願ったり叶ったり
「痛い! 痛い! ギブギブ、まいった!」
俺はバンバンと畳を叩いて降参した。
「早っ! コースケ先輩、コレまだちゃんと極まってないッスよ!?」
呆れながらも、吉宗は寝技を解いてくれた。
腕ひしぎ十字固め。
俺の頭は相手の膝の下へ。そして腕は相手の股間を通って極められる、痛い技。
・・・なのだが、俺にとっては肘に当たる柔らかい感触の方が凶悪な技だ。
「い、いいんだよ! あそこまで行ったら極められたも同然だ!」
「だからって・・・諦めるの早すぎッス!」
うるさい。
あのまま肘で股間の感触を味わっていたら、こっちの股間が大変なことになる。
道着のズボンは柔らかいので、もしそうなったら一目瞭然。
男に寝技かけられて勃起したなんて知られたら、俺の学園生活はおしまいだ。
「ち、ちょっと休憩な」
「もう・・・」
「ホラそこー。サボるなー」
「・・・あう」
主将に指摘され、俺達は稽古を再開した。
寝技の乱取り稽古。
正直、ゲイである俺にとって一番嬉しく、そしてツライ稽古だ。
体格が近いという理由で、俺と吉宗はよく組まされる。
・・・どうせなら、熊田センパイとやりたいのだが、体格が違いすぎるので稽古にならない。・・・まあ、稽古にならないと言う点でいえば、相手が吉宗でも同じ事だが。
なにしろコイツは一年の中でもっとも強い。
我が柔道部の中でも5本の指に入る実力者なのだ。
そんな吉宗の相手に、柔道一年生、万年白帯の俺では完全に役不足だ(誤用)。
「だから先輩、ヤバイと思ったら、うつ伏せになって・・・」
「わかってるよ。こう、亀になれって言うんだろ?」
もう完全に後輩に教えられている状態。
先輩のメンツ丸つぶれだ。
「そうそう。・・・でも先輩」
「?」
「腰が浮いてます。それだとこうやって・・・」
吉宗はいきなり後ろから俺の股間に腕を入れた。
「うわっ! な、何するんだ、エッチ!」
「な・・・エッチってなんですか、エッチって! 稽古でしょ!?」
「そ、そうだけど!」
と、俺の一瞬のスキを逃さず、吉宗は俺をひっくり返した。
動きが早すぎて、何をどうされたのか理解が追い付かない。
気が付くと俺は、崩れ上四方固めの体勢にされていた。
「そう、簡単にっ!」
先輩の意地を総動員してなんとか吉宗の体重から逃れようとジタバタあがく。
意外とアッサリ俺を解放した吉宗は、
「甘いッス」
そういって俺を再び押さえ込んだ。
俺の頭の上から覆い被さって両手で横帯を取り、腕が抜けないように脇をしめて、体重をかける。
上四方固め。
えーっと、これは、その・・・シックスナインをちょっとずらした体位、と言えばわかりやすいだろうか。
俺の目の前には、はだけた道着。
意外と逞しい吉宗の胸板があらわになり、乳首が顔をのぞかせている。
そのうえ、むせかえるような汗の匂い。
・・・ヤバイ。
年下とはいえ、吉宗だって立派な男だ。その男の匂いに、俺の愚息が早くも反応を始めた。
「わ、わかったわかった! まいった!」
「先輩、これ押さえ込みッスよ? あと30秒しないと一本にならないッス」
30秒!?
バカ野郎、こんな体位でそんなにガマンできるか!
「お、俺の負けだ! た、頼むから・・・!」
「ダーメ」
吉宗は俺を押さえ込んだまま離さない。
愚息は俺の意志を無視して、いや、意志を忠実に反映し、というべきか。ともかく、ぐんぐん成長を続ける。
俺は膝を立てて周りから股間を隠すが、腹の上に顔を乗せている吉宗からは隠しようがない。
気付くな、気付くなよー・・・。
「・・・あ」
しかし、無慈悲に響いたのは吉宗の声。
バ、バレ・・・た・・・?
俺は顔面蒼白になった。もっとも、吉宗にしっかりと押さえ込まれている俺の顔は、周りからは見えないのだが。
「・・・コースケ先輩。・・・コレ、もしかして・・・」
「さ、30秒! もう30秒経った! 一本!」
別のモノを一本勃てながら、俺はわめいた。
吉宗の体重がフッと軽くなり、俺は大慌てで脱出する。
「・・・・・・あの・・・」
心なしか気まずそうな表情で、吉宗。
俺はあぐらをかくような形で座り、股間を隠した。
「こ、これはだな、あの、ちょっとした手違いってヤツで・・・」
「あ、いえ、その、別に・・・」
どもっている吉宗。
わ、話題をそらさなければ!
「し、しかしお前はスゴイな、立ち技はもとより、寝技まで完璧だもんなー!」
「いえ、コースケ先輩も、その・・・」
言いよどんだ吉宗が意を決して口を開く。
「り、立派な勃ち技でした!」
・・・・・・。
上手い事言ったつもりか?
