【アルバム名】
GO MAN! (IMPERIAL)
【リーダー名】
SONNY CRISS (1956/2/24)
【パーソネル】
SONNY CRISS (as) SONNY CLARK (p) LEROY VINNEGAR (b)
LAWRENCE MARABLE (ds)
【収 録 曲】
SUMMERTIME / MEMORIES OF YOU / WAILIN' WITH YOU /
HOW DEEP IS THE OCEAN / THE BLUES FOR ROSE /
THE MAN I LOVE / UNTIL THE REAL THINGS COME ALONG /
BLUE PRELUDE / AFTER YOU'VE GONE / COME RAIN OR COME SHINE /
HOW HIGH THE MOON / IF I HAD YOU
【内   容】
 なんかの雑誌(スイングジャーナルの別冊だったと思う)の対談記事で、誰か( レコード屋の店員だったと思う)が言っていたが、ソニー・クリスのCDは出せばすぐ に売れるそうである。なぜかというと、私のようにソニー・クリスのCDが出たらすぐ に買うという人がいるからである。買う人がいるから売れる。うまくできているじゃな いか、資本主義。出せば売れるもんだから、ありとあらゆるアルバムがCD化されてい る。プレスティッジの7作、ミューズ・ザナドゥの諸作はまあわかるが、インペリアル 3部作も3枚ともCD化されている。インペリアルだぞ。日本語で言えば皇帝のとか帝 国のとか。エンペラーの形容詞らしい。ソニー・クリス以外になんかジャズのアルバム 出しているのか、といいたくなるようなマイナーレーベルの作品ですらCD化されてい るのである。ピーコックの『アット・ザ・クロスロード』なんてのもCDだぞ。最晩年 の『ワーム・アンド・ソニー』『ザ・ジョイ・オブ・サックス』も。この2枚なんかフ ュージョン仕立てだぞ。おじさんは哀しい。クリスのアルト自体は昔とそんなに変わっ ていないのに、バックアレンジに問題ありまくりで、なんか非常にやるせない気分が横 溢しまくっているぞ。ああ、こんなクリスに誰がした。というわけで、こんな時には原 点に帰ろう。インペリアル3部作だ。はっきり言ってインペリアルのクリスは評価が分 かれると思う。脳天気にアルトを吹きまくっているだけで人生の哀感みたいなのが全然 伝わってこないし、フレーズもくどい。一般的には人生の悟りを開いたかのような『サ タディ・モーニング』で泣いた、という人が多かろう。クリスって絶対に躁鬱気質だと 思うが、欝状態の典型を『サタディ・モーニング』とするとインペリアル3部作はスッ コーンと躁状態ですな。3部作の中では余計な楽器が入ってないのとソニー・クラーク のブルージーなピアノとジャケットのセンスを買って『ゴー・マン』を1等賞としよう 。いかにも時代を感じさせるレトロなスクーターにすけべそうな兄ちゃんとタカビーな 姉ちゃんが二人乗りしている。「さあ、早く行ってちょーだい。」というような傲慢な 態度は、アルバムタイトルの「ゴー・マン」にかけてあるのだろう。それにしてもこの 姉ちゃん、スカートはいてるのか?靴はいてないし。このアルバムの注意事項。ハード バップやファンキー系を期待してはいけません。これは「ビ・バップ」です。12曲も 入ってるし。クリスのアルトは林家こぶ平言うところの「納豆のばしのばし的フレーズ 」のオンパレード。ソニー・クラークのピアノはファンキーな香りがしますので、ここ で口直しをしましょう。「サマータイム」のイントロなんかブルージーで素晴らしい。 クリスのアルトが出てきてムードぶち壊しですが。クリスはナイーブで非常に傷付きや すい人間だったそうですが、インペリアル時代の演奏を聴いていると、そんな弱い人間 の精一杯の強がりみたいなものを感じさせます。アルトを吹くことによって、迫りくる 不安と格闘している姿が見えます。あ、左の肩に落武者の亡霊が。しかし、いくらなん でも「降っても晴れても」のフレーズはもう、くど過ぎぃ?みたいなぁ。「ハウ・ハイ ・ザ・ムーン」は「オーニソロジー」だし。この頃のクリスはアップテンポのバップ・ ナンバーが超凄すぎぃ、であります。


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