LIFT EVERY VOICE (BLUE NOTE)

ANDREW HILL (1969/5/16,1970/3/6,13)

LIFT EVERY VOICE


【パーソネル】

WOODY SHAW (tp) CARLOS GARNETT (ts) ANDREW HILL (p)
RICHARD DAVIS (b) FREDDIE WAITS (ds) & Voices

LEE MORGAN (tp) BENNIE MAUPIN (ts,fl,b-cl) ANDREW HILL (p)
RON CARTER (b) BEN RILEY (ds) & Voices


【収録曲】

HEY HEY / LIFT EVERY VOICE / TWO LULLABIES / LOVE CHANT / GHETTO LIGHTS

BLUE SPARK / A TENDER TALE / DREW'S TUNE / MOTHER MERCY / NATURAL SPIRIT / SUCH IT IS


【解説】

昨日、名古屋の国際会議場というところに行ってきました。「うんこくさい会議場」ではありません。全然ウンコくさくなくて綺麗な会議場だったんですが、岐阜にある長良川国際会議場というのも綺麗なところでございました。思うに、国際会議場というところは外人さんも訪れるので、あまりにウンコくさいところだったりすると「お〜!じゃぱにーず“こくさい会議場”いず・べり〜・うんこくさい〜!」とか言われて国益を著しく損ねる恐れがあるので、頑張ってお金をつぎ込んで立派な建物を作ったのでありましょう。立派な心掛けでございます。

が、いくら建物を立派にしたところでトイレが今ひとつウンコくさいのだけはいかんともしがたく、ではそのそも何故ウンコはウンコくさいのかというと、間違えて食べないようにするための工夫というか、おばあちゃんの知恵袋というか、ま、そういったものではないかと思うんですけどね。

「おばあちゃん、タカシがウンコをカレーと間違えて食べちゃって、困るんですぅ。」
そう息子の嫁のハル子(34歳)に相談された浜田ハマ子(72歳)は即座に
「ハル子さん、そういう時はね、ウンコにウンコくさい臭いを付けておけばいいのよぉ。」
それを聞いたハル子さんは「その手があったかぁ!」とハタと膝を打ち、さっそく近所のスーパーへ「うんこの薫り」300ミリリットル入り298円(税別)を買いに走り、それをふりかけたらタカシくんは以後ウンコを食べないようになりました。めでたしめでたし。という話が「伊東家の食卓」で紹介されて、「こりゃ、いいやぁ。」とみんなが真似をするようになって、そしてこの裏技は全国的に広まることになったと。以上が僕の推測する「ウンコがウンコくさいその理由(わけ)」なんですが、そんな小学生じみた話はどうでもよくて、今日は食中毒について考えてみたいと思います。

食中毒になる原因は3つありまして、それを箇条書きにすると

(1)悪いものを食べた。
(2)毒なものを食べた。
(3)腐ったものを食べた。

このうち(1)はアレです。悪いものを拾い食いしたとか、悪いものを盗み食いしたとか、そういうパターンです。これはもう悪いものを食べちゃったほうが悪いのであって、同情の余地はありません。で、(2)のパターンはアレです。フグの毒にあたったとか、毒キノコをカジったとか、毒のミルフィーユを食べちゃったとか、そういうパターンです。苺のミルフィーユと間違えて食べちゃったんですよね、毒のミルフィーユ。これはもう、ちょっぴり注意力が不足していた自分を責めるしかないわけであって、同情の余地はありません。

となると問題は(3)のパターンですな。「腐ったものを食べた。」というやつです。人は何故、腐ったものを食べてしまうのかというと、「腐っているのに気付かずに食べてしまった。」という場合と、「やばいかな?と思ったけど、とりあえず食べてみたらやっぱり駄目だった。」という場合と、「腐っているのを承知の上で食べたらやっぱり腐っていた。」という場合に大別することが出来ます。最後の例は問題外でまったく同情の余地はありませんが、ま、肉は腐りかけがいちばんオイシイというからその気持ちはワカランでもないんですけどね。

ということで、確信犯的な事例を除けば「モノが腐っているか否か?」の見極めが食中毒に罹患するか否かを左右する重要なポイントになるわけですが、では「モノが腐っているか否か?」を見極めるにはどうすればいいのかというと、これは意外と簡単であります。ポイントはただひとつ。「腐ったものは腐った臭いがする。」これだけです。「ウンコはウンコ臭い。」という事例に哀痛汁ものがありますが、…って、どんな汁物なんですかね?「ウンコはウンコ臭い。」という事例に相通じるものがありますが、と書きたかったわけですが、腐っているかどうかを判断するのに「とりあえず臭いをかいでみる。」というのは、極めて有効な手段でありまして。