「・・・フォローになってねえよ・・・」
そんなこんなで稽古は終わり、掃除の時間がやってきた。
いつものようにじゃんけんに負けた俺と熊田センパイが残される。
「コースケ先輩、マジでじゃんけんも弱いッスね」
「『も』とか言うな!」
「だって、毎日じゃないッスか。もしかしてワザと負けてません?」
ぎくり。
「・・・な、そ、そんなことあるわけないだろ!」
やべ。最近ちょっとわざとらしすぎたか。
このままでは俺がセンパイと二人っきりになりたいがために掃除当番を引き受けていることがバレてしまう。
「そこまで言うなら吉宗、今日はお前、当番代われ」
「えーっ、イヤッスよ」
ホントは俺だってイヤだ。
でも背に腹は代えられない。
怪しまれないためには、掃除当番を嫌がっていることを印象づけなくては。
「いいから! たまには先輩の顔を立てて見ろっ」
「・・・別のモノ勃ててあげたじゃないッスか・・・」
「なんか言ったか?」
「いいえ。なんにも」
とにかく。
俺は手にしたホウキを吉宗に押しつけた。
「もー。今回だけッスよ?」
「助かる」
渋々といった感じで吉宗はホウキを受け取ったが、しかし、そのホウキを熊田センパイが横からひょいと取り上げた。
「ダメだ」
「え?」
「そんなズルしたら、じゃんけんする意味がないだろ」
ほれ、とセンパイの手からホウキが戻ってくる。
「ええーっ」
「ズルはゆるさん。掃除がイヤなら、じゃんけんで勝てばいい」
それだけ言って、センパイは大股でどすどす歩き去り、雑巾がけを始めた。
「・・・なんか、熊田先輩、怒ってません?」
「ああ、そんな気がする。・・・しょうがない、ちゃんと掃除するかー・・・」
「そうした方がいいッスね」
吉宗は「じゃっ」と短く挨拶すると道場を去った。
いつものように、俺とセンパイだけが残される。
二人っきりになれたのは嬉しいが、なんだか気まずい。
センパイって、ホントはじゃんけん、強いんだよな・・・。にもかかわらず、毎日負けているところを見ると、やはりなにか理由があるハズ。
・・・もしかしてセンパイも、俺と二人っきりになりたい・・・とか。
都合が良すぎる気もするけど、そう思い上がっていいですか・・・?
「・・・・・・」
俺は黙々と雑巾がけする巨漢を盗み見て、そっとため息をついた。
やがて掃除は終わり、俺達はロッカールームへと移動した。
ベンチにどっかりと腰を下ろしたセンパイが、スポーツドリンクを一気飲みして、ぶはあ、と息を吐く。
「お疲れさまです」
「おう」
水分を補給して大量の汗が噴き出したのか、センパイが胸元をバタバタあおいだ。
センパイのキツイ体臭が漂ってきて、俺は鼻を鳴らす。
ああ、センパイの匂いだー・・・
「あ、悪い。クサかったか?」
俺が匂いを嗅いでいることに気が付いたのか、センパイは気まずそうに頭を掻いた。
「いえ、とんでもない」
センパイの匂いなら買ってでも嗅ぎたいです。
「そ、そうか」
「全然気にしなくていいですからね」
っていうか、もっとバタバタして欲しい。
「そういえばセンパイ、今日なんか怒ってます?」
「あん?」
「いや、なんか機嫌悪いから・・・」
「・・・そりゃ、お前と松平が・・・」
ん? 松平? 吉宗のことか?
「俺と吉宗がどうかしましたか?」
「・・・イチャイチャしてっからだろ・・・」
センパイの声は小さく、犬人の耳でも聞き取れない。
「え、センパイ、いま何て?」
「・・・マジメに稽古してないからだ」
「し、してましたよー」
「ウソつけ。見てたぞ。・・・ホントはおれだって、コースケと寝技やりてえよ・・・」
「え? センパイ、聞こえません」
「なんでもない。独り言だ」
ぶっきらぼうに言って、ペットボトルをあおる。
しかし、スポーツドリンクは空になっていたらしく、センパイは小さく舌打ちした。
「センパイ、コレ飲んでいいですよ」
ご機嫌取りに、俺は自分のペットボトルを差し出す。
「お、悪いな」
疑う素振りも見せずにセンパイはそれを受け取る。
・・・これは! 間接キスのチャンス到来か!?
「全部飲んじゃダメですよ」
「ああ。・・・あ、じゃあお前が先に飲めよ。おれ残ったのもらうから」
ってそれじゃ意味がない!
「いえ、気にせずどうぞ」
「・・・そうか、悪いな」
センパイはペットボトルに口を付けた。
ごくごくと、その喉が流動し、俺は思わず唾を飲み込んでいた。
「・・・自分でやるとかいっといて、そんな物欲しそうな目で見るなよ」
口元を道着の裾でぬぐいながら、センパイ。
やべ。俺そんな目で見てたか・・・?
