FRIVOLOUS SAL (BETHLEHEM)

 SAL SALVADOR (1956/2)

FRIVOLOUS SAL


【パーソネル】

SAL SALVADOR (g) EDDIE COSTA (p,vib) GEORGE ROUMANIS (b) JIMMY CAMPBELL (ds)
【収録曲】

FRIVOLOUS SAL / TANGERINE / I COVER THE WATERFRONT / YOU STEPPED OUT OF A DREAM
YOU COULD SWING FOR THAT / ALL THE THINGS YOU ARE / SALAMAN / HANDFUL OF STARS
I LOVE YOU / I'LL REMEMBER APRIL

【解説】

 ボーナスが出ました。ボーナス、ボーナス…えーと、特に何も思い浮かびませんね。ボーナスというのは日本の社会では風物詩のようになっておりまして、漫画の世界でもよくネタにされますよね。おそらく「サザエさん」でも今週あたり、『我が家のボーナス』という話が出てくるんじゃないかという気がしますが、意気揚々「ボーナスが出たぞぉ。」と帰宅した波平が鞄の中から棒に刺した茄子を取りだし、それを見た家族はたまらない寒さに襲われて、「ああ、今年も冬が来たんだなぁ。。。」としみじみ実感する。…というのが物語の展開ではないかと思われますが、波平は夏のボーナスの時にも同じことをやって、家族全員を「夏でも寒い、ヨイヨイ♪」という“木曽の御嶽さん状態”にしてしまったという実績がありまして、波平の大人げなさというのは、ありゃ何とかならんものですかね?

 で、我が社のボーナスでありますが、どうも今ひとつでありました。今年度の我が社の売上と利益は当初の予想を大きく下回っておりまして、4ヶ月前には「このままでは冬のボーナスは大きく減少、期末手当は削除せざるを得ない、うんぬん…」という不景気な回覧が社長の名前で回っておりましたが、案の定ですな。ボーナス支給日を知らせる回覧には「このままでは冬のボーナスは大きく減少、期末手当は削除せざるを得ないうんぬん…と書いた4ヶ月前の回覧を思い出し、より一層頑張って貰いたい、うんぬん…」と書いてありまして、思わず「お前が頑張れよ、このハゲ!」と思ってしまいましたが、いや僕は波平さんと違ってとってもオトナだから、心の中で思ってもそれを口に出すような真似はしません。ま、せいぜい自分のホームページに悪口を書いてウサを晴らすのが関の山なんですが、岐阜営業所の人間など、それこそ便に血が混じるような過酷な残業と休日出勤を強いられているというのにそれでも赤字だというのは、これはもう社長がハゲているからに違いありません。早急なる対処を求める次第でありますが、ボーナスがパッとしないとなれば、これはもう、ヤケ酒でも飲んでパーッと暴れるしかありませんね。ということで先週の金曜日、忘年会が行われたのでありました。

 フグでした。業績不振だというのにフグとは、これまた豪勢な話だねぇ。と、社長(←筆者注:ハゲてる。)に嫌味のひとつも言われそうでありますが、フグと言っても会費は主任クラスで2500円でありました。ま、鵜飼の時に徴収した会費がまだ残っている等の理由があるにせよ、2500円のフグでは期待が持てないこと甚だしく、会場となったお店の佇まいもよく言えば由緒ありげな、はっきり言えばタダのボロくさい料理屋でありまして、部屋の灯りが妙に暗いのも侘びしさを増加させておりました。が、粋に着物を着こなしたこの店の若女将はかなりの上質でありました。若女将というだけあってまだ充分に若く、30代半ばと言ったところですかね?が、話す言葉がいくらかアヤしく、うちの所長は「ありゃ、チャイニーズ系のフィリッピンやな。」と断言しておりましたが、あとから本人に確認したところ、「あいや、チャイニーズは当たってるアルが、フィリッピンじゃないアルね。」ということでありまして、いや、さすがにそのようなゼンジー北京風の日本語で答えたわけではありませんが、「ここの若旦那がチャイニーズ系の飲み屋で引っかけて、アヤマチを犯してこのような事態に立ち至ったらしい。」ということで宴会参加者の意見は一致しました。何はともあれ、まずは「てっさ」でございます。

 フグのことを「てっぽう」と言ったりしますよね?これは「アタればイチコロ。」というところから来ているわけでありますが、「てっさ」=「てっぽうの刺身」=「フグ刺し」ということでございます。僕はフグというのはやはり数年前の忘年会で一度食べたことがあるきりなので、その出来の良し悪しを判断することは出来ないんですが、参加者からは「分厚い。」という声が上がっておりました。ケチくさく刺身をペラペラに切ったりしない、たいそう豪快な性格の料理人であると評価することも出来ようかと思いますが、幹事役のお兄さんは各方面から「これ、バッタモンちゃうか?」とか、「カワハギちゃうか?」とか、色々と文句を言われておりました。それに対して幹事役のお兄さんは「いや、ちゃんと下関から来たて言うてたしぃ。。。」と反論していましたが、下関から来たクサフグということも考えられますよね。あるいはサバフグとか。サバフグというのはいかにも蕁麻疹が出そうな名前でありますが、実際には無毒なんだそうです。ただしそれも日本近海で獲れるサバフグに限った話でありまして、サバフグにきわめて似ている南方産のドクサバフグというのは内臓だけでなく、身のほうにも毒があるんだそうです。ゆめゆめ“塩ドクサバフグ”などにして食べてはいけません。ま、“〆(しめ)ドクサバフグ”ならある程度は酢で毒が中和されるので、だいじゃぶかも知れませんけどね。

