【アルバム名】
SOMETHING COOL (CAPITOL)
【リーダー名】
JUNE CHRISTY (1953~1955)
【パーソネル】
JUNE CHRISTY (vo) / PETE RUGOLO & HIS ORCHESTRA
【収 録 曲】
SOMETHING COOL / IT COULD HAPPEN TO YOU / LONELY HOUSE /
THIS TIME THE DREAM'S ON ME / THE NIGHT WE CALLED IT A DAY /
MIDNIGHT SUN / I'LL TAKE ROMANCE / A STRANGER CALLED THE BLUES /
I SHOULD CARE / SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE / I'M THRILLED
【内   容】
 やっぱり原稿はホテルの部屋やビーチで書くより、会社や家でゆっくり書くのが 一番ですね。中でもジャズの原稿は実際に音を聴きながら書くことになるので、家で書 くのが一番です。ということで久し振りの落ち着き原稿は「女性ボーカルとラーメンに ついての考察」です。
 
 女性ボーカルというのは、好きな人なら声質やフレージング、バックのサウンド など、細部にまでとことん「こだわる」ものなのでしょうが、私にとっては「うまい歌 」と「へたな歌」に大別すればそれで十分という世界です。「うまい歌」の中で誰が1 番だとか、そんなことはどーでもええ。私がこういうスタンスをとっているものがもう 1つあって、それは何かというと「ラーメン」なのです。世の中、ラーメンなんか「う まいラーメン」と「まずいラーメン」に大別すればそれで十分という東海林さだお先生 の意見には全面的に賛成であります。
 
 で、女性ボーカルのアルバムをラーメンに例えるとボーカリストは麺ですね。細 め、太め、コシのある、ウドンっぽいなど、色々なタイプがあります。伴奏するメンバ ーがラーメンに入れる「具」。ピアノがシナチク、ベースがネギ、ドラムスがナルトと いうことになります。ギターの存在をノリに例える人もいますが、歌伴におけるギター の存在はむしろコーン的といってもよいと思います。サックス、トランペットなどの管 楽器はチャーシューとか野菜とかに相当し、オーケストラによる伴奏などは、さしずめ 五目チャーシューメンと呼べるでありましょう。取りあげている「曲」がラーメンでい う「スープ」に相当し、有名スタンダードばかりのアルバムは正統派醤油ラーメンの味 わいであります。「奇妙な果実」などは、ちょっぴり刺激的な「キムチラーメン」の味 わいですね。
 
 @ で、ジュン・クリスティーの『サムシング・クール』。これなんかは行列が 出来るラーメンの名店と言っていいでしょう。よく「うまいラーメン屋はのれんの揺れ かたに力がある」なんていいますが、その「のれの揺れかた」に相当するのがアルバム のジャケット。この『サムシング・クール』の「のれん」はイイですねぇ。いかにも5 0年代のアメリカって感じのする「のれん」です。(ちなみに都はるみが涙こらえて編 んでるのが「みれん」。)ショーティ・ロジャースやラス・フリーマン、バーニー・ケ ッセルなど、厳選された「具」の入った賑やか五目チャーシューメンで、麺は縮れの少 ない細目タイプ、スープは醤油をベースに鷄ガラ系のダシを効かせた「うまみ」のある タイプと言えるでしょう。
 
 で、1曲目、タイトル曲の「サムシン・クール」。うまい。以上です。だって、 麺とスープのバランスがどうのこうのと「こだわる」タイプじゃないんだもん。うまけ りゃそれでええやん、なんだもん。かなり編曲は凝ってますね。でも個人的にはチャー シューとメンマとネギとコーンが入っただけのシンプルタイプが好きです。
 
 あとは気になる曲をピックアップするだけで茶を濁しちゃいましょう。「ザ・ナ イト・ウイ・コールド・イット・ア・デイ」。これはチェット・ベイカーが「ぼそぼそ 」歌ってたヴァージョンのほうがイイです。「アイル・テイク・ロマンス」。しみじみ してると思ったらいきなり派手になりました。「アイ・シュッド・ケア」。これはパウ エルかバリー・ハリスで聴きたいところです。「朝日のように爽やかに」。これはBN のソニー・クラーク・トリオですよね。
 
 というわけで、確かにおいしいんだけど、ちょっとタイプじゃないな、というの が本作を鑑賞した全体の総括であります。すまん。ド素人をラーメンの名店に連れてい っても無駄であるという見本のような中身のない解説になっちゃいました。というわけ で、白人4人娘(ペギー・リー、クリス・コナー、アニタ・オデイ、ジュン・クリステ ィ←勝手に選出)はこれにて終了。明日はヘレン・メリルです。もちろん「アレ」でっ せ。では。


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