- 【アルバム名】
- ROCKIN’ IN RHYTHM (PRESTIGE)
- 【リーダー名】
- SONNY CRISS (1968/7/2)
- 【パーソネル】
- SONNY CRISS (as) EDDIE GREEN (p) BOB CRANSHAW (b) ALAN DAWSON (ds)
- 【収 録 曲】
- ELEANOR RIGBY / WHEN THE SUN COMES OUT / SONNYMOON FOR TWO /
- ROCKIN' IN RHYTHM / MISTY ROSES / THE MASQUERADE IS OVER
- 【内 容】
- 「寿司一丁」というオモチャがあります。どういうものかと言うと、チョロQと
いうぜんまい仕掛けの小さなクルマのオモチャがありますが、あのクルマを寿司にした
ようなもの。マグロとイカとタマゴの3種類があって、各にぎり寿司の底部にはタイヤ
が付いていて、床の上に置いてギギギギギィとバックさせるとぜんまいが巻かれて、手
を離すとピューっと走っていくわけですね。箱に書いてあった「寿司が走る!」という
キャッチコピーは嘘じゃなかったんだぁ♪と、当時高校生だった僕たちは手を叩いてよ
ろこんだものでありますが、このように寿司というのは元来「まわる」ものではなく「
走る」ものでありました。ということで『回転寿司開店マニュアル』という企画の第2
回目なんですが、いくらネタ切れとは言え、寿司ネタの話を3回も書くのは気がひける
ので、今日でおしまいにします。ご安心のほどを。
-
- 「まわる食べ物屋」というのは回転寿司が元祖ではなく、もっと昔からありまし
た。ビルの最上階の「回転展望レストラン」なんていうのがそうですよね。これは「レ
ストランが床ごと回る」という仕掛けでございまして、仮にこれを「回転パターンA」
としておきましょう。続いて中華料理屋の円卓。よく「円卓会議」いうのが行われます
が、あれば別に「みんなで中華料理でも食べながら会議しようかぁ。」と言ってるので
なくて、四角いテーブルだとどうしても「上座・下座」という概念が生まれちゃうから
、円卓を囲んでギョーザでも食べようかぁ。という発想で行われるものでございます。
「上座はなくてもギョーザはある。」というのが中華料理屋の円卓なんですが、ギョー
ザが回っているようではどのみち大した店ではありませんな。。。
-
- というのが「回転パターンB」。これはテーブルが回転するという仕掛けなんで
すが、この回転パターンAとBの2つを組み合わせたのが遊園地にある「コーヒーカッ
プ」ですよね。あれはまず、カップ全体を乗せた床自体がぐるぐる回り、カップを3個
ほど乗せた部分もぐるぐる回り、コーヒーカップ自身もぐるぐる回るという“3連回転
システム”になっているわけですが、この方式を飲食店に応用するのはヤメておいたほ
うが賢明です。もぉ、ワイングラスは倒れるわ、スープはこぼれるわ、“中華風冷や奴
”はぐちゃぐちゃになってマーボー豆腐になるわ、客は気分が悪くなってゲロを吐くわ
、そのゲロがもんじゃ焼きの鉄板の上で焼かれるわで、いったいどういうメニューの店
なんでしょうね?
