中間管理職の溜息

 

 

私の名前は弓塚孝太郎。

当年取って37歳。働き盛りのサラリーマンだ。

株式会社ボヤージで営業販売部長を務めている。肩書きだけ聞けばご立派だが、その実体は中小企業のしがない中間管理職。上からは押さえつけられ、下からは突き上げられる、ストレスと戦う悲しい企業戦士である。

 

そんな私は今、人に言えない悩みを抱えていた。

この歳になっても結婚できないとか、それ以前に彼女が出来ないとか、そんな些末な悩みではない。

私は、とある事件をきっかけに、自らに隠された性癖があることを知ってしまった。

どうやら私は、女性だけでなく男性にもわずかながら性的興奮を感じるようなのだ。今まで必死に否定してきたが、どうやらこれは認めねばならない事実のようだ。

そして私は、毎夜のように、部下の席で彼を思いながら自慰にふけっている。

「ああっ・・・! 遠野君、イクっ!」

精液が彼のデスクに飛ぶ。

私は大きな腹を上下させながら、深い溜息をついた。

・・・これでは、一歩間違えばホモではないか。

 

 

 

月末。

私は資料室名義で某雑誌を再び購入した。

ゲイ雑誌、それも、デブ専と呼ばれるマイノリティの中のマイノリティが好む雑誌だ。まさか自分がこんな変態雑誌を購入するような人間になるとは、夢にも思っていなかった。

残業後、私はいつものようにオフィスに残り、皆が帰宅するのを待つ。

「部長、まだ帰らないんですか?」

部下の乾君(ちなみに獅子人)が声を掛けてくるが、私はパソコンのモニターから目を離さずに答える。

「うむ。この書類をまとめたら帰るよ。気にせず帰りたまえ」

「そうですか。じゃあ先に失礼しますね」

「ああ、お疲れさま」

「お疲れさまです」

乾君は早々に帰っていった。

・・・これで、私一人だ。

私はいつものように遠野君のデスクに座ると、購入したゲイ雑誌を開き、見る。

きっと今頃、遠野君もこの雑誌でオナニーしているに違いない。・・・私を想像して。

今回のグラビアは猪人だった。雑誌のジャンルがジャンルなだけに、猪人や豚人、熊人などがグラビアを飾ることが多い。

そして、今回はなんと猪人と虎人のカラミだった。いつか遠野君の家で見た時と同じ組み合わせだ。

遠野君ではないが、太った虎人に、どうしても自分の影を重ねてしまう。そして、猪人には社長の影を。

「・・・社長・・・」

社長。株式会社ボヤージ代表取締役、蒼崎平太。

猪人らしく、よく太った男だ。年齢はたしか40後半。綺麗な奥さんと可愛い娘さんを持ち、職、家庭共に充実した生活を送っている。・・・羨ましい。

そんな社長はイベント好きで、1月には羽根突き大会や餅つき大会、3月には花見と、ことある事にイベントを企画する。

そういえば、来月には社員旅行があったな。

行き先は毎年恒例で温泉。きっとまた卓球大会が開催されることだろう。豪快な性格の割に案外マメである。

そんな社長は今、ゲイ雑誌の中で虎人、私のチンポをしゃぶっている。

「あっ・・・社長・・・! い、いけません・・・」

社長にしゃぶられ、私は早くも発射態勢に入った。

まあ、決して早漏ではないと思うが、一般人よりは少し早いかも知れない。以前風俗のお姉さんに「えっ、もう?」と言われたこともあるくらいだし。

「・・・社長! 駄目・・・! イ、イキますッ!」

宣言し、私は射精した。

「んっ・・・ハァ・・・ぁ・・・社長・・・っ!」

くたりと、遠野君の机に突っ伏して、私は何度も社長の名を呼ぶ。

デスクの下では、射精を終えた包茎チンポがビクビクと痙攣を続けていた。

「・・・弓塚くんか?」

「っ!?」

声のした方に顔を向けると、そこにはなんと蒼崎社長の姿があった!

「えっ! あ、あのっ! 社長!?」

「・・・ん? いや、今呼んだのは君じゃないのかね?」

「いえっ! ち、ちがいます!」

「・・・そうか? 気のせいか・・・?」

ヤバイ!

もしかして、見られた・・・!

私は起きあがりながら腕をずらし、机の上のゲイ雑誌を膝の上に落とす。

「・・・ところで、なぜ君はそんな席にいるのかね?」

社長が一歩踏み出す。

私は恐怖で総毛立った。

これ以上近付かれたら、私が下半身裸なのに気付かれてしまう!

「いえ! その! た、たまには新鮮な気持ちで仕事しようと! あの! べ、別に深い意味は!」

だからそれ以上近付かないでください!

