LIVE AT MONTREUX (BLUE NOTE)

BOBBY HUTCHERSON (1973/7/5)




【パーソネル】

WOODY SHAW (tp) BOBBY HUTCHERSON (vib) HOTEP CECIL BERNARD (p)
RAY DRUMMOND (b) LARRY HANCOCK (ds)

【収録曲】

ANTON'S BAIL / THE MOONTRANE
FARALLONE
SONG OF SONGS

【解説】

 先日、汚水ポンプ(通称:うんこ水ポンプ)の整備を終えて会社に戻る途中、何気なくラジオを聞いていたら「清潔社会の落とし穴」という話をやっておりました。「清潔社会の落とし穴」というのは「犬のウンコが仕掛けられたりしていない、とっても清潔な落とし穴」といったものではなく、ここで言う「落とし穴」というのは比喩的な意味でありまして、英語で言うと「ぼっとん穴」ということになりますかね?…って、ぜんぜん説明になってないし、英語でもないしー。そこで、最近では単なる電子辞書に成り下がっているザウルスの内蔵辞書で調べてみると、「上にのると落ち込むようにしかけた穴、人をだまして失敗させる計略」とあって、「清潔社会の落とし穴」という場合の「落とし穴」には、どちらの解釈も今ひとつ当てはまりませんなぁ。ま、簡単に説明するなら、「清潔社会、清潔社会と言って抗菌グッズなんかを使っていると、思わぬところで痛い目にあうこともあるんだよ。」という、この「思わぬところで痛い目にあう」のところを比喩的に「落とし穴」と表現しているわけでありますが、「陥穽」という言葉に置き換えても言いかも知れませんね。

 ラジオで話をしていたのは藤田紘一郎というセンセイでありましたが、この人、その筋の世界ではわりと知られた存在らしく、“その筋”というのはいったい、どの筋なのか?御堂筋なのか?それとも肛門括約筋か?と聞かれれば、「どちらも違う。。。」と答えるしかありませんが、だいたい肛門括約筋は「スジ」じゃなくて「きん」ですもんね。が、まんざら肛門とまったく関係ないこともなく、寄生虫関係の筋でとっても有名なセンセイらしいです。コドモの頃ありましたよねぇ、“ぎょうちゅう”の検査。肛門にぺったりとセロハンテープのようなものを貼り付けて、いやぁん、恥ずかしぴぃ。。。あ、でもこれって、ちょっぴりイイかも?と思ってしまった経験が。ちなみに僕はわりと“ぎょうちゅう”を湧かせているタイプの少年だったので、わりと肛門のなかでも“ぎょうちゅう”が付いてなさそうなポイントを選んでペッタンしたものでありますが、それでもちゃんと検査には引っかかりまして、“ぎょうちゅう”の検査というのは,そのような姑息な手段で逃れられるほど甘いものではなかったのだなぁ。。。と、コドモ心にも嘆息したものでありました。

 で、寄生虫博士こと藤田コーイチロウ教授が寄生虫に興味を持つようになったきっかけは、学生時代に「奄美群島フィラリア調査団」に参加して、教授の荷物持ちとして加計呂麻(かけろま)島に降り立ったことだったそうであります。いや、ぼーっと聞いていたのでラジオでそこまで言っていたかどうかサダカではありませんが、後からネットで調べたらそのように書いてありました。 周囲40キロメートルにも満たない小さな島では、住民の10人に一人がフィラリア病に冒されていた。蚊が媒介するこの感染症は、脚が象のように太く、固くなる「象皮病」や、陰嚢がちゃぶ台のように膨れ上がる「陰嚢水腫」を発症し、それはそれは悲惨な光景じゃった。…と藤田先生は当時を振り返っておられます。いや、原文は「…だった。」となっておりましたが、当時を振り返るなら、やっぱり“長老口調”カナ?と思って「…じゃった。」にしておきましたが、それにしても 「象皮病」ですかぁ。“太く、固く”というのは、ある状況下においては大変好ましい状態であるように思われますが、象の皮のようになっちゃうというのはちょっと問題アリですよね。サメの皮ならワサビをおろすのに重宝しますが、象の皮では荒すぎます。で、“陰嚢がちゃぶ台のように膨れ上がる”というのも凄いですね。