-
- 回転パターンAやBの単独ではもはや新鮮味がなく、かといってミックスすれば
ワヤ。。。となると「第3の回転」の道を探求するのが商売人の心粋。そこで考え出さ
れたのが「ベルトコンベアで寿司を回転させちゃおう!」というアイデアでありまして
、いやこれは別に目新しい発想ではないんですけどね。例えば店内をオモチャの汽車が
走っていて、その汽車に乗ってお子様ランチが運ばれてくるというのは昔からありまし
た。食べ物屋ではありませんが、空港では鞄がコンベアに乗せられてぐるぐるまわって
ますよね。回転寿司の考案者はおそらくそれを見て「これやっ!」とひらめいたのでは
ないかと思われますが、寿司を回転させるとはうまく考えたものですな。前回の原稿で
も書いたとおり、カウンタ中心の小じんまりした寿司屋なら運搬コストは大したことは
ありませんが、これでは店の回転がよくありません。店の回転をよくするには、ある程
度の広さをもった店舗が必要となりますが、そうなってくると「へい、タコ、お待ちっ
!」とか言ってカウンタの上に寿司の乗った皿を置けばそれですむということはなく、
どうしても「お運びさん」を雇いいれなければなりません。すると当然コストがかさむ
わけなんですが、そこで思いついたのが「寿司を回転させて店の回転をよくしよう!」
というアイデアだったんですね。 そしてめでたく回転寿司の開店となったわけですが
、それが見事に“ぐるぐる好きぎゃる♪”のハートを射止め、回転寿司は一躍ブームと
なったのでありました。
-
- が、さしもの隆盛を誇った回転寿司業界も、今や重大な岐路にたたされておりま
す。ま、早い話が増えすぎちゃったんですよね。もはや、ただ寿司を回していさえすれ
ば客がくるような時代は終わり、ある店は「全品一皿100円!」という安価路線を打
ち出し、ある店は多少値段は高くてもうまい寿司を提供するという高級化路線を目指し
、またある店は「いつもより多めに回しております。」という染之助・染太郎路線を採
用したりして生き残りをはかっているわけなんですが、実は僕にはある素晴らしいアイ
デアがあるんですけどね。これを採用すればもう、商売繁盛は間違いなし!というほど
のナイスなプランでありますが、今日はお日柄もよろしいようなので、ひとつ塩通読者
にだけ特別に教えてあげましょう。名付けて、回転UNO寿司♪
-
- 注文を受けてから握る普通の寿司屋と違い、回転寿司ではどのネタをどれだけ作
るかというのが重要なポイントとなります。人気のないネタは放置され、カピカピに乾
いて大幅なダンピングを強いられ、最悪の場合は放棄せざるを余儀なくされます。大量
の“不良ネタ”を抱えることは店の死活問題でありまして、流したネタを平等に漏れな
くピックアップしてもらうのが店側としては望ましいわけなんですが、一方、客側のほ
うには「悪い席でのイカ・タマゴ・ヤクルト問題」というのがありますよね。回転寿司
の店でいちばんいい席というのは言うまでもなく寿司が流れてくる最上流でありまして
、ここなら自分の欲しいネタを間違いなく確実にGETすることが出来るわけでありま
す。ところが運悪く、最下流のいちばん悪い席しか空いてなかった場合、いいネタはほ
とんど上流の客に奪われて、流れてくるのはイカとタマゴとヤクルトばっかり。。。と
いうことになりかねませんよね。そこで僕が考えたのが、回転寿司への「UNO」の導
入というアイデアです。
-
- 「全品一皿100円!」という店でない限り、回転寿司のネタにはランクがあり
ます。ランクによって値段が違い、それが客にもわかるように皿の柄が異なるというシ
ステムになっております。“いいネタ=高い=皿の絵が派手”というわけなんですが、
まず最初にこの方式をヤメちゃいます。「いろんなネタ、値段は適当方式」というのを
採用します。例えば大トロが50円の皿に乗っているかもしれないし、子供がグズった
ので仕方なしにとったヤクルトが400円だったりするわけです。で、その値段はコン
ベアに乗って回転している段階では客側にはわからず、皿を手にとってネタをひょいと
つまむと、その下に「50えん♪」とか書いてあるわけですよね。客にしてみれば“く
