CONFLICT (CONTEMPORARY)

JIMMY WOODS (1963/3/25,26)




【パーソネル】

CARMELL JONES (tp) JIMMY WOODS (as) HAROLD LAND (ts)
ANDREW HILL (p) GEORGE TUCKER (b) ELVIN JONES (ds)

【収録曲】

CONFLICT / COMING HOME / AIM
APART TOGETHER / LOOK TO YOUR HEART / PAZMUERTE

【解説】

『安全衛生講習会に参加して』

塩サバ物産株式会社 岐阜営業所
稲葉 さば

 この度、下記のとおり講習会に参加いたしましたので、ご報告申し上げます。



1 講習会名 : 工事担当者安全衛生教育 特別初級講習
2 日  時 : 平成13年9月10日(月)〜12日(水)
3 場  所 : エバラ焼肉のタレ製作所

( 所  見 )

  私は今まで職長教育を始め、いくつかの安全衛生関係の講習を受講してまいりましたが、墜落災害の防止に重点の置かれたものが多かったように思います。確かに労働災害による死亡事故のうち、墜落事故の占める割合は約半数に達するということで、墜落災害の防止はそのまま労働災害の減少につながるわけですが、その対策と言えば「安全帯の使用」ということになるようです。「墜落防止には安全帯、局部のガードには貞操帯」というのは建設業協会のスローガンでありますが、で、前にもどこかに書いたことがあるんですが、この手の講習会でビデオを映す時って、間違って“すけべビデオ”が流れたりしないかと思って、 ちょっとドキドキしちゃいますよね。前の日の晩、みんな帰って誰もいなくなった隙を窺って、鰈技師(仮名)がこっそりと見た『団地妻・悶えの貞操帯ぷれい♪』のビデオを、コーフンのあまり取り出すのを忘れていた。。。ということが、ないとは言い切れません。ないとは言い切れませんが、未だかつて安全のビデオと間違えて『バンバンOK!だって今日は安全日なんだモン♪』というビデオを流しちゃったという話は聞いたことがないので、ないと言い切ってもイイかも知れませんね。そういうことはありません。

 で、すけべビデオのタイトルというのは、真面目に考えてるのかぁ?とか、世の中を嘗めてるんじゃないかぁ?と言いたくなるような、例えば『ナメナメなめ娘』(編集部注:「なめ娘」は「なめこ」と読む)というようなタイトルが付けられているのが常でありますが、安全のビデオと言うのもそれと似たようなものでございます。例えば感電事故防止のビデオなら『42Vは死にボルト』だとか、転落事故防止のビデオなら『1メートルは一命取る』だとか。。。つまりまあ、「打ちどころが悪ければ、たとえ1メートルの高さから落ちたとしても、死んじゃうことがあるんだよ。」ということなんですが、“死にボルト”のほうは「シビレどころが悪ければ、たとえ42ボルトでも死んじゃうことがあるんだよ。」ということらしいです。42ボルトと言わず、全身がヌレヌレの状態では2.5ボルトでも危ないというのだから、“全身ローション”と“しびれフグ”の併用は、その取り扱いに充分注意しなければなりませんね。ヘタをするとそのまま「昇天♪」ということになりかねません。

 で、「1メートルは一命取る」でありますが、安全衛生法では高さ2メートル以上の作業床には手摺りを設置しなければならないことになっております。1メートルでも死んじゃうことはありますが、それは特別にアタマが弱い…って、これはアホということではなく、物理的に頭蓋骨の強度が不足しているということなんですが、ま、そうでない限りはおそらくだいじゃぶではなかろうかと。でも2メートルになると駄目なんだそうです。いくら丈夫なアタマの持ち主でも、2メートルの高さから落ちると割れちゃうんだそうです。実際にサルを2メートルの高さから落としてみたらやっぱりアタマが割れちゃったそうですが、となると「サル梯子を昇っている最中に“下に落ちてアタマが割れて痛がっている自分”の姿が脳裏に浮かび、結果として高所恐怖症になっている僕」というのは、まんざら理由もなく高いところを怖がっているわけではないんですね。サルだってアタマが割れるんだから、サル梯子を昇っている僕だって割れるわけです。だいたい、僕から言わせれば高いところがぜんぜん平気という人は「“下に落ちてアタマが割れて痛がっている自分”を脳裏に浮かべることが出来ない、著しく想像力の欠如した人間」としか思えないわけでありまして、こういう人はたいてい作家という職業には向きませんね。とび職には向いてますけどね。

