BLUE MOODS (PRESTIGE)

 KENNY BURRELL (1957/2/1)

BLUE MOODS


【パーソネル】

CECIL PAYNE (bs) KENNY BURRELL (g) TOMMY FLANAGAN (p)
DOUG WATKINS (b) ELVIN JONES (ds)

【収録曲】

DON'T CRY BABY / DRUM BOOGIE / STRICTLY CONFIDENTIAL
ALL OF YOU / PERCEPTION

【解説】

 先日、「ISO内部監査員養成セミナー」というのに2日間ほど出席してきました。これはどういうものなのかというと、ま、大リーグボール養成ギブスのようなもの?と思っていただければいいんですが、あえて大リーグボール養成ギブスとの違いを挙げるとすれば、養成するものが大リーグボールではなく、ISOの内部監査員であるという点と、養成の手段がギブスの装着ではなく、セミナーへの参加であるということぐらいでしょうか?…って、結局のところ、大リーグボール養成ギブスと共通するのは「養成」のところだけぢゃないかという気がしないでもないんですが、ISOの内部監査員について触れる前に、まず簡単に“ISO”の概念について説明しておきましょう。

 “ISO”。有名ですね。皆さんもこの言葉について、どこかで耳にしたことがあると思いますので、あえて“ISO”が何という英語を訳したものであるかという点については触れませんが、いや、知らないから書けないとか、そういうことではなくてですね。そんなことは僕は十二分に承知しているわけでありまして、えーと、“ISO”の“I”は、確かインターナショナルの“I”ではなかったかと。“S”は「すけべ」の“S”、“O”はオルガスムスの“O”で、“ISO”というのはすなわち日本語に訳すと「国際すけべ的絶頂」とか、そういった意味ではなかったかと思われます。ちなみに“ISO”は「アイ・エス・オー」と読む人もいれば「イソ」と読む人もいて、どちらが正しいとか、そういう明確な規定はないようです。その辺の事情は“UFO”を「ユー・エフ・オー」と読む人もいれば「ユーフォー」と発音する人もいて、ピンクレディに至っては「ゆっほぉ♪」と歌ったりしても特に当局からお咎めはないという状態に似ているわけでありますが、“ISO”の場合は状況によって「アイ・エス・オー」と「イソ」を使い分けたりもしますよね。例えば“ISO内部監査員”という場合には「アイ・エス・オーないぶかんさいん」と言ったほうがしっくりとしますし、“ISO企画”とか“ISOねじ”といった場合には「イソ企画」や「イソねじ」と発音するのが普通です。ちなみに“ISOねじ”というのは“ISO”の規格に基づいたネジのことなんですが、同様に“ISO”の規格に準拠した巾着のことは「イソぎんちゃく」と言ったりしますよね。で、僕は「イソ」というと、どうしても磯野波平の頭のハゲ具合が脳裏に浮かんでしまうんですが、その“ISO”にもいくつかのシリーズがございます。有名なところでは「品質」に関する9000シリーズとか、「環境」にまつわる14000シリーズなんかがあります。“ISO”とよく似た国際標準規格に“USO”というのがあって、こちらは800シリーズなんかが有名なんですが…って、いや、これは嘘八百なんですけどね。

 で、ウチの会社が取得を目指しているのは「品質」に関する“ISO9000シリーズ”でありまして、ま、早い話がこれから先は“ISO”を取得していないような企業は公共事業から閉め出されちゃうわけでありまして、“ISO”を取ってないようではマンホールポンプの点検も出来ないような時代になっちゃうわけです。で、“ISO9000シリーズ”を取得するというのは具体的にはどういうことなのかと言うと、ま、手っ取り早く言うと「マニュアルによる品質の均一化」ということでしょうかね?例えばマンポンの点検でいうと、