心の中でそう叫びつつ、私は必死で弁解した。

嫌な汗が溢れて、シャツがべっとりと肌に張り付く。腋が湿って、社長にまで匂いが届いてしまいそうだった。

「そうか、ふむ」

社長はオフィスを見渡し、

「それも良いアイデアかもしれんな」

そういって背中を向けたので、私は安堵した。

「ではワシは先に帰宅させてもらうよ」

「あ、はい!」

社長は去り際にニヤリと歯を覗かせ、

「・・・お疲れさん」

と言い残して去っていった。

「は、はい! お疲れさまです!」

・・・よかった・・・! 気付かれなかった・・・! た、助かった・・・!

私は脱力した。

どっと汗が噴き出し、腋の匂いが鼻を突いた。

ふと思い出して膝の上のゲイ雑誌を持ち上げると、私の包茎チンポから精液の糸がのびる。

「・・・あ」

グラビアの社長の顔面に、私の精液がべったりと付いていた。

 

 

 

そして翌日。

私はいつものように部下に指示を飛ばし、バリバリと働いていた。

相変わらずポカをやらかす遠野君を叱り付け、席に戻す。

彼はションボリと尻尾を垂らして椅子に座る。

「・・・ん、なんだこれ」

椅子を引いた遠野君が漏らす。

見ると、何かが手に付いたようで、ハンカチで拭いているではないか。

「どうした?」

「・・・あー、いや、なんか椅子に修正液が・・・」

遠野君は乾君とそんなような会話を交わす。

私は内心ゾッとした。

もしかしてアレは、私の精液ではなかろうか。

昨夜あんな事があって動揺していたため、精液の始末が不十分だったのかも・・・!

「と、遠野君!」

「はい?」

「あー、アレだ、ホラ。その・・・そう昼食! 昼食付き合いたまえ」

「? はい、わかりました」

なんとか話題を逸らすことに成功し、私は突き出た胸をなで下ろした。

 

社員食堂。

私は遠野君と盛りそばランチをすすっていた。

「・・・でも、なんで突然ランチ誘ってくれたんですか?」

「そ、それはアレだ、ほら、この間は世話になってしまったからな」

本当は毎晩世話になっているのだが、それはお互い様か。

「・・・?」

遠野君は未だに腑に落ちない様子だったが、とりあえず追求はしてこなかった。

「そういえば、その・・・合コンは、どうだったのかね?」

「ああ、そのことですか」

遠野君はようやく笑った。

きっと、私がそのことを聞きたくて昼食に誘ったとでも勘違いしたのだろう。

「ええ、うまく行きましたよ」

「・・・え?」

私は耳を疑った。

うまく行った・・・?

「なんすか、その不思議そうな顔はー」

「あー、いや・・・」

あれ? だって、遠野君はホモで・・・それで、私のことが・・・

どういうことだ? 見栄を張っているのか?

「じ、じゃあ、その・・・付き合うのかね? その、じょ、女性と?」

もしかしたら男同士の合コンなのかも知れない。

私はちょっとカマを掛けるためにあえて女性という単語を使った。

が、彼はさらりと言ってのけた。

「んー、どうでしょうねー。アドレスはもらったけど・・・たぶん付き合いはしませんねー」

「そ、そうなのか・・・」

あれ? おかしいな、どういうことだ?

もしかして彼は・・・ホモじゃない?

「それで、その・・・」

ヤッたのかね?

そう聞こうとして私は慌てて首を振った。聞けるわけが無いではないか!

「?」

「いや、な、なんでもない・・・」

私は震える手でそばをすすると、動揺を悟られないように手を合わせた。

「・・・ごちそうさま」

 

 

・・・どういうことだろうか。

私はボンヤリとデスクに座ったまま、煙草を吹かしていた。

遠野君は、ホモではないのだろうか。

ではあの雑誌は何だったのだ? ゲイの、それもデブ専雑誌なんて、普通の人間(業界用語ではノンケというらしい)は持っていないハズだ。

デブ専だから、てっきり私に気があるのかと思っていたのだが・・・あ、いや、私はまだデブではないが。ともかく、これはつまり、私の独り相撲だった、ということか? やはりあの雑誌は、友人の悪戯か何かだったのだろうか・・・

あー、わからん・・・!

