【アルバム名】
SOMEDAY MY PRINCE WILL COME (COLUMBIA)
【リーダー名】
MILES DAVIS (1961/3/7,20,21)
【パーソネル】
MILES DAVIS (tp) HANK MOBLEY (ts) WYNTON KELLY (p)
PAUL CHAMBERS (b) JIMMY COBB (ds) JOHN COLTRANE (ts)
【収 録 曲】
SOMEDAY MY PRINCE WILL COME / OLD FOLKS /
PFRANCING / DRAD-DOG / TEO / I THOUGHT ABOUT YOU
【内   容】
 今回は超有名人です。もうジャズの世界で誰が有名かちゅうて、これ程有名な人 がいてもええんか、というぐらい有名な人です。で、その有名な人って誰?というくら い有名なマイルス・デイビス。マイルスのアルバムでどれか1枚という場合、よくジャ ズ本に登場するのが『カインド・オブ・ブルー』。しかしあれ、聴いていて楽しいか? 同様によくジャズ本に登場する『クールの誕生』『ネフェルティティ』。すいません。 理解できません。『ビッチェズ・ブリュー』。すいません。持ってません。というわけ で、個人的マイルス愛聴盤、輝け!栄光の第1位は『サムデイ・マイ・プリンス・ウィ ル・カム』に決定しました。日本名『いつか王子様が』。幼稚園児か。
 ハンク・モブレイ、ウイントン・ケリー、ポール・チェンバース、ジミー・コブ というクールなマイルスらしからぬ、のほほんとしたメンバー。特にモブレイやジミー ・コブなんか、よくマイルスが雇う気になったなあ、というくらいです。実際よくいぢ められていたみたいで、このセッションではたまたま遊びに来ていたコルトレーンをゲ ストで参加させたりして、モブレイに嫌がらせをしています。モブレイも最初は「天下 のマイルスと一緒に演奏出来て、ラッピィ。」とか思っていたでしょうが、こんなこと なら出なければよかった、という感じでしょう。たまたま何かの間違いで甲子園に出場 が決まって大喜びしていた弱小野球部が、いきなり1回戦でPL学園とあたってボロボ ロに負けたみたいなもんで、地元に帰って「おう、よしよし。運が悪かったね。」とア ート・ブレイキーに慰められている姿が目に浮かびます。
 1曲目のタイトル曲はディズニー映画『白雪姫』の主題歌。だから幼稚園なタイ トルなんだな。ベースがずっと同じ音ばっかり弾いてたりして、典型的なモード奏法が 聴かれます。演奏していてポール・チェンバースは、「俺、本当にこんなことしててい いのだろうか。ああウォーキング・ベース弾きてえ。」などと思っていたことでしょう 。イントロのケリーが最高。モブレイとコルトレーンのソロを比較するようなことは教 育者としてしてはいけません。
 2曲目の「オールド・フォークス」は典型的なマイルス・バラード。ミュートが 都会の夜の哀愁を感じさせます。マイルスって絶対に性格悪くて、しかも暗いな、とい うことを感じさせます。3曲目の「プフランシング」は、いかにもこのメンバーらしい ハードバップ風のナンバー。こういうなにげない演奏って好きだな。田畑の土を掘り起 こす農具。それは犂だな。鍬とペアで使おうね。4曲目の「ドラッド・ドッグ」はバラ ード。こういうアップテンポとバラードが交互に出てくる編成はいい。5曲目の「テオ 」は再びコルトレーンがゲスト参加のモーダルなナンバー。そんで、そのトレーンが圧 巻。スピリチュアルなソロを繰り広げ、先発投手モブレイはあえなくノックアウト。ラ イトの守備位置につきました。
 6曲目。「君のことばかり」。いかにもマイルスらしいバラードです。一度ライ トに下がったモブレイが再びマウンドにのぼり、フォアボールのランナーを出し、送り バントで2塁まで進まれましたが、ケリーの好守に助けられ、なんとか0点におさえま した。日本人だとつい、モブレイみたいなの応援しちゃうんだよな。 という全曲通して起承転結に富んだ、素晴らしい1枚だと思います。


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