- 【アルバム名】
- EXPERIENCE (PRESTIGE)
- 【リーダー名】
- JAKI BYARD (1968/9/17)
- 【パーソネル】
- ROLAND KIRK (ts,cl,manzello,kirkbam) JAKI BYARD (p) RICHARD DAVIS (b)
- ALAN DAWSON (ds)
- 【収 録 曲】
- PARISIAN THOROUGHFARE / HAZY EVE / SHINE ON ME / EVIDENCE /
- MEMORIES OF YOU / TEACH ME TONIGHT
- 【内 容】
- 「地震・雷・火事・親父」という言葉がございます。昔から怖いもの、恐ろしい
ものの代表としてこの4つがあげられているわけですが、巷間よく言われるように、こ
の4つのうち“親父”の権威は失墜したと言ってもよいのではないでしょうか。“おや
ぢ”と言えばポマード臭くって、中年臭くって、口が臭くって、靴下が臭くって、草食
動物は草食って・・・なんて、面白くないことしか言わなくって、かかわり合いになり
たくないので無視していると「草食動物は草食って・・・」と同じ発言を繰り返したり
して、傍迷惑な存在であることは間違いないものの、決して“怖い”とか“恐ろしい”
といった存在ではなくなってきていることは確かであります。で、よく昔ながらの親父
の権威を感じさせるキャラとして磯野波平があげられるんでが、私に言わせればナミヘ
イなんてものは到底“理想の父親像”とは呼べませんね。それは主として次にあげる3
つの理由からなんですけどね。
-
- (1)カツオの言うことを聞かずに、頭ごなしに叱る、怒鳴る、頭を殴る。
- (2)大人げない。
- (3)毛がない。
-
- このうち“大人げ”と“毛”がないのは、まあ御愛嬌として、問題は(1)ですな
。テレビに映っているのが判っていながら、いやテレビに映っているのが判っているが
故に、自己の権力を見せつけるが為に繰り返されるカツオへの執拗な暴力。テレビ放映
中であの有り様だから、影ではどんなひどい虐待を加えているのか判ったもんじゃあり
ません。巷間まことしやかに囁かれる都市伝説「サザエさんの最終回」で、“カツオが
グレる”とされているのはサザエの不倫だけが原因ではなく、波平の虐待が大きな引き
金になっているのも尤もであります。なかには「最近、カツオの声が変わったのは波平
の虐待に体する自己防衛から多重人格の症状が現れている為ではないか?」という意見
を述べるものもおりますが、それはただ声優さんが変わっただけだと思いますけどね。
カツオ役の声優さんが死んだとき、波平役の声優さんが「親より先に逝く奴があるか!
」と言って泣いてたので、根はいい人みたいですけどね、波平。
-
- で、“親父”の権威は失墜したものの、残る“地震・雷・火事”の恐ろしさは現
在でも変わることはありません。中でも地震に関しては、あの阪神淡路大震災で改めて
恐ろしさをしらされましたよね。「日本じゃ地震対策がしっかりしてるから、外国みた
いに地震で何千人も死んじゃうことはないんだもんね。」なんて思って暢気に構えてい
たら、何のことはない。人類の叡知なんてものは大自然の前ではまるっきり無力だとい
うことを、大地震や火山の噴火とかが起きるたびに思い知らされます。最近の伊豆諸島
の地震でもそうですね。「今年の夏休みは新島に行くのぉ♪」と張り切っていたひなの
ちゃんも、これで少しは浮ついた気持ちを反省することでしょう。で、あとは“雷”と
“火事”ですかぁ。私は“火事”のほうはすでに小学5年生で経験しちゃった早熟ボー
イなんですが、まだコドモだったから事態をそれほど深刻には受け止めてなかったんで
すよね。「家が燃えたから、明日はガッコ休めるぅ?」みたいな。でもよく考えたら一
生に一度あるか、ないかという、とっても貴重な経験だったんですね。今だったら“火
事ネタ”で1週間は食いつなげますもんね。
-
- で、残りは“雷”であります。先日、『まさこさまのページ』(“らりらり・り
んく集♪”参照)を見ていたら雷の話が書いてあって「1回分のネタ、もらった!」と
思ってしまったわけなんですけど、ちょっと引用させていただくと
-
- > 友人は、地球上に落ちる雷の7割は海に落ちるんだから大丈夫やといいます。
- > それは地球上の7割は海だからだと思います。
- > 友人は、光った瞬間、すでにここには落ちていないんだから大丈夫だといいます
。
