【アルバム名】
SWING AND SOUL (BLUE NOTE)
【リーダー名】
LOU DONALDSON (1957/6/9)
【パーソネル】
LOU DONALDSON (as) HERMAN FOSTER (p) "PECK" MORRISON (b)
DAVE BAILEY (ds) RAY BARRETTO (conga)
【収 録 曲】
DOROTHY / I WON'T CRY ANY MORE / HERMAN'S MAMBO / PECK TIME /
THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU / GROOVE JUNCTION / GRITS AND GRAVY
【内   容】
 食べ物、飲み物というのはむろんその“味覚”を賞味するものなんですが、それ 以外の感覚も無視することは出来ません。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5つの感覚 のことを“五感”と呼ぶわけですが、ピンとくるのは予感、寒気がするのは悪寒、蹴ら れると痛いのは股間。ということで本日は味覚以外の感覚が飲食物に与える影響につい て考えてみたいと思うんですが、中でも視覚と臭覚が与える影響というのは、決して少 なくないですよね?例えばここに「健全ではあるが、フナムシが嫌い。」という成人男 子40名を対象に、では何故あなたはフナムシが嫌いなのか?という質問をして得られ た回答があるんですが、
 
  ・見た目が気持ち悪いから・・・31名
  ・ガサガサと不快な音をたてるから・・・7名
  ・手触りがオシャレでないから・・・1名
  ・くさいから・・・0名
  ・まずいから・・・1名
 
という結果となっていて、「食べたらまずかった。」という味覚的な問題よりも「 見た目が気持ち悪い。」という視覚的な問題が原因で毛嫌いしている人が大多数をしめ 、すなわち「フナムシ嫌いの大半は“食わず嫌い”である。」ということが明らかにな ったわけですが、この調査には若干の不備があるのも事実でありまして。すなわち、フ ナムシはカメムシと違って臭くないから、当然「くさいから。」と答えた人がいなかっ たわけなんですが、それよりなにより、フナムシは食べ物でないというのが致命的な問 題ですよね。ここはやはりピーマンとかニラとか、そういった食べ物を調査対象にした ほうがよかったかな?と反省した私は、ただちに設問の内容を「ケンミンの焼きビーフ ン」に変更してみたわけなんですが、
 
  ・なにそれ?・・・40名
 
という結果が得られるにとどまりました。それほどまでにマイナーなのか、ケンミ ンの焼きビーフン?タマノイのパーポーといい勝負なのか?と思って“Infoseek”でキ ーワード検索してみたところ“焼きビーフン”108件、“パーポー”6件と、“ブッ シュVSゴア”並の大激戦が期待されていたにもかかわらず、思わぬ大差となってしま いました。おまけにパーポーは6件中4件までが塩通だしー。
 
 で、見た目とにおい。この2つが味覚にどれほどの影響を与えるのかについて調 べた実験があるんですが、用意するものはファンタ・オレンジとファンタ・グレープ。 オレはフルーツパンチが好きなんや!という人もいるかも知れませんが、そういうやや こしいのは実験結果をイタズラにわかりにくくするだけなので、除外します。で、ファ ンタ・オレンジとファンタ・グレープをどうするかというとですね、透明なコップに注 いで10人くらいの被験者に飲んでもらうわけです。で、どっちがオレンジで、どっち がグレープかを当ててもらうわけです。ま、言わば「利き酒のファンタ版」というか、 「利きファンタ」みたいなことをやってもらうわけですね。で、その結果はどうだった かというと、10人が10人まで正解だったそうです。そらそうでしょう。んなもん、 見ただけでもわかりますよね。で、実はこの「見ただけでもわかる。」というのがポイ ントでありまして、今度は同じ実験を被験者に目隠しをして行うわけです。ついでにシ ンクロナイズドスイミング用鼻ばさみ等で鼻をつまんで、すなわち視覚と臭覚を奪った 状態で「利きファンタ」をやってもらったところ、実に正解率が50パーセントくらい にまで下がったんだそうでありまして。つまり人間はまず最初に目で「これはグレープ 色をしているな。」ということを判断し、続いて鼻で「しかもこれはグレープくさいも のであるな。」という情報を付加し、「しからずんば、この物体を口に含めばグレープ の味がするに違いない。」と判断して、そこではじめて「グレープ味」というのを認識 出来るのでありまして、味覚なんてのは実にあやふやなものであるわけなんですなー。
 
