【アルバム名】
LIVE AT THE TRIDENT (COLUMBIA)
【リーダー名】
DENNY ZEITLIN (1965/3/22~24)
【パーソネル】
DENNY ZEITLIN (p) CHARLIE HADEN (b) JERRY GRANELLI (ds)
【収 録 曲】
INTRODUCTION ~ ST.THOMAS / CAROLE'S WALTZ / SPUR OF THE MOMENT /
WHERE DOES IT LEAD / LONELY WOMAN / MY SHINING HOUR / QUIET NOW /
AS SIXES AND SENENS / WHAT IS THIS THING CALLED LOVE
【内   容】
 私は先週ずっと、金山(かなやま)南ビルというところでシゴトをしておりまし た。ただいま建設中の31階建て(130メートルくらい)のビルです。そこの屋上に 発電機が入ったのでクーラント(エンジンに入れる冷却水)と燃料(A重油)を運べ! という、たいへんインテリジェンスにあふれた仕事の依頼でありました。エレベータが 31階まで行っているので、そこから33階相当まで階段で昇って32階(ペントハウ スみたいなところ)へ降りろ。だって。クーラントというのは水で30%程度に薄めて 使うんですが、とりあえず最初は水だけで運転する。その水も運ぶように。だって。水 道は29階に蛇口があるのでそれで何とかしろ!燃料は200リットル!クーラントは 18リットル缶で22缶!水は1300リットルぅ!!ほとんど「私はマゾ、もっと虐 めてぇ!」というような仕事でありました。
 
 しかもこれがまた「どえれえ、うるせぇ」現場でして、作業服は長袖、ヘルメッ ト&安全帯の着用厳守、安全靴は長靴タイプじゃなけりゃ「脚半」を着けろ!だって。 安全帯というのは「安全帯をつけていれば安全たい!」と、主に九州地方の作業員から 絶大なる支持を得ているんですが、そんなことはどうでもいいですね。「服装注意」の 話を全然聞いていなかった私は半袖の作業服を着て、脚半もつけずにフラフラと現場へ 行ったんですが、たちどころに「帰れ!」と叱られてしまいました。細かいこと言うな !ビルを建てるというような大きな仕事をするヒトは、もっと大らかであって欲しいで すね。たとえ当初の計画が31階建てのビルだったのが、いざ建ててみたら3階建てに なってしもたがな。というような場合でも決して慌てず騒がず、気にするな!みんな、 海のような広い心を持とうよ!と思ったんですが、電気JVの職長さんは許してくれず 、結局その日は現場に入れて貰えませんでした。
 
 次の日、身支度を整えていざ金山へ。別に脚半でもよかったんですが、編み上げ のロングタイプの安全靴を着用してまいりました。会社の金や、一番高いの買ってやっ たぜ。ヘルメットも安全帯もびしっとキマって、どこからどうみても押しも押されぬ建 築作業員。いぇーい、これぞ男の世界。と思ったら、最近の建築現場にはわりと若い女 の子もいるんですよね。ちゃんとエレベーターガールもいました、ヘルメットかぶって 。愛想がないのなんの。女の子は顔はそこそこでも愛想がいいのが一番やん。と力説し たい午後11時の金山南ビルでありました。おっとその前に「新規入場教育」。ヘルメ ットをそこらにほっぽりだして永久追放処分になったアホが今までに3人いる、なんて 話を聞かされました。どの世界にもガルベスみたいなヤツはいるもんなんですね。しみ じみ、そういう職人を配下に抱えた監督さんの苦労がしのばれる、せつない話でござい ます。
 
 その日の夕方。ウチの職人さんがぽつりと一言。
「あ、ヘルメットがない〜。」
翌日の新規入場教育の「永久追放処分」は「4人」に増えていたそうです。
本日の発見:意外と身近にいた!
 @ さて本日はデニー・ザイトリンの『ライブ・アット・トライデント・シュガ ーレスガム』。あ、シュガーレスガムは余計でしたね。これは塩サバ9号@鰈さんから のリクエストです。鰈さん、俳句王決定戦の「不可王」めざしてもっか驀進中です。今 週中には発表できると思いますのでお楽しみに。このアルバム、シェトワ白揚・桑名店 というあまりジャズの充実していない近所のレコード屋で発見しました。小さなレコー ド屋のジャズコーナーって時々「なんでこんなモノが?」って思うようなのが交ざって たりするんですよね。ま「SJ名盤蒐集CLUB」の1枚だから、そのツテで並べられ たのでしょう。エバンス派のピアニストらしいんですが、私はアンタに一言いいたい。 ヒゲ剃れよ!
 
 イントロダクションに続く1曲目はロリンズの「セント・トーマス」。ノー天気 な曲なのでザイトリンのピアノスタイルがよくつかめませんね。とりあえず軽く聴きな がしましょう。2曲目から4曲目までザイトリンのオリジナルが続きます。「キャロル ズ・ワルツ」はいかにもエバンス派やん!という感じの曲。コレです、我々がエバンス 派のピアニストに求めている世界は。エバンス派のピアニストが「いぇーい!」なんて 言いながらハイパーヨーヨーで「犬の散歩」とかしていたら幻滅だもんね。ちょっぴり 危険な「鬱」の香り。コレです。3曲目の「スパー・オブ・ザ・モーメント」はアタマ っからチャリ・ヘイのベースが唸ります。ブルースだけど黒くない。そんなピアノを弾 くザイトリンがここにいます。でもエバンスよりはブルースの香り。4曲目、「ホエア ・ダズ・イット・リード」。ちょぴりコルトレーンの「アフロブルー」に似てなくもな いような気がしないでもない暗いフォーク調のバラード。ザイトリンが妻のキャロルか ら教わったフォーク・ソングが土台になっている、と、オバQのラーメンおじさんに似 てなくもないような気がしないでもない児山紀芳センセーが書いてます。コイケさんで すね。
 
 5曲目。チャリヘイのベースのイントロ聴いて、こりゃ「ロンリー・ウーマン」 やな、と思ったらやっぱりそうでした。ピアノトリオで聴くと、やっぱりコレ、綺麗な メロディなんですね。MJQも取りあげてますが、そのアルバムタイトルが『淋しい女 』。わざわざ日本語に訳さんでもええと思うけど。ザイトリンのソロはテーマメロディ なんか関係ないわい!とばかり、かなり無茶苦茶ですね。フリーなのか?コレは。聴い てたら疲れたので次いきましょう。本アルバムで唯一のスタンダード「マイ・シャイニ ング・アワー」。かなり速いテンポですね。フレージング自体はわりとオーソドックス 。2分25秒で終わるけど、それくらいが無難でしょう。「クワイエット・ナウ」はお 待ちかね、エバンス風の雰囲気陰気バラード。ちょっと「プレリュード・トゥ・ア・キ ス」に似てる気がしないでもないです。いいなぁ、生きる希望がなくなるなぁ。え、9 分もあるの?次。「アット・シックス・アンド・セブンス」。7拍子と6拍子が交錯し (←するなよ!)、4分の13拍子にもなるという(←なるなよ!)変拍子の曲。だけ どモロでい、いやペンがすべった。だけどメロディはキュートで、あまり変拍子を感じ させません。ソロはかなり「イッちゃって」ますが。ジェリー・グラネリのスネアが効 いてますね。骨皮?それはスネオ。ラストの「ホワット・イズ・ディス・シング・コー ル・ラブ」はものすごい急速調。疲れます。
 
 以上です。ふーん、鰈さん、こんなの好きなんですか。やっぱりねぇ。というこ とで、皆さん、ヘルメットは大事にしようね!


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