【アルバム名】
WARNE MARSH (ATLANTIC)
【リーダー名】
WARNE MARSH (1957/12/12,58/1/16)
【パーソネル】
WARNE MARSH (ts) RONNIE BALL (p) PAUL CHAMBERS (b)
PHILLY JOE JONES (ds) PAUL MOTIAN (ds)
【収 録 曲】
TOO CLOSE FOR COMFORT / YARDBIRD SUITE / IT'S ALL RIGHT WITH ME /
MY MELANCHOLY BABY / JUST SQUEEZE ME / EXCERPT
【内   容】
 横浜で中華料理を食べた話です。中国人ギャルの港楊子(コウ・ヤンスー)が「 我目標的中華料理店也“曲暁明之店”、塩鯖一号訪問、関鯖師匠的案内、同行昆布青年 超愛好振動的大人向玩具。」と紹介していた“曲暁明の店”ですね。今年の春に実施さ れた「渋谷アセンションナイト」の前々日、関サバ師匠に連れられて昆布青年と共にラ ブラブな一夜を過ごした思い出の場所であります。と同時に、私にとっては屈辱の地で もあるわけです。関サバ師匠がとある豆腐料理を注文した直後、更なる追加注文を迫ら れた私は「あのあのぉ、えっとえーとぉ・・・」と大いに狼狽し、なかなか自分の食べ たい料理を決めることが出来なかったわけであります。これは致命的でございました。 横に座っていた昆布くんにも「まあ、なんて決断力のない人なのぉ。さばさんってサイ テーねっ!」などと思われたに違いないのです。当然、部下のこの大失態は直属の上司 である関サバ師匠にとっても面白いものであるはずがなく、「自主性ゼロ、行動力皆無 。将来、ウチの課を背負っていくに値せず。」という査定が下され、この時点で私の将 来の出世は絶望的なものになったと判断せざるを得ません。私は焦りました。なんとか この情況を挽回すべく、必死で注文の品を決めようとは思うのですが、気ばかり焦って 正常な判断能力が著しく欠如してたんでしょう。もぉ、なんでもいいや〜!とステバチ な気持ちになって、テキトーに目についた豆腐料理を注文したところ、店の姉ちゃんに 「豆腐料理はさっき頼んだので、他のものにされたほうが・・・」などと言われてしま ったわけでございます。いや確かに、自分でも「豆腐ばっかりやなぁ。」とは思ってい たんですけどね。でも客が食いたいと言っとるんやから、黙ってニコニコ笑って注文聞 いてりゃいいんだよぉ!と心の中で叫んでいたんですが、シャイな私は口に出して抗議 することも出来ず、ひとり黙ってイジけていたわけです。見るに見かねた関サバ上司が 「この店のお薦めはなんですかぁ?」と聞いてくれたため、私はそのお薦めの「豚の角 煮」を注文することでその場を取り繕うことが出来たんですが、店の姉ちゃんもきっと 心の中で私のことを嘲笑していたに違いないのです。
「まあ、豆腐料理を2つも注文したりして、この人、考えなしなのねっ。アタマ悪 いのねっ。きっと、アッチのほうも早いんだわっ!」
なぜ、豆腐料理をダブって注文したくらいで、アッチのほうのことまで馬鹿にされ にゃならんっ!
 
 平成11年7月6日、七夕前夜、ひなのちゃん誕生日イブの夜。我々、青年と中 年と初老の3人組は、私に屈辱を与えた中華姉ちゃんに対する利便児を、いや、そんな 麒麟児の親戚みたいなものじゃなくて、中華姉ちゃんに対するリベンジを果たすべく、 勇躍“曲暁明の店”へと乗り込もう!と思ったのはいいんですが、なんせ店の場所がう ろ覚えでありまして。この3人組の中では、トシ若きとはいえ私が監督員の立場でござ います。ここで私が「横浜通」であることを見せつけて尊敬を勝ち取り、今後の仕事上 での立場を優位に進めようという魂胆で中華料理屋へ案内すると宣言したのはいいんで すが、なんせ前回は関サバ師匠の後についていっただけだから、「なんか海のほうに向 かって結構歩いた。」という記憶しかないわけでございます。さんざん迷っておじさん 達を疲労させたあげく、ようやく店にたどりついた時には、私の監督員としての権威は 地に陥ちていたことでありましょう。気を取り直してビールで乾杯!ここでいよいよ「 注文の儀」となるわけです。注文を取りにきたのは、まがうことなき問題の中華姉ちゃ んでした。そちらのほうは、3ヶ月ほど前にふらっとやってきて豆腐料理をダブって注 文した、決断力の極めて貧困たる「早いのね青年」のことなど覚えているハズありませ んが、こちとら復讐の念に燃え、この数ヶ月間歯茎から血の滲むような思いをしてきた のです。ビシっとカッコよく注文してやるぜぇ!
すかさず私は「中華風冷や奴」の注文に成功しました。前回、関サバ師匠が注文し たやつですね。これで、続いて豆腐料理さえ注文しなければ、私はこの姉ちゃんに対す る雪辱を果たすことが出来るわけです。緊張のあまり唇の乾きを覚えながら、私は厳か に注文の言葉を発しました。
「海老チリっ!」
完璧やん!そしていよいよ「とどめの言葉」を口にする時がやってまいりました。 お姉ちゃんに「お薦め」される前に「豚の角煮」を注文する。このことではじめて、
「まあ、この店のお薦め料理を注文するなんて“通”なのねっ♪アタマも賢いのね っ♪きっと、アッチのほうもテクニシャンなのねっ♪」
という尊敬を勝ち取ることができるわけなのです。さあ、栄光の時はもうすぐそこ に!私がその「栄光の言葉」を口にしようとしたその瞬間、中年のほうのおじさんが、
「この店のお薦めって何?」
「そうですねぇ、豚の角煮なんかが。」
その日に食べた「豚の角煮」は涙でちょっぴりしょっぱい味がしました。おしまい 。
 