  手順1:マンホールの蓋を開ける。
  手順2:ポンプを引き上げる。
  手順3:ホースで清掃をする。
  手順4:点検する。
  手順5:ポンプを戻す。
  手順6:マンホールの蓋をする。
  手順7:手についちゃったウンコはママレモンで洗う。
というようなマニュアルを予め作成しておいて、うちの会社の誰が点検に行っても、そのマニュアルに基づいた作業によって同じような品質が得られるようなシステムを構築しておくわけです。で、社員がきちんとマニュアルを守っているかどうか?ホースで水をかけて清掃しなければならないのに、面倒だからと言ってステンレスのバケツを使ったりしていないか?といった点を社内的にチェックするのが内部監査員の仕事でありまして、その大役を岐阜営業所ではタカシマ君と僕の2人が押し付けられるハメになっちゃったので、その養成セミナーに参加させられるハメになったと、ま、そういうわけなんですけどね。で、そのセミナーで何をどのように養成されてきたかというとですね、ケース・スタディというのを中心に養成されてまいりました。ケース・スタディというのは色々な種類の箱を見て、これは筆箱、これは重箱。こっちが弁当箱で、ゴミ箱でゲタ箱でブタ箱で…と分類する。というようなワケのわからない学習のことではなくて、日本語にすると「事例研究」とでも申しましょうか。おお!我ながらあまりにも適切な翻訳だったので思わず自分で感心してしまいましたが、内部監査の場において想定される事例をチーム内で検討して、みんなの前で発表するというのが主な内容でありました。例えば、僕たちのチームが担当した事例というのはこんな感じのものだったんですけどね。

事例3:資材部へ行って資材部長に「顧客の苦情に関する記録」の提示を求めたところ、20分
    以上も色々なファイルを探したあげく、結局見つけることが出来ず、「すいませんが今は
    見つかりませんので、他の質問に替えていただけませんか?」と言われた。
というケースなんですけどね。この事例が“ISO”的に見て、適合であるか不適合であるか。また不適合であるなら、それが“ISO”のどの条項に反するから不適合であるのか。ということを判定して、みんなの前で発表することになったんですが、発表はチームのメンバーがそれぞれ内部監査員になって、セミナーの先生が扮する資材部長をつるし上げるという形式で行われることになりました。で、これはわりと簡単な事例でありますな。“ISO9001”の4-2-4項(だっけ?)には、「記録はすぐに識別・検索できる形で残しておかなければならない。」というような記述がありまして、資材部長の行動は明らかにこの条項に反するものであるわけです。いや、気持ちはよくわかるんですけどね。いきなり「記録を出せ!」と言われて大慌てでファイルをあちこちと引っかき回したあげく、結局は見つけることが出来ず、思わず「すいませんが他の質問に替えていただけませんか?」と言ってしまった資材部長の言動からは、「仕事にはちょっぴりルーズなところがあるものの、人間的に根は悪くないおじさん。」 という人物像が浮かび上がってくるわけです。こういうおじさんを相手するのはとっても簡単でありまして、「次からは注意しなさいね。」とやんわり訓戒したりすれば、直ちに反省して「すいません、すいません。」と、ペコペコ頭を下げるに違いないのであります。あ、でも先生の話によれば質疑応答の時間があるということなので、もしかしたら「直ちに識別・検索出来るというのは、具体的にはどれくらいの時間のことを言うんですかぁ?」という反撃を受けるかもしんないね。ということになって、では「直ちに識別・検索出来る」というのは、具体的にはどれくらいの時間なのか?という点について検討を重ねたところ、「ま、常識的に見て10分から15分くらいではないか。」ということになり、「いずれにせよ、20分以上というのは問題である。」という結論に達したのでありました。

 さて、いよいよ「つるし上げ」の時間でございます。“鬼の内部監査員@さば”と呼ばれ て社内で恐れられている僕は、その冷徹な頭脳でもって、仕事にはちょっぴりルーズなところがあるものの、人間的に根は悪くない資材部長の非を厳しく追及したのでありました。

「えー、資材部長に顧客管理の記録についての提示を求めたところ、20分以上も探したあげく、結局は見つけることが出来ませんでした。これは“ISO9001”の4-2-4項(だっけ?)にある“記録はすぐに識別・検索できる形で残しておかなければならない。”という条項に反しておりまして、不適合でございます。えーと、やっぱり、“すぐに識別・検索できる”ということは、フツーに考えて15分以内くらいで探してもらわないと駄目なわけでありまして…」

最後の「15分以内うんぬん」というフレーズはチームのみんなで考えた「不適合報告書」には書かれていなかったんですが、かなり緊張もしておりましたので、しどろもどろになって思わず出てしまいました。いや、後で「直ちに識別・検索出来るというのは、具体的にはどれくらいの時間のことを言うんですかぁ?」と質問された場合に備え、あらかじめ伏線を張っておこうという意識もあったわけなんですが、テキはこの言葉に対して、思わぬ方向から反撃してまいりました。

「20分以上かかったということなんですが、それはきちんと計測したんですかぁ?
「それはどの時計で計測したんですかぁ?
「その時計はちゃんと校正しているんですかぁ?
「校正したというのなら、その校正記録はちゃんと残っているんですかぁ?
「校正記録が残っていない以上、20分以上かかったということには根拠がなく、よってこれは不適合とは言えないんじゃないんですかぁ?