 で、「てっさ」に続いて、「なんとか」という料理が出ました。何という名前だったか忘れてしまいましたが、所長が「普通、“てっさ”の皿の真ん中に付いてくるもの。」という旨の発言をしていたので、ここでは仮に「普通、“てっさ”の皿の真ん中に付いてくるもの。」という名前で呼ぶことにしますが、その「普通、“てっさ”の皿の真ん中に付いてくるもの。」の出来映えも、参加者の間では今ひとつ不評でありました。で、続いては「唐揚げ」でございます。これはまあ、悪くはないものの真ん中に骨があって食べにくくて、これならまだトリの唐揚げのほうがマシぃ?という気がしないでもありませんでした。で、最後に「てっちり」(フグ鍋)が出て、それで雑炊を作って、デザートのシャーベットを食べて、宴会はお開き。いやあ、酔っぱらってOLさんに狼藉をはたらく不届き者がいるわけでなく、いきなりパンツを脱ぎ捨てて鍋に投入して「ダシや!」とわめく若者が出るわけでなく、「大丈夫ですよ、ダンさん。」と言ってフグの肝を持ってくる仲居がいるわけでもなく、毒に当たって七転八倒する老人が出没するわけでなく、「いやあ、実は僕、フグをさばくの初めてなんですよぉ。無免許だしぃ。。。」と若旦那が衝撃の告白をするわけでもなく、実にこう、何だか盛り上がりに欠ける忘年会でございました。えーと、今日の話題は…そんだけ。

 ということで、今日からギター編です。持ち駒が極めて少ないので、おそらくは4回くらいのシリーズで終わるんじゃないかと思います。ということは、年内一杯ぐらいですかね?…と、このところ更新頻度が極めてお盛んでなくなってきてしまったこのコーナーでありますが、こっそりと応募していた『@Nifty・2001年ホームページ・グランプリ』も、あっさりと予選落ちしちゃいましたし、ぎゃる系読者もいなくなっちゃったし…と愚痴っていても始まらないので、サル・サルヴァドール、いってみましょう。ベツレヘム盤の『フリヴァラス・サル』でございます。日本語に直すと『取るに足らない猿』といったところですかね?なかなか逆説的なタイトルだと思いますが、サル・サルヴァドールという名前はとっても韻を踏んでいてイイと思います。名前はとってもイイんですが存在自体は地味で、このアルバムもどちらかと言うとサイドマンで参加しているエディ・コスタ目当てで買ったものなんですが、だからまあ、適当に聴きとばしてまいりましょう。ということで1曲目、「フリヴァラス・サル」。タイトルからしてサルのオリジナルだとばかり思っていたら、ケントン楽団で同僚だったテナー奏者兼アレンジャーのビル・ホルマンが書いたものなんですな。「取るに足らない猿」って自分で言うのならまだしも、人に言われると、ちょっとムッとしちゃうんだよね。。。と、サルくんが心の中で思っていたかどうかサダカではありませんが、例えば僕もこのサイトのことを「つまらない」とか言われると、ちょっとムッとしちゃいますもんね。思わず「クルマの屋根の上に猫のウンコ乗せたろかい?」とか思ってしまうわけですが、サルくんってばそんな様子はおくびにも出さず、乳首にも出さず、淡々としたプレイに徹しております。その態度は立派であると言わざるを得ませんが、演奏自体は個人的にはちっとも面白くないな。。。という気がしないでもありません。いや、ギターは弾けてると思うんですけどね。少なくともキダ・タローよりは弾けてます。で、スタイルとしては、結構きっちりしたビ・バップぅ? といったところなんですが、白人モノらしく、若干のコムツカシさも感じられます。

 2曲目、「タンジェリン」。歌モノだけあって、1曲目と比べると若干くつろいだムードがありますね。少なくとも、喉に絡む、僕の血痰、ジェリー状…といった息苦しさは感じられません。ギターだって弾けてるし、エディ・コスタの乾いたタッチのピアノも良好です。が、今ひとつ印象薄なのも確かですね。ということで3曲目。「アイ・カヴァー・ザ・ウォーターフロント」。太田クンとカバの句で名高いスタンダードでありますが、日本名は「水辺にたたずみ」でしたっけ?少なくとも「水辺にカラスミ」ではなかったと思いますが、海辺にボラの卵巣が干された風景というのは、アレでなかなか風情があるものですよね。で、サルヴァドールのバラード・プレイは決して感傷過多に陥ることのない淡々としたものでありまして、その評価は別れることになろうかと思いますが、個人的にはどうも今ひとつですなぁ。。。僕としてはもっとこう、ねっちょりした感じのほうが好みでありますが、ま、人それぞれということで、はい4曲目です。「ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム」です。「夢から醒めて」です。こういったスインギーな演奏と言うのは悪くないですな。…と、あまり「今ひとつ」ばかりを連発していると読んでいるほうとしても気が滅入ると思われますので、ここらでひとつ誉めておきたいと思いますが、しかしエディ・コスタのピアノって、わりとハンプトン・ホーズに似てると思いませんか?僕は思いません。…って、なら最初から書かなきゃイイぢゃん。。。という気もしますが、パチパチとした乾いたタッチが、ふとホーズを彷彿させる瞬間がないことがないような気がしないでもありません。