 さてここで「目隠しプレイの有効性について」という問題について考えてみたい と思うんですけどね。目隠しぷれい?なにそれ?という純情派読者のために念のために 説明しておくと、目隠ししてするプレイ。ま、そんなものであります。目隠しされてす るプレイ、というか、目隠しされてされるプレイと言ったほうがより正確かとは思いま すが、どうして目隠しされただけで
 
 > あたし、いつもよりすっごくコーフンしちゃったんです。(「ゆみの告白日記 ♪」より)
 
ということになっちゃうんでしょうか?その理由について考察するにあたって、先 ほどの“普通の利きファンタ”と“目隠し利きファンタ”の例を思い起こしてください 。目隠ししてない場合、ゆみちゃんはまず、あなたの“そのもの”を視覚的に認識する ことになるわけです。認識して、いつ見てもこの程度なのぉ。。。ということを再認識 することになってしまうわけです。この時点でゆみちゃんのアタマの中には「この程度 なのぉ。。。」という期待感しか浮かんでこないわけでありまして、これはあなたにと っても、ゆみちゃんにとっても望ましくありませんよね。かといって、急に「あの程度 」になるもんでもないしー。。。と落ち込む前に、目隠しプレイ♪そう、実物さえ見な きゃ大丈夫だよね?きっと♪
 
 @ ということで今日はルー・ドナルドソンなんですが、どうにか「くさい食べ 物」に話を持っていく前に1本分でっちあげることが出来ましたので、ネタが温存でき て何より。長生きの秘訣は「接して漏らさず」、長続きの秘訣は「接して小出し」であ ります。で、『スイング・アンド・ソウル』なんですが、明日からの長野出張&初滑り &ハローキティ地域限定ピンバッジさがしの旅に備えて、鞄にパンツを詰めなければな らないので手短にまいります。信州はもう寒いだろうから、やっぱり毛糸のパンツを用 意したほうがいいだろうかと思案している最中なんですが、この『素陰具(←とか、も う言わない。)&京城』というアルバムは見た目が地味ですなー。数多いLDのBN盤 には、肉棒好き♪にはたまんない『ホットドッグ』なんていうアルバムもありますが、 イメージ的には対極なれど、買う気をソソられないという意味では、いい勝負をしてお ります。が、ジャケットは地味でもサイドマンは悪くなくて、ピアノはあの朋友ハーマ ン・フォスター、ドラマーには堅実なデイブ・ベイリーを起用して、ベースはペック・ モリソンで、更にはレイ・バレットのコンガを加えております。このメンバーはあの『 ブルース・ウォーク』とまるっきり同じなんですよね。さぞや賑やかなファンキー・ジ ャズが繰り広げられるのではないかと期待してCDにレーザーを照射すると、聞こえて きたのはムーディなバラードでありました。『ドロシー』はルディ・ニコルズという人 のオリジナルですが、この人はミンガス、テディ・チャールズと共演したドラマーらし いです。ルーは優しく名腕、よく相撲解説を聞いていると「かいなを返す」という言葉 が出てきますが、“腕”と書いて“かいな”って読むんかいな。と、たいへん勉強にな る誤変換ですね。で、ルーは優しく明快なメロディと、テーマに戻る前に流暢さと温か さを備えたソロを提供している、と原文ライナーにありますが、まさにそのとおりだと 思います。あまり出しゃばり過ぎないコンガが“隠し味的”にうまく使われております 。“人柄のドナちゃん”と呼ばれるドナルドソンの温かさがよく現れたナンバーと言え るでありましょう。
 