 「ミミズにおしっこをひっかけると、腫れる。」という民間伝承がありますよね?腫れてもいい。少しでも大きくなれば。。。という切実な思いで実践してみたことがあるんですが、とんでもない嘘八百でありました。が、何もそんなことをしなくても、フィラリアに罹ればよかったんですね。…って、人事だと思ってあまりにも無責任だし、それに第一、“嚢”のほうが腫れちゃってもあまり意味がないしー。が、責任感に溢れたコーイチロウ青年は違いました。なんとかしなければ!という思いに駆られ、熱帯医学の道に進み、で、インドネシアのカリマンタン島を訪れたときのことであります。いいですなぁ、カリ満タン島って。なんだかとっても逞しそう♪…って、今日の原稿は何だかとっても品がありませんが、この島の住民が川の中で排便して、その水で口をすすいだり、食事に使ったりしているのを見て、教授になったコーイチロウ君は「病気になるのも無理ないなー。。。」と思うわけです。ところが住民の表情はみんなはつらつとして、子どもの肌はツヤツヤ。アトピー性皮膚炎なんてどこにも見つからない。調査すると、全員が寄生虫に感染しているのに、アトピーも喘息も花粉症もなかった。…と、このあたりは某サイトの丸写しでありますが、この話はラジオでもやっておりましたな。「コーイチロウ君、とっておきのエピソード(青年時代編)」というやつでありましょう。

 結論を申し上げましょう。寄生虫持ちはアレルギーにならんっ!というのがコーイチロウ言うところの「共生」という概念らしいんですが、そっかなぁ?ぼく、“ぎょうちゅう持ち”だったけど、薬アレルギーでよく蕁麻疹が出てたんだけどなぁ。。。 でも、言われて見れば薬アレルギーになったのは、“ぎょうちゅう検査”に引っかかって“ぎょうちゅうの薬”を飲んで“ぎょうちゅう”を退治をした後の話だったような気もするし、いつもウンコの流れている川で顔を洗ったりしていれば、「慣れ」というか「免疫」というか、「多少、汚いぐらいのことではメゲないぞっ!」というクソ度胸がすわるというか、なんせ相手がウンコなので、クソ度胸くらいは簡単に身に付くわけでありまして。で、翻って現代ニッポンの清潔社会。汚いことは“悪”とされ、バイキンがそれこそ“バイキン”のように忌み嫌われ、抗菌グッズや便座除菌シートがもてはやされ、お父さんは臭いからヤダ!とか、お父さんの靴下も臭いからヤダ!とか、お父さんのパンツはウンコがついてるからヤダ!とか言ってるギャルなどはバイキンに対する免疫力がまったくといっていいほどなくて、だから海外に行ってちょっとウンコの混じった水を飲んだりすると、すぐに下痢したりコレラになったり毛ジラミを伝染されたりするわけでありますな。ま、最近ではそういった状態に危機感を覚えたのか、とっても汚い“汚ぎゃる♪”という人種も登場した模様でありますが、「行きすぎた“病的なまでの清潔社会”は、かえってビョーキの元になる。」とコーイチロウ教授は警鐘を鳴らすのでありました。

 「あ〜ん、ビョーキにならないよーにするには、ある程度バイキンを身につけておいたほうがイイのかぁ♪」ということが解ったギャルは、僕のところに来てください。うんこポンプを点検した手で、たっぷりとサワって差し上げます。


 ということで、ボビ・ハチです。僕はわりとヴァイブが好きで、中でもボビー・ハッチャーソンが大好きでありまして、もう、「ボビーに首ったけ♪」という状態なんですが、そんな僕でも普段からよく聴くのは60年代のアルバムに限定されます。70年代物はいけません。もう、ジャケットのセンスを見ただけで聴こうという気を削がれてしまいまして、ボビ・ハチ本人に対しても「アフロヘアはやめろって!」と忠告したくなってしまいますよね。ま、ハービー・ハンコックもこの時代には頭を「松鶴家千とせ風アフロ」にしておりましたので、この時代の流行だったと言えばそれまでなんですが、当人にしても当時の写真を眺めては、「あの頃は僕も若かったなぁ。。。」と悔恨にも似た思いを噛みしめていることでありましょう。とまあ、そういった状態であるにも関わらず、今回1973年録音の『ライブ・アット・モントルー』というアルバムを取り上げる気になったのは他でもない、僕のフェイバリット・ミュージシャンの一人であるウディ・ショウが入っていたからなんですが、いや、フェイバリットといっても積極的に彼の入ったアルバムを集めているわけではなく、たまにサイドマンとして入っている演奏を聴いて、「悪くないなぁ。。。」と思っている程度なんですけどね。ということで『ライブ・アット・モントルー』なんですが、ジャケットのセンスは決して誉められたものではなく、ボビ・ハチのポートレートもほとんど具志堅用高でありますが、ま、演奏のほうに期待することに致しましょう。

