THE CHANT (RIVERSIDE)

SAM JONES (1961/1/13,26)

THE CHANT


【パーソネル】

BLUE MITCHELL (tp) NAT ADDERLEY (cor) MELBA LISTON (tb)
CANNONBALL ADDERLEY (as) JIMMY HEATH (ts) TATE HOUSTON (bs)
LES SPANN (g) VICTOR FELDMAN (p,vib) WYNTON KELLY (p)
SAM JONES (b,cello) KETER BETTS (b) LOUIS HAYES (ds)

【収録曲】

THE CHANT / FOUR / BLUES ON DOWN / SONNY BOY
IN WALKED RAY / BLUEBIRD / OVER THE RAINBOW / OFF-COLOR

【解説】

 今日は「蚊」について考えてみますか?…と聞かれても困ると思いますが、今日は「蚊」について考えてみたいと思います。前回、鵜飼の話をしていて、右を見れば鵜、左を見れば蚊で、ウカウカしていると蚊に刺されるのではないか?という問題を提起したわけでありますが、よく考えると僕たちは蚊の生態について、あまり詳しいことは知りませんか?…と聞かれても困ると思いますが、僕たちは蚊の生態について、あまり詳しいことは知りませんよね。敵を知らずして、ただ闇雲に「痒ぃ、痒ぃ」といってボリボリ掻いているだけでは万物の霊長たる人類として、あまりに冴えない話ではないか?という気がしないでもないので、今日は蚊の生態について考えてみたいと、かように考えた次第なんですけどね。ちなみに鵜飼を見に行くのは火曜でありますな。四日市の日永にあるジャスコは「日永カヨー」だし。

 まず最初に蚊の種類について調べてみたいと思うんですが、僕の経験上、蚊には大きく分けて2つの種類があるように思われます。そこらあたりを飛んでいるイエカというヤツと、藪にいくと飛んでいるヤブカというやつですね。海外に行くとそれ以外にもいくつかの種類がいるようでして、例えばロシアには棒高跳びのうまいブブカなんてのがいますよね。あと、あまり頭のよくない蚊の種類としてバカというのもいるみたいですし、刺身にしても焼いても里芋と煮たりしてもおいしい、イカというのもございます。…とまあ、僕の蚊の種類に関する知識というのはこの程度でありまして、あまり詳しくないというか、一部には間違った知識もあるようですが、正確にいうと日本に生息している蚊には、大きく分けて3つの種類があるそうです。

  アカイエカ  チカイエカ  ヒトスジシマカ

 の3つですな。最初、この「チカイエカ」という名前を見たときに「チチエエカ」というふうに見えまして、「乳はいいよなぁ。」と思った次第でありますが、ちなみに僕はあまり乳がでかいのは好きではなく、かといって嫌いでもなく、では貧乳がイイのかというとそうでもなく、かといって嫌いでもなく、要するに乳ならば別になんでもいいんですが、いやオッサンのワイシャツから透けて見える乳というのはあまりよくありませんけどね。あまりというか、全然よくないわけでありますが、そんなことはどうでもよくてチカイエカの話。これは水洗トイレの浄化槽やビルの地下のたまり水、地下鉄の線路際の溝などに発生する都市型の蚊なんだそうでありまして、なるほど、チカイエカというのは漢字では「地下家蚊」と書くわけですな。水洗トイレの浄化槽にも涌くということはウンコにも強いということでありまして、で、ウンコだけではなくて寒さにも強くて、秋になっても休眠しないで冬場にも活動するというやっかいな蚊でございます。なるほど、最近、冬でも蚊の姿を見かけることがあるんですが、いつの間にやら寒さに強い新種の蚊がはびこっていたわけなんですね。

 一方、昔からいる最もポピュラーな蚊がアカイエカでありまして、夜中にみんなが寝静まった頃、プーンという羽音を立ててやってくるのがコイツでありますな。胸の部分が淡赤褐色をしているので「赤家蚊」という名前がついたわけですが、いくら乳ならなんでもイイといっても“乳の部分”が赤褐色、もしくは暗褐色をしているというのはあまりよくありませんな。ま、「遊んでいると黒くなる」というのは俗説でありまして、本人には責任がないことなので、あまりとやかく言うのはどうかとは思いますが、出来ることならやっぱりピンク色?で、オッサンのワイシャツから透けて見える乳が茶褐色というのは全然よくないわけでありますが、そんなことはどうでもよくてアカイエカの話。コイツの発生場所は側溝、防火用水、水たまり、竹林なのでありまして、これはどちらかというと農村型の蚊と言えるでありましょう。