- > でも次の雷は私の頭上に落ちるかもしれません。
-
- これを読んで私は「なるほどぉ。。。」と深く頷いてしまったんですが、確かに地
球上の7割は海だから、確率からいっても雷の7割は海に落ちますよね。ただ雷が落ち
る、落ちないというのは単純に面積の問題ではなく、やはり“落ちやすい性格”とか“
私ってぇ、わりと雷が落ちにくいタイプでぇ。”といった個人差があると思うんですけ
どね。で、後半の“光った瞬間問題”に関しては、まこたんのお友達(ぎゃる?)の言
うことは全面的に正しいです。よく、「ぴかっ!と光ってから、ゴロゴロゴロと音が聞
こえるまでの時間が長ければ長いほど雷は近い。」と言いますが、それは光の伝わる速
度と音の伝わる速度に大きな違いがあるからですね。音なんてのはせいぜい頑張っても
“マッハ1”が限界なんですが、光なんか“光速”ですもんね。1秒で地球を7周半で
したっけ?どうして“半”なんて半端が出るんだ?と言われても、光はべつに地球の円
周に合わせて速度を決めたわけじゃないので、それは仕方ありません。で、つまりまあ
雷がピカッ!と光った時点では既にどっかに落ちているわけでありまして、それでも生
きているということは「だいじゃぶだった♪」ということなんですが、確かにまこたん
の言うとおり、次のぴかっ!が貴方を直撃しないという保証はどこにもありませんよね
。ではこの高木ブーに匹敵するほど恐ろしい雷サマから身を守るにはどうしたらいいの
か?というと、どうやら「かれい技師にお願いするのが一番!」ということが最近の研
究で明らかになってきているようです。この続きはまた明日。じゃ。
-
- @ ということで本日はジャキ・バイアードなんですが、前半部分を連載形式に
すると、いちいちオチを考えなくってすむので助かりますねぇ。で、ジャキ・バイアー
ド。
-
- ・根性焼きは いい跡残って 青春
-
- > 青春の痕跡。
-
- 根性焼きは“数が勝負”なんですが、やっぱり基本は北斗七星?で、ジャキ・バイ
アードといえば輸入盤のCDには“encyclopedia”なんていう単語が書いてありました
が、ブギウギからアバンギャルドまで、あらゆるスタイルを身につけた変態ピアニスト
として知られております。ピアノ以外にもいろんな楽器をこなすマルチ・インストゥル
メンタル・プレイヤーでありまして、その器用貧乏風なキャラがかえって日本での評価
を落としている感がありますが、無責任に聴いている分には楽しいし、その筋での評価
は高いのではないかと推測されます。ある意味、ローランド・カークに通ずる位置付け
ではないかと思うんですが、この『エクスペリエンス』はそのバイアードとカークが共
演した1枚でございます。うん、我ながらうまい話の持ってきかたでしたね。というこ
とで、では1曲目から聴いてみましょうね。
-
- 「パリジャン・ソロウフェア」はバド・パウエルの曲です。パウエル自身の演奏
はヴァーブ盤『ザ・天才』で聴けますが、それよりもブラウン=ローチのバージョンが
印象的ですね。では、ここで1句。
-
- ・やっぱりじゃん 早漏部屋には 早い人ばっかり
-
- > それはそうでしょう。
-
- ブラウン=ローチのバージョンは“パリの大通り”の雑踏や車のクラクションを模
したイントロが印象的で、初めて聴いたときには「なんじゃこりゃ?」と思ってしまい
ましたが、バイアード=カーク版も同じパターンを踏襲しておりますな。ただ、やって
る人たちが人たちだけに、より一層賑やかというか、やかましいっ!という感じになっ
ております。もともとカークって、こういうの好きそうですしね。で、やかましいイン
トロが終わって、ようやくテーマになるんですが、カークはAABA形式の“AA”の
部分をマンゼロ(たぶん)で吹いたあと、“B”以降はテナーにスイッチしております
。ソロに入ると再びマンゼロ(たぶん)ですね。お得意の“ひとりハモリ”をやらずに
ストレートに1本のホーンに絞っている点が好感が持てますね。“ひとりハモリ”は行
きすぎると“ひとりよがり”になっちゃう恐れがあるので、ま、ソロ・プレイは基本的
に“ひとりよがり”なんですけどね。で、途中、いつ啣え直した?と思うほど絶妙にテ
ナーにスイッチして、再び熱いプレイを繰り広げます。若干“へろへろ気味”なのはご
愛嬌で、最後にちょっとだけ“ひとりハモリ”が出るのもご愛嬌です。
- 続いてバイアードのソロなんですが、これは何風というんでしょうね?パウエルの