とまあ、語尾に力を込めて、次々と反撃してくるわけでございます。開き直りもいいところでありまして、「人間的に根は悪くないおじさん」と判断したのは、とんでもない間違いだったわけでありますが、相手のあまりの勢いに押されてタジタジになってしまった僕は、最後の「よってこれは不適合とは言えないんじゃないんですかぁ?」という質問に対して、思わず「そうですねぇ。。。」と答えてしまったんですけどね。内部監査で不適合を指摘された場合は、開き直るのが一番!という貴重な教訓が得られたわけでありまして、実に有意義な二日間であったということを報告申し上げる次第であります。以上。

 ということで、ギタリスト・シリーズの第2弾はケニー・バレルでございます。通称ケニ・バレ。あ、そうそう。前回の忘年会ネタで、おそらく今週のサザエさんに『我が家の忘年会』というネタが登場するであろうということを予測したわけでありますが、案の定でしたな。いや、正確には『我が家の忘年会』ではなくて『女達の忘年会』というようなタイトルでありましたが、僕の予測はまったくもって正しかったわけでございます。…と、内部監査員セミナーで思わぬ赤恥をかかされてしまった 屈辱をこんなところで晴らしているわけでありますが、ケニ・バレのアルバムとして、プレスティッジ盤の『ブルー・ムーズ』というのを選んでみました。いや、何となく。ジャケットにはただシンプルに『ケニー・バレル』と書いてあるだけなので、恐らくこれが正式なアルバム名なんでしょうが、それではあまりにも味もそっけもホッケもないので、『ブルー・ムーズ』という通称をつけたのでありましょう。いや、たまに居酒屋で食べたりするんですが、それほど味のあるものではないですよねぇ、ホッケ。ちなみにこの『ブルー・ムーズ』というアルバムはバレルのプレスティッジにおける初リーダー作ということなんですが、BN盤の『イントロデューシング』から約8ヶ月後の吹き込みにあたるということです。メンバー的にはバレルと同じくデトロイトの出身である故トミー・フラナガンがピアノを弾いているほか、タイコがエルヴィンなのも嬉しいし、バリトンのセシル・ペインの参加も渋いですね。ということで、では1曲目から聴いてみることに致しましょう。

 1曲目は「ドント・クライ・ベイビィ」という曲なんですが、あ、今ちょっと気になったので前回の原稿をチェックしてみたんですが、サザエさんのネタ予想は『我が家の忘年会』ではなく、『我が家のボーナス』でありました。全然ダメぢゃん、僕って。で、1曲目は「ドント・クライ・ベイビィ」という曲なんですが、日本語に訳すと「暗いのはダメだよ、ベイビィ」といった意味でありましょうか。僕も性格、暗いですからねぇ。照れ屋で根暗。略して“テレクラ”って感じぃ?で、曲のほうはというとアーシーなブルース・ナンバーでありまして、バレルのギターが何ともレトロでカントリーなムードでありますなぁ。。。それにしても今日のジャケ・イラストのバレル、目つきが悪いですなぁ。。。ちょっぴり失敗…というか、完全なる失敗でありますが、これくらいのサイズの顔というのが一番書きにくいわけでありまして、似なくて当然なのでございます。…って、開き直りもいいところですが、こういう演奏を耳にすると、やっぱりバレルもチャーリー・クリスチャンの直系なんだなぁということがしみじみと実感出来ますね。ところでチャーリー・クリスチャンって、やっぱりキリスト教徒なんすかね?この名前で実はゾロアスター教徒だったりするのかも知れませんが、バレルに続くセシル・ペインのバリトン・サックスは悪くありませんね。スローなテンポなので、それほどワイルドではありませんが、それほど悪いどぉということもありません。ま、普通の出来でありましょう。で、ここでの聴き物はやっぱり故トミー・フラナガンのソロでありましょうか。彼のプレイは同世代のパウエル派のピアニストと比較しても、それほど個性の強いタイプではないんですが、安定感と趣味のよさは群を抜いて抜群です。いや、もう死んじゃったから言うわけでありますが、やっぱり立派な人だったと思います。最後に再びバレルが登場してソロを取っておりますが、最初のソロに比べて随分とノリがよくなっているところが面白いですね。わはははははは。で、ギターとバリトンが絡むムード満点のテーマ演奏があって、おしまい。