 で、最後のヒトスジシマカなんですが、これは黒色で胸背に1本の縦スジ模様があるという特徴から分かるように、俗にヤブカと呼ばれているヤツでありますな。コイツは蚊の中でも最も性格が悪く、背中や腕や足のうしろ側など、とにかく後方から襲いかかるのを生業とする輩でありまして、で、とにかくヤルことがすばしっこくて、あっというまに襲いかかったかと思うと、あっという間に目的を達し、そしてあっという間に去っていくという、「バック好き」であると同時に、たいへん「はやい」のが特徴なんだそうです。テクに自信がないから、後ろからガバッと襲うような卑劣な手段を使うんだよなぁ。と、アカイエカが憐憫まじりにヤブカのことを評しておりましたが、そういうアンタも夜這い専門なんだから、あまり人のこと…というか、蚊のことを言えたガラではありませんよね。

 で、続いては蚊の生態について検証しようと思うんですが、よく知られているように、ヒトを刺して血を吸うのはメスの蚊だけでございます。ではオスの蚊は何を吸って生きているのかというと、お酢。これでございます。それは本当なのか?酢なんか吸ったら咽せて大変なんぢゃないか?と、トコロテンを食べたことのある人なら誰しも心配になりますが、これはもちろん嘘なので、そのような心配はございません。実際には花の蜜なんかを吸って生きているようであります。カワイイものじゃありませんかぁ。で、蚊はどのようにして人間の存在をキャッチして近寄ってくるのかと言うと、よく知られているのが二酸化炭素ですよね。人間が吐き出す二酸化炭素を感知して近寄ってくるという説でありまして、これはもちろん正解なんですが、ただそれだけではないようです。

  呼気から発散される二酸化炭素や汗の匂い  体温  空気の動き

 この3つを察知して近寄ってくるというのが正解なんだそうです。酔っぱらいがよく蚊に刺されるというのは、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度が濃くなっているということ以外にも、顔が赤くなって体温だって高くなっているだろうし、フラフラしたり、千鳥足だったり、理性を失ってOLさんに襲いかかろうとしたりして、空気の動きだって普通の人よりも激しくなっているだろうし、そういう複合的な要素が作用してのことだったわけでありますな。運動した後で蚊に刺されやすくなるのも、似たような理由によるものです。で、蚊に刺されると痒くなるわけですが、これは蚊の唾液に含まれている凝血を防ぐ物質が皮膚に入ってアレルギー反応を起こすためだそうでありまして、ちなみにイエカよりもヤブカに刺されたときのほうがよりいっそう痒いのは、ヤブカの唾液には凝血を防ぐ物質の他に、漆のエキスも含まれているためだといわれております。なるほど、どおりで痒ぃハズですな。

 では最後に「痒みに耐えるにはどうすればいいか?」という問題を考えてみたいと思うんですが、それにはいくつかの方法が考えられますよね。まず第一に「掻く」という方法がありますが、他にも「キンカンを塗る」とか「強力ムヒを塗る」という方法もございます。専用薬に限らず、とりあえずスースーするものなら何でも痒みには効くような気がするので、「サロンパスを塗る」というのも友好的ですよね。コドモの頃、肛門がとても痒くなったことがございまして(←蟯虫でも涌いたか?)、あまりの痒みに耐えかねて肛門にサロンパスを塗布したことがございますが、アレは効きました。もう痒みなど忘れ去ってしまうほどの激しい痛みに襲われた次第でありますが、ただこれらの方法はどれも「一時しのぎに過ぎない」という欠点がございます。キンカンにしろ、ムヒにしろ、サロンパスにしろ、スースーがなくなったらまた痒みが襲ってきちゃいますもんね。そこで、もっと恒久的な対処法はないものか?と思って調べてみたところ、ちゃんとその方法がございました。それは何かというと、「慣れろ」という方法なんですけどね。

 コドモの頃から蚊に刺されまくっていると、そのうちに免疫が出来て、刺されても痒くなくなっちゃうんだそうです。で、これはオトナの場合でも有効なんだそうです。となればもう、おわかりですね。この夏はビールを飲んで勢いをつけ、「藪の中での屋外ぷれい♪」に励んでください。藪の中で大いに運動して体温を上げて汗をかき、空気だってかき乱しちゃってください。そして「はあはあ♪」と、二酸化炭素をたっぶり含んだ呼気を放出してください。場合によっては漆の併用も有効かもしれませんね。それを一夏、毎日毎晩欠かさずにに続ければ、あなたはもう「蚊に負けない丈夫なカラダ」になっている…ハズです。