「あ、いえ、これは違いますよ」
「じゃあなんだよ?」
「・・・なんでもないです」
俺はセンパイの手からペットボトルを受け取ると、震える手で口を付けた。
ああ、センパイと間接キスだー・・・
またも勃起しそうになる愚息を心の中でどやしつけ、懸命にこらえる。
「ジュース飲むと汗が一気に出ますね」
「そうだな。我ながらイヤになるよ」
「センパイ、汗かきですもんねー」
そこがまたイイんだけど。
「便所にも行きたくなるしな」
自分で言って催してきたのか、センパイは腰を上げた。
「ちょっと便所行って来る。先にフロ入っててくれ」
「いえ。待ってますよ」
センパイの脱衣シーンを見逃してなるものか。
「いいってのに」
「いいえ。待ってます」
俺は引かなかった。
するとセンパイは諦めて、
「・・・まあいいや。じゃあ先にフロ済ませちまおう」
道着を脱ぎ始めた。
「ういっす」
俺も帯に手をかける。
もちろん、視線はセンパイから離さない。
今日こそはセンパイのお宝を拝んでやるぞ。
「・・・・・・」
しかし、センパイのガードは今日も完璧だった。
パンツを脱ぐときも完全に俺に背を向け、一分の隙もなくタオルを巻き付ける。だから結局、今日もセンパイのケツしか拝めなかった。
・・・いや、そりゃケツだけでも充分なんだけどさ。どうせなら前も見たいってのが本音だ。
一度だけでも目に焼き付けることができたなら、ズリネタに困らなくて済むのに。
こりゃ、今日も想像(妄想)で補ったセンパイの裸をオカズにするしかないな・・・。
しかし、ここまで見事に隠されると、さすがにへこむ。
センパイが俺と一緒にいたいから掃除当番を引き受けてる、なんてのは、やっぱり俺の思い上がりなのかなあ・・・。
「・・・はあ」
思わずため息がついて出た。
「な、なんだよ、いきなり」
だってセンパイ、チンポ見せてくれないもん。
とは言えず、俺は黙り込む。
「悩み事があるなら聞いてやるぞ」
センパイは優しい。
たぶん、本気で俺のこと心配してくれてるんだろう。
俺ってヤツは、そんなセンパイに対して、こんな劣情を抱いて・・・。
「いえっ、平気です! さ、風呂風呂!」
頭を切り換え、勢いよく歩き出す。
だからそれは事故だった。
決して故意ではない。
俺の手がセンパイのタオルに触れ、それがハラリと落ちたのは。
「・・・あ」
「うわっ!」
慌てて股間を隠すセンパイ。
しかし、遅かった。
俺はバッチリ、センパイのお宝を目に焼き付けていた。
「・・・・・・」
真っ赤になってうつむくセンパイ。
・・・包茎だ。
包茎だった。
「・・・み・・・見た・・・か・・・?」
そりゃあもう。
と言ってやりたかったが、可哀相なくらい真っ赤になっているセンパイに、それは酷というものだろう。
「・・・いえ、あの、チラッとしか」
だから俺は適当にお茶を濁す。
「そ、そうか」
安心したのか、おそるおそるタオルを拾うセンパイ。
その間もしっかりとチンポは隠して見せない。
「・・・もしかして、センパイ・・・」
「なっ、なんだ!?」
「・・・見られるのが恥ずかしいから、ワザと掃除当番に?」
掃除当番になれば、一緒に裸になる人間は一人だけ。
見られるリスクは極限まで減る。
「・・・・・・」
センパイは腰にタオルを巻き付けると、真っ赤な顔で小さく頷いた。
・・・なんだ、そんなことだったのか。
俺はがっかりした。やっぱり、俺と一緒にいたいから、なんてのは俺の勝手な思い上がりだったのか。
「だ、誰にも言うなよ?」
こんなオイシイ話、頼まれたって言うものか。
俺はもちろんそう思っていたが、恥ずかしがるセンパイの様子があまりにも可愛かったから、出来心でついからかってしまった。
「なぜです? 別にいいじゃないですか。――包茎でも」
「!!」
びくんっ、と身体を震わせてセンパイが顔を上げる。
「なっ、お、おまっ・・・おまえ・・・やっぱり、み、見て・・・!」
「まあ、わりとバッチリ」
「!!」
がーん、という擬音まで聞こえてきそうな表情で固まるセンパイ。
しばらく固まっていたセンパイは、喉がカラカラに渇いていたのか、ごくりと喉を鳴らして叫んだ。
「たっ、頼む! このことは・・・誰にも言わないでくれっ!」
「へ?」
大袈裟なリアクションに、今度は俺が固まった。
包茎って、そんなに恥ずかしいのかな?
そりゃ、センパイはズル剥け巨根、ってイメージがあって、それとはかけ離れてるけど。
事実、俺は今の今まで、センパイが包茎だなんて疑いもしなかった。
「たっ、頼む!」
黙っていた俺のことを勘違いしたのか、センパイはもう一度頭を下げた。
「・・・いいですよ」
「ほっ、ホントかっ!?」
表情を輝かせて、センパイが顔を上げる。
「・・・ただし、条件があります」
「な・・・!」
その顔が、驚愕に、というよりむしろ、恐怖に引きつった。
「――もう一度、よく見せてください」
今度こそ。
センパイは完全に硬直した。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
沈黙。
・・・・・・。
・・・・・・。
やべえな。言い過ぎたよな。
センパイはずっと俯いたままで、表情がわからない。
・・・・・・。
その肩が、小刻みに震えていた。
やべ。
怒って・・・る・・・?
「じょ、冗談ですよ、もう!」
俺がそう言おうと口を開き書けたとき、タッチの差でセンパイが呟いた。
「・・・んだな・・・?」
「え?」
・・・・・・。
今、なんて言いました?
「センパイ?」
「・・・も、もう一度・・・見せたら・・・だ、黙ってて・・・くれるんだな・・・?」
えっ!?
ま、マジでっ!?
っていうか、ウソ、本気!?
「・・・約束・・・するな?」
センパイが、タオルに手をかけた。
「ええ、約束します」
俺の喉はカラカラに渇いていた。
ゴクリと唾を飲み込む音が、イヤに大きく響く。
そして。
センパイはタオルを取った。
ピン、と懸命にそそり立つセンパイのチンポが現れる。
――!! 勃起してる・・・!