猫なんかもそうですよね。猫に腐りかけの食べ物を与えると、与えられた猫はとりあえず「くんくん」と臭いを嗅ぎます。そして「くんくん」と匂いを嗅いだあと、今度は手で「ちょんちょん」と食べ物をつついて、転がします。すなわち猫は「臭覚(くんくん)」→「触覚(ちょんちょん)」の優先順位で食べ物の腐敗診断をしているわけですが、ここ手法はそのまま人間社会にも応用することが出来ますね。そもそも「腐っている」というのはどういう状態のことを言うのかというと、その定義は

一般に物が腐るとは、食品に付着した腐敗菌がタンパク質と窒素化合物を吸収、分解し、増殖。
その際、アンモニアとアミンを生成して、臭いや見た目の変化など、食品の成分を劣化させてしまうこと。

となっております。なるほど、腐敗菌というのが物を腐らせる元凶であるわけですな。もう、名前からして「性根が腐っている」という感じの菌でありますが、「その際、アンモニアを生成」ということは、腐った臭いの元になるのはアンモニアなんでしょうかね?このことから「ウンコはうんこ臭いけど、物が腐ると小便臭い。」という結論が導き出されることになりますが、物が腐った臭いというのは小便臭いのともちょっと違うような気がするので、話はそんなに簡単ではないのかも知れません。

腐った臭いのメカニズムはともかくとして、物が腐っているというのは「腐敗菌が増殖した状態」であるということが判明したわけでありますが、ではいったい腐敗菌がどれだけ増えれば「腐っている」と言えるのかというとその定義は明確でありまして、食品1gあたり腐敗菌が1000万個以上。これがボーダーラインであります。だから「ちょっと危ないかな?」と疑われる食品があった場合、上皿てんびんを用いて正確に1グラムをサンプリングし、顕微鏡で覗いて腐敗菌の数を「いーち、に、さん、し…」と数えていくのが最も正確な判定方法であると言えます。そうして数えた上げた結果、「うん、987万5367個だな。」ということであれば、その食べ物は「うん、ぜんぜん大丈夫だね。」と判断することが出来るわけでありますが、ただこの方法の難点は「腐敗菌は決してじっとしていない。」ということでありまして。あなたが悠長に「いーち、に、さん、し…」と数えている間にも腐敗菌はもの凄い勢いで増殖し、1000個まで数え上げた頃には当初2000個しかいなかった腐敗菌が2万匹くらいまで増えちゃっていることは必至。

結論:数えてるうちに腐ります。

となると「腐敗菌の個数カウントによる腐敗診断法」はあまり現実的ではないと言わざるを得ませんが、でもだいじゃぶ。食品1gあたりの腐敗菌が1000万というような膨大な数になると人間の五感でも認知できるような変化が表面に現れてきて、ま、早い話が「臭いや見た目の変化など、食品の成分を劣化させてしまう」って書いてあるぢゃん。ということなんですが、猫の「くんくん」や「ちょんちょん」は、それを判断するのに実に有効な手段であるということですね。つまりまあ、腐った臭いのするものや、手で触ってみてネバネバするもの、見るからに腐っていると思われるもの、食べてみて腐った味がするものというのは、それは恐らく実際に腐っているに違いないので、そういったものはなるべく食べないようにしましょうね。というのが食中毒予防には大切なポイントではないかと思われます。しかしこれは「ま、腐っちゃったものはしょうがないしぃ。。。」という実にネガティブな発想でありまして、こういった考え方からは一向に明るい希望の光は見えてまいりません。腐敗菌が増えてモノが腐っちゃうのなら、なんとかして腐敗菌が増えないようにする方法はないのか?と考えるのが人類の英知というものでありまして、ではいったいどうすればいいのかというと、ここでも「タカシくんのウンコ問題」同様、おばあちゃんの知恵袋が役に立つのでありました。ハマ子ばあちゃんならきっぱりとこう答えてくれるでありましょう。