 ということでサム・ジョーンズです。で、今日の後半部分はちゃんと解説を書こうと思っているんですが、というのも今日紹介するアルバムが『ザ・チャント』というタイトルだからなんですけどね。で、サム・ジョーンズという人は“リバーサイドの裏の顔”とでも言うべき存在でありまして、その多大なる貢献度が評価されてか、ベーシストにしてはわりとたくさんのリーダー作を残しております。で、そのいずれもが、いかにもリバーサイドらしい作品に仕上がっているわけですが、このレーベルはわりとビッグ・バンド物とか、ビッグ・コンボ物が好きだったりもするんですよね。ちなみに僕のビッグ・バンド物、及びビッグ・コンボ物に対するスタンスというのは「それほどソソられるものではないが、ま、メンバーによっては購入するにヤブサカではない。」といったところでありまして、で、購入して聴いてみて「まあまあかな?」という評価に落ち着くのが常でありますが、この『ザ・チャント』というアルバムもメンバーとしては悪くないですよね。ジャケットの表にクレジットされている参加メンバーはブルー・ミッチェル、ナット・アダレイ、キャノンボール・アダレイ、ジミー・ヒース、ウイントン・ケリー、ヴィクター・フェルドマン、ルイス・ヘイズとなっており、いかにもリバーサイドらしい人選が購入意欲をソソりますよね。

 一方、ジャケットの表にクレジットされていないメンバー、言い換えれば「軽んじられているメンバー」、別の視点で捉えると「そのことを根にもって、いつグレても不思議ではないメンバー」のほうにはギターのレス・スパン、ベースのケーター・ベッツ、トロンボーンのメルバ・リストンといった“渋どころ”が名を連ねておりまして、ちなみにケーター・ベッツはサム・ジョーンズがチェロを弾いているセッションでベースを弾くという地味な役割を担っております。ついでに言うとメルバ・リストンという人はランディ・ウエストンが「スケッチ・オブ・メルバ」という曲を捧げたことで知られるギャル系のトロンボーン奏者であります。ドルフィーの『アウト・ゼア』というアルバムにその「スケッチ・オブ・メルバ」という曲が入っていて、メルバ・リストンという名前には記憶があったんですが、実際にその演奏を耳にするのは初めてでございます。といってもメルバちゃんは完全なる「ハモリ要員」なんですけどね。んなことでまあ、では1曲目から聴いてみましょうね。

 1曲目のアルバム・タイトル曲、「ザ・チャント」はビクター・フェルドマンのオリジナルです。タイトルの意味は「ザ・歌」といったところでしょう。で、アレンジを担当しているのも恐らくフェルドマン自身でありましょう。いきなり派手派手のアンサンブルで幕を開け、アンサンブルとベースのコール&レスポンスの形式でテーマが演奏されます。で、そのあとナット・アダレイ(←“納豆アダレイ”とか書かない)のコルネット(←“凍る納豆”とか書かない)が炸裂するわけでありますが、この人のプレイはある意味、リー・モーガンよりも強力無比にファンキーですよね。道端でウンコ座りしているのはヤンキーですけどね。で、ソロ2番手はジミー・ヒースです。この人のプレイは実にわかりやすい教条的なフレージングに特徴があるんですが、一聴して「あ、ジミー・ヒースやん。」と判別することが出来たので、それはそれで個性的な演奏だと言えるのではないでしょうかね?で、続いてサム・ジョーンズのピチカート・ソロが聴かれ、その合間に聴かれるアンサンブルもそれほど嫌味ではなく、ま、全体的に無難なアレンジに仕上がっていると言えるのではないでしょうか。ということで1曲目はおしまい。

 2曲目はマイルスの「フォア」ですな。この曲は以前、僕がイリノイ鮭師匠の練習風景を葛西のスタジオまで見学にいったときに演奏されていた曲でありまして、今でもこの曲を聴くと「干し首」のことを懐かしく思い出します。いや、スタジオ見学に行った当日だったかその前日だったか、上野の国立科学博物館で見てきたんですけどね、干し首。少なくとも「干し椎茸」を見るよりは文化人類学的に興味のあるものでございましたが、ここでの「フォア」はイントロからテーマ部にかけて、実に凝ったアレンジがなされております。ここでも編曲担当はフェルドマンですかね?ちなみにフェルドマンはピアノとヴァイブで演奏のほうにも参加しておりますが、ヴァイブを駆使して責めているほうのセッションではケリーがピアノを弾くという構図になっております。で、ソロ先発はブルー・ミッチェルですな。この人はナットとは別の意味でのファンキーを感じさせる人でありまして、リバーサイドのセッションには欠かせない人材であると言えるでしょう。ここでも、いかにも彼らしい“歌のある”プレイを展開しております。で、ソロ2番手はジミー・ヒースですな。例の如く、ちょっぴり無味乾燥な“干し首的”なフレーズを展開しておりますが、いや実際に干し首が無味なのか、水で戻して食べたわけではないのでサダカではありませんけどね。ま、乾燥しているのは確かでありますが。で、ここでもサム・ジョーンズのピチカート・ソロが聴かれ、冒頭の2曲は兄弟というか姉妹というか、従姉妹というか又従兄弟というか、そういった関係にあると判断してもよろしいかと思われます。