思わずセンパイの顔を見上げると、センパイは真っ赤な顔でぎゅっと目をつぶって恥辱に耐えていた。
ああ・・・センパイの・・・夢にまで見た、センパイのチンポ・・・
それは想像よりもずっと小振りで可愛らしかった。でも、紛れもなく、俺の大好きな人のチンポだ。
剥けた亀頭は綺麗なピンク色で、カリの部分に余った皮がシワを寄せていた。
金玉だけは想像通り。
ズッシリと重そうな大きないなり寿司が二つ、所在なさげに揺れている。
ザーメン、たっぷりつまってるんだろうなぁ。
「も、もういいか・・・?」
目を閉じたまま、センパイが震える声で言った。
「あっ、まだ! まだですよ。・・・それにセンパイ」
「・・・?」
「今、ズルしたでしょう?」
タオルを取るとき、センパイは明らかに自分で剥いていた。
「・・・!」
俺がそれに手を伸ばすと、センパイは慌てて腰を引いた。
ただそれだけで剥けていた皮はズルリと戻り、亀頭の半分以上を被う。
「ぅうっ・・・!」
恥ずかしそうに呻くセンパイ。
その仕草が可愛くて、俺は追い打ちをかける。
「ふぅん・・・。これがセンパイのホントのチンポ・・・ですか」
チンポと金玉のサイズがアンバランスで、タヌキの置物を連想させた。
「・・・み、見るな・・・」
「なに言ってんです。見せてくれたのはセンパイですよ? ・・・ホラ、もっと腰入れて」
及び腰だったセンパイの腰を叩く。
ひっ、と情けない声を上げて、センパイは恐々腰を突きだした。
ピクピクと脈打つチンポの先端に、じわりと先走りが溢れ、水玉を作った。
センパイ、興奮してるんだ。
「も、もうカンベンしてくれ・・・!」
泣きそうな声でセンパイは言った。
「そうですね。充分見ましたし」
「・・・ホッ・・・」
「でもセンパイ。さっきから気になってたんですけど・・・」
「・・・?」
俺はセンパイの顔を見上げる。
目と目が合い、俺はニヤリと笑って見せた。
「・・・なんで勃起してるんですか?」
「!!」
びくっと肩を震わせて、センパイは涙ぐんだ。
「・・・だって・・・その・・・恥ずかしい・・・」
「男同士ですよ? それなのに勃起するなんて、変態じゃないですか」
俺だってすでに痛いくらいビンビンなのだが、そのことは棚に上げてセンパイをなじる。
言葉責めで感じるのか、センパイのチンポはピクピク震えた。
「ううっ・・・!」
「そっか、そうなんだ」
「う・・・?」
「センパイ、ホモだったんだ」
「ち、ちがっ・・・!」
涙を流して否定するセンパイ。
しかし、そのチンポはまるで頷くかのように上下に揺れた。
「チンポこんなにしておいて。説得力ないですよ」
「こ、これは違う・・・!」
両手でチンポを隠すセンパイ。
「俺、センパイのこと、尊敬してたのにな」
「うう・・・」
「あこがれのセンパイが、まさかホモで。包茎で。おまけにマゾだったなんて・・・ガッカリだ」
「カ、カンベンしてくれ・・・!」
「カンベンできません。こりゃ、責任とってもらわないと」
「!?」
もちろん、俺が勝手に憧れていただけなので、センパイには何一つ非はない。
しかし、そんなことには気付かず、センパイはカンベン、カンベンと謝り続けた。
「ほらセンパイ。誰が隠していいなんて言いました?」
「・・・ぅ・・・」
おそるおそる手をどかすセンパイ。
小さなチンポが現れ、それはこの期に及んでちゃっかり剥かれていた。
「またズルして。センパイ、両手を後ろに」
「な・・・なに・・・」
「ホラ早く」
「くっ・・・」
俺に急かされ、センパイは泣く泣く「休め」のポーズを取った。
「逃げちゃダメですよ?」
釘を差して置いて、俺はセンパイのチンポに手を伸ばす。
センパイは一瞬だけ腰を引いたが、抵抗はそれだけだった。
なんだかんだで、触ってもらいたがっている。それは火を見るより明らかだ。
「よしよし、いい子だ」
俺はとうとう、センパイのチンポを握りしめた。
「――うッ!」
センパイがビクッと巨体を揺らす。
金玉がきゅっと縮み上がったのがわかった。
ああ、センパイの、チンポ・・・。
まさか、この手に握ることができるなんて・・・。
「へへへ。可愛いよ、センパイ・・・」
「い、イヤだ・・・やめ・・・」
嬉しいクセに、センパイは首を振る。
俺はその先端に溜まった先走りを指で潰した。
にちゃり、と粘性の高い音を立てて、センパイの尿道と俺の指が糸を引く。
「ぬるぬるだ・・・。いやらしいな、センパイは」
「だ、ダメ・・・やめて・・・」
「ホントはやめて欲しくなんかないんでしょ?」
俺は意地悪そうに言うと、手を上下させた。
「あっ! ん・・・っ! はぁっ、あ、あんまり・・・乱暴にしないで・・・」
もっと激しくシゴいてやろうかとも思ったが、可哀相だったので優しくシゴいてやる。
くちゅ、くちゅと包皮が音を立て、先輩は熱い吐息を漏らした。
「はっ、はぁっ! コ、コースケ・・・! ああっ!」
「・・・気持ちいい?」
「ううっ・・・お、おれ・・・コースケの・・・コースケのも・・・」
「何? 俺のも見たいの?」
「はっ、ぁあっ・・・! み、見たい・・・コースケの、見たい・・・!」
俺は腰を突きだした。