私はくしゃくしゃと頭を掻き、溜息をついた。

・・・というか、これではまるで恋する乙女のようではないか。37歳の中年男が、なんと見苦しい。

「部長?」

「んっ?」

「灰が・・・」

乾君の指摘するとおり、長く伸びた煙草の灰が折れ曲がっている。

私は慌てて煙草を灰皿に押しつけ、照れ笑いを浮かべた。

「やっぱりお疲れなんじゃありませんか? 残業のしすぎですよ」

『残業』のしすぎ、か・・・

「ああ、うむ。・・・その通りかもしれんな」

「今日はもう帰られた方がいいと思いますが」

「・・・そうだな・・・」

私は鞄を手にして席を立った。

「すまない。今日は帰るよ」

「はい。そうしてください」

オフィスを出る前にホワイトボードが目にとまる。

来月は社員旅行だ。

部屋割りは大抵くじ引きで決まる。

もしも、遠野君と同じ部屋になったら・・・それとなく聞いてみようか・・・

まあ、くじ引きなんてそう簡単に当たりはしないのだが。

私は溜息をつく。

「お疲れさまでした」

「・・・お疲れ」

 

 

 

そして、社員旅行の日はやってきた。

私たち一行は、バスに揺られ、カラオケなどで盛り上がりながら山奥の温泉街へ。

案の定開催された卓球大会で早々に敗退し、私はホールの隅でビールを飲んでいた。

「なんだ、弓塚君。もう負けたのか」

そう声を掛けてきたのは蒼崎社長だ。

息が上がっている。猪人の大きな鼻から漏れる息が荒い。

「・・・社長もでしょう」

見ていた。

社長はたった今負けた所だ。

「がははは、お互い歳を取ったなあ! だが、ワシがもう5年若ければ優勝は逃がさんぞ!」

卓球のラケットを振る社長。

浴衣が乱れて、胸元が大きく開いた。汗をかいた社長は、ちょっとだけセクシーに見えた。

思わず頬が染まる。・・・いや、これはアルコールのせいだ。私はホモではない。

「ふぅ・・・よし、一風呂浴びてくるか!」

「お付き合いします」

「おう!」

大会の進行役は幹事に任せ、私たちはホールから退席した。

私たちが向かったのは、室内大浴場。露天風呂にみんな行っているせいか、ガラガラだ。私はホッとして浴衣を脱いだ。

どうも人前で裸になるのは苦手だ。太っているし、それに、短小包茎にもコンプレックスがある。

私は浴衣を脱ぐと、しっかりとタオルで隠してからブリーフを脱いだ。

「やっぱり空いているな!」

「ですね」

社長は股間を隠すことなく、タオルを肩に掛けて歩いてきた。

今までは全く気にならなかった彼の股間に目が行ってしまう。社長は、それほど大きくはないが、包茎ではなかった。

・・・あれが、社長の、チンポ・・・

慌てて頭を振る。待て待て、これじゃ本当にホモみたいではないか。

「どうした?」

「い、いえっ! なんでもありません!」

「そうか」

社長は湯船につかる。

私もかけ湯をして、隣に座った。

・・・さすがに湯船にタオルをつけるのはマナー違反だ。恥ずかしいが、タオルは浴槽の縁に畳んで置く。

「しかし弓塚君、きみ太ったなあ!」

「い、いきなりなんですか」

確かに太ってはいるが、体重は3桁手前だ。デブではない。

「そういう社長だって」

「そりゃ、ワシは猪人だからな!」

豪快に笑って大きな腹を揺らす。

・・・まったく。

その後も私たちは他愛のない話をして、身体を洗ってもう一度湯船に。

「ふうー・・・」

やっぱり温泉っていいなあ。

「さて、そろそろ決着も付いた頃だろう」

「そうですね」

「ワシは上がって部屋割りのくじを作るが、弓塚君はのんびりしていたまえ」

「はい、そうさせてもらいます」

・・・あれ、あのくじって社長が作っていたのか。

ボンヤリ考える私をよそに、社長はザバッと水音を立てて立ち上がった。

私の目の前に、社長のチンポが垂れ下がる。

「!」

どきっとして、私は慌てて顔を背けた。

「?」

・・・駄目だ、このままでは、私は本当にホモになってしまう。

社長はそんな私の苦悩も知らず、豪快に股間を揺らしながら去っていった。

「・・・・・・」

顔を赤くして湯船に鼻までつかる。

しばらくして、再び脱衣所の扉が開かれた。

「・・・社長?」

忘れ物だろうか。

だが、湯煙の奥からやってきた人物は、社長ではなかった。

「あ、部長」

遠野君だった。

まったく、どうしてこう、次から次へと・・・

私の視線が彼の股間に突き刺さる。遠野君は、社長と同じく股間を隠さない派のようだ。こういう場では隠すのがマナーではなかろうか。それとも、私が女々しいだけなのだろうか。

