【アルバム名】
GETTIN’ WITH IT (NEW JAZZ)
【リーダー名】
BENNY GOLSON (1959/12/23)
【パーソネル】
CURTIS FULLER (tb) BENNY GOLSON (ts) TOMMY FLANAGAN (p)
DOUG WATKINS (b) ART TAYLOR (ds)
【収 録 曲】
BAUBLES , BANGLES , AND BEADS / APRIL IN PARIS / BLUE STREAK /
TIPPIN' ON THRU / BOB HURD'S BLUES
【内   容】
 「この国の暮らしを支えてきたのは、蕎麦と鯖である。」と言ったのは司馬遼太 郎でしたか。『街道をゆく』にそのようなことが書いてあったような気がするんですが 、僕はこの本を一度も読んだことはないのでそんなことは書いてなかったかも知れませ ん。ただ“蕎麦”と“鯖”と“司馬”の三者に関してはしばしば論議の的になることも 確かでありまして、特に“蕎麦”と“鯖”は因縁浅からぬ関係であると言わざるを得ま せん。だって、どちらもアレルギーの原因になるしー。ということで、本日のテーマは “蕎麦アレルギーと鯖アレルギー”。
 
 蕎麦アレルギーの人はたとえ蕎麦を口にしなくても、蕎麦がそばにあるだけで蕁 麻疹が出ちゃうといいます。また鯖アレルギーの人はたとえ鯖を口にしなくても、鯖を さばくだけで蕁麻疹が出ちゃうといいます。えーと、僕がアレルギーに関して言いたい ことはそれだけです。
 
 続いて“蕎麦の歴史”について考えてみたいと思います。人類がはじめて蕎麦の 実から蕎麦粉を作ったときの話は『ドクトル蕎麦粉』という映画に詳しく描かれていた ような気がするんですが、僕はこの映画を一度も見たことはないのでそんなことは描か れてなかったかも知れません。というか、そんな映画自体なかったかも知れませんが、 人類というのは穀物を目の当たりにすると「とりあえず挽いて粉にしよう!」と考える 生き物なんですよねー。小麦はとりあえず挽いてみて小麦粉にしちゃうし、おこめだっ てとりあえず挽いてみて米粉にしちゃうわけです。何だかとっても爽やかな響きですけ どね、“こめこ”。ところで一口に小麦粉と言っても色々な種類がありますよね。“強 力粉”とか“薄力粉”とか“中力粉”とか。ところであの“強力粉”って、いったい何 がどのように“強力”なんですかね?例えば“強力わかもと”だったら「あ、強力なわ かもとなんだなー。」ということが解るし、“強力ムヒ”だったら「ほぉ、強力無比な ムヒなのかぁ。」と感心することが出来るわけなんですが、果たして“強力な粉”とは どういう粉なのか?粉のパワーの源はどこにあるのか?と思って調べてみると、どうや らグルテンという成分が鍵を握っているようでありまして。
 
 小麦粉に水を混ぜてコネコネとこねると柔らかいダンゴ状になりますよね。アレ は小麦粉に含まれている蛋白質の仕業でありまして、グルテニンとグリアジンという蛋 白質が水と反応して、グルテンという粘性・弾性を持った成分に変化するそうです。グ ルテンです。フリチンではありません。「グル(尊師)はテンで馬鹿。」と覚えてくだ さい。ま、わざわざそうまでして覚えるほどのものでもないんですけどね。グルテニン とグリアジンと水が反応すれば“グルテジン水”というようなものになりそうなもので すが、そうならないところが化学の世界の奥深いところですね。で、“強力粉”という のはこのフリチンの、いやグルチンの元になる蛋白質の成分の多い(14%くらい)小 麦粉のことでありまして、ねばり気があるのでパンの材料にいいそうです。逆に蛋白質 の成分の少ない(7%くらい)小麦粉が“薄力粉”でありまして、これは水で溶いても サラサラしているので天麩羅のコロモに最適なわけですね。「あ〜ん、てんぷらのコロ モがごてごてになっちったぁ。。。」とお嘆きの奥さん。もしかして強力粉を使ってい ませんか?奥さんというのは味醂を選ぶだけでなく、小麦粉の種類にも注意を払わなけ ればならないわけでありまして、いや個人的にはけっこう好きですけどね、「あ〜ん、 てんぷらのコロモがごてごてになっちったぁ。。。」という奥さん。
 
 ちなみに蛋白質の含有量は小麦の種類によって決まるそうでありまして、日本で とれる小麦の場合、だいたい10%前後になるそうです。ちょうど“強力”と“薄力” の中間でありまして、こういう小麦で小麦粉をつくると“中力粉”というものになりま す。これは別名“うどん粉”と呼ばれ、うどんを作るには最適なわけんですが、日本が “パン文化”ではなく“おこめ&うどんの文化”になったのは、実はこういうわけがあ ったんですな。ちなみに市販されている中力粉は強力粉と薄力粉を混ぜて作る場合がほ とんどだそうです。今ひとつ効きのアマい覚醒剤というのはシャブに小麦粉を混ぜて作 るわけですが、この場合は薄力粉よりも強力粉を用いたほうが“強力らりらり♪”にな れるよーな気がするので、興味のある人は試してみてネ♪
 
