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1.世界のビール

 

ラガービール Lager Beer 

 下面醗酵イーストを使って醸造し冷蔵下で熟成させたラガービールは、世界で最も一般的なビールである。低温下での熟成や高級なラガーイーストが必要なため、家庭で作るにはエールやスチームビールよりも難しい。「ラガー」という言葉はもとはドイツ語で「貯蔵する」という意味である。ヨーロッパの醸造業者は一般的にラガーを出荷前に冷蔵貯蔵庫で4〜12週間貯蔵し、温かい温度での酸化の影響を避け、非常に滑らかな味を現すようにする。強いヨーロッパスタイルのラガーでは冷蔵下での熟成に2カ月以上かけることもあり、一方、軽い(安価な)ラガーではほんの2、3週間の冷蔵である。ラガーの種類はドイツの町の数と同くらいあるが、基本スタイルは以下のようである。

 ドライビールは日本が起源であり、遺伝子交換で作られた最終比重の非常に低いイーストで、強制的に醗酵させた軽いラガーである。この特別イーストはモルトの殆どを消費し、ビールに残って甘味を作り出すデキストリンも消費するため、結果的にビールには殆ど甘味が残らず、口に感じる後味に欠けている。ドライビールは自家醸造では一般的になっていない。多分、興味を惹かないことと、特別なイーストが手に入らないことが原因である。

 ライトビール(色がライト、カロリーライトではない)は、色の薄い大麦モルトから作られ、よく熟した、カリカリした特徴を持つ。例えば、バドワイザー、ハイネッケン、ドイツのベックライトなどである。

 ピルスナーはライトラガーの一種で、軟水とザーツホップだけの風味で伝統的に作られたものである。ホップの特長を持った素晴らしい風味のビールで、最も有名な例としては、チェコのピルゼンで醸造されたピルスナーウルケルがある。ピルスナーウルケル醸造所は、自身の大麦でモルトを作り、4種類のイーストで傑出したピルスナーを醗酵させる事に、特長がある。

 ダークラガーは色の薄い大麦モルトとローストした大麦モルトから作られる。普通、ライトラガーよりも甘く、滑らかなカラメル風味またはかすかにローストされたモルトの風味がある。この例は、ハイネッケン・ダーク、ローエンブロイ・ダークなど。

 ボックはドイツの伝統的な春ビールである。よくできたボックは重く、甘いモルト風味の濃い色をしている。もともとはアインベックというドイツの町で醸造されたボックは、しばしば山羊のマークのラベルで販売されている(特にドイツ以外で醸造されたものが)。ボックとはドイツ語系の言語で雄山羊のことであるから。しかしながら、ビールに関して言うなら、ボックの名はアインベックの最後の音節の何世紀にもわたるビール漬け人間の発音間違いの結果であって、ドイツの醸造者が山羊に貢献しようとしてではない。  

 

スチームビール Steam-style Beer

 唯一のアメリカ原産のビールスタイルであるスチームビールは、19世紀後半のサンフランシスコで、ラガービールに慣れたアメリカ東部からの移民が冷蔵庫と氷を入手出来なかった事により生まれた。地ビールを求めて、彼らはエールの温度(冷蔵しない)でラガーイーストを使って醸造し、芳醇な味のホップの強い(保存のためでもあるが)ビールを作り、風味に於てはラガーというよりはエールに近く、暖かな温度でのラガーイースト醗酵による鋭い個性を持ったものであった。スチームビールは、同時代の殆どの生ビールと異なり、炭酸が多く、樽の開けたての栓から出るシューシューという音が多分スチームという名の起こりであろう。

 今日、スチームはサンフランシスコのアンカービール会社の登録商標である。アンカーのビールは純粋な大麦モルトから醸造され、ノーザンブリューワーホップをたっぷり添加した、著しく芳醇なアンバービールである。たとえアンカー社が傑出した物を作ったとしても、ビールに関してはスチームという言葉はいまやアンカー社の登録商標である。スチームが登録商標であって、商業的な製造が息を止められていても、自家醸造者はこのユニークな半ラガー半エールの醸造を楽しむ事ができ、さらにこれを正しくスチームビールとよぶことが出来る。  

 

フィートビール Wheat Beer

 フィート(小麦)ビールとは大麦モルトに小麦モルトを加えて、ユニークなパンのような柔らかな特長を与えたビールである。大麦モルトと異なり小麦モルトは殻がなく、従ってスパージング過程で大麦モルトの殻から抽出される穀物特有の渋みをビールに与えることがない。ドイツと強く結び付いているにもかかわらず、フィートビールは、畑で大麦と混ざりあった自生小麦を分離できなかった結果大樽の中ですりつぶしたモルトも混ざりあってしまった醸造業者によって、偶然に英国で発生したと考えられている。