 が、サル梯子のような実際に墜落する危険性がある場所だけでなく、どう考えても落ちそうもない場所、例えば周囲を堅固なガラス窓で囲われた高層ビルの展望室のようなところでも怖いというのが恐怖症の恐怖症たる所以なんですが、いや高層ビルもいつテロリストに乗っ取られた飛行機が突っ込んでくるかも知れないので、必ずしも安全な場所とは言えなくなっちゃいましたけどね。ちなみにあの事件があった日の夜(←日本時間)はちょうどホテル松月(仮名)にいたんですが、一度もテレビをつけなかったもんだから、あのような事件があったことは朝になるまで知りませんでした。で、朝飯を食べに食堂に行くと、何やらおじさん(約1名)が、やたらとコーフンしてるんですよね。「あれは凄いことやでー。」とか、「特攻隊やでー。」とか、「あれは大和魂やでー。」とか、「まだ大和魂を持った人がおったんやでー。」とか、「アメリカはむっちゃ怒っとるでー。」とか、一人で騒いでおりまして、同行のヤングな若者は「はいはい。」といった極めてクールな態度で聞き流しているようでありましたが、隣のテーブルに座っていた何も知らない無知無知ボーイ@さば君としては、「えっ?何?何が起こったのぉ?」という感じですよね。おじさんの話から判断して、キレた日本のヤングな若者が妖刀・村正でも振り回して、アメリカ人に斬りつけたのか?「大和魂うんぬん」というフレーズからすると、斬りつけた時に新井薫子の「ヤマトナデシコ、春咲きマス」でも歌っていたとでもいうのか?と思い、あわててゴハンと味噌汁をかっこむと部屋に戻ってテレビのスイッチを入れ、そこでようやくコトの真相を知ったという次第でございます。

 で、事件の続報に後ろ髪を引かれる思いでホテルを後にして、エバラの焼肉のタレ工場に向かったわけでありますが、その日の講習会では早速テロの話がネタに使われてました。高さ31メートル以上のビルを建てたり壊したりする場合は、工事に着工する2週間前までに労働基準監督署に届けなければならないという話があったんですが、講師のおじさんは「貿易センタービルに突っ込んだテロリストは、ビルを壊す前にちゃんと労働基準監督署に届け出をしたんでしょうかね?」などとつまらない発言をして、参加者全員に「はいはい。」といった極めてクールな態度で聞き流されておりました。おそらく昨日の夜、テレビを見ていてこのネタを思い付いて、「我ながらイケるネタじゃん。」とか思ったんでしょうね。で、「講習会でとっておきのギャグがバカウケして、満足感に浸っている自分」の姿を想像したりして、朝が来るのが待ち遠しかったに違いありません。コーフンのあまり、よく眠れなかったりしたかも知れません。で、いよいよ講義が始まり、例の「高さ31メートル以上のビルを建てたり壊したりする場合は、届け出をうんぬん…」というところに差し掛かると、講師の心の高ぶりは最高潮に達します。「ところで貿易センタービルに突っ込んだテロリストは、ビルを壊す前にちゃんと労働基準監督署に届け出をしたんでしょうかね?」

 ………。しーんと静まりかえる会場の空気に、「しまった、ハズしたか?」と講師の頭は真っ白になったに違いありません。こんなことなら余計なことを言うんじゃなかった。。。と後悔しても時すでに遅し。「…とまあ、昨日のニュースを見ていて、ふと思ったんですけどね。。。」と、講師はバツが悪そうに付け加え、そして講習は何事もなかったかのように淡々と進められていったのでありますが、ウケなかったことに対する八つ当たりでありましょうか。通常、最終日は予定より1時間ほど前に終わるのが“暗黙の了解”になっているんですが、彼は時間ギリギリまできっちりと講義を完遂してくださいました。ちょっぴりオトナ気ないことだと思います。

−以上−

 

 ということで、ジミー・ウッズっす。誰?と聞かれても困ります。僕もよく知りません。よく知りませんが、先日、名古屋のタワレコを探索していてコンテンポラリー盤の『コンフリクト』というアルバムを見つけ、ジャケットのセンスもいいし、サイドマンもいいし、あ、でも今日のジャケ・イラストはちょっと失敗して、ウッズ君とは似ても似つかぬ顔になってしまいましたが、これくらいの大きさの顔というのは一番書きにくいので、似なくてトーゼンなんだよ!…と、思わず逆ギレしちゃいましたが、ちょっぴりオトナ気なかったカナ?と反省しております。で、サイドマンなんですが、まずはエルビンですね。ジャケットにもジミー・ウッズと同じ大きさの字で “FEATURING ELVIN JONES” と書いてありますが、えるびん菅原クンは元気っすかね?で、他には個人的にわりと好きなハロルド・ランドも入ってるし、まだメジャー・デビューを果たす前のアンドリュー蛭の参加も興味深いし、渋いところでは亀嬢ことカーメル・ジョーンズの名前も見えますね。ベースは昼下がりのジョージ・タッカーっすね。1963年の録音なので、あるいは新主流派風のサウンドなのかも知れませんが、ま、コンテンポラリーのレーベル・カラーからすれば、それほどラジカルなものではないような気もしますし、でもコンポラ盤にはオーネット・コールマンやセシル・テイラーを筆頭に、プリンス・ラシャ&ソニー・シモンズなど意外と“新し系”のサウンドにも手を染めていたり、頭を金髪に染めていたりすることもあるので、油断はなりません。注意して聴くことに致しましょう。