 で、3曲目。「ブルース・オン・ダウン」はダウン・トゥ・アースなブルースですな。作曲したのはベニー・ゴルソンですが、あまりゴルソンっぽくない曲調に仕上がっております。テーマはAA形式の単純なリフでありまして、最初の“A”はブルー・ミッチェルが、次の“A”はアンサンブルで演奏されております。普通、“A”までいったら次は“B”、更には“C”というふうに関係が進行していって、最終的には「はぁ〜、E気持ちぃ〜♪」という境地に至るのが常でありますが、ここでは“A”を2回繰り返しただけでアドリブに入っちゃうんですね。で、ソロ先発はサム・ジョーンズのピチカート。続いてキャノンボールのアルトがフィーチャーされて、フェルドマンのピアノ・ソロもあって、ブルー・ミッチェルのソロがあって、最後にはナットのミュート・ソロまであって、2曲目までとは一味違う工夫がなされていて、アーシーで息苦しい感が無きにしもあらずとは言え、全体的には「まあまあかな?」といった仕上がりになっております。で、変化があると言えば4曲目の「ソニー・ボーイ」でありまして、これはサム・ジョーンズのチェロをフィーチャーしたナンバーでありますな。チェロが出てくると「やっぱりこれはサム・ジョーンズのリーダー作なんだなぁ。」という印象が強くなり、安全日と同じような安心感にひたることが出来て、やっぱり生がイチバンですよねぇ、ビールは。ちなみにこれはフェルドマンのヴァイブとケリーのピアノが堪能できるほうのセッションでありまして、ケリー好き&ヴァイブ好きの僕にとっては嬉しいナンバーであります。

 で、5曲目です。「イン・ウォークト・レイ」はサム・ジョーンズのオリジナルで、「歩かれた光線での」という、あまりよくわからん訳語が出てまいりました。曲自体は「ボヘミア・アフター・ダーク」のパチモンみたいな感じもするファンキー・チューンでありまして、チェロとホーン・アンサンブルの掛け合いによってテーマが演奏されます。ソロ・オーダーはサム・ジョーのチェロ、ヴィク・フェルのヴァイブ、ケタ・ベツのベース(←多分)の順で、各自のソロの途中には地味目のアンサンブルが絡み、各自のソロの間には派手目のアンサンブルが挿入されるというアレンジがなされております。定番的な手法ではありますが、なかなかE感じに仕上がっております。んなことで、6曲目です。「ブルーバード」はパーカー・ナンバーでありますが、やはりチェロとホーン・アンサンブルの絡みでテーマが演奏されます。このパターンもちょっぴり飽きてきたぁ?という気がしないでもないんですが、ま、せっかくリーダーになったんだから、目立ちたいという気持ちもワカランではないです。で、ソロではナト・アダのコルネトとブル・ミチのトラペトがいい味を出しております。…って、何でも4文字に略せばイイというわけでもないですよね、スク水。

 はい、ではここで気分を変えて、バラードを聴いてみましょう。「虹の彼方に」でございます。演奏はホーン・アンサンブルのイントロで幕を開けますが、全体的にはサム・ジョーのチェロを大大フィーチャーした演奏でありまして、フェルドマンのヴァイブの音色も美しく、ケリーのピアノもスイート&ハニーで、おーい!はに丸も思わず「はにゃ〜。」と呟く仕上がりぶりでございます。怒ると体が磁石になるそうですけどね、はに丸。肩凝りに効能がありそうで、なにより。最後に登場するブルー・ミッチェルの吹きっぷりも極めて好調で、後テーマのアレンジも凝っていて、で、ラストの「オフ・カラー」はルディ・スチーブンソンのオリジナルでありますな。この人はケリーとも親交があったギタリストでありまして、なかなかいい曲を書く賀来千香子という印象があるんですが、例えば『フル・ビュー』に入っていた「アイ・ソウト」とか「ドン・チャ・ヒア・コーリン・トゥ・ヤ」とか。で、この「オフ・カラー」もなかなかの佳曲でありまして、アルバムの最後を飾るに相応しい仕上がり具合となっております。

 とまあ、無難な常套フレーズでも書いておいて、さ、プラッシーでも飲もうっと。


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