タオルは見事に盛り上がり、先端に先走りのシミまで浮いている。
「しょうがないな、センパイは」
「はぅっ・・・い、いいのか・・・?」
「いいですよ、特別に見せてあげます。・・・オトナのチンポってヤツを」
スルリとタオルをほどくと、真っ赤に充血した俺の愚息が現れた。
センパイが息を飲む。
「す、すげえ・・・!」
・・・いや、そんなに感動されると、面はゆいというか、恐縮するというか・・・。
たしかに、俺のチンポはズル剥けだし、サイズ的にも平均を上回っている。我ながら、いい形をしているとも思うけど・・・。
「こ、コレが・・・本物の男の・・・チンポ・・・」
自分以外のチンポを見るのは初めてなのか、センパイの目はそれに釘付けになっていた。
・・・って、俺も始めてだったんだけどね。
「ああ・・・コースケ・・・コースケぇ・・・」
切ない声を出して甘えるセンパイ。
「触りたい?」
センパイがこくこく頷く。
俺は先輩の手を取って、自分のチンポへと導いた。
「ぅあ・・・硬い・・・それに、熱い・・・」
当たり前のことを声に出して言われ、俺は赤面した。
・・・そっか、センパイもこんな風に恥ずかしかったんだ・・・。
俺達、いま、お互いのチンポ握り合ってる・・・。
・・・やべ。
下腹部に熱いものがこみ上げてきた。
まだ握られたばかりだというのに、俺のチンポはもう発射態勢に入ってしまった。
「ッ・・・!」
「・・・コースケ・・・? ・・・もしかして、気持ちいいのか・・・?」
当たり前だ。
大好きな人にビンビンのチンポ握りしめられて、気持ちよくないわけがない。
しかしそう言うのはシャクに障る。
俺は答えずに、センパイのチンポをシゴき立てた。
「あっ! はぁっ、んっ・・・!」
あえぐセンパイ。
センパイも必死になって俺のチンポをシゴき始める。
「はっ、はっ・・・!」
「ん・・・! ふぅっ・・・!」
「はぅ・・・んんっ!」
「ぁ、ああっ!」
交わされる熱い吐息。
どっちがどっちのあえぎ声だかわからなくなり、俺達は二人で登り詰めた。
も、もうダメだ・・・イク・・・!
俺が覚悟を決めたとき、センパイの手が速度を落とし、やがて止まる。
真っ赤な顔のセンパイは、歯を噛みしめて快感に耐えていた。
どうやら、絶頂が近いようだ。
よし、勝った!
「はっ・・・はっ・・・何? センパイ、もうイキそうなの・・・?」
「ふぅっ・・・んッ! コースケ・・・おれ、もう・・・!」
「まだダメですよ」
自分だってイキそうなのに、俺は精一杯優位に立とうと囁きかけた。
「だ、だって・・・! おれ・・・おれ・・・! 出そう・・・!」
「・・・まだ始まったばかりじゃないですか。センパイ・・・包茎の上に早漏ですか?」
自分のことを棚に上げて俺は言う。
言葉で責められ、センパイの感度が増していくのが手のひらに伝わった。
「んんっ・・・! イ、イっていい・・・? イカせて・・・! お願い・・・!」
「ダメですってば」
センパイの尿道がぱっくり広がって、発射寸前なのがわかった。
俺は「まだですよ」と言いながらも手の動きを早める。
「はッ・・・! はぁッ・・・! コースケ! コースケッ!」
センパイが吠えて、俺のチンポをぎゅっと握りしめる。
感触を味わうかのように、何度も、何度も。
って、ヤバイ。そんなにされたら、俺も・・・!
「あ、あっ、ああああっ!」
が、俺がイク前に、センパイは果てた。
全身をビクッ、ビクッと痙攣させ、俺の手の中に大量の、濃いザーメンを吐き出す。
どろりとしたザーメンが手のひらからこぼれ、床にボタボタと重い音を立てて滴った。
「ぁんッ! ・・・うッ!」
「ぅわ、すっげえ・・・」
思わず感心して魅入る。
他人がイクところを生で見たのは当然初めてだ。
それも、俺の手の中で。最愛の熊田センパイが。
「すげえ・・・」
もう一度呟き、センパイの尿道に残ったザーメンを絞り出してやる。
脱力したセンパイは、最後にビクッと痙攣して射精を終えた。
「はあっ・・・はあっ・・・はぁ・・・」
荒い呼吸をして、センパイは肩を上下させた。
そのチンポは未だ俺の手の中。
徐々に硬さを失っていくのが感じられた。
「センパイ・・・すごい・・・」
できるだけこぼさないように慎重に手を開くと、若干黄ばんだザーメンにまみれた包茎チンポが現れる。
いや、それはチンポというよりむしろ・・・
「センパイのオチンチン、可愛い」
「・・・み、見るな・・・」
何をいまさら。
俺は当然無視した。
「へへっ。でもザーメンだけはすっげえ男らしいっすね」
センパイの精液はよほど濃いのか、俺のよりねばねばしている。
匂いを嗅ぐと、強烈な臭気が鼻を衝いた。
「ううっ」
「ところでセンパイ?」
「・・・う?」
俺はセンパイの顔を見上げると、底意地の悪い声で言ってやった。
「誰がイッていいなんて言いました?」
「え・・・だって・・・そんな・・・!」
「俺の許可もなく勝手に・・・。それも人の手をこんなに汚して」
「だ、だって、それはコースケが・・・!」
「いいわけなんて聞いてません。・・・こりゃオシオキが必要だな」
それだけ言うと、俺はセンパイのチンポを剥いた。
花開くように、ピンクの亀頭が顔をのぞかせる。
