【アルバム名】
BOSSA ANTIGUA (RCA)
【リーダー名】
PAUL DESMOND (1964)
【パーソネル】
PAUL DESMOND (as) JIM HALL (g) GENE WRIGHT (b) CONNIE KAY (ds)
【収 録 曲】
BOSSA ANTIGUA / THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES / O GATO / SAMBA CANTINA / CURACAO DOLOROSO / A SHIP WITHOUT A SAIL / ALIANCA / THE GIRL FROM EAST 9TH ST.
【内   容】
 今回はポール・デスモントです。ポール・デスモントと言えばポール・マッカートニー、ポール牧と並ぶ世界3大ポールの一人です。デイブ・ブルーベック・カルテットの一員として知られ、あの有名な「テイク・ファイブ」はデスモントの作曲です。ビル・エバンス同様、おたくジャズやるようには見えないしィ、そういうタイプじゃないしィ、似合わないしィ。という風貌で、ちょっとイルズン神父に似てますね。誰も知らないと思いますが。いるずん。その音楽スタイルも知的であり、ファンキー、アーシー、いぇーい、といった言葉の対極にあります。アルトのトーンにも独特の透明感があって、ちょっとクラリネットみたいな感じがします。デスモントのいないデイブ・ブルーベック・カルテットなんて、プッチンできないバッタもんのプッチンプリンみたいなもんですね。容器から直接スプーンでホジって食えばいいんですが。で、自分のリーダー作となると、ギターのジム・ホールと組んだヤツなんかがなかなかいいです。典型的な白人ジャズやなあという感じで、軽いと言えば軽い。そんな中で今回は『ボッサ・アンティグア』というアルバムを選んでみました。「ボサットスナ・アンタ」にちょっとだけ似てますね。ボッサというのはボサノバのことです。ああ、名古屋の栄にある。それは栄ノバ。ああ、納豆。それはネバネバ。こんなんばっかりやな。ブラジルのアントニオ・カルロス・ジョビンなんかが始めたソフィスティケイトされたサンバとでもいうべきスタイルですね。ちなみにアントニオ・カルロス・ジョビンというのはアントニオさんとカルロスさんとジョビンさんの3人ではなく、アントニオ・カルロス・ジョビンさん1人です。略してアンカルジョ。ボサノバのスタイルというのはデスモントのアルトにぴったりと言う感じがします。ジャズマンによるボサノバ演奏というと、「イパネマの娘」や「ディサフィナード」などのボサノバの有名曲をそのままやる場合と、ボサノバのリズムを用いたオリジナル曲を演奏する場合とがあります。デスモントのこのアルバムは後者のほうです。1曲目のタイトル曲をはじめ、8曲中5曲がデスモントのオリジナル。ジム・ホールのギターのイントロに続いてデスモントが美しいテーマ・メロディを吹き始めた瞬間、あ、なんかええ感じやん。と思いました。洗練されてるぅ、って感じ。ど素人でもすうっと入っていける感じですね。だいたいボサノバって日本人にもわかりやすいヨナ。いい感じだヨナ。ヨナはまだ、16だからー。 2曲目の「夜は千の眼を持つ」はスタンダード。通称「ヨルセン」。これもボサノバにアレンジされている。なんかマヌケな曲なんだけど、ボサノバでやると上品な感じになるのが不思議だ。この曲の姉妹品として「千手千眼観音は千の眼を持つ」というのを考えたんですが、いかがなものでしょうか。 3曲目の「オーガ・トー」はジェーン・ハーバード、4曲目の「サンバ・カンティーナ」はデスモントの曲。いずれも綺麗なメロディなんですが、はっきりいってこれくらいになってくるとマンネリ化の兆しが見えはじめてきます。リズムがどれもこれもワンパターンなんやもん。もっとスリルを!泥臭さを!カムバック、ファンキー!とデカい声で叫びたくなります。それがどうかしましたか?やかまし。と、イルズン神父に似たデスモントに言われそうですが。ボサノバは1枚のアルバムに2曲まで。というのが今回の結論です。


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