【アルバム名】
BUT NOT FAREWELL (BLUE NOTE)
【リーダー名】
ANDREW HILL (1990/7,9)
【パーソネル】
ROBIN EUBANKS (tb) GREG OSBY (ss,as) ANDREW HILL (p) LONNIE PLAXICO (b)
CECIL BROOKS (ds)
【収 録 曲】
WESTBURY / BUT NOT FAREWELL / NICODEMUS / GEORGIA HAM / FRIENDS /
SUNNYSIDE / GONE
【内   容】
 “なめたけ”というのがありますよね。あれは“えのきだけ”を加工したものな のか、それとも“なめたけ”という種類のキノコなのか寡聞にして知りませんが、とに かく小さくてヒョロヒョロしたキノコを醤油ベースのタレで煮詰めて“なめなめ”にし たものでございます。そうして“なめなめ”にされた“なめたけ”は独特の形をした、 何というのか、“なめたけのビン”とか表現しようのない形のビンに詰められて“ビン 詰めなめたけ”としてスーパーの棚に陳列されることになるんですが、どうして“ビン 詰めなめたけ”は、あのような独特の形のビンに詰められるんでしょうね?ジャムみた いな形のビンではいけないのか?イカの塩辛みたいな形のビンではいけないのか?海苔 の佃煮みたいな形のビンではいけないのか?尿瓶みたいな形のビンではいけないのか? “なめたけ”に限ってあの汎用性のない形状のビンを使うもんだからビンの製造だけで コストがかさんで、たかだか味付けキノコのビン詰めの分際で、決して安くはない価格 設定がなされているわけであります。筆者(わたし)は“なめたけ”を白いアツアツの ご飯にのっけて食べるたびに、独占によって暴利を貪っている製ビン業界の実状に暗澹 たる思いを抱かざるを得ないのでありますが、それはそうと梅雨時にはナメクジがたく さん出没しますなぁ。
 
 なめこ、なめたけ、なめくじ。この3つはその筋では“世界3大なめもの”など と呼ばれているわけでありますが、個人的には“なめこ”がいちばんイイかな?なんて 思っております。特に“めこ”の部分に何故だか親しみを感じてしまうわけでございま すが、“なめこ”の味噌汁は“おこめ”のご飯によく合いますよね。“なめたけ”も“ おこめ”のご飯によく合うんですが、“なめくじ”だけは、いくら塩をかけられて溶け た姿が“イカの塩辛”に似てるといえ、あまりご飯の上にのせて食べたくはありません ね。ちなみにナメクジに塩をかけるとなぜ溶けるかというと、アレは浸透圧の問題であ りまして。つまり、ナメクジにかけられた塩はナメクジ表面の水分で溶けて高濃度の塩 水になるんですが、世の中というのはなるべく平衡を保とうとする方向へと反応が進む ものでございます。そこでナメクジは体の水分を放出することによって外部の塩分濃度 を薄めようと頑張るわけでありますが、はっきり言ってアホですね。そんなことしても ナメクジ自身にはなんのメリットもないんですが、ただただ化学反応に流されてカラダ の水分を奪われ、小さく溶けたような状態になっちゃうわけです。採れたてのピチピチ の梅の実を塩漬けにするとシワシワの梅干しになるのと同じ原理でありまして、ナメク ジには梅の実と同レベルの知能しかないと断言せざるを得ませんね。梅の実はアルコー ルと氷砂糖に漬けて梅酒にしてもシワシワになるので、同じようにナメクジをナメクジ 酒にしても、やっぱりナメクジは溶けるでありましょう。よって「ナメクジに砂糖をか けると膨れる」というのはまったくの俗説でございます。
 
 ひるがえって蛭。昼間っから蛭。比類なき蛭。ニヒルな蛭。蛭というのは見た目 は“頭が三角なナメクジ”みたいなものでありますが、その生態や性格はナメクジとは 大きく異なっているようでありまして。だいたい“頭が三角”というのが曲者で、ヘビ なんかでも“頭が三角”なのは毒ヘビと相場が決まっております。同じ三角でも南伸坊 なんかはあまり毒がなさそうですが、あれは“頭が三角”というよりも“顔が三角”な わけですし。で、蛭とナメクジがどれほど違うかと言うと、ナメクジに塩をかけると溶 けますが、蛭に塩をかけてもやっぱり溶けます。と、ここまでは同じなんですが、蛭に 砂糖をかけても溶けないそうでありまして。ちなみにナメクジに塩をかけるとナメクジ 色のまま溶けて小さくなりますが、蛭に塩をかけると透明な粘液を出して逃げ出し、さ らに多量の塩を振りかけると体を縮めて黒くなって死ぬそうです。でも砂糖をかけても 全然だいじゃぶなんだそうです。不思議なもんですねぇ。。。
 