 で、5曲目です。「ユー・クッド・スイング・フォー・ザット」はサルヴァドールのオリジナルだが、どこか歌物を思わせるようなキャッチーなメロディが印象的。…と、日本語ライナーで藤本史昭クン(←誰?)が書いている通り、これまで聴いてきた中で最も印象的なナンバーでございます。とか書いているうちに演奏のほうは終わってしまいましたが、何せ2分37秒しかありませんからなぁ。いつぞや誘拐されて無事に保護された小学校低学年のギャルの言葉を借りれば「カップラーメンが出来るより、ちょっと短い時間」ということになるわけですが、アレこそ今年の流行語大賞に相応しいと僕は思っていたんですが、おしくも選から漏れちゃいましたね。いや、ぜんぜん流行はしなかったので当然かとは思いますが、いつも「ああん、カップラーメンが出来るより、ちょっと短い時間なのぉ。。。」と言われている僕としては、ちょっぴり残念なことでありました。…とまあ、そんなことはどうでもよくて、6曲目はおなじみ「オール・ザ・シングス・ユー・アー」でございます。皆さま、お待たせ!ここでようやくエディ・コスタのヴァイブ・プレイを堪能することが出来ます。ヴァイブとギターが絡むイントロからテーマにかけてのアレンジが光ってますな。で、ソロ先発はコスタなんですが、アップ・テンポでの淀みのないプレイは良好であります。で、ヴァイブのバックではサルくんも頑張っているんですが、続いては立場を逆にしてサルくんのアドリブにヴァイブがバックで絡むという展開になります。で、今度はコスタがピアノにスイッチしてソロを展開し、最後にギターとピアノの4バースがあって、それがギターとヴァイブの4バースになって、テーマに戻って、おしまい。アルバム中もっともスリリングなトラックに仕上がっている…という史昭クンの指摘はまったくもって正しくて、エンディングもばっちり決まって、なかなかよい演奏だったと、かように思う次第であります。

 はい、あと4曲です。「サラマン」はサルヴァドールとアレンジャー、マニー・アルバムの共作だそうです。僕はマニー・アルバムのアルバムは1枚も持っていないんですが、名前だけは聞いたことがあります。僕が名前を聞いたことがあるということは、そこそこ有名なんじゃないか?という気がしますが、曲名になっている「サラマン」という言葉は聞いたことがありませんな。まっさらなんですかね?(←ナニが?)で、史昭クンが「アルバム唯一のマイナー・チューンで、サルヴァドールの哀愁滲むプレイが楽しめる。」と書いているのでかなり期待してたんですが、確かにギターとヴァイブのユニゾンで演奏されるテーマはちょっぴり哀調を帯びておりますな。あ、曲名は作曲者2人のファースト・ネームを組み合わせたものとありました。それだけのことですかぁ。。。何だか、急に興味を削がれたような気がするので次の曲にまいりましょう。「ハンドフル・オブ・スターズ」はスイング期に活躍したベーシスト、アーティ・シャピロが書いた曲だそうです。ナット・キング・コールが素晴らしい歌唱を残しているが、ここでの演奏もそれに影響を受けたものとなっている…そうです。メロウに歌うサルのギターが印象的ですね。腐ってもサル…といったところでしょうか。いや、別に腐ってるわけじゃないですけどね、サル。で、9曲目はコール・ポーターの「アイ・ラブ・ユー」。お約束どおり、ラテンのノリで演奏されております。やっぱり愛を語るにはラテンのノリがいいんでしょうか?ヤマト糊じゃ駄目なんでしょうか?ちなみにヤマト糊は嘗めるとちょっぴり甘い味がしますよね?やっぱり原材料が「おこめ」だからなんですかね?ああ、愛しのスウィート・おこめ。

 ということで、ラストです。「アイル・リメンバー・エイプリル」です。1942年の映画『凸凹カウボーイの巻』の挿入歌で…って、そんなシケた映画の出だったんですかぁ。。。もう、人生終わったも同然…という気がするんですが、そんな不幸な出生にメゲることなく、なかなかスインギーな仕上がりぶりとなっております。まずまずじゃないでしょうか?ということで、前半は今ひとつ印象の薄い出来でありましたが、エディ・コスタが後半にヴァイブを弾くようになって、かなり持ち直したと言えるのではないでしょうか。最後に、このページを何気なく翻訳ソフトにかけたところ、エディ・コスタの名前が“エディ肋骨”に変換されたということを紹介して、今日のお話はおしまい。



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