【アルバム名】
PERSONAL APPEARANCE (VERVE)
【リーダー名】
SONNY STITT (1957/5/12)
【パーソネル】
SONNY STITT (as,ts) BOBBY TIMMONS (p) EDGAR WILLIS (b) KENNY DENNIS (ds)
【収 録 曲】
EASY TO LOVE / EASY LIVING / AUTUMN IN NEW YORK /
YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO / FOR SOME FRIENDS / I NEVER KNEW /
BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA / EAST OF THE SUN / ORIGINAL? /
AVALON / BLUES GREASY
【内   容】
 動物。あなたはこの言葉を目にしたとき、何をイメージしますか?ミルト・バッ クナーの名前が浮かんじゃった人は論外として、その答えによってある程度、その人と 動物とのつきあいかたについて類推することができるんですが、本日のテーマは『わく わく動物らんど♪』。そういえば昔、『わくわく汚物ランド』という名前のスカ○ロ系 ビデオがありましたが、中身のほうはともかく、ネーミングのセンスにはなかなかのも のが感じられますよね。概して“すけべビデオ”のタイトルには秀逸なものが多いんで すが、そういえば『ザッツ・変態テイメント』なんていうのもございました。“ヘンタ イ”というのはその言葉の響きだけで笑いをとれる要素を有しておりまして、たとえば チョウチョなんかは一生懸命、卵から幼虫、サナギ、成虫へと成長しているのにも拘わ らず、「きゃ〜ぁ、ヘンタイ♪」と指をさされて笑われるハメになってしまうわけなん ですが、そんな変態が持っているエンターテイメント性がうまく表現されており、コピ ーライターも思わず脱帽、抜け毛症の人も思わず脱毛。といった感じでございます。
 
 抜け毛といえば動物の世界には“生え変わり”という現象がありますよね。いわ ゆる夏毛と冬毛というやつですが、人間の世界にはそんなのもはありません。せいぜい あっても鼻毛と脇毛と胸毛とスネ毛くらいなんですが、人間も“夏毛システム”を採用 すれば何かと便利だと思うんですけどね。「夏も近付く八十八夜」くらいになると冬毛 であるスネ毛が次第に抜けはじめ、海開きの頃にはもう、すっかりツルツルだねっ♪と いうことになれば、あとはもう「夏の夜の肉」問題だけを解決すれば万事はOK、ゼン ジーは北京。ところが実際にはそのようなしくみにはなっていないわけでありまして、 これは何故かというと、夏場の貴重な収入源を断たれることを恐れたレーザー脱毛業界 の関係者が平将門に頼んで起こさせたタタリであるという説が有力なんですが、祟り業 界では1、2を争う信頼度を誇っておりますからね、将門くん。
 
 それはともかく、現代人と動物との係わり合いについてなんですが、どうも両極 端に2分化されちゃっている傾向がありますよね。一方にネコを猫かわいがりする人が いると思えば、イヌを犬コロのように扱う人もいて、かと思えばウマに馬乗りになって みたり、カバを庇ってみたり、クマに襲われてクマっちゃったり、トラを五目うま煮に しちゃったのがトラウマになっていたりと、実にさまざまでありまして。その人が動物 好きになるかどうかは幼児期の体験に起因していることが多いんですが、子供というの は基本的には動物好きですよね。たとえば姪っ子の芽伊ちゃん(8さい)が遊びにきた とき、家で飼っているヤギを見せたりすると、大いに喜びます。「わーい、メーメーや ぎさんだぁ♪」とか言って、姪っ子の芽伊ちゃん、もぉ大喜び♪という場面が十中八九 は展開されるわけでありますが、そういえば『術中フ○ック』なんてタイトルの作品も ありましたなぁ。
 