 どうやら浸透圧ではなく、塩素に弱いらしいんですけどね。となると、ヤマビル が出没する山道では大量の塩をぶちまけながら歩く“水戸泉方式”が有効となるようで す。で、足元から這い上がってくるヤマビルには“塩をまぜた木工用ボンド”で対応し ましょう。黄色いフニャフニャの容器に入っている白いやつですな。あれに塩をまぜて ヘラで長靴に塗布すれば、効果は抜群だねっ♪ただし雨が降ってくるとボンドは水で流 れちゃうし、それに何より雨の日にはヤマビルというのは木の上から降りそそぐ生き物 と化すそうなので、そうなってくるともはや対処のしようはありません。黙って静かに 血ィ吸われててくださいね。
 
 で、蛭とナメクジとの最も大きな違いといえば、やはり性格の善し悪しでありま しょう。ナメクジもそれほど性格がさっぱりしてるとは思えませんが、それでも蛭に比 べればカワイイもんでありまして、蛭が血ィ吸うときに一体どういうことをするのか知 ってますかぁ?雨の日に木の上から降ってきたヤマビルは、ぴたっと“ぎゃる”の柔肌 に吸い付くと、まず最初に麻酔物質を出すんだそうであります。これは、蛭プレイ初体 験♪である“ぎゃる”の「はぢめてだから痛くしないでね♪」という要望に配慮したも ので、ヤマビルは意外と“紳士的”なのではないか?思われるかも知れませんが、騙さ れてはいけません。ヤマビルが麻酔物質を出すのは、相手に気付かれずに“イイ思い” をしようというコンタンでありまして、クロロホルムで昏睡させておいてからガバっと 襲う変態と何ら変わるところがありません。とんでもないことでございます。
 
 で、人知れずうまい血ィを吸った蛭は、今度はヒルジンなる物質を口から分泌し て“ぎゃる”の体内に注入するんだそうであります。このヒルジンという物質には血液 の凝固を防ぐ作用があって、蛭に血を吸われるとなかなか出血が止まらないのは、ひと えにヒルジンの仕業なのでありますな。で、ヒルジンだけならまだしも、かゆみの原因 となるヒスタミンも分泌するというのだから、何を言わんかですよね。“初めてぎゃる ”をクロロホルムで昏睡させて、ガバっと襲って大出血させたあげく、とどめの“漆プ レイ”併用!なんという極悪非道な奴なんでしょう。だいたい“ヒルジン”という名前 からして、ふざけてますよね。何とまあ、安直極まりないネーミングなんでしょう。蛭 だからヒルジン。こういった暴挙を野放しにしておいては、いつナメクジが蛭の真似を して“ナメクジン”なる物質を分泌するやも知れません。ヒルジンに猛省を求めると共 に、最後にヒルジンに捧げる1句を紹介して今日の前半部分を終わりたいと思います。
 
(作品01) 朝食べた カレーの因果か 昼、痔 「ん〜」
 
  > 出口まで4時間。
 
 @ ということでアンドリュー・ヒル。いや、当初はハービーの『スピーク・ラ イク・ア・チャイルド』を紹介する予定だったんですが、思わず“蛭ネタ”に発展しち ゃったのでアンドリュー・ヒル。
 
(作品02) やっぱ、餡だらぁ? 昼のトーストはよぉ
 
  > 三河人、小倉トーストを語る。
 
トーストにバターを塗ってアンコをのせるという、バタ子さんもびっくりの食べも のなんですが、ヒルのアルバムはどれにしようかと考えた結果、塩通には珍しく90年 代モノを選んでみました。『バット・ノット・フェアウェル』、日本名『さよならは言 わない』・・・っていう柄ですかねぇ、蛭くんってば。で、このアルバムはサイドマン が興味深くって、グレッグ・オズビー、ロビン・ユーバンクス、ロニー・プラキシコ、 セシル・ブルックスという、とっても“M−BASE”な面々が名前を連ねております 。マゾをベースとするM−BASE派と、蛭プレイが得意なヒルとでは、てっても相性 がイイんじゃないカナ?という気がしますよね。で、とりあえずサイドマンで俳句を作 ってみましょうかね?
 