じ引き”みたいな楽しみがあるし、このマグロはネタの大きさも申し分なく、乾燥の度
合いも少なくて絶対に「買い」なんだけど、どうも400円のような気がする。。。と
いうので見おくってみたり、僕はサバは蕁麻疹が出るから駄目なんだけど、これはどう
も50えんのような気がするから取ってみるかぁ♪ということになったりして、「売れ
ネタの均衡」がはかられるわけでありますな。もっとも、サバの皿を取ったら500円
で、しかも食べて蕁麻疹が出たりしたら目も当てられませんけどね。
-
- で、「UNOの導入」というのは、値段以外に特殊なマークの書かれた皿を交ぜ
ておくということなんですけどね。例えば「100円」という値段の下に“REVERSE”
と書かれた皿を手にした客は大きな声で「りばーすっ!」と叫び、それを聞いた店員は
慌ててスイッチを操作してコンベアを逆回転させるわけであります。これで「上流下流
の有利不利問題」は一挙に解決だねっ♪そのほか、すぐ下流の客が1回だけ皿を取れな
くなっちゃう“SKIP”だとか、流れてくる皿を2つ強制的に取らされる“DRAW2”、4
皿取らされる“DRAW4”なんかがあって、盛り上がることは必至。ただこうなってくる
とゲームから抜けるタイミングが難しくなってまいりますが、そのへんのこともちゃん
と考えてありまして。
- カードゲームの「UNO」の場合、手札が残り1枚になったときに「ウノぉ!」と
宣言するわけなんですが、開店UNO寿司の場合はそれが「ウニぃ!」になります。す
なわち、ウニの軍艦巻きが流れてきたらその皿を手に取り、声高らかに「ウニぃ!」と
宣言するわけですね。で、そのウニをポイと口に放り込んで、「すいません、おあいそ
〜!」となるわけなんですが、店側のポイントとしては“DRAW4”の皿をなるべくたく
さん流し、ウニの軍艦巻きはぎりぎりまで流すのをやめて、しかもウニの皿だけは必ず
500円!というのがポイントです。
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- 以上で寿司ネタ、おしまい♪
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- @ さて本日はソニー・クリス。“なんとなくクリスたん”はマクリーンと並び
我が国では最も人気の高いアルト奏者なんですが、もう死んじゃってる分、余計にポイ
ントは高いですよね。しかもその死因が“謎のピストル自殺”というのもフルっており
ます。「悲劇のアルト奏者」という呼び方も日本人のココロを揺さぶりますよね。「(
西城)ヒデキなアルト奏者」とかだったら笑いを取れますけどね。秋吉敏子がクリスた
んについて「あまりにも純粋でナイーブな性格だった。」というようなことを言ってる
のを何かの本で読んだことがあるような気がするんですが、僕もクリスたんとは性格が
似ているので、やばいかも知れませんね。で、この人は歳をとるにつれてノー天気さが
薄れてウツ病的な傾向が強くなっていったんですが、そんな中では中間期に位置するプ
レスティッジ時代がバランスがとれていていいような気がするんですけどね。というこ
とで『ロッキン・イン・リズム』。
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- プレスティッジのソニー・クリスは全部で7枚ありますが、オーケストラ物であ
る『ソニーズ・ドリーム』を除けばすべてがワン・ホーン物となっております。一番有
名な『アップ・アップ・アンド・アウェイ』にはギターの樽春男が入ってますが、それ
以外はすべてカルテット編成。で、ピアニストはウォルター・デイビスが2枚、シダー
・ウォルトンが2枚、オーケストラではトミ・フラが参加して、この6作目の『ロッキ
ン・イン・リズム』が新鋭のエディ・グリーン。で、最終作の『アイル・キャッチ・ザ
・サン』ではハンプトン・ホーズがピアノを弾いているので、メンバー的にはちょっと
地味な印象がありますよね。が、演奏自体は他のアルバムになんら劣ることなく、選曲
もいいので個人的にはけっこう愛聴している1枚なのであります。じゃ、1曲目から参