「ひろ子さん。そういう時はね、酢を使えばいいのよぉ。」
ハマ子ばあちゃんの息子の嫁の名前は確かハル子さんではなかったのか?という気がするんですが、ハマ子ばあちゃん、知恵はあってもこのところ、ちょっぴりボケが来てるんですよね。ま、とはいっても腐敗菌の繁殖防止に酢を使うというのは理に適った話でありまして、酢に殺菌作用があるというのはよく知られた話ですよね。

「だからね、よし子さん。腐ったサバはシメ鯖にするといいんだよぉ。」
…って、腐ってからでは手遅れだと思うぞ、ハマ子!ということで、今日の前半部分はシメ。

@  ということで、今日からしばらく「先日、名古屋で仕入れてきたCDシリーズ」というのをお届けしようと思うんですが、名古屋国際会議場の帰りにパルコの“タワーレコード”と名鉄メルサの“ヤマギワ”に寄ってCDを10枚ほど仕入れてまいりました。で、今日はその中でも最もソソられるものがなかったアンドリュー・ヒルの『リフト・エブリ・ヴォイズ』というアルバムを紹介してみようと思うんですが、いや、初期のヒルの作品は「60年代新主流派路線・裏街道まっしぐら」と言った感じで、わりと嫌いじゃないんですけどね。が、ブルーノートも4300番台となるともういけません。何なんでしょうね、この趣味の悪いジャケは。あ、そういえば先日のエルビンのジャケ絵は手抜きの極みでありまして、大いに反省した僕は今回はヒジョーに丁寧に書いてみたんですが、元のジャケのセンスが今ひとつなので、イラストのほうの出来も「今みっつ」ぐらいになっちゃいました。が、それは僕のせいではないので、反省はしません。

で、ジャケはパッとしなくてもこのアルバム、サイドには興味深い面々が顔を揃えておりまして、中でも個人的にはトランペットのウディ・ショウに期待するところ大であります。が、1曲目が始まると同時にその期待感はどこかへ消し飛んでしまい、いや、それはウディ・ショウのせいではなくて意味不明のボーカル陣のせいなんですが、タイトルが『リフト・エブリ・ボイス』となっていたので、嫌な予感はしてたんですよねぇ。。。“ヴォイシズ・アンダー・ザ・ディレクション・オブ・ローレンス・マーシャル”というクレジットもあるように、全編に『イッツ・タイム』風の意味不明ボーカルがフィーチャーされておりまして、おまけにその出来が「今ななつ」くらいでありまして。。。ちなみに後から「完全ブルー・ノート・ブック」を見てみたら

「BNの屈指の理論家であるヒルの実験的な作品。全曲オリジナルで、クインテットに混声コーラスを加えてオーケストラルなアレンジが施されている。

とありました。野心作であることは認めますが、野心を持って失敗作を作ってしまったなぁ。。。という観は拭えませんね。ということで、ま、曲解説はテキトーでまいりましょう。名古屋の国際会議場で行われた講習会には本社のタキトーさんも出席しておりましたが、テキトーに挨拶して帰ってきちゃいましたしね。で、1曲目「ヘイ・ヘイ」。とってもヘイ・ヘイな曲であります。いきなりカルロス・ ガーネットのアウトなテナーで幕を開け、そして「おばさん&おじさん」の混声コーラスの登場となります。「ばーばばばばばば〜♪」(←おじさん)「ふ〜ふ〜♪」(←おばさん)といった感じで、かなりポップな味わいもある作品でありますな。ヒル本人は「ミード・ルクス・ルイスが今日生きていたらこんなふうにやったのではなかろうか」という試みで書いたものだとコメントしているそうですが、そういえば

・ ご主人に メイドつくす、ライスの お世話まで

という人名俳句は誰にも理解されませんでしたね。いや、個人的には結構好きなんですけどね、メイドのコスプレ。で、演奏のほうはコーラスを交えたテーマ部に続いてカルロス・ガーネットのソロとなりますが、この人がどういう人なのかということは寡聞にしてまったく知りません。が、トレーンとショーターの中間みたいな感じで、更にはワイルドなムードもあって、いかにも60年代テナーという感じでなかなか悪くありませんね。で、ソロの途中からコーラスが絡んでくるのはローチの『イッツ・タイム』と同じパターンでありまして、とか言ってるうちにお目当てのウディ・ショウの登場ですな。ソロの出来は「まあまあかな?」といったところでありまして、続いてヒルのソロもあって、相変わらず特異なタイム感覚ばりばりと言った感じでございます。以上、なんだかヒジョーに眠いので日本語正しいかどうか、チェックする気にもならず。