曲だからと言って、ぜんぜんバップ風ではないし、かといってモーダルとも違うし、ノ
スタルジックなスタイルとアバンギャルドな一面が微妙なバランスをとっているという
か、要するに“バイアードのスタイル”ですね。続いてリチャード・デイビスのウォー
キング・ソロがフィーチャーされるんですが、この人のソロは普通のウォーキングに止
まらない“新しいベース・ソロ”の境地を開拓しておりますね。途中から無伴奏ソロで
ワンマン・ショーみたいになってるしぃ。で、再びイントロと同じような“雑踏パート
”が演奏され、気持ちゆっくりめのテンポで少しだけテーマが演奏されたあと、エンデ
ィングとなります。この部分ではカークの“ハモリ”が炸裂ですな。ま、好きにやれば
よろしい。以上、10分に及ぶ“大根性演奏”で、1曲目にして既に燃え付きちゃった
感じが致します。
-
- 2曲目の「ヘイジィ・イヴ」は一転してバイアードとリチャ・デビのデュオとな
ります。曲はバイアードのオリジナルで、切なくって涙が出ちゃいそうな美しいバラー
ドです。原文ライナーにはストレイホーンとかエリントンらしき人物の名前が記載され
ているので、そこらあたりのスタイルだと言いたいんじゃないんですかね?愛羅義虎。
なんか中国の武将みたいでカッコイイですね、アイラ・ギトラー。で、ここでの聴き物
はバイアードのピアノ以外ではリチャード・デイビスのベースでありましょう。なんて
ったって、この2人しか演奏に参加してないわけだしぃ。で、リチャ・デビはソロに伴
奏にバックに座位にと、抜群の存在感を示しております。“ベースが目立つようになる
”というのも60年代の特徴ですからね。個人的にはロン・カーターよりもR・デイビ
スのほうが好きっ♪で、3曲目の「社員恩見ぃ」は作曲者にトラディショナルとクレジ
ットされているように、牧歌的なムードの漂うトラディショナルでありますな。バイア
ードお得意のブギウギ風ピアノにカークのクラリネットがねっとりと絡むさまは、まさ
しくトラディショナルですね。カークは途中からテナーにスイッチしますが、“GOO
D OLD”なムードは継続しておりますね。続くバイハードの“サム・グッド・オー
ルド・ファッションド・トゥ・ハンデッド・ダウン・ホーム・ピアノ”が楽しいなっ♪
モダン期以降でこんなスタイルでピアノを弾けるというのは、一種、見世物小屋的に貴
重であります。
-
- 4曲目はモンクの「エビデンス」。
-
- ・「カニですか?」「エビでんす。」
-
- > 間違えてカンニン。
-
- ひねりとか工夫とかが無さ過ぎるうえに、コメントがつまらなさ過ぎぃ。。。とい
った感じですが、原文ライナーには“Mad Bebop”なんて単語が見受けられま
すね。カークはテナー(?)で、ちょっぴり崩し気味にテーマを吹き、そこにバイアー
ドのピアノがねっとり濃厚に絡みつきます。カークのソロは時折“ハモリ”気味になる
ものの、超アップ・テンポでわりかしストレートにとっても熱く語っていて、佐久間良
好です。バイアードのピアノはバップ風ですかね?少なくともモンクの18倍くらいは
流麗でございます。はい次。5曲目の「メモリーズ・オブ・ユー」はデイビスとアラン
・ドウソンが抜けて、バイアードとカークの一騎打ちとなります。バイアードがアート
・テイタムばりの華麗なテクで責めれば、カークはベン・ウェブスターばりの“すけべ
テナー”で返します。ゆっくりしたテンポで、メロディも美しいんですが、漂う緊張感
とキンチョーの蚊取り線香の煙り。はい、ラストです。「ティーチ・ミー・トゥナイト
」。今夜、お・し・え・て♪って、何を?いや、人様に教えれるほどのテクも持ち合わ
せてないしぃ。。。と、思わず卑屈な気分になってしまいますが、負けないで、アルゼ
ンチーナ♪千葉すずの音とベースのピチカートで始まるイントロが、お客さん、凝って
ますねぇ。で、テーマはベースにカークのテナー(?)が絡む形で、小粋な感じで演奏
されます。で、ハズれたような、ハズしたようなカークの吹きっぷりが面白いですね。
アルバムの最後を飾るにふさわしいリラックスしたムードとなっております。バイアー
ドのオールド・ファッションドなスタイルも楽しいです。
-
- 以上、いかにもバイアードらしいバラエティに富んだ内容でありまして、どちら
かというとカーク色は薄めですが、黄色に少し茶色のまじったような色はカーキ色。と
いう1枚でありました。
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