遠野君のチンポは、それは立派なモノだった。

しっかり剥けているし、太さも長さも申し分ない。勃起していないにもかかわらず、私の勃起時よりも大きい。・・・羨ましい。

しかしまあ、こういう人は勃起してもそれほどサイズが変わらないという。ということは、私よりも少し大きいだけだろうな、うん。

「部長?」

はっ。

私は我に返った。

ついまじまじと彼のチンポを観察してしまった。

冗談ではない。私はホモではない。

これ以上彼の裸を見ないように、私は視線を逸らす。

「・・・なんでもない」

「? 失礼します」

かけ湯をして、私の隣に遠野君が座る。

「結局、優勝は乾でしたよ」

「あー、そうか」

彼は運動神経がいいから、妥当といえば妥当な線だ。

「俺もいい所まで行ったんすけどねー」

「はは、残念だったね」

「いいっすよ、賞品のゲーム機はもう持ってますから」

そういう割には悔しそうだ。

私は少し笑って、浴槽に背中を預ける。

大きな窓の外には満月が見えた。風光明媚。良きかな良きかな。

「ふー」

遠野君はしばらく湯船につかると、上がって身体を洗い始めた。

鼻歌交じりに身体を洗う遠野君を何とはなしに見つめながら、私は口を開く。

「君、ゲームとか得意なのかね」

「えー、いやまあ、それなりにっすかねー。とりあえずハードは全機種もってますよー」

全機種というのが何台を差すのか、私にはサッパリわからない。が、それなりではないであろう事くらいは、いかな私にもわかる。

「すごいな、それは。君はアレか、ゲーマーという奴か」

「ははは、修二にもよく言われます」

・・・修二? 誰だ?

まさか、恋人か?

「あ、弟ですけどね。俺と違って良くできた奴で。勉強ばっかしてるんです」

「弟か。・・・君も少しは見習いたまえ」

ひどく安心している自分に戸惑いつつ、私は言う。

「ちぇー、部長までそんなこと言うしー」

ざっと水をかぶり、泡を洗い流して彼は再び私の隣に座った。

ドキリとする。

内心の動揺を悟られないよう、私は続けた。

「勤勉な弟か。本当に正反対じゃないか」

「まだ言いますか。・・・まあ、そうっすね、自慢の弟です。しばらく会ってないけど」

「仲悪いのか?」

「いえ? いいっすよ。ただまあ、俺一人暮らししてるし、アイツも寮に入ってるし、盆と正月位にしか会いませんね」

「そうか」

やはり遠野君に似ているのだろうか。

・・・ちょっと見てみたい気もするな。

「さて、じゃあそろそろ上がりましょうか」

「もうか? 早すぎだろう」

「だって、早く行かないとくじ引き始まっちまいますよ」

「・・・私はもうしばらく浸かっているよ」

勇気を出して、私は言う。

「そっすか。んじゃ」

だというのに、遠野君は、さっさと上がってしまった。

だが、これでハッキリした。

彼は別に、私のことなど何とも思っていないのだ。

もし気があるのなら、もう少しくらい一緒にいてくれるハズだ。

やはり、彼はホモではなかった。ましてや、私に気があるかもしれないなどと・・・滑稽な話だ。

「・・・ははは・・・なんだ・・・」

滑稽すぎて、可笑しい。

私は一人笑った。笑いすぎて、涙が滲む。

湯船に映る自分の顔がぐにゃりと歪む前に、私は湯をすくってバシャバシャと顔を洗った。

 

 

 

「・・・・・・」

のぼせた。

私はフラフラになりながらも何とかホールに戻り、あてがわれた部屋へ上がる。

そこにはすでに布団が3組敷かれていて、私はそこへ倒れ込んだ。

「・・・あー・・・気持ち悪い・・・」

浴衣の胸元を大きく開き、手を団扇代わりにして扇ぐ。

「大丈夫っすか? 部長」

「ああ、うん・・・なんとか」

遠野君が、本物の団扇で扇いでくれた。

風が気持ちいい。

白い毛皮をなびかせて、私は「あー・・・」と声を出す。

「・・・って、遠野君!?」

「うわびっくりした!」

突然跳ね起きる私に驚き、遠野君はのけぞった。

「なんすか、急に」

「あ、いや、君と同室だったのか、と思って・・・」

「えー、俺と同じ部屋なの、そんなにイヤなんすかー?」

不満そうに頬を膨らませる遠野君。

「あ、違う、そんな訳はない。・・・ただ、部屋割よく見てなかったから」

長湯しすぎた私がホールへ戻ると、既にくじ引きは終了していた。

私は自動的に空いた部屋へと放り込まれたのだろう。

見ると、すでに荷物も運び込まれている。

はて、3人部屋らしいが、もう一人は誰だろう?

「社長っすよ」

私の疑問が伝わったのか、聞いてもいないのに遠野君が答えてくれる。

って社長か!

