はある日、忽然と僕たちの目の前から姿を消しました。工事の完成検査を前に、目障りなものがあってはまずいと判断した管理人の手によって処分されたのか、あるいは二度轢きされてもなお故郷への思いは断ち切れず、南へ、そして東へと果てしない移動を続けているのでありましょうか。もし街角でそのようなヌートリアの姿を見かけたら、思いっきり北西の方向へ蹴飛ばしてあげてくださいね。

 ということで、バド・パウエルです。ここ3週間ほど土日も休めない多忙な日々が続いておりましたが、ああ、きんぴらにする根菜類?…って、それは多忙じゃなくて、ゴボウですね。で、この3週間ほど多忙な日々が続いておりましたが、この土曜日はなんとか休みがとれまして、今、東京に向かう新幹線を待っているところでございます。昨夜、ごんあぢ嬢にプチオフ会の会場と集合時間を知らせるメールを出したんですが、返事がありません。もしかして、かれい技師と2人っきりでベイブリッジを眺めるという最悪の事態になるんぢゃないか?…と懸念されるわけでありますが、ああ、ひきつることぉ?…って、それは懸念じゃなくて、痙攣ですね。で、パウエルなんですが、手持ちのCDをチェックしてみたところ、これといったアルバムが見あたりませんでしたので、とりあえずBN盤の『アメイジング・バド・パウエルVOL.2』でも紹介しておこうと思います。パウエルの代表作と言えば、ル−ストの『バド・パウエルの芸術』、ヴァーブの『ジャズ・ジャイアント』、それにブルーノートの『アメイジング・バド・パウエルVOL.1』が有名なんですが、前の2つは既に紹介しちゃったし、『アメイジングの第1集』は、いきなり「ウン・ポコ・ローコ」の3連発!…というのが下痢気味である僕の身にはあまりにもハードだし、ま、どっせ後半部分なんか誰もマトモには読んでないわけだし、どうでもいいよね?ということで、1曲目です。

 1曲目、「リーツ・アンド・アイ」はベニー・ハリスの曲だそうです。あ、今、新幹線に乗り込んだところなんですが、今日のひかり号にはガイジンがおりますな。ああ、きんぴらにする根菜類?…って、それはガイジンじゃなくて、ニンジンですね。普通、ニンジンなんかきんぴらにするかぁ?…という気もするんですが、うちではよくゴボウのきんぴらに3対2くらいの割合でニンジンが混入していたりします。で、曲のほうはというとミディアム・テンポのスインギーなナンバーでありまして、僕はパウエルはこの手のプレイが一番オイシイと思うんですよね。若干、アート・テイラーのシンバル・ワークがこの人にしては珍しく喧し過ぎるような気もするんですが、それに負けじとパウエルも例の「んあ〜、んあ〜」といった唸り声で対抗しておりまして、…とか言ってるうちに2曲目の「オータム・イン・ニューヨーク」が始まりました。大阪の彰子の愛聴曲として知られる「ニューヨークの秋」でありますが、いや、今日のひかり号の車内はやかましいギャルが多くて気が散りますなぁ。。。ガイジンもいますしね。後ろの席のおじさんもうるさいし、隣の席のおじさんはちらし寿司を食べ始めるし、どうせ食べるならサバ寿司にしろ!…という気もするんですが、いや、人が何を食べようと大きなお世話だとは思うんですけどね。で、「ニューヨークの秋」はというと、いかにもパウエルらしい格調の高いバラードに仕上がっておりまして、胃拡張の人にもぴったりではないかという気がします。基本的にはテーマのメロディを軽くフェイクする感じなんですが、それにしても右後ろの席の兄ちゃんもうるさいですなぁ。。。ギャル2人に男が1人という3P構成なのが余計にムカつくわけなんですが、あ、隣のおじさん、もうちらし寿司を食べ終わってるじゃないっすかぁ。つい先ほど包装紙を慌ただしく開封していたいたと思ったら、もう食後の煙草をふかしていたりして、油断がなりませんなぁ。いや、ちらし寿司を食うのが異様に早いから怪しいとか、人をそんなことで判断してはいけないとは思うんですけどね。