 ちなみにこのアルバムはタイトルからも分かるように「もんとるージャズ祭り」でのライブでありまして、不幸にして僕はこのジャズ・フェスには一度も足を運んだことがないんですが、雰囲気自体はだいたい想像がつきます。おそらく観客は野球場のグラウンドにビニールシートを敷いて座り込み、トリの唐揚げやらサバ寿司やらをつまみながら鑑賞するのでありましょう。で、中には棒状の器具で全身を刺激して愛を確かめ合うペヤングもいるに違いありません。で、フェスティバルは昼頃に地元の原液女子中学生による演奏で幕を開け、2時半頃までアマチュアのステージが続いて、30分ほどの休憩を挟んで、いよいよプロステージになるわけです。まず手始めにデキシーをやるおじさんが出てきて、続いてヒロ近藤がボビー・ハッチャーソンとウディ・ショウを率いて登場する予定だったんですが、ヒロ君は痔のために急遽欠場となって、でもまあ、お目当てはボビ・ハチとウディ・ショウなんだから、別にいっかぁ。。。ということで、会場は大いに盛り上がるわけでございます。

 で、演奏に先立ってMCによるメンバー紹介があったんでしょうが、恐らくいきなり登場して「ジャズだ、ジャズだ、ジャズだぁ!」と叫ぶような、やかましいおっさんだったんでしょう。「うるせー!」というのでレコードではカットされ、いきなり演奏で始まっております。ボビ・ハチのオリジナルの「アントンズ・バイル」って、どこかで聴いたことのある曲ですな。新主流派っぽいような気もするし、変則ブルースみたいな感じもあるし、要するに言葉では説明しにくい曲でありますが、ま、端的に言うと、「たら〜、らら〜♪」というフレーズが印象的な曲でありますな。“ジェネラリー・スピーキング”でしたかね?「端的に言うと」を英語で言うと。トランペットとヴァイブのユニゾンによるテーマ演奏はライブだけに若干ラフではありますが、個人的にはラフよりも裸婦のほうがイイと思います。で、テーマに続いてボビ・ハチのソロ、略してボビ・ソロになりますが、演奏時間が12分34秒もあるだけあって、かなり長くてロングなソロになっております。ヴァイブ奏者の常として、コーフンの度合いが高まるにつれて思わず声が出ちゃっておりますが、デイブ・パイクほど露骨ではなく、具志堅顔のわりには意外と 貞操タイプなのかも知れませんね。えーと、ボビ・ソロに関しては以上です。続いてウディ・ショウのソロなんですが、例の「たら〜、らら〜♪」というテーマ・フレーズをモチーフにしたモーダルでホリゾンタルなプレイが展開され、まずまずかな?といったところですかね?えーと、ショウのソロに関してはそんなところです。続いてはホテップ・セシル・バーナードのピアノですな。ホテップというのはちょっと変わった名前ですよね。昔のエジプトのファラオにアメンホテップ4世という人がいて、ぱっと見た瞬間、どうしてもアホメンテップに見えてしまうんですが、ホテップ・セシル君のソロはそれほどアホということもなく、概ね良好です。誰に似てるぅ?と聞かれたら、ちょっぴりハービーぃ?といったところですかね?…ということで、1曲目はおしまい。