なんでこう、次から次へと・・・

「今はみんなと土産買いに行ってます」

「そ、そうか・・・」

私は布団の上にあぐらをかき、しばし遠野君と向き合っていた。

・・・き、気まずい・・・

テレビを付けてみるも、面白い番組はやっていない。

「・・・なんもやってないっすね」

遠野君はチャンネルを一巡させるとテレビを消して、自分の荷物から本を取りだしてくる。ゲーム雑誌だった。遠野君らしいな。

私も、こんな時のために持ってきた本でも読むとしよう。

荷物をたぐり寄せ、開く。

「・・・・・・?」

一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

そこにある見慣れたものが、なぜそこにあるのかわからない。いやそもそも、先ほどまではこんなモノは入っていなかったハズだ。

私のバッグの中から、ゲイ雑誌が顔を覗かせていた。

「・・・しまったっ!」

ようやく事態を理解して、私は思わず大声を出す。

なんということだ! 私は、荷造りの最中、自分でも気付かないうちにこれを紛れ込ませてしまったのだ! も、もしこんなモノを持ってきていることが遠野君に、いや、彼に限らずとも誰かに知られたら、私の人生はおしまいだ!

ぶわっ、と汗が噴き出す。

ああもう、風呂に入ったばかりだというのに。いや、そんなことはどうでもいい! 今は、一刻も早くこれをバッグの底に押し込めて、な、何事もなかったように・・・

「・・・部長、なんすか、それ・・・」

「!!」

驚愕の表情で振り返ると、すぐ後ろに遠野君がいた。

「ち、ちが・・・っ!」

手が震えた。

いや、手だけではない。全身が、痙攣したかのようにガクガクと震えていた。

バッグを隠そうと持ち上げた時、指に力が入らずに取り落としてしまう。

ザッ、と中身がブチ開けられ、そして・・・ああ、なんと言うことだ・・・! 最悪の事態だ!

よりにもよって、そう、よりにもよって、ゲイ雑誌が一番上に! そのうえ、グラビアページが開いた状態で!

「・・・・・・」

遠野君の目がゲイ雑誌を見つめる。

違う、これは、誤解なんだ・・・! 私はホモじゃない!

最悪の事態に、言葉が出ない。

だが、これはまだ最悪の事態ではなかった。

これ以上の最悪があるのだろうかと思っていた私に、さらなる最悪が襲いかかる。

「おう、今帰ったぞー!」

ガラリと襖を開けて、蒼崎社長が帰ってきたのだ・・・!

 

 

 

「・・・・・・」

私は指一本動かすことが出来ず、硬直していた。

いや、正確には硬直でない。全身をブルブル震わせて、脂汗を垂れ流していた。

「・・・ち・・・違・・・う・・・こ、これは・・・違・・・」

「・・・部長、これって・・・」

「弓塚君、きみ・・・」

二人の視線が、ゲイ雑誌から私に移る。・・・軽蔑のまなざしだった。

ゲイ雑誌は、ちょうど虎人が猪人に犯されている写真だ。

私が、社長に。

「ちが・・・わ、私は・・・」

ガチガチと歯が鳴った。

おしまいだ。上司と部下に、同時に知られてしまった。

「わ、私は・・・!」

「ホモだったのか」

「!!」

「部長がねー」

「!!」

違う、そうじゃない!

「わた、私は・・・! ホ、ホモじゃ・・・ホモじゃな・・・ち、違う・・・!」

歯を鳴らしながら必死に弁明する。

心臓が高鳴り、息苦しい。いっそこのまま心臓麻痺で死んでしまえれば、どれだけ救われることだろう。

「どうりで見合いも断るワケだな」

「未だに彼女もいませんしねえ」

二人の容赦ない言葉に、私は膝を付いた。

じわりと、ブリーフに尿が滲む。このうえ失禁までしてしまったのか。

「ち、違うんです・・・! 私は、ホモじゃない・・・ホモじゃ、ないんです・・・!」

「じゃあコレはなんだね?」

「しかもデブ専かー。部長、もしかしてナルシストっすか?」

「ちが・・・」

震えながら、私は手を付いた。

どうすれば・・・どうすれば誤解を解けるんだ・・・!

「こ、これ・・・これは・・・な、何かのま、間違いで・・・」

ろれつが回らない。

「見苦しいぞ、弓塚君」

「そうっすよ、部長」

頭上から二人の残酷な声が降り注ぐ。

ぽたり、と布団に滴が落ちた。

・・・涙だ。私は泣いていた。

「・・・お願い、します・・・!」

私は土下座した。

外回りでもしたことのない、生まれて初めての土下座をして、私は二人に懇願する。

「い、言わないで・・・誰にも、い、言わないでください・・・! お願いします・・・お、お願いします・・・!」

泣きながら懇願し、額を布団に擦りつける。何度も、何度も。

「だ、誰にも、言わないで・・・ください・・・っ!」

「んー、どうする? 遠野君?」

「そうっすねえ」

聞き入れてくれないのか!?