 ということで3曲目です。今日の曲解説はいつにも増して内容がありませんが、「アイ・ウォント・トゥ・ビー・ハッピー」です。かなり速いテンポではありますが、隣のおじさんがちらし寿司を食うほどの早さではありません。さしものパウエルもおじさんには叶わなかったかぁ。。。と思うと感慨もひとしおでございますが、4曲目はバラードの「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」ですな。中国では「伊藤工藤発奮灯油」という漢字表記をするそうですが、今日は灯油で発奮するぞぉ!…という伊藤クン、工藤クンの意気込みが感じられ、とってもいいことだと思います。はい5曲目。「シュア・シング」という地味な曲です。地味な曲なので演奏のほうも今ひとつ盛り上がりません。今ひとつ盛り上がりませんが、今、車内販売でコーヒーにアイスクリーム、サンドイッチにサバ寿司を売りに来ました。あ、後ろの席のおじさん、ツレらしいギャルにアイスクリームなんぞを買ってあげておりますな。もう、コンタン見え見えといった感じでありまして、非常に不愉快でございます。どうせならサバ寿司を買ってやればいいのに、ま、いずれにせよ大したおじさんではありませんな。

 はい6曲目です。「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス」です。バラードです。僕はこの曲がけっこう好きなんですが、ここでのパウエルの演奏は「まあまあかな?」と言ったところですかね?やっぱ、この曲はエバンスのほうがいいですね。ということで7曲目です。「グラス・エンクロージャー」は4つのパートからなるパウエルの野心作でございます。えーと、最初のパートが荘厳、次のパートが軽快、3つめのパートが純情可憐で、4つめで再び荘厳なムードに戻って、最後の締めが遺言。そういった構成になっておりまして、とてもよく出来ていると思います。続いて8曲目です。「カラード・グリーンズ・アンド・ブラック・アイ・ピーズ」などという勿体ぶったタイトルが付いておりますが、聴いてみれば何のことはない、オスカー・ペティフォードの「ブルース・イン・ザ・クローゼット」ぢゃん。ラテンのリズムに乗せて、ま、それなりに健闘はしておりますが、健闘どまり。…といったところでしょうか。ま、闘犬よりはマシぃ?…という気もするんですが、しょうもなかったですからねぇ、高知の闘犬。で、9曲目はおなじみ「オーバー・ザ・レインボウ」ですな。日本では「虻の彼方に」という名前で知られておりますが、あ、アブじゃないですね。「虹の彼方に」ですね。ではほどにも差がありますが、あ、今、横浜についたところです。婆イイ、あ、「い」がひとつ多すぎました。場合によってはプチオフ会の開催はヨコハマで…と思ってホテルを押さえておいたんですが、諸事情があって東京のベイエリアに変更となりました。ごんあぢ嬢からの連絡は依然としてありませんが、それにしてもパウエルの弾く「虹の彼方に」はキビシー自己表現の世界ですなぁ。無伴奏ソロなんですが、「ちゃららららら♪」という感じのアート・テイタム譲りの装飾音を多様して、いかにもパウちゃんらしいバラードに仕上げております。が、テイタムの華麗さとは無縁のオリエンタル・マースハヤシといった感じでありまして、そのデミグラスなプレイは他を寄せ付けないものがございます。嵐の前のハヤシ、そして雨上がりの虹。そういったものを感じさせずにはいられません。いや、意味はよくわかりません。

 はい、あと3曲です。「オードリー」はパウエルのオリジナルですが、タイトルからして恐らく鳳啓助に捧げられたものでありましょう。とってもポテチンなナンバーでありますが、今ひとつ地味で、とらえどころがありませんな。ま、こんな曲は聴かなかったことにしておいてもさほど大きな問題にはならないと思われますので次にまいりましょう。「ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド」はパウエル流のバラードが堪能できるナンバーです。そんだけ。で、ラストの「オーニソロジー」は第1集に入っていたヤツの別テイクです。こんな演奏は聴かなかったことにしておいてもさほど大きな問題にはならないと思われますので、このアルバムは以上です。

【総合評価】

 地味ですな。第1集と違いナヴァロもロリンズもウンポコも入ってなくて、すっきりとした作りには睾丸が、いや、好感が持てますが、「これ」といったウリがないのが弱点かと。強いて言えば、ぼぼ、いや、ほぼ1曲おきに登場するバラードにパウエル流のロマンシチズムを感じとるという聴き方も出来ようかと思いますが、ま、今日はこれからベイエリアっす。


INDEX
BACK NEXT