「ひ・・・やめ・・・!」
センパイの抗議を無視し、俺は手に残ったたっぷりのザーメンを、剥き出しの亀頭にこすりつける。
そのままそれを潤滑液にして亀頭をこねくり回した。
「ひいっ! ダメッ! や、やめてっ!」
「やめてと言われてやめたんじゃ、オシオキの意味がないでしょ?」
「ダメ! あっ、ヤバ・・・! ちょ、マジでカンベンしてッ!」
イッたばかりで敏感になっている亀頭にコレは効くだろうなあ。
センパイは我を忘れてよがり泣いた。
「ひっ! 許して・・・! 許して!」
おまけに包茎のヤツに亀頭責めは効果覿面だって言うし。
それが本当なのか、センパイがとりわけ敏感なのか。
「うぅんッ! あ、はぁっ! ご、ごめん・・・なさい・・・! ひぃっ! ごめんなさい! もう、許して!」
センパイは泣きながら許しを請うた。
それが可哀相だと思わなかったワケでもない。
しかし、先輩の泣き声は、それ以上に俺の嗜虐性を刺激した。
「へへへ。センパイ、可愛い」
亀頭をこねくり回す速度を上げる。
「――ッ!!」
声にならない悲鳴を上げるセンパイ。
涙を流し、涎を垂らし、あまつさえ鼻水まで垂らして、センパイは泣いた。
「ああっ! ぅ、ぅあああぁ・・・っ!」
センパイの泣き声が変わった。
「?」
――じょろっ。
同時に、俺の手の中に広がる暖かい感触。
「・・・あ」
見ると、センパイは失禁していた。
俺の手に握られたチンポから、黄色いションベンが溢れて腿を伝わり、足下に広がっていく。
ロッカールームに、ションベンの匂いが立ちこめた。
「ぅぁあ・・・あああぁ・・・ひっく・・・あああああぁん・・・」
センパイは子供のように声を上げて泣き、ションベンを洩らし続けた。
そういえば、さっきトイレ行きたいって言ってたっけ。
「あーあ。センパイ、やっちゃいましたね」
「ひっく・・・ううっ・・・うあああぁぁ・・・」
ションベンが止まってからもたっぷり一分は泣き続け、センパイが泣きやんだ頃にはすっかりそのチンポは萎えていた。
手を離す。
ぶらんと垂れ下がったチンポの先からションベンのしずくが垂れた。
センパイのチンポは、まるでドリルのように先端まで皮を被ってシワを寄せていた。
まさしく子供のオチンチンだ。
たしかにコレは恥ずかしいかもしれない。
「センパイ? 大丈夫?」
「・・・ひっ・・・ぅぅ・・・ひっく・・・」
しゃくり上げながらも、センパイは小さく頷いた。
「やれやれ。こんなところでションベン洩らして。どうするんです? これ」
「・・・ぅ・・・ごめ・・・ごめん、なさい・・・」
「まあいいでしょう。明日みんなにも謝ってくださいね」
センパイが、涙に濡れた顔を上げる。
その表情は恐怖に歪んでいた。
「お・・・おまえ・・・それ、どういう・・・」
「みんなどんな顔するでしょうね。後輩にチンポ握られてションベンちびった、なんて言ったら」
「!!」
センパイの体が震えた。
「は、話が、違う・・・! みんなには、黙っててくれるって・・・!」
「それは包茎の話でしょ? 大丈夫。包茎のことは言いませんから」
「コ、コースケ、おまえっ・・・!」
「ん? なんですか、その反抗的な態度。今の今まで泣いてたヤツとは思えないな」
ぐっ、と呻いてセンパイは折れた。
ションベンに汚れるのも構わずに、その場に膝を付く。
「・・・てて・・・くれ・・・」
「え? なんですか?」
「・・・頼む・・・黙っててくれ・・・!」
土下座でもしそうな勢いでセンパイは頭を下げた。
「そうですね、センパイ次第、かな」
「・・・?」
俺は顔を上げたセンパイの鼻先に腰を突き出す。
そう、俺はさっきからずっと勃ちっぱなしだ。
いいかげん解放してやらないと、こっちが参ってしまう。
「今度は俺の番でしょ? ・・・コイツを満足させてくれたら、このことは誰にも言わないであげますよ」
チンポを握り、センパイの鼻に付ける。
ひんやりした感触が亀頭に伝わり、センパイの鼻と俺のチンポが糸を引いてキラリと光った。
「はぅ・・・」
さっきまでの反抗的な態度はどこへやら。
目の前にチンポを突き出されただけで、センパイは恍惚の表情になっていた。
そして、じっとそれを見つめながら、愛おしそうに両手で握りしめる。
「しゃぶっても・・・いいのか?」
「しゃぶりたい?」
「う、うん・・・」
俺はどうぞ、と腰を突き出す。
センパイは悦んで俺のチンポに舌を這わせてきた。
「ん・・・!」
裏筋を嘗め上げ、亀頭を口に含む。
片手で金玉をもみほぐすように弄び、もう片手で俺の身体を撫で回す。
「ふっ・・・はあ・・・」
センパイの愛撫は極上だったが、インターバルを置いた事で俺の感度は落ち着いており、当面の間は持ちこたえられそうだ。
「・・・センパイ・・・あ・・・そこ・・・」
喉深くまでチンポをくわえ込んだセンパイの頭を撫でる。
センパイは嬉しそうに目を細めると、舌を使っていっそう俺を愛してくれた。
ああ、こりゃたまらん。
「センパイ・・・?」
気が付けば、萎えていたはずのセンパイのチンポが再び屹立していた。
俺は足でそれに触れてやる。
「んっ!」
センパイの身体がビクッと震えた。
もしかして、また感じてる?