私は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。

「遠野君・・・! 社長・・・!」

「部長、こうされるのが好きなんすか?」

遠野君はゲイ雑誌を汚いモノでも触るようにつまみ上げ、私の目の前に突きだした。

そこには、後ろから抱きかかえられ、乳首を攻められる虎人。

「・・・・・・!」

何も言えなかった。

ただ歯をガチガチ鳴らしながら、私は首を振り、泣き続けた。

そんな私の背後に社長が回り込み、帯を解く。

「や・・・!」

震える私の上体を無理矢理起こさせて、浴衣をはだき、乳首をつまむ社長。

「ああッ!」

他人に乳首をつままれるなんて初めての経験だ。電流が走ったかのような感覚に、思わず声が漏れた。

「女のように感じているじゃないか。どこがホモじゃないんだ?」

「ひ・・・、ああっ!」

首筋に猪人の荒い鼻息がかかる。

私はますます嬌声を上げてしまった。

「・・・あれ? 部長、もしかしてションベンちびってません?」

前からは遠野君が私の浴衣をはだき、滲んだブリーフを指差して言う。

「ちが・・・!」

「どれ。・・・ああ、ほんとだ。汚いな、弓塚君は」

「しょうがないから脱がしてあげますね」

「や、いやだ・・・! それは・・・! 駄目・・・!」

私の抵抗も虚しく、遠野君はブリーフに手を掛け、それをズリ降ろした。

いつの間にか勃起していた私の愚息が、ぷるん、と上を向く。

「うわ、小っちぇー!」

「っ!!」

「なんだこれは。きみ、コレでも勃起してるのかね?」

「っ!!」

恥辱に、私は声も出ない。

見られている・・・勃起しても皮の剥けない私の包茎チンポが、遠野君と社長に、見られている・・・!

「これじゃホモになるしかないっすねえ」

「とても女を喜ばせることはできんなあ」

ひどい。

そんな、あんまりだ。

「う、うぅっ・・・」

「これ、剥けるんすかねえ? もしかして、真性っすか?」

「どうだろうな。・・・遠野君、きみ剥いてみなさい」

「はい」

「だ、だめだ・・・っ!」

私の制止などまるで聞かず、遠野君は私の包茎チンポをつまんだ。ただそれだけの刺激で、私の全身を快感が走り抜ける。

「はぁんっ!」

「おいおい、女じゃないんだから」

「痛かったら言ってくださいねー」

そういいながら、遠野君はゆっくりと私の皮を剥く。

「あ・・・あぁ・・・」

湿った亀頭が冷たい外気に晒されるのを感じながら、私は震えた声を出す。

背後からは、相変わらず社長が私の乳首を攻めていた。

「おお、ちゃんと剥けるじゃないか」

社長の言葉に視線を降ろすと、遠野君の指が私のチンポを剥ききっていた。

彼は現れた小さな亀頭に鼻を寄せ、クンクンと匂いを嗅いでくる。

敏感な亀頭に鼻息がかかり、私は身体を震わせた。

「うん、あんま臭くないっすね。ちゃんと洗ってるんだ、偉い偉い」

ご褒美とばかりに、亀頭を撫でてくる遠野君。

「ひっ、ひいいぃぃ!」

強すぎる刺激に、私は悲鳴を上げて身体をくねらせた。

「あ、すんません、痛かったっすか?」

「おいおい、優しくしてやれよ。君も小学生のころは包茎だっただろう?」

「ええまあ。でも5年生になる前に剥けましたけどね」

「そうか、早いな。私は中学まで剥けなかったぞ」

「まあいずれにしろ・・・」

「大人で包茎はないよな」

ううっ!