 で、蕎麦。蕎麦粉にはグルテンのもとになるグルテニンとグリアジンが含まれて おりません。ギロチニンという蛋白質しかありません。これでは水を混ぜてコネコネし ても“ギロチン”にしかなりません。だから蕎麦粉だけで作った蕎麦は、すぐに切れち ゃう古いパンツのゴムのような蕎麦になっちゃうわけでありまして、いや個人的にはけ っこう好きですけどね、「あ〜ん、パンツのゴムが切れちゃったぁ。。。」という奥さ ん。で、蕎麦を作る場合には小麦粉や山芋などの、いわゆる“つなぎ”が必要になるわ けですが、これは「混ぜものなんかして、けしからんっ!」ということではなく、必要 に駆られてのことだったんですね。もっとも“つなぎ”にうどん粉を入れ過ぎちゃうと 、うどんみたいな蕎麦になっちゃうわけでありまして、うどん粉が9割に対して蕎麦粉 が1割なんていうのは、もはや蕎麦とは言えません。そんなのはただの「蕎麦アレルギ ーの人が蕁麻疹になるウドン」でありまして、“八割蕎麦”あるいは“七割蕎麦”とい うあたりが妥当なところではないでしょうか。ということで、明日は“つなぎとウナギ ”という問題について考えてみたいと思うんですが、そんな問題を考えても何の得にも ならないような気もするので、考えるのはやめにするかも知れません。以上で蕎麦の話 はおしまい♪
 
 @ さ、ゴルソンです。ゴルソニンという蛋白質に水を混ぜてコネコネすると出 来そうですけどね、ゴルソン。で、ゴルソンと言えばゴルソン・ハーモニー、略して“ ゴル・ハモ”なんて言葉もあるように、もっぱら作編曲家として評価されている人です よね。アート・ファーマと一緒に“ジャズテット”などというコンボを率いていたこと もありますが、一部の江戸っ子と名古屋人の間で「ジャズってぇと、やっぱり“ジャズ テット”だぎゃあ。」と評価されていた程度で、一般的な人気はさほどでもなかったよ うな気がします。アドリブよりもアレンジに重きを置いたスタイルって、日本じゃあま りウケないんですよねぇ。。。じゃ、ゴルソンのリーダー作はいったい何を聴いたらい いのか?ということになるわけですが、ま、とりあえず有名なオリジナルが入ってるの を押さえておけばいいかぁ。。。という話になりまして、となるとこの『ゲッティン・ ウィズ・イット』なんていうのはぜんぜん駄目ですなぁ。聞いたことないような曲ばか りですもんね。そこのところがかえってイイかな?と思って今回チョイスしてみたわけ なんですが、僕は森永のビスケットでは“チョイス”よりも“ハーバード”のほうが好 きです。“マリー”は歯の裏っ側にへばりつくので嫌いです。で、このアルバムは選曲 こそ地味ですがメンバーはよくて、ゴルソン、フラー、トミ・フラといえば、あのフラ ーの名盤『ブルース・エット』を彷彿させますよね。そんなことでちょっぴり期待しつ つ、1曲目から聴いてみましょう。
 
 「ボーブルズ・バングルズ・アンド・ビーズ」。日本語にすると「安物の宝石、 輪飾り、そしてビーズ」といったところでしょうか。ザウルス内蔵の辞書には“bauble ”の意味として「安物の宝石」の他に「安ぴか物」と書いてありましたが、そんな日本 語あるんですかね?安ぴか物。なんとなく意味はわかりますけどね。で、その4つほど 下には“bawdy”(話・冗談などがみだらな、わいせつな、品のない)という単語が載 っておりましたが、うちのサイトにはまったく無縁の言葉であると言えるでしょう。必 要のない単語なので削除しようと思っております。
で、「輪飾り」というのは補足として(腕・足首などにつける婦人用の)輪飾りな んだそうです。ビーズというのは汚れのよく落ちる洗剤のことですな。あ、ちなみにこ の曲はゴルぴょんのオリジナルではなく、ぜんぜん有名でないスタンダードみたいです 。演奏のほうはトミ・フラの綺麗な無伴奏ソロで始まりまして、アルバムの冒頭から意 表をついてバラードを持ってきたかぁ。いひょー♪と感心していると急にテンポが速く なって、カーティス・フラーの登場となります。テーマのメロディを吹いているのか、 いきなりアドリブ・パートなのかよく判りませんが、なかなかよく歌った演奏となって おります。最後のところでまるっと「ストレンジャー・イン・パラダイス」のメロディ を引用し、トミ・フラのソロに引き継がれます。トミ・フラのソロはよく転がっており ます。アート・テイラーの手堅いサポートも万全ですな。で、ソロ3番手はゴルソン。 この人の演奏は概して“くどい”のが玉に傷ですが、ここではわりかし抑え気味で、悪 くありませんね。と、無難な解説に終始したところで再びテンポ・ダウンしてピアノの 無伴奏ソロになります。おしまい。
 
