【アルバム名】
KNOW WHAT I MEAN? (RIVERSIDE)
【リーダー名】
CANNONBALL ADDERLEY (1961)
【パーソネル】
CANNONBALL ADDERLEY (as) BILL EVANS (p) PERCY HEATH (b) CONNIE KAY (ds)
【収 録 曲】
WALTZ FOR DEBBY / GOODBYE / WHO CARES? / VENICE / TOY / ELSA / NANCY
【内   容】
 私の名前はキャノンボールでっす。もっちろんあだ名に決まってまっす。という わけでキャノンボール・アダレイ。あやしい。名前がむっちゃあやしい。私がまだジャ ズの素人だった頃、本で「キャノンボール・アダレイのサムシン・エルスのマイルスの 枯葉が凄い。」というような文章を読んだが、どれが人の名前でアルバムの名前なのか 、さっぱりわからなかった。で、ようやくキャノンボール・アダレイというのが人の名 前だとわかり、同時に「なんちゅう強引な名前や。」と思った。さすがに本名ではなく て、あだ名、もしくは芸名というようなものであったけれども。本名をジュリアン・ア ダレイという。笑わしよんな、ジュリアン。キャノンボールという呼び名が示すように 、かなりデブなおっさんである。太った人が脳天気だというのはクレッチマーに言われ るまでもなく見れば一目でわかるが、この人も根っからの脳天気。絶対に5月病になら ないタイプである。るんるん。リーダー作としては先ほど出てきた『サムシン・エルス 』が有名だが、あれは実質的にはマイルスのリーダー作である。ブルーノートのアルフ レッド・ライオンは、どうしてもマイルスのアルバムを1枚作りたかったのだが、マイ ルスはすでにコロンビアと契約を結んでいた。本当にコロンビアか。プレスティッジと いう可能性はないのか。と聞かれると、調べたわけではないので自信はないが、テイチ ク・レコードでなかったことは確かだ。で、マイルスのリーダー作を作ることは不可能 だったので、アルフレッドは名義上のリーダーをキャノンボールにして、マイルスをサ イドマンとして参加させたのだった。以上、ジャズファンなら誰でも知ってる話だが、 他に書くこともないのでとりあえず書いておいた。ジャズ・メッセンジャーズの初来日 の時、ソバ屋の出前持ちが口笛で「モーニン」を吹いたとか。ジャズファンやっただけ ちゃうの?その出前持ち。グラスの底に顔があるように、ジャズファンの出前持ちがい たっていいじゃないか。
 さて、コテコテのキャノンボール・ファンなら、なんと言っても『イン・サンフ ランシスコ』が楽しい。やっぱりキャノンボールはナット・アダレイ(実弟)とティモ ンズ入りだな。スタジオ盤だと『ゼム・ダーティ・ブルース』。これはピアニストがテ ィモンズとバリー・ハリスの2つのセッションから成る。CDだと、あの『ワーク・ソ ング』が2人のピアニストで聞き比べできます。ファンキー系はどうもちょっと頭が弱 そうで苦手(なんて失礼な)という人はコルトレーン入りの『イン・シカゴ』。「アラ バマに星落ちて」で、のびのびしたアルトが楽しめます。もっと頭のよさそうなのがい い、と言うならビル・エバンスと共演した『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』しかあり ません。キャノンボールとエバンス。底抜けに明るい人と極限まで陰鬱な人。人間、こ れくらい両極端だと、案外うまくいくかも知れん。「ワルツ・フォー・デビー」、「エ ルザ」という選曲からもわかるように、演奏はエバンス主導で進められます。ここでの キャノンボールは全然「らしく」なくて、最初聴いた時は違う人かと思った。と誰かが 書いてましたが、それほどでもない。いつもの脳快晴が、脳薄曇りになった程度。明る さ、のびやかさを残しながら、ちょっと「おりこう」になった、という感じです。パー シー・ヒース、コニー・ケイのMJQコンビも「おりこうジャズ」にはぴったり。もし かして案外かしこいんじゃないか、キャノンボール。と思わせる1枚です。


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