恥ずかしさと悔しさで泣きながら、私はうつむいた。

「まあ、部長、そんなに落ち込まないでも。包茎でも子供は作れますから」

「いやいや、きみ。男同士じゃ剥けていようが被っていようが、子供はできんぞ?」

「それもそうすね」

二人は笑って、さらに私を攻め続けた。

社長の手が胸を鷲掴み、揉みしだく。奥さん相手に毎夜使っているテクニックなのか、乱暴だが痛くはなく、私は吐息を漏らす。

遠野君は亀頭を直接刺激するのはやめてくれて、皮を被せた上から円を描くように捏ねてくる。

私は抗議することもできず、ただただ女性のように喘ぎ声を漏らしていた。

「あーあー、こんなに感じちゃって」

「おい、あんまりいじるとイッてしまうぞ?」

社長の言葉は手遅れだった。

二人の攻めに私は我慢できず、とうとう射精してしまったのだ。

上司に見られながら、部下の手によって。

「あ、あ、あ! い、いくうぅぅっ!」

恥も外聞もなく、AV女優のような声を上げ、私は包茎チンポの先から大量の精液を溢れさせる。

それは遠野君の浴衣にまで飛んで、腕を汚す。

「うわ、汚えっ」

「うっ、ううっ・・・!」

私は涙と鼻水とヨダレで顔をぐしゃぐしゃに濡らしながら、びくっ、びくっと大きな腹を震わせ、精液をこぼし続けた。

「ほらみろ、いわんこっちゃない。その包茎チンポを見れば、早漏だって事くらいわかるだろう」

「いやでもまさかこんなに早いとは。そもそもたいして刺激してないっすよ?」

遠野君がチンポから手を離す。

萎えたチンポは亀頭の先まで包皮に覆われ、それどころか余った皮がしわになって先端に精液の滴を作った。

「なんともひどい短小包茎だな」

「なんか、気の毒っすね。小学生だってコレよりはデカイっすよ?」

く、くやしい・・・。

男としての価値を全否定されたようで、私は声を上げて泣いた。

社長は、そんな私の胸が気に入ったのか、手を変え品を変え、弄んでくれた。

「・・・ふむ。だが胸は良い。毛皮に覆われた男の胸というのも、なかなか悪くないな」

「へえ」

精液で汚れた浴衣を脱ぎ、遠野君がトランクス一丁になって私の胸を覗き込んだ。

社長の無骨な手で愛撫され、ピンと乳首が立ってしまっている。社長はその乳首をつまみ、擦った。

「あ、あっ・・・! あっ!」

「感度も良いようだ。・・・ほら、君も揉んでみなさい」

「そうすか。じゃあお言葉に甘えて」

私ではなく、社長の許しを得て、遠野君が私の胸をわしづかむ。最初は快感よりも痛みの方が強かったが、やがて力加減に慣れたのか、快感が上回った。

堪えきれずあえぎ声を上げる私をニヤリと嗤って、社長は浴衣を脱がしてきた。抵抗などできずに、私はとうとう全裸にされてしまう。

「ゆ、許し・・・もう・・・許して・・・」

私の懇願など聞く耳持たず、両腕を持ち上げて、バンザイをさせる。

その両手首を片手で掴み、あらわになった腋の下に鼻を近づける社長。

「臭いな、ちゃんと洗ったのか?」

そんなこと言われても、私はワキガだ。汗をかけばすぐに臭くなってしまう。

「お願い・・・もう・・・」

これ以上ない屈辱的な格好をさせられ、私のわずかな自尊心がガラガラと崩されていく。

追い打ちを掛けるように、かぷり、と遠野君が私の乳首に歯を立てた。

「はあぁっ! ・・・あ・・・ぅんっ!」

だめだ、そんな、これ以上刺激されたら・・・!

私は、再び股間が熱を帯びるのを感じた。

そんな、回復が早すぎる。今イッたばかりだというのに!

いま勃起してしまったら、二人はここぞとばかりに私をなじるだろう。それはイヤだ。勃起しないでくれ、頼む・・・!

私は目を閉じ、歯を食いしばって必死に快感に耐えた。

遠野君は相変わらず私の胸を揉み、赤ん坊のように乳首に吸い付いてくる。

社長は私の腕を掴み上げたまま、喉を撫で、腋の下をくすぐり、腹の肉を撫でた。臭いと言っておきながらその匂いが気に入ったのか、私の腋の匂いを何度も嗅ぐ。

「ああっ・・・! い、いい・・・!」

思ってもいない言葉が漏れる。感じてなどいないというのに・・・!

「とんだ変態だな、弓塚君は」

「社長、見てくださいよ」

遠野君が私の股間を指差す。

二人の視線が注がれる中、私の包茎チンポは持ち主の意志に反して体積を増していった。

ぴくん、ぴくんと、徐々に上を向いてくる。

なぜだ! こんなに悔しくて、悲しくて、恐ろしいというのに! どうして私は勃起してしまうのだ!?

「ホラ。・・・部長、もう勃起させてますよ?」

「なに? いまイッたばかりじゃないか。なんて節操のないヤツだ・・・」

「い、いや・・・見ないで・・・いや・・・」

二人の視線から少しでも逃れるべく、私は腰を引いた。

しかし、この二人がそれを許してくれるはずもない。

「今更なにを言っとるんだ」

ぐい、と後ろから腰を押され、私はチンポを突き出すように背筋を伸ばした。

同時に、勃起しきった包茎チンポの先から、精液混じりの先走りがとろりと垂れる。

お願いだ、もう許してくれ・・・!

これ以上されたら、私の心は壊れてしまう・・・!