 2曲目はジーン・グルーパーの「ドラム・ブギ」なんですが、ドラムがまったくフィーチャーされていないところが面白いですね。わはははははは。で、テーマ部がちょっと不思議なサウンドになっているんですが、これはギターを弓で弾いているんですかね?そんなのアリですかね?とにかくまあアルコとバリトンのソフトなユニゾンでテーマが演奏された後、セシ・ペンのソロに所々バレルが絡む形で演奏が進んでまいります。ペインのアドリブは次第にノリがよくなっていく感じですね。ま、次第に盛り下がっていくよりかは随分とマシなわけでありますが、続くバレルのソロはノッケからけっこう飛ばしておりますね。北海道で採れる魚はホッケですけどね。僕もたまに居酒屋で食べたりするんですが、それほど味があるとも思えませんけどね。で、演奏のほうはトミ・フラ、ダグ・ワトキンスとソロが続いて、あ、書くのを忘れておりましたがワトキンスは1曲目でもソロを取っていたような気がしますね。その意味ではオールスター・セッション的な意味合いの強いアルバムであると言えるかも知れませんが、はい3曲目です。「ストリクトリー・コンフィデンシャル」はパウエルのオリジナルですね。筒井康隆の短編に『新宿コンフィデンシャル』という作品があるんですが、このタイトルはジェイムス・エルロイの『L.A.コンフィデンシャル』のもじりでありましょう。ちなみに僕はエルロイの小説のほうは読んだことがないんですが、書いた人の名前から判断して、おそらくエロい話ではなかろうかと思われます。で、「ストリクトリー・コンフィデンシャル」は日本語にすると「厳密に秘密である」といった意味でありましょうか。昔、『ポルノ・あんみつ姫』というタイトルのビデオを見たことがありますが、こちらは厳密に秘密であるわけですね。「わらわは姫ぢゃ。あんみつ姫ぢゃ。」とかなんとか、ワケのわからないことを言ってましたけどね、あんみつ姫役の女優。で、曲のほうはというと、いかにもパウエルらしい香気に溢れた作品でありまして、それをバレル一派はギターとバリトンの絡みで、なかなか洒落た感じに仕上げております。ソロ先発はトミ・フラなんですが、何とも綺麗なタッチのピアノでありますな。パウエル的は凄みはまったく感じられないものの、そこが彼の持ち味でありましょう。寛ぎと寛(ひろし)。人生、それが必要となる時も多々あるわけでございます。続くペインとバレルのソロもリラックス・ムードに溢れ、とっても良好です。そんだけ。

 4曲目はコール・ポーターの「オール・オブ・ユー」。この曲だけセシ・ペンが抜けてカルテット演奏になります。ギターの無伴奏によるイントロで幕を開け、そのままテーマに流れ込み、ここでスーっとリズムが入ってくる瞬間はまさしく“背筋ゾクゾクもの”ですよね。そして再びギターの無伴奏になって、ここで再びリズムが入ってミディアム・テンポに転じるあたり、まさに憎いばかりの演出でございます。トミ・フラのソロは相変わらず歌心に溢れまくっておりますし、下心満点のエルヴィンのブラッシュ・ワークも絶妙ですね。で、最後は再びスローに転じ、メローなムードで演奏は幕を閉じます。クリスマス・イブの夜、キャンドルを灯した部屋でワイン・グラスでも傾けながら聴くとイイかも知れませんね。決め台詞はもちろん、「お前がすべてだよ。」…って、あ〜ん♪が、そんなクソ甘ったるいムードも続く「パーセプション」で吹き飛んでしまいます。いや、悪い演奏ではないんですが、少なくとも「あ〜ん♪」なムードは希薄であると言わざるを得ません。バリトンにギターが絡むテーマ部はちょっぴりウエストコースト的なサウンドを思わせますが、ひとたびソロに入ればアドリブ一筋、感じるのは裏筋…って、いったい何の話でありましょうか?とにかくまあ、感じるより産むがやすし。悪いアルバムじゃないので、とりあえず聴いてみてくださいね。ということで、おしまい。



INDEX
BACK NEXT