 ドイツやベルギーでは様々なスタイルのフィートビールがあるが、最も有名なものは南ドイツのバイツェンビールであり、それは、穏やかなホップの特長と滑らかな風味の、ラガーに似たビールである。夏向けの清涼飲料として、フィートビールはドイツやアメリカで人気が高まっている。ミネソタのオーガストシェルビール社(August Schell Brewing Conpany)やワシントン州のグラントビール社(Grant's Brewing Company)が優れたフィートビールを製造している。  

 

エール Ale

 上面醗酵イーストによって醸造されるエールは英国起源であり、しばしばラガーよりも顕著な風味を持つ。エールは家庭で醸造するには非常に寛大で容易なスタイルのビールである。それは冷蔵熟成を必要とせず、良質の乾燥イーストが容易に入手できる。ラガーと同様、多くの種類のエールがある。

 ペールエールは、強い豊富なホップと固い味のビールで、英国の最良のビールを代表するものである。英国の醸造業者は最良のホップをペールエールに入れるためによけておく。米国で最も有名なのは、英国版よりもマイルドで甘いが、英国バートンオントレントのバス醸造所で醸造して輸入したバス(Bass)ペールエールである。米国やカナダの、増えつつある優れた地ビール醸造社の多くがペールエールを作り、なかでもカリフォルニア州チコのシェラネバダペールエールは最良のひとつである。インディアペールエール(IPA)はペールエールにたっぷりホップを加えたもので、もともと英国で、かっての植民地インド迄の長い熱い航海に耐えるように醸造されたものである。

 ビターは、米国では稀であるが、英国では最もポピュラーな、樽だしビールである。ペールエールの軽い、樽だし版であるビターは、その示唆的な名前とは裏腹に、一般的にはホップ風味が弱く、従ってペールエールよりも甘い風味のビールである。ビターは、できたてを樽から出して、かすかな炭酸ガスで飲むのが最良である。瓶ビールのような強い炭酸ガスのレベルでは、その滑らかなモルトの風味を損ないがちである。エクストラスペシャルビター(ESB)はビターの強い高価なタイプで、一般的には、よりはっきりしたホップの特長を持っている。

 ブラウンエールは、甘い、暗い琥珀色の瓶ビールである。それは、甘いカラメル風味とほんの僅かのホップの味を持つ。ブラウンは伝統的に他の瓶ビールより炭酸ガスとアルコールが弱い。イングランドのニューカッスルブラウンエールは、米国で最も人気のある物である。

 ブラウンエール同様、マイルドエールは英国の伝統的な労働者階級のビールである。南イングランドではここ37年間ビターに取って替わられているが、未だにマンチェスター、マーゼィ地域では非常に人気が有り、そこでは軽い味の暗い色のタイプが醸造されている。マイルドは、他のエールより低アルコールで、普通、暗い色で、モルト味で、漠然としたカルメラの甘い風味がする。

 ポーターは、マイルドな風味の暗い色のエールで、ブラウンエールとスタウトの混ざった様なものである。ポーターは多分英国ロンドンで1722年に初めて醸造された。おそらく、その時パブではやっていた2、3種類の樽生ビールを一つのグラスに混ぜる事に対応して作られたものである。地方のビール醸造業者が、当時のパブでブレンドパイントと呼ばれて売られていた物の様なビールを発明し、その時ポーターが生まれた。ポーターの名前は徐々に採用された、多分列車のポーターの間での新しいビールの人気によるものだろう。米国とカナダの多くの地ビール醸造者の間で、例えばカリフォルニア州チコのシェラネバダビール社(Sierra Nevada Brewing Company)やペンシルバニア州ポッツビルのエンリンビール社(Yuengling Brewing Company)等で、ポーター醸造の復興が盛んである。

 スタウトは非常に豊潤でクリーミィな暗色ビール(ほとんど黒色)で、ローストした大麦を追加した、黒い独特のモルトから作られる。アイリシュスタウト(ギネス)は典型的な辛口であるが、イングリシュスタウト(マクソン)はとても甘口である。ポーター同様、スタウトも新しい地ビール醸造者の間で復興が盛んである。

 ストロングエールとバーレィワインは、初期比重が1.070以上の非常に強い2つのエールの名前である。バーレィワインのスタイルのビールは伝統的にはイングランド内だけで作られていたが、新しい地ビール醸造者の間で、醸造するところが増えつつある。バーレィワインとストロングビールは普通、深い琥珀色で、強いホップの性質と調和している。  

 

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