 @ うーん、「小ネタでポン!」って感じでしたねー。でも確かに「涙の味」っ てありますよね。目から鼻を経由して、しょっぱい涙が口の中にまで伝わってくるわけ でございます。実際には移動の過程で鼻水が30パーセントほどブレンドされて「天然 のカクテル」というべき存在になっているんですけどね。あらかじめ口にグレープフル ーツジュースをふくんでおけば、気分はもう「ソルティドッグ」。ここに大量の鼻血が 流入すれば、深紅のカクテル「キスオブファイアー」の出来上がり。味のほうはちょっ ぴり鉄っぽくて、あまりお薦めは出来ません。しかし「鼻血」というのも一種独特の味 わいがありますよね。最近はちょっぴりオトナになったせいか、鼻血を味わう機会もず いぶん少なくなってしまいましたが、コドモの頃はよく鼻血が出ました。鼻クソをほじ りすぎたと言っては鼻血を出し、チョコレートを食べすぎたと言っては流血し、風呂で のぼせたと言っては「ちり紙」を赤く染めておりました。世界中の子供が1年間に鼻に つめた「ちり紙」をぎゅーっと絞れば、170万人の血友病患者を救えるだけの血液製 剤を作ることが出来ると言われております。ああ、鼻血は世界を救う!
 
 とまあ、これだけ余計なことを書いておけば、そろそろ本題に入っても大丈夫で しょう。なんせ、ウォーン・マーシュだから書くことないんっすよねー。甘いもの好き が和菓子を発見?それは「うぉーっ、饅頭っ!」って、うなるほど嬉しいか?というネ タを書いてしまえば、その先は一歩も進みません。しかたないからマトモなことを書く と、ウォーン・マーシュというのはレニー・トリスターノ・スクールの出身ですよね、 多分。このトリスターノ派というのは、なんだかとってもクールな一派でありまして、 マーシュのほかにはリー・コニッツやビリー・バウアーなどがいたのではないかと。「 ヨーロッパ系」や「まだ生きている系」同様、私が不得手としている分野であります。 んで、この『ウォーン・マーシュ』という、そのまんまやん!なタイトルのアトランテ ィック盤はチェンバースやフィリー・ジョーといったバリバリのハード・バッパーとの 共演が興味深いところです。んじゃ、1曲目からいってみましょう。
 
 「トゥ・クロース・フォー・ザ・コンフォート」。短いイントロに続いて棒的遅 延乗合自動車が身体密着的スカートでメロディを奏でます。この棒的クン、なかなかイ ケてますね。不入女上手のひかえめな支持も良好です。続いて饅頭のテナーが登場する わけですが、なんとも特徴的なトーンですな。根性希薄的ではありますが、歌心良好的 であります。おお、ちょっぴりノッてきたなぁ!という瞬間、演奏はなぜだかフェード アウト。あ〜ん、途中でやめないでぇ!という悲痛な叫び声が聞こえてきそうな、むご い仕打ちでございます。次。パーカーの「ヤードバード組曲」ですな。ピアノレス・ト リオの演奏で、太鼓叩手が女上手から棒的餅餡に変わります。ここでも棒的遅延乗合自 動車の活躍が光ります。いいぞぉ、棒棒コンビぃ!
 
 3曲目は再び女上手が戻ってピアノも入ります。ピアノを弾いているのは浪人玉 という人ですな。あ、演奏しているのは、おなじみコール・ポーターの「イッツ・オー ル・ライト・ウィズ・ミー」。私の持っているCDでは「私はご満足」なんて邦題がつ いておりまここでも棒的クンのベースが大活躍。でも後半に登場する棒陰具ソロはちょ っと・・・。ピアノの玉クンがなかなかの演奏を聴かせてくれますね。棒玉コンビの好 サポートを得て、至極ご満足のマーシュが快適なブローを聴かせてくださいます。ハー ドバップ的なスリルに溢れた演奏として、個人的には本アルバムのベストに推挙いたし たく存じます。残り3曲はすべてピアノレス・トリオによる演奏。そのせいか、ちょっ ぴりロリンズ的なような?いや、ぜんぜん違うか。「マイ・メランコリー・ベイビー」 「もっと強く抱いて」とおなじみの曲が続き、最後はマーシュのオリジナルの「エクサ ープト」。其主題的意味也抄録・抜粋・引用。饅頭使用不利奇異的音程、自由奔放的演 奏披露。ということで、横浜で中華料理を食べて以来、すっかり中国の虜になった塩鯖 或。再見。


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