 2曲目の「ザ・ムーントレイン」は翔クンのオリジナルです。ラリー・若者の『ユニティ』でも演奏されていた曲ですよね。ウディ・ショウと言えばジャズ界でも屈指のベタな名曲「スウィート・ラブ・オブ・マイン」(←J.マックの『デモンズ・ダンス』に収録)を作った人として知られておりますが、この「ザ・月列車」もなかなかの名曲でありますな。『ユニティ』のほうの日本語ライナーを引用すると、悠雅彦クンいわく、ウディ・ショウの重要なレパートリーで、今でもしばしば演奏されるモード曲だ。8小節のイントロに続く2ホーンによるテーマはAABA形式32小節。…ということでありますが、“ボビ・ハチばーじょん”のほうも「2ホーンによるテーマ」というところを「トランペットとヴァイブのユニゾンによるテーマ」に置き換えれば、そのまま利用できますね。「8小節のイントロ」の部分がとっても印象的でありまして、テンポは“ボビ・ハチばーじょん”のほうが若干速めでありますな。で、作曲者に敬意を表したのか、ソロ先発は翔クンでありますが、さすがは自分で作った曲だけのことはあって、のびのびとしたフレージングがとっても印象的です。非常に“気持ちよさげ”に歌っておりまして、“派手さ”や“盛り上がり加減”に関しても申し分ありません。ソロが終わった時の観客の拍手も、1曲目よりも数段に盛り上がっておりまして、それに触発されたボビ・ハチのソロもノッケからかなり飛ばしておりますね。ソロイストを煽り立てるラリー・ハンコックのドラムも、その煽り具合はアオリイカにも匹敵すると言えましょう。いや、寿司ポンジャンの牌にあったんですけどね、アオリイカ。“げそ”と“いか”と“アオリイカ”で、「いかグループ」を形成しておりましたが、僕はいまだかつてそのようなイカは食べたことがありません。越前海岸の「イカ祭り」の店なら食べさせてくれましたかね?で、演奏のほうはヴァイブ・ソロの後、ホテップ君のピアノ・ソロがあって、ホーン・アンサンブルとドラムスの4バースみたいなパートがあって、テーマの演奏があって、最後にイントロのフレーズが出てきて、おしまい。…と、ライブながらも構成がしっかりしていて、本アルバムでも最大の聴き物であると言えましょう。おしまい。

 3曲目はボビ・ハチのオリジナルで「ファラロン」とか言う曲ですね。「ザ・ムーントレイン」風の爽やか新主流派風のメロディで始まり、…と思ったら一転してフリー風の無調っぽい演奏になって、後はこのパターンの繰り返しになります。アドリブ・パートに入ってもこの構成は踏襲されておりまして、あ、書くのを忘れてましたが、この曲はCDだけのオマケ曲なので、解説は簡単に済ませておきましょう。ショウ、ハッチャーソン、ホテップと続くソロは、いずれも派手で良好です。そんだけ。はい、ラストです。ウディ・ショウのオリジナルで、「ソング・オブ・ソングス」という曲です。マッコイ風のピアノのイントロで始まり、しばらくショウのアドリブがあって、ここで初めてテーマ・メロディらしいものが出てきて、もろマッコイ風のピアノが出てきて、んでもってボビ・ハチのソロになるというのが曲の導入部の流れでありますな。なかなかドラマチックな展開であると言えましょう。ボビ・ハチのヴァイブはもう、ノリノリぃ♪…と言った感じでありまして、普段はシングル・トーンで迫ることの多い人なんですが、ここではかなり輻輳した音を用いて“心の高ぶり”を表現しております。続くウディ・ショウは「ぼくはメロディアスに迫るんだもんね。」といった感じでソロをスタートさせておりますが、次第に地が出て痔も出て、フレーズはだんだんとフリーキーになってまいります。途中、とうとう我慢しきれなくなっちゃったんでしょう。誰だか知りませんが、激しくシャウトする声も聞こえてまいります。で、マッコイっぽいピアノ・ソロがあって、その後は集団即興演奏みたいになっちゃって、もうワヤですなぁ。。。が、それが終わると、やってる本人達も「ちょっと、はしたなかったカナ?」と反省したのでありましょう。演奏は幾分、落ち着きを取り戻した感じになってきて、で、エンディングを迎えて、おしまい。

 いやあ、いろんな意味で疲れる1枚でありました。さ、口直しに『ハプニングス』でも聴こうっと。


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