(作品03) 土偶冷遇 おすぎはひどい
 
  > 嘆くピーコは土偶好き。
 
(作品04) ラビン言う 「ばか、すけべ♪アラファトったらぁ♪」
 
  > 和平は“愛”から。
 
(作品05) 真っ黒に プラ消しゴムが なっちゃった
 
  > よくあることです。
 
(作品06) セシール・ブラ くすねて今日も 大収穫
 
  > 1枚980円。
 
なんだか冴えないの。うふ♪ということで、1曲目からまいりましょう。 ヒルは昔っから“全曲オリジナル”を標榜してきたわけでございますが、その姿勢は9 0年代になっても変わりません。ここでも7曲すべてをオリジナルで固めておりますが 、まずは「ウエストバリー」という曲ですな。
 
(作品07) 上下(うえした)鰤
 
  > 人魚は上半身が人間で下半身が魚だけど、ブリは上も下もブリだなぁ。
 
とってもメロディアスな曲でありまして、グレッグ・オズビーの吹くソプラノがよ ろしいですな。テーマに続いてそのままオズビーのソロへと突乳していくわけですが、 トレーンというよりショーター的ですかね?よくは解らんのですが。はじめのうちは抑 え気味に、そして演奏が進むにつれて次第に熱くなってゆく様は微笑ましい限り。で、 続くロビン・ユーバンクスのトロンボーンもよろしいですな。M−BASEというのは 私の乏しい知識からすると、新主流派っぽいサウンドを90年代風にアレンジしたよー な感じぃ?ということになるんじゃなかろうかと思っているんですが、さしずめロビ・ ユバは“90年代のグラチャン・モンカー3世”ってところですかね?とっても安易な 例えですけどね。で、続くヒルのスタイルは昔っから変わっておりませんな。現在の“ やんぐ”にも受け入れられる、素晴らしいスタイリストだと思います。ということで2 曲目です。「バット・ノット・フェアウェル」。
 
(作品08) バットの音 平和飢える家庭で 今夜も殴打
 
  > 愛の殴打家族。
 
よくわからんコメントですな。で、アルバム・タイトル曲の「さよならは言わない 」はリズムが凝ってますなぁ。ヒルの音楽性を語るとき、よく“特異なリズム感覚”と いう言葉が用いられるわけでありますが、トリオ演奏で始まるテーマ部の、ちょっぴり 危なっかしいようなノリこそ、ヒルの本領と言えるのではないでしょうか。途中からホ ーン・アンサンブルも入ってまいりますが、この曲の主人公は紛れもなくヒル、その人 でありましょう。ここで聴かれる彼のヒルジン的なソロは往年のBN盤を思わせるもの でありまして、もぉ、出血大サービスって感じぃ?ま、一般受けしないこと夥しいんで すけどね。ハービーが60年代のパウエルとするなら、ヒルは60年代のハービー・ニ コルスでしょう。と、もっともらしい事を書いておいて、あ、ヒルのソロに続いてユー バンクス、プラキシコ、オズビーの快調な演奏が続きます。オズちゃんは本業のアルト に戻っておりますね。この人のスタイルはドルフィーとジェームス・スポルディングを 、わりと解りやすくしたような感じで、けっこうオーソドックスに聞こえるんですが、 気のせいですかね?ということで、3曲目。「ニコデマス」。
 
(作品09) 使用する おもちゃは2個で ますますおさかん
 
  > ツインゴッド2個使用。
 
お題が簡単なのでわりとシンプルに仕上がりましたが、ツインを2個も使用する必 要はないような気もするんですけどねぇ。ま、人それぞれなんですけどね。アルトとボ ントロのユニゾンで演奏されるテーマは、いかにもヒルらしい複雑なものとなっており ます。ソロはオズビー、ユーバンクス、ヒルの順。各自、餅鯵を十分に発揮しており、 秀逸であります。特にユーバンクスのソロは3管メッセンジャーズにおけるカーティス ・フラー的な味わいがあるような気がしないでもありません。ソロの後半になると、だ んだん“前衛”してきちゃってますけどね。はい、4曲目。「ジョージア・ハム」。お 題が短いので5曲目以降の「フレンズ」「サニーサイド」「ゴーン」もまとめて詠んで おきましょう。
 
(作品10) 譲二はホモ 女に触れず 男臭さに再度勤行
 
  > 山本譲二、仏門に入る。
 
欲張り過ぎて、リズム感がちょっぴり疎外されちゃいましたが、「ジョージア・ハ ム」はとってもジョージアなハムと言った感じの曲であります。このアルバムの中でも 。最もM−BASE色の強い演奏であると言えましょう。しかしこれ、何気なくぼーと 聴いてると17分17秒もあったりして、大変なことになっちゃうので、次。「フレン ズ」はバラードで、オズビーとヒルのデュオで演奏されます。友達なんだもん、2人っ きりでプレイしたいよね。「サニーサイド」は無伴奏ソロ。ちょっぴりゴスペルを感じ させる演奏でございます。最後の「ゴーン」も無伴奏ソロ。
にもかかわらず13分32秒もあるから、適当なところで切り上げちゃったほうが 得策かと。
 
 ということで、今回は俳句ばっかりで解説のほうがオロソカでありましたが、ま た来週♪


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