 それはともかく、子供というのは一般的には動物好きでありまして、捨てネコを 拾ってきてこっそりと排水マスの中で飼っては大雨で溺死させたり、寒いからかわいそ うなのぉ。。。と思って狭い箱の中で練炭をたいては一酸化炭素中毒死させたり、“れ んたん”はマズかったのぉ。。。と反省して段ボール箱の中でローソクを燃やしては焼 死させたりと、そんなことばかりやっちゃうわけなんですが、要するに動物愛護の精神 には溢れているんだけど、今ひとつ実力が伴わないというのが実状でありまして。でも 、そこで彼女を叱ってはいけません。捨てネコに限らず、例えば家で飼っている熱帯魚 の水槽に、水が生ぬるくて湯冷めしたらかわいそうなのぉ。。。と思って熱湯を注ぎ、 結果として熱帯魚の姿煮をつくっちゃったとしても、決して彼女を叱ってはいけません 。
「かわいそうに、おさかなさんはこんな熱い思いをしたのよっ!」と叱って、頭か ら熱湯を注いだりしてはいけません。台所でペヤングを作ったことがある人ならわかる ハズですが、熱湯というのはステンレスの流し台をぼこっ!といわせるだけの凶暴性を 秘めているのです。取り扱いには十分に注意しましょうね。
 
 その人が動物好きになるかどうかは、幼児期に折檻を受けた際のその湯の温度に よって決まるといわれております。そもそも人間とは何度までの熱湯に耐えて、動物好 きになるものなのでありましょうか?いろいろ調べてみたところ、ここに興味深いデー タを得ることが出来ました。この実験は健全なる成人男子40人を10人ずつ4つのグ ループにわけて、それぞれ頭から
 
A群:50度
B群:65度
C群:80度
D群:95度
 
の湯をかけてみて、いったい何人が「熱っ!」と言うかについて調べてみたところ 、
 
A群:10人
B群:10人
C群:10人
D群:10人
 
という結果が出て、人間、やはり湯の温度が50度を越えると誰でも熱いと思うも んなんだなぁ。。。という貴重なデータが得られたわけなんですが、ところで本土から 遊びにきた姪っ子の芽以ちゃんが仲良く遊んでいた“メーメーやぎさん”がその日の夜 、「やぎ汁」に姿を変えて食卓に登場するというのは沖縄ではわりとよくある話だそう です。臭くって食べられたもんじゃないらしいですけどね、やぎ汁。ということで明日 は「くさい食べ物」について考えてみたいと思いまーす。
 
 @ さて、アルト編の第2弾はソニー・スティットです。ジャケ・イラスト、失 敗しました。わりと惜しいところまでいったんですが、微妙なバランスが狂ってヘンに なりました。これを書いたとき微熱に冒されていたのが原因でありまして、僕に絵心が ないとかそういう問題ではありません。で、『パーソナル・アピアランス』は世の中に 腐るほどあるスティットのワンホーン作の1枚なんですが、ティモンズとの共演はこれ 1作だけということなので、とっても貴重です。もっともスティットとティモンズの組 み合わせというのはあまりピンときませんけどね。ついでにこのアルバム、アルト編に 分類しておきながらアルトよりもテナーを吹いてる曲のほうが多いんですが、「細かい ことを気にせずに、もっと大らかに生きようよ!」という僕なりのメッセージだと思っ てくださいね。能天気な大らかさがスティットのいいところだしー。んなことで、では 1曲目から。
 
 「イージー・トゥ・ラブ」。トリオ演奏によるイントロで幕を開けますが、エド ガー・ウィリスという人のベースがガンガンと頭に響いてまいります。病み上がりの身 にはちょっぴり辛く、脳溢血をおこしてしまいそーな気がしますが、健康体にはさぞや 心地よく聞こえることでありましょう。やはりベースはこれくらい強力ムヒでないとあ きませんよね。で、やがてスティットがアルトで“いかにもポーター”といった感じの テーマを吹き始めますが、パーカー派のアルトにはポーターの作風がよくマッチングま ちこ先生しますよね。ソニー・クリスの『プレイズ・コール・ポーター』のバージョン と聴き比べてみるのも御一興かと。スティットのほうがより正当的で、クリスがいかに 演歌的であるかがよくわかると思います。で、本作の着眼点のひとつであるティモンズ のソロなんですが、後年のスタイルに比べるとアクが少なく、よりパウエル的でありま すな。ケニー・ドリューを思わせる感じもありますね。イントロから目立っていたエド ガー君の江戸川的ピチカアト独奏も聴けます。
 