・・・もう1ラウンドいけそうだな。
俺はセンパイの肩に手を置くと、足の指でセンパイの裏筋をなぞってやった。
「んっ、・・・んーっ!」
センパイはなにか言いたそうに呻いたが、喉奥深くまでチンポをくわえ込んでいては言葉にならない。
「浅ましいヤツだな。さっきあれだけ出しておいて、まだ足りないのか?」
チンポを足の裏で腹に押しつけ、上下にシゴく。
「んーっ、んんっ!」
センパイはイヤイヤと首を振るが、センパイの本音は俺の足の裏にしっかりと伝わっていたし、チンポを吐き出すそぶりも見せない。
「センパイ、チンポ踏まれて感じてるの? 真性のマゾだな」
「んっ・・・!」
言葉で責められるのが、ことさら感じるらしい。
二発目だというのに、急速に登っていくのがわかる。
俺は足の動きを早めてやった。
「んっ・・・! んん・・・!」
上目遣いに俺を見るセンパイ。
何を言いたいのか、手に取るようにわかる。
「イキたいの?」
「ん・・・ッ!」
涙目で頷くセンパイ。
自ら腰を振り、チンポを俺の足にこすりつけてくる。
「まだダメ。・・・ホラ、口が止まってる」
俺も負けじと腰を振ってセンパイの喉を突いた。
センパイはおえっ、とえづいたが、それでも懸命に奉仕する。
その姿がいじらしくて、俺は興奮した。
「ん、んんっ・・・」
許しを請うように俺を見上げるセンパイ。
もうかなり絶頂に近いらしい。
「しょうがないな。・・・いいよ、イッても」
実のところ、俺も限界が近い。
俺達はお互いに腰を振って快感を貪った。
そして、先に果てたのは、またしてもセンパイだった。
「・・・ん、・・・んッ!」
どくん、と脈動する感触が足の裏に走り、センパイのチンポからザーメンがあふれ出す。
俺の足の裏を伝わって、どろりとしたザーメンが、ションベンの水たまりに垂れた。
「ふぅっ・・・ふっ・・・センパイ・・・お、俺・・・俺も、もう・・・!」
「・・・う?」
絶頂が近いことを教えてやり、俺は腰を使う。
逃げようとするセンパイの頭をムリヤリ押さえ込み、喉奥深くまでチンポを突き刺す。
「・・・センパイ! センパイ! イ、イク! ・・・ああっ、イクッ!」
「んっ! ・・・んんっ!」
何か言いたそうなセンパイを無視して、俺はその口の中に精を放った。
びゅっ、びゅっ、とザーメンが飛び出して行くのが感じられる。
涙を流すセンパイの口元から、ヨダレとザーメンの混じった汁がこぼれた。
「ふぅっ・・・ぅッ・・・ッ・・・!」
何度も痙攣して、俺の射精はようやく止まった。
長いため息をついて、呼吸を整える。
・・・我ながらよく出たもんだ。
センパイ、口の中ザーメンで一杯なんじゃないかな?
「・・・・・・」
・・・口の、中・・・?
俺はそっとセンパイを見下ろした。
ゴクリ、とその喉が動いて、俺の精液を嚥下したところだった。
・・・・・・。
・・・俺・・・ムリヤリ・・・口の中に・・・
・・・これ・・・やべえんじゃ・・・
「セ、センパイ・・・?」
センパイは無言だ。
当然か。だっていまだに俺のチンポくわえたままだからな。
・・・だんだんと通常の感覚が戻ってくる。
やっちまった。
俺、また興奮して後先考えず・・・。
チンポが萎えるのと反比例して、後悔が鎌首をもたげてきた。
「センパイ・・・」
そっと腰を引いてセンパイの口の中から出る。
ずるりと音を立てて、ベタベタに汚れたチンポが垂れ下がった。
センパイはそれを手にとって、舐めて綺麗にしてくれた。
「あ、どうも・・・」
センパイはチラリと半眼でこちらを睨むと、真っ赤になって床の掃除を始めた。
掃除道具入れから雑巾を取り出し、ションベンとザーメンを拭きはじめる。
「・・・あっ、手伝います・・・」
二人の男が全裸で床掃除をする姿は滑稽だったが、少しも笑えなかった。
次の日、俺は部活をサボった。
弱みにつけ込んで、俺はムリヤリセンパイを犯した。
合わせる顔がない。
もし俺がセンパイの立場だったら。
可愛がっている後輩に脅迫され、犯されたとしたら。
そう、たとえば吉宗あたりに昨日のことをされたらどうだろう。
・・・・・・。
・・・とてもじゃないが、もうまともに会話できないな・・・。
部活、辞めよう。
もうセンパイとは会えないし、センパイだって俺には会いたくないだろう。
センパイ、泣いてたな・・・。
センパイのことを想うと涙が出てきた。
夢だった。
センパイと結ばれるのが、夢だった。
夢は叶った。
でも、こんなハズじゃなかった。
逞しいセンパイに抱かれ、キスをして、一つになる。
そうだ、結局、俺達はキスすらしてない。
忌まわしいとさえ思える昨日の行為。
・・・でも、思い返すだけで・・・
俺のチンポは痛いほど勃起した。
「・・・センパイ・・・ごめんなさい・・・!」
謝りながら、射精した。
何度も。
何度も。
週末が明けて、月曜日。
退部届けを出す決心も付かぬまま、今日も部活をサボろうとした矢先、俺は吉宗に捕まった。
「コースケ先輩! 部活行きましょう!」
「・・・吉宗・・・」
「あれ? ・・・ひょっとして、帰るところでした?」
「い、いや」
「そッスか。じゃ、行きましょ」
吉宗に連れられて道場に向かう。
すでに練習は始まっており、大勢の部員が稽古をしている。
その中に、巨漢の熊人の姿を見つけ、俺は思わず視線をそらした。