 で、1曲目です。アルバム・タイトルにもなっている「コンフリクト」という曲です。地味渦のオリジナルです。ちなみに全6曲、すべてがウッズ君のオリジナルです。で、このアルバムの原文ライナーはウッズ君が自ら書いたというか、ウッズ君へのインタビューを元にして書かれているんですが、「コンフリクト」 − これは、いわば戦争状態にあるときの曲だ。進撃しているかのような曲調が − 私はこの曲にそれを感じるのだが − 私にとっては闘争(conflict)を意味している。…って、さすがは60年代モノですなぁ。。。ジャズなんてものは元来、女の子とニャンニャンしているところとか、わんわんスタイルで頑張っているところなどをモチーフに演奏するものではないかと思うんですが、60年代に入るとそこに「政治」や「権利」や「反抗」や「淫行」の概念なんかが持ち込まれてきちゃいますからね。で、概してそのような演奏にはつまらないものが多いんですが、でもだいじゃぶです。確かにウッズ君の「闘争」は進撃しているかのようなマーチ調でありますが、根はブルースで、陰惨な戦争や悲惨なインキンの気配は希薄であります。

 アルト・テナー・トランペットの3管で“勇壮ブルース風”のテーマが反復され、で、ハロルド・ランドのテナー・ソロに突入しますが、「えっ?これがランドぉ?」と、思わずパーソネルを見直してしまうほどワイルドで60年代っぽい吹きっぷりが印象的ですな。続くカメ・ジョーはドイツのジャズ評論家ヨアヒム・ベーレントにより、カンサスシティで見出された。ベーレントは彼をアメリカ滞在中に聴いた最もエキサイティングな新人ミュージシャンと絶賛している。…と原文ライナーの写真の下のところに書かれておりますが、ウディ・ショウを地味にしたようなプレイを聴かせる人でありますな。けっこう好きなタイプで、これでカボチャでも焦がしてくれれば言うことはないんですが、とか書いているうちにアンドリュー蛭のソロになりましたね。最初の1コーラスなどブルージーな味があって、わりとオーソドックスな印象を受けたんですが、次第にフレーズが怪しくなってきて、ヒルらしさの片鱗は十分に伺い知ることが出来ます。栴檀は双葉より芳しというか、腐ってもヒルというか。で、続いて、お待たせ!いよいよジミー・ウッズ君の登場となりますが、岡崎正通クンの書いた日本語ライナーによれば、R&B畑で頑張っていた経験があるみたいですね。で、パーカーの影響もあるようですが、60年代ヤングらしくドルフィーやオーネット・コールマンなんかも「イイじゃん!」と思っているようでありまして、時折フリーキーなトーンなども交え、要するに捕らえ所のないプレイをする人でありますなぁ。。。ま、例えれば「まだ分かりやすいほうのジェームス・スポルディング」といったところでありましょうか?ま、悪くはないんですが、50年代ハード・バップ命!という人にとっては、ちょっぴり意味不明なところがあるかも知れません。で、最後にエルビンのドラム・ソロがフィーチャーされ、テーマに戻って、おしまい。いや、個人的には嫌いじゃないですけどね。

 2曲目は「カミング・ホーム」という曲です。エルビンの派手派手ドラミングに続いてモーダルな感じのテーマが演奏されますが、メロディは哀感があって悪くないし、アレンジのハーモリ具合も凝ってるし、特にカメ・ジョーがいいスッポンの出汁風の味を出しているし、コルトレーンの「オレ!」を思わせるスパニッシュな風情もあるし、新主流派好きにはかなり楽しめる作品ではないかと思うんですけどね。で、テーマでもいい味を出していたカーメル・ジョーンズがソロの先頭を切って、生きのいいフレーズを連発しております。よく町役場の課長補佐クラスで見かけるような顔をしておりますが、なかなかやるじゃないですか、カメ・ジョー。続いて飛び出すフリーキーなトーンは、ちょっぴりソプラノ・サックスを思わせるような場面もありますが、ウッズ君のアルトでありましょう。続くランドのソロは極めてモーダルでありまして、一見するとコンサバティブにも思われるこのベテランが意外とフレキシブルなスタイルの持ち主であることに改めてびっくらこいてしまいました。んで、ヒルのピアノは充分にヒルらしさを発揮しております。もう、ヒルジン分泌しまくりぃ?みたいな。で、最後にエルビンのソロがフィーチャーされて、ということで、以上、個人的にはかなり好きなタイプの演奏でありました。