 2曲目「イージー・リビング」。イージー続きで来ましたな。いきなりスティッ トのテナーで始まり、やがておなじみのテーマがゆっくりしたテンポで演奏されます。 後ろでリズム隊がちょっぴり変な動きをしてますが、気にしないでくださいね。テナー だと譜割りが大まかになる関係で、スティットのプレイもより大らかさが強調される今 日この頃。ティモンズのプレイにも後年の黒っぽさの片鱗がちらっと伺えて興味深いで すね。はい3曲目。「ニューヨークの秋」。気ままにスタンダードのコーナーでこの曲 を特集したとき、このバージョンは忘れ去られていたのではかなったかと思われますが 、調べてみたら案の定でした。
映画『ラウンド・ミッドナイト』でデックス扮するところのデイル・タナーがこの 曲を吹いていたシーンが脳裏に焼き付いているので、デクスター・ゴードンの愛奏曲と いうイメージが強いんですが、ここでのスティットはアルトを用いて朗々と、そして次 第に熱く演奏しております。エンディングではカデンツァを用いたりして、頑張ってま すなぁ。はい4曲目。このアルバムは全部で11曲も入っているので、いちいちボケて る暇はありません。冒頭から有名スタンダードが続くこのアルバムで、ここでまたして も有名な「帰ってくれれば嬉しいのぉ♪」の登場となるわけですが、この曲は何と言っ てもアート・ペッパーが有名ですよね。よってアルトで聴き比べ…といきたかったんで すが、スティットはテナーを吹いております。なんて期待にそぐわないお人なんでしょ う。ちなみにこのスティットの演奏はペッパーの吹き込みの4ヶ月後なんですが、生涯 マイペースのスティットにしてみりゃ、人の演奏など知ったこっちゃないのでありまし ょう。テナーで聴く「モノを言う土瓶、そうないっす」も悪くないですけどね。吹くこ と=快感♪といった感じのケレン味のない正常位プレイも、たまには新鮮でいいもんで す。
 
 5曲目、「フォー・サム・フレンズ」。ここまできてやっと半分弱ですかぁ。後 期コルトレーンなら1曲で終わったりするんですが、“生涯ビ・バッパー”は数で勝負 するタイプでもあるわけです。で、この曲はスティットのオリジナルなんですが、この 人の書く曲というのはほとんどがシンプル極まりないブルースナンバーでありまして。 ここでもスティットがいつものブルースを披露しておりんす。6曲目「アイ・ネヴァー ・ニュー」。
 
  ・吸ってみて あ、いいね、母乳 なつかしの味
 
  > ママの味だねっ♪
 
ちょっぴり生ぬるいのが欠点ですんで、吸うんだったら冷え性のママ?って、そん なことはどうでもよくて、よく耳にする曲ですよね「あ、いいね、母乳」。なんかステ ィットに演奏されるためにあるよーな感すらあるハマリ曲でありまして、テナーによる 実に生き生きとしたフレーズの連発を楽しむことが出来ます。7曲目、直訳して「悪魔 と深く青い海の間」、意訳して「絶対絶命」。ぜんぜん危機感のないヘロヘロ感がいか にもスティットです。8曲目「イースト・オブ・ザ・サン」。これまたよく耳にするナ ンバーですね。で、こういうってパーカー派の面々が最も得意とする曲調ですよね。吹 けば吹くほどノッてくる“潮吹きスティット”の面目躍如といった感じです。9曲目の 「オリジナル?」というのはスティットのオリジナル?ですかね?とりあえずオリジナ ルを作ってみて、名前を考える段になって面倒になっちゃったとしか思えないようなタ イトルですが、アドリブの勢いだけで出来ちゃったような曲なので、敢えてオリジナル と称するのが憚られたのでありましょう。そのあたりの謙虚なココロが「オリジナル? 」の“?”の部分によく現れておりますが、勢いだけで出来た曲なので、演奏のほうも ノッケから絶好調でございます。で、ずっとテナーを吹いていたスティットはソロ登場 パート2でアルトにスイッチしてますね。このアルバムでも最高のプレイであると断言 しちゃっても決してどこからも文句はつかないでありましょう。という気がしないでも ありません。
 
 はい、残り2曲。「アヴァロン」は前曲の勢いそのままにアルトで突っ走るナン バー。快調です。ラストはオリジナルの「ブルース・グリージー」。タイトルどおりグ リージーなブルース・ナンバーです。アルバムの最後を飾るにふさわしい円熟の円空仏 。。。といった演奏でございます。以上、脂の乗り切った秋サバのような“個人的外見 ”を、たんとご賞味くださいまし。


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