2曲目、タイトル曲の「リフト・エブリ・ボイス」。みんなの声を持ち上げよう。そういう曲だと思います。相変わらずの混声コーラスなんですが、ゆったりしたボッサ風のリズムとメロウなメロディは悪くありませんね。で、おばさん&おじさんの“天使の歌声”の合間を縫って聴こえてくるウディ・ショウのトランペットがとってもE感じです。そのままソロ・パートまで流れていきますが、その出来は1曲目よりもかなりよりベターであると言えましょう。眠いのであまりよくわかりませんけどね。で、続いてはカルロス・ガーネットのソロであります。トレーン、ショーターの他に、ジョー・ヘンも入ってるかな?という感じですね。で、ヒルのアドリブにコーラスが絡み、恐らく最後はテーマに戻ってエンディングを迎えるのだろうと思われますが、眠いので次に行きましょう。

「トゥー・ララバイズ」。ただでさえクソ眠いのに「2つの子守唄」ですかぁ。勘弁してくれぇ。。。という感じですが、簡単なウンコは簡便ですね。ウンコを検査するのは検便ですしね。デューク・ピアソンが書きそうな曲でありまして、ちょっぴりドナルド・バードの『ア・ニュー・パースペク恥部』を彷彿させないでもありません。ヒルのピアノをフィーチャーする感じで演奏は進められ、BN初期のヒル好きの人にはいちばんピンとくる作品かも知れませんね。ソロ2番手ウディ・ショウの哀愁を帯びた歌いっぷりもさすがであります。コーラス入りというのでハナから馬鹿にしてたら、なかなかいい演奏もあるではありませんか。続くカルロス・ガーネットのソロはかなりショーター的であります。鉄人28号好きの君にもきっと満足してもらえるんじゃないかな?

ということで4曲目。「ラブ・チャント」。ラブはちゃんとしないといけないよ。という曲でございます。おばさん&おじさんが全然ちゃんとしてなくて、とてつもなくヘンな曲であります。ガーネットのテナー・ソロもちょっぴり意味不明。はい5曲目、「ゲットー・ライツ」。これはアレです。それそれ。えーと…ボビ・ハチの初リーダー作『ダイアローグ』に入っていた曲です。個人的には結構好きなメロディなんですが、それがコーラス入りで斬新に蘇っていて、何より。ボビ・ハチ盤ではウディ・ショウのライバルであるフレディ・ハバードがトランペットを吹いているので、聴き比べてみるのも一興かと思います。どちらもミュート・プレイなのが面白いですね。あはははははははは。

と、ここまでがオリジナル・アルバムの演奏です。僕が買った輸入盤CDには更にオマケが6曲も入っておりまして、事実上“2in1”に相当するという気前のよさ。で、オマケ曲のほうは結局のところ未発表に終わったものらしいですが、リー・モーガン、ベニー・モウピンというフロントは本編に負けず劣らず興味深いものがございますな。特に70年のモーガンと言えば若死にしたとは言え「晩年」にあたる吹き込みでありまして、晩年といっても今の僕と同じくらいの年だからとってもヤングで元気であります。で、全曲、前半と同じく混声コーラスが加わって全体的なムードは似たようなものでありますが、ウディ・ショウがモーガンに変わったことによって、より能天気な気配が濃厚になったと言えましょう。オマケなので細かい曲解説は省きますが、掃除機の先端につけるブラシ付のノズルは「はぼき」ですな。

6曲目の「ブルー・スパーク」はミディアム・テンポのグルーヴィーなナンバー。7曲目の「ア・テンダー・メロウ」はミディアム・スローのメローなナンバー。8曲目の「ドリューズ・チューン」はアップ・テンポの賑やかなナンバー。モウピンはフルート吹いてますね。9曲目の「マザーズ・マーシー」でもモウピンはフルートを吹いておりますが、何だかいわく言い難いメロディの曲であります。10曲目の「ナチュラル・スピリット」はポップなゴスペル・ソングといった感じで、楽しいです。モウピン、モーガン、ヒルと続くソロも極めて出来がよくて、オマケの中では最大の聴きものではないでしょうかね、ここまでざっと聴いてみた感じ。で、ラストの「サッチ・イット・イズ」は歌モノっぽいナンバーで(←ホントか?)、とってもいいと思います。ということで、今日はおしまい。

INDEX
INDEX INDEX