 はい3曲目です。ウッズが戦争をモチーフにして書いたという「エイム(狙い)」はいくつかのパートからなっている。メインの部分はアップ・テンポの演奏のように響いてくるが、実際には3倍の長さに引き伸ばされたスロー・ブルースにもとづいて演奏されている。…と、岡崎正通クンが書いておりますが、戦争の哀しみを湛えたモーダルなハーモニーが胸に響きますなぁ。やるぢゃん、ウッズ。演奏はともかくとして、作曲家としてはかなりの実力の持ち主であるというふうに僕は評価したいと思います。で、問題のアルト・プレイのほうなんですが、ここではソロ1番手として渦巻くようなシャウトで、戦争に対する憤慨や糞詰まりに対して奮闘する様子を表現しております。続くランドはさすがにベテランですな。でかい声でわめくでなく、若いヤングを諭すような口調で静かに哀しみを綴ってまいります。続くカーメル・ジョーンズは若いくせに妙に落ち着いたタイプでありまして、だからこそ町役場の課長補佐クラスにまで出世したのでありましょうが、アバレ太鼓タイプのエルビンも、ここではサトルなソロを展開しておりまして、いや、テーマに戻った最後のところでは結構アバレてますけどね。ということで、以上、個人的にはかなり好きなタイプの演奏でありました。

 「アパート・トゥゲザー」も、マイナー・キーのホットな演奏。…って、だんだん面倒になってきたのか、正通クンの解説は句読点を含めて30字以内になっちゃいましたが、キャッチーなメロディという点では本アルバムでも屈指の出来だと思われます。闘争の本質は人々が不一致を認めることにある。それによって人はお互いに離れ離れになる。離れようと決心すると、多くの場合、攻撃することによってそれを解決しようとする。…と、ウッズ君は何やら小難しいことを述べておりますが、カメ・ジョー、ウッズ、ランド、タッカー、ヒル、エルビンと続くソロは理屈抜きに楽しめばそれでイイと思います。やっぱりジャズには“ニャンニャン感覚”が大切だと思うしぃ。で、5曲目の「ルック・ユア・ハート」は、ワルツ・タイムのリリカルなナンバーで…と書いてあったので、ここまでハードな演奏が続いて疲れちゃった僕のハートを優しく癒してくれるぅ?と思っていたら、今ひとつ変な曲でありました。曲作りに関してはここまで破竹の4連勝だったウッズ君も、ここらでちょっと一休みといったところでしょうか。ま、1曲ぐらいはハズレがあるのは仕方がありません。森永のチョコボールなんか、ほとんどハズレですもんね。僕は今まで30年近くに渡って毎月のように床屋でチョコボールを貰っているんですが、一時期、何かの祟りか?と思うぐらい銀のエンゼルが出て、5枚集めて「おもちゃの缶詰」をGETして以来、銀が出たのはわずか2回だけでございます。とまあ、それはともかく「ルック・ユア・ハート」でありますが、この曲だけカーメル・ジョーンズとハロルド・ランドはお休みして、ジミー・ウッズのワン・ホーンとなります。曲のメロディ同様、アドリブに入ってからも何だか調子っぱずれなフレーズの連発でありますが、アンドリュー・ヒルのピアノ・ソロに続くテーマの再現部では、どういうわけだか意外と綺麗な曲に思えましたけどね。

 ということで、ラストです。「パズメルテ」です。曲名は“平和”と“死”にあたるスペイン語の言葉をつなぎ合わせたものなんだそうです。音楽の成績があまり芳しくなかった僕の耳には3拍子のワルツのように聞こえますが、正しくは6拍子なんだそうです。8分の6拍子も約分しちゃえば4分の3拍子なので、同じようなものだと思うんですけどねぇ。。。ヒルのかなり意味不明なイントロに続いて、やっぱりかなり意味不明なハモリのパートがあって、どうも今ひとつだなぁ。。。と思っていると、テーマ自体はけっこう綺麗なメロディでありました。ヒルのピアノ・ソロのパートを挟んで、かなり複雑な構成となっておりますが、マイカルが破産しましたなぁ。。。マイカル桑名は生き残りますかね?で、ソロ・オーダーはランド、カメ・ジョー、ウッズ、ヒルっすね。あ、もう昼っすね。さ、スーパーで買ってきた「オムそばめし」でも食べようっと。



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