 2曲目「パリの四月」。この前“気まスタ”で特集を組んだばかりですが、その 時はこのバージョンのことはまったく頭にありませんでした。バラードと言ってもいい ゆっくりしたテンポでゴルソンがしみじみとテーマを歌い上げます。装飾を最小限に抑 え、ストレートにテーマ・メロディを吹いていて、意外とイイではありませんかぁ。有 名なサド・ジョーンズのバージョンよりも気に入っちゃったなぁ、ぼく。で、フラーは いつ出てくるのかな?と思っていると結局のところ最後まで登場してこなくて、ゴルソ ンをフィーチャーした演奏だったわけですな、とどのつまり。ところでこの“とどのつ まり”の“とど”って何なんでしょうね?オットセイ科?と思って調べてみたらアシカ 科でしたけどね、トド。で、“とどのつまり”の“とど”のほうは「きわまり・はて」 という意味の古語なんだそうです。成長するにしたがって名前が変わる“ぼら”(←お さかな科)の最後の名前が“とど”だからという説もあるみたいですけどね。“ぼら” といえば“ぼる”という言葉もありますよね。“ぼったくりバー”とか。で、この“ぼ る”の語源は何かと思ったら、“暴利”から来ているんだそうでありまして。なるほど ねぇ。。。
 
 と感心しているうちに3曲目です。ここから3曲ゴルソンのオリジナルが続くわ けですが、まず最初は「ブルー・ストリーク」という曲です。“streak”には「傾向、 気味」の他に「すじ、しま」という意味もあるようなので、“blue streak”というの は「青筋」でしょうか?確かにアップ・テンポの青筋っぽいナンバーでありまして、わ りかしシンプルなメロディなんですが、テナーとトロンボーンがハモるあたり、いかに もゴルソンらしい仕上がりとなっております。ソロ先発はゴルソンでありまして、いつ もの“くどさ”がバリバリ全開。やっぱりゴルちゃんはこうでなきゃいけません。個人 的にはあまり好きではないんですけどね。なぜかというと“くどい”からなんですが、 続くフラーもけっこうバリバリと頑張っております。ま、頑張ったところで所詮はボン トロだから、どこか間が抜けた感じになるのはやむを得ないところでありますが、ベニ ー・グリーン程にはふざけた感じがしないので日本人にはウケるんでしょうな、フラー くんの場合。ベニー・グリーンはちょっと真剣味が感じられませんもんね。ピアニスト のほうのベニー・グリーンは“すけべ顔”ですし。続くトミ・フラのソロは彼にしては かなり硬派な仕上がりでございます。その後、テナーとボントロの4小節交換があって 、これはかなりスリリングでございます。で、テーマに戻って、おしまい。
 
 さ、あと2曲ですね。「ティッピン・オン・スルー」はミディアム・スローのグ ルーヴィーなナンバーです。マイナーなムードがよろしいですな。ちなみに“thru”と いうのは“through”と同じらしいんですが、曲名の意味は、えーと…わかりません。 ソロ先発はゴルソンです。“くどさ”も中くらいで、まずまずかな?といったところで すな。ちょっとテンポが遅めの“モーニン”のソロ。といった感じがしますね。で、続 くフラーのソロがかなりいいデキであります。
やっぱりこの人はマイナー調の曲をやらせたほうがイイですなぁ。で、続くトミ・ フラはソニー・クラークばりに“後ろ髪引かれちっく”でありまして、続いてダグ・ワ トキンスの地味ながら堅実なピチカート・ソロも聴かれます。で、テーマに戻るわけで すが、そういえばサビのメロディもちょっぴり「モーニン」の最後の部分に似ておりま すな。個人的にはけっこうお気に入り♪の1曲でありました。
 
 はいラスト。「ボブ・ハーズ・ブルース」も前曲のムードを引き継いだマイナー 調のブルースであります。“地味モーニン”ですな。ソロはフラー、ゴルソン、あ、ゴ ルソンのソロの途中で倍テンポになっておりますな。とっても盛り上がってるね♪で、 その後はトミ・フラ、ワトキンスと続いて、フラーとゴルソンの4バースがあって、テ ーマに戻って、おしまい。みんな頑張ってるね♪ということで解説はテキトーですが演 奏は12分18秒もあって、聴きごたえ十分の1曲でありました。
 
 以上、「地味だけど、けっこうイイぢゃん。」と、けっこう仮面のねえさんもオ ススメの1枚でありました。


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