・・・ダメだ。センパイの顔、まともに見られない・・・
「コースケ先輩?」
「あ、いや。なんでも・・・」
結局その日は全然練習に身が入らず、散々だった。
掃除当番のじゃんけんも、早々に勝って抜ける。
「珍しいッスね。コースケ先輩が勝つなんて」
「恐れ入ったか。コレが俺の実力なのだ」
「って、まぐれで一回勝っただけで・・・あ、熊田先輩はやっぱり負けましたね」
吉宗の言うとおり、いつもの調子でグーを出したセンパイは負けていた。
自分の出した手を呆然と見つめるセンパイ。
握りしめた拳が震えているように見えたのは、俺の気のせいだろうか。
翌日。
授業が終わり、俺は教室を出た。
今日も部活はサボるつもりだ。
「おい」
しかし、そんな俺を待ちかまえていたのか、教室を出て早々、俺は声をかけられた。
間違うこともない、最愛の人の声。
「セ・・・センパイ・・・」
熊田センパイは、いつにもまして不機嫌で、ぶっきらぼうだった。
「・・・話がある。今日、掃除・・・いいな?」
自分の言いたいことだけ告げて去っていく。
俺は顔面蒼白になりながらも、はい、と答えていた。
自分でも聞き取れないほど小さな声だったので、センパイには聞こえなかったに違いない。
掃除を終え、ロッカールーム。
あの日の名残は当然跡形もなく、部屋は綺麗なものだった。
「コースケ」
センパイに名を呼ばれ、俺はビクッと肩を縮めた。
練習の間も、掃除の間も一言も口を開かなかったセンパイが、今日初めて俺の名前を呼んだ。
その声には、明らかな怒りが含まれていた。
「センパイ・・・やっぱり、怒ってます・・・よね・・・?」
「当然だろ」
うう、そりゃそうか。
仲直りに少しでも期待した俺が浅はかだった。
「・・・・・・」
「なんだよ、お前の態度」
俺は黙ってセンパイの言葉を聞いていた。
俺にはそれくらいしかできない。
殴られてもいい。それで済むなら、むしろ望むところだ。
「・・・そりゃ、おれだって悪かったけど・・・」
「・・・?」
「だからってお前、そんな、あからさまに逃げることねえだろ」
・・・逃げる?
もしかして、センパイが怒ってるのって、俺がセンパイを避けてたから・・・?
あの日のことを怒ってるんじゃ、ないの・・・?
「えっと・・・それは、その・・・」
「お前は忘れてるかもしれないけどな! お、おれはお前に一つ、何でも言うことを聞かせられるんだぞ!」
「・・・はい?」
突然の話の飛躍に付いていけず、俺は首を傾げた。
「いつか約束しただろ。負けた方は、相手の言うこと何でも聞く、って」
「・・・ああ、あのじゃんけんの・・・」
「そうだ。おれは、まだお前に言うこと聞いてもらってない」
そういえばそうだ。
って事は、センパイ、今ここであのときの願い事を言うつもり、なのかな・・・。
「・・・・・・」
「センパイ?」
センパイの顔は真っ赤だった。
それは怒りによるものか、それとも、恥ずかしがってる・・・?
「・・・コースケ!」
ばんっ、と俺はロッカーに背中を打ちつけられた。
センパイが、俺の逃げ道を塞ぐかのように、ロッカーに両手を付く。
「セ、センパイ・・・」
殴られるのは覚悟していたが、いざとなると体が震える。
俺は怯えた目でセンパイを見上げた。
「いろいろ考えた。『このあいだの事は忘れてくれ』とか、『今まで通りの先輩後輩に戻ってくれ』とか。
・・・でも、そんなのムリだろ?」
「え、いえ・・・」
確かに、忘れろと言われて忘れられるような事じゃない。
それ故に、完全に今まで通りの関係に戻る事はできないだろう。
でも、忘れたフリをして今まで通りに振る舞うことならできる。
上っ面だけだけど、取り繕うくらいのことなら・・・。
「だから、おれ、いろいろ考えたんだ」
「センパイ・・・」
センパイはゴクリと唾を飲み込んで、たっぷり間をおいてから言った。
「ケーベツしてくれて構わない。先輩だなんて思われなくってもいい。・・・だ、だから・・・!」
センパイはぎゅっと目をつぶって言った。
「・・・だ、だから! ・・・もう一度・・・もう一度だけ、この間みたいに・・・して、くれ・・・ないか・・・?」
・・・・・・。
えっと。
それはつまり。
「もう一度、いじめてくれ」
そう解釈していいのかな・・・?
俺は何度もセンパイの言葉を反芻したが、どうしてもそうとしか解釈できなかった。
「・・・・・・」
確認するように、俺は視線を下げた。
センパイのズボンは、小さなテントを張っていた。
いつからそうだったのか、先端にはシミまで浮いている。
「ダ、ダメなのか・・・? 言うこと、聞いてくれる約束だろ!?」
センパイ・・・。
俺はこみ上げてくるものが抑えきれず、涙を流した。
「たしかにそういう約束ですけど、できることとできないことがあります」
「・・・っ!!」
「センパイは、いつまでたっても俺の尊敬するセンパイだし、大好きな人を軽蔑なんてできません」
「・・・?」
センパイが驚いて俺を見る。
目と目が合い、俺は涙目ながらもニヤリと笑って見せた。
「それに・・・もう一度だけなんてイヤです」
俺はテントを張っているセンパイの股間を握った。
うッ、と呻いてセンパイが俯く。
その唇に。
俺は優しくキスをした。
「・・・これからは、毎日可愛がってやるよ。センパイ」
おしまい。