 はい、2曲目。「アイ・ウォント・クライ・エニー・モア」は1940年頃のバ ラードらしいですが、ここでのルーさんはミディアム・ファストで軽快に料理しており ます。いかにもパーカー派らしい節回しと皿回しと化粧回のルーさんのソロに続いて、 ハーマン・フォスターの出番となるわけですが、ソロの前半が彼にしては珍しいシング ル・トーンなのが興味深いですね。が、後半にはブロック・コード多様の明るくハッピ ーないつものスタイルになって、ドナちゃんの登場Part2に向けて大いに場を盛り 上げます。で、LDの最後のフレーズにかぶさるようにフォスターが登場し、そのまま 後テーマへと入っているあたりの流れが抜群にグンバツですね。かなりポイントの高い 1曲であると言えましょう。
と、ここまではレイ・バレットのコンガがずいぶんと塩分控えめであったわけです が、3曲目は「ハーマンズ・マンボボ」、あ、勢い余って“ボ”がひとつ余分になっち ゃいました。「ハーマンズ・マンボ」。これが正解です。けだるいくらいのゆったりし たテンポで、この上なくベタなメロディが奏でられるフォスターのオリジナルなんです が、マンボとなるとバレットのコンガが俄然魅力を発揮しますね。テーマに続いてフォ スターのハッピーでレイジーなソロがあって、ここで俄かにテンポが速くなって御大ド ナちゃんの登場。スインギーでソウルなソロをかましてくださいます。で、フォスター の登場Part2になっても速くなっちゃった情況はそのまま維持されて、最後のとこ ろですーっとテンポ・ダウンして後テーマに突入します。ここらあたりのアレンジも実 に軽妙で、ニクいね、ペヤングって感じぃ?
 
 で、4曲目。「ペック・タイム」はルーがたびたび引用している「スインギン・ オン・ア・スター」(邦題「お星さまの上でフリフリ♪」)のフレーズをもとにしたル ーのオリジナル・ブルース・ナンバーだ。と原文ライナーにありますが、なるほど、ル ーがよく吹いてるフレーズをそのまま曲にしたようなナンバーですな。上下に揺れ動く リフ・ブルースといった感じのナンバーで、ルーのソロはかなりビ・バップ的でありま すな。トーンの明るいパーカーといったところでありましょうか?フォスターのソロは 前半はシングル・トーン中心、後半はブロックコード多様、で、ペック・モリソンのピ チカート・ソロがあって、アルトとドラムスとコンガの4バースがあって、後テーマが あって、エンディング。実にきっちりとした演奏でございました。で、ここでレコード だと盤をひっくり返すことになるんですが、A面と同じくB面の1曲目にもバラードが 持ってこられております。「ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー」、日本 名「あなたなしでは」。以前、この曲名が誤植で「あななしでは」になっていたのを見 たことがありますが、“あな”がなくては大変なことになっちゃいますよね、えーと、 例えば裁縫針とか。腐るほどたくさんの人が取り上げているスタンダードなんですが、 ほとんどの人がミディアム以上のテンポでやってますよね。が、ここでのLDは原曲ど おりのバラードで演奏して、それが見事に功を奏しております。そういえばブルー・ミ ッチェルも『ビッグ・6』でこの曲をバラードで吹いてましたな。で、続く6曲目のL Dオリジナル「グルーヴ・ジャンクション」は、ちょっぴりホレス・シルヴァー風の軽 快なハード・バップ作品であります。ソロ先発のハマ・フォスがいいですなぁ。いつも の“前半シグ・トン、後半ブロ・コー”のパターンなんですが、いつもの顔、いつもの トーンで、いつもの演奏をするのがルーさんコンボいいところですもんね。アルトのソ ロのあと、ドラムスとコンガの掛け合いも楽しめます。はい、ラスト。最後もドナルド ソンのオリジナルで、「グリッツ・アンド・グレイヴィ」。非常にゆっくりしたウォー キング・ベースで幕を開けるコテ系のスロー・ブルースでございます。「粗びき穀物と 肉を焼くときに出る肉汁、それをもとに作ったソース」ですか。ソウル・フードですな ぁ。息が詰まるほどアーシーなナンバーなんですが、アイラー・ギトラーは「ブルーノ ートのラベルと同じくらいブルーな演奏だ。」などと言っております。
 
 んなことで、地味なジャケを見たときにはどうなることかと思いましたが、演奏 のほうは完璧でありました。ちょっぴりコマーシャルな『ブルース・ウォーク』よりも 出来としては上であるかも知れません。ということで、さ、パンツ詰めよーっと。


| Previous | | Up | Next |