りましょうね。
-
- 冒頭の「エレノア・リグビー」はビートルズ・ナンバー。こういうポップ・チュ
ーンを取りあげることは得てして「堕落である。。。」と非難されがちなんですが、ク
リスの場合はあくまでも“素材”として取りあげているに過ぎず、演奏自体は極めてス
トレートなので大目に見てあげてくださいね。で、聴いてみるとこれが実にいい曲なん
ですよね。イントロからテーマにかけてはちょっぴりジャズ・ロックしちゃってますが
、ソロに入ってしまえばそんなの一切おかまいなし。思いのタケをぶつけるような熱い
プレイが展開されます。続くエディ・グリーンのソロも悪くないですよね。ただ、テー
マの再現部になるとちょっぴり盛り下がり気味で、最後は寂しくフェードアウトしちゃ
いますが、ま、アルバム最初の助走だと思って軽く流しておいてください。で、2曲目
「ホエン・ザ・サン・カムズ・アウト」。これぞ“都会のアンニュイ”、クリス・バラ
ードの真骨頂。よっぽどナイーブな人でないと、この味は出せませんね。アート・ペッ
パーに通ずる美学を感じさせます。それでいて独特の演歌的な節回しも健在で、やっぱ
りクリちゃんって、いいナ♪
-
- 3曲目の「ソニームーン・フォー・トゥ」はソニーのロリちゃんのオリジナル。
単純なリフ・ブルースだけにアドリブの出発点としては最良でしょう。ブッ速いテンポ
でクリスが吹きまくり、グリーンが弾きまくり、アラン・ドウソンの切れ味鋭いドラミ
ングも冴えてますなぁ。ボブ・クランショウのかなり長いソロもフィーチャーされてお
りまして、ドウソンのドラム・ソロも聴けて、総花的な楽しさがございます。
- 4曲目はエリントン・ナンバーの「ロッキン・イン・リズム」。ボブ・クラがイン
トロからテーマ部にかけてずーっと同じ音を弾いており、で、テーマ部のアレンジもず
いぶん凝ってますなぁ、お客さん。ソロ先発はエディ・グリーンなんですが、これが実
に元気ハツラツ、オロナインH軟膏。続くクリスのソロも相変わらずヴィヴィッドで目
まぐるしく(←悠雅彦クンのライナーを引用)、そしてここでもボブ・クラのピチカー
トがフィーチャーされております。こんな地味なベーシストにこれほどまでスポットを
あてちゃってもいいものか?と心配になっちゃうほどの活躍ぶりで、これに味をしめて
、夏休みが終わったら、いきなりケバくなってたりしないとイイんですけどね。で、5
曲目の「ミスティ・ローゼズ」はポピュラー・チューン。哀感を湛えた美しいメロディ
のナンバーですな。ちょっぴりガーランドを彷彿させるグリーンのイントロに続いて、
クリスが澄んだトーンでテーマを歌い上げます。で、アドリブに入ると一気に躁状態に
なっちゃうのがクリちゃんらしいですね。えーと、ここで原文ライナーを見てみたとこ
ろ、ティム・ハーデンの歌を、かつてソニーは何度かラジオで耳にしたことがあったと
。で、ドン・シュリテン(注:プレスティッジのプロデューサーですな。)の娘のティ
アナが最初にこの曲をレコーディングするようにソニーに提案したのだが、するとそれ
がまったくもってソニーのスタイルにフィットしたのであったと。要するにティアナち
ゃんはエラい!ということが言いたかったんでしょうが、実際のところ、まったくもっ
てクリスのスタイルにフィットしているので、やっぱりティアナちゃんは偉かったと思
いますけどね。
-
- で、クリスのスタイルにぴったりフィットと言えば6曲目の「ザ・マスカレード
・イズ・オーバー」もそうですよね。ミディアム・テンポでこの手の歌モノを吹かせれ
ばクリちゃんに適うものはございません。ということで、あ、ちなみにプレスティッジ
時代のソニー・クリスは『漆かぶれ、捨て地の僧に、栗素股』というタイトルでマイ・
コンピを作っておりますんで、興味のある人は読み直してみてくださいね。自分で読み
直してみたら、恥ずかしくって石綿だって思わず赤面。。。という感じでしたけどね。
ということで、明日の塩通は「勤労感謝の日」なのでお休みです。みんな、まじめに勤
労してるぅ?
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