「ゆ、許して・・・ください・・・なんでも・・・な、なんでもします、から・・・」

「ほう」

「なんでも、っすか」

遠野君がゲイ雑誌を拾い上げ、パラパラとめくった。

「んじゃあ、こういうのはどうっすか?」

差し出したグラビアでは、虎人が嬉しそうにチンポをくわえていた。

「!?」

「なんか俺、興奮してきちゃって。・・・部長、こういうの好きっしょ?」

遠野君はそういってトランクスを脱いだ。

そこには、私のモノなど比べものにならないほど立派な雄の象徴が。

反則だ。普段から大きい人は、勃起してもそれほどサイズが変わらないハズ。そのハズなのに、彼のチンポはさっき浴場で見た時よりも、さらに太く、長いではないか! 十分に成長し、膨れあがった亀頭の輝きは、恐怖心さえ呼び起こすほどだった。

「あ・・・ぅあ・・・」

「遠野君、きみでかいなあ! ホモにくれてやるのは勿体ないくらいだ」

「へへへ。ちょっと自慢っす」

遠野君はその自慢の巨根の根元を握って、私の眼前に突きだした。

脈打つ血管が浮いている。

私は、思わずゴクリと喉を鳴らしてしまった。

「・・・ほう」

それを耳ざとく聞きつけた社長が嗤う。

「なんだ、その物欲しそうな顔は?」

「! ちが・・・! 私は・・・ホモじゃ・・・!」

首を振って否定する。

そう、私はホモじゃない! チンポなんて、しゃぶりたくない!

「まだ認めないのか? 男に射精させられて、こんな格好をさせられて、遠野君のちんぼを見て勃起しているというのにか?」

「う・・・いや・・・」

認めない。認められるわけがない。

二人は誤解しているだけなんだ。私はノンケだ。ホモじゃない!

「部長、はい。あーん」

鼻先にチンポをあてがう遠野君が、酷薄に言う。

「・・・い・・・いや・・・!」

「はやくしたまえ。なんでもすると言ったじゃないか」

「ホラ部長。あーん」

「うぅっ」

私は、泣く泣く口を開けた。

よだれが糸を引く。

遠野君は、そんな私の口に無遠慮に侵入してきた。

「ぅぐっ・・・!」

「おお! ほんとにくわえおったぞ!」

「へへへ。・・・部長、俺のチンポ、美味いっすか?」

そんなわけがない。

遠野君の巨根はぬるりとしていて気持ち悪い。血管の脈動が舌に伝わる。喉が塞がれて息苦しい。吐き気がした。

私は悔しさに震えながら、おえっ、とえづいた。しかし、吐き出す訳にはいかない。これ以上彼らの機嫌を損ねたら、私は取り返しの付かないことをされてしまうだろう。

この苦境から逃れる方法は、一刻も早く彼らを満足させるか、飽きて私に興味を無くすのを待つしかない。他の選択肢など無いのだ。

「ぅえっ・・・ぐ・・・ぅ・・・っ」

私は舌を動かし、遠野君に刺激を与える。

「おぉっ・・・」

遠野君が呻いた。

感じて、くれているのだろうか。

私は泣きながら必死に彼の巨根をしゃぶり続ける。

「コレ・・・思ったよりイイっすよ、社長」

「ほう」

気が付くと社長は私の腕を放し、浴衣を脱いでいた。

裸になった社長までもが、遠野君の横に並ぶ。

「弓塚君、ワシのちんぼも欲しいか?」

そういって、なんと彼までトランクスを脱ぐではないか。

ずるん、と現れた社長のチンポはすでに半勃ちで、黒ずんだ亀頭を見せつけてくる。

「へえ、社長のもなかなかデカイっすね。・・・っつーか、使い込まれてるなあ」

「毎晩かーさん相手に使っているからな。しかしきみほど立派ではないよ」

「いやいや、立派っすよ。ほら、この包茎チンポに比べたら」

「きみ、それはいくらなんでも失礼だろう。・・・こんな短小包茎と比べないでくれたまえ」

・・・ううっ。

理不尽だ。・・・そりゃ、私のチンポは確かに短小包茎で情けない。それは自分でも重々承知している。

だが、チンポが小さいだけで、ここまで馬鹿にされていいのだろうか。

「そんなことより、ホラ。弓塚君」

「あ、どうぞどうぞ」

遠野君が私の口からチンポを抜き、社長に席を譲った。

口を解放してもらえた私は、おえぇっ、と吐いた。幸い胃液は逆流しなかったが、よだれと先走りの混じった粘液が布団を濡らす。

「汚いなあ、部長」

「・・・ひっく・・・もう・・・ぅっく・・・いや・・・許して・・・っく・・・」

嗚咽を漏らしながら、私は無駄な懇願をした。

そう、無駄だ。二人は絶対に許してなどくれない。

「はやくしたまえ。・・・それとも、遠野君のちんぼはしゃぶれても、ワシのちんぼはイヤだと言うのか?」

「・・・ぅっく・・・い、いいえ・・・ひっく・・・」

私は涙に濡れた顔を上げると、震える口をそっと開いた。

社長はそんな私の上顎を乱暴に掴んで大きく開き、無遠慮にチンポをねじ込んでくる。

「・・・おぶ・・・・うぇっ・・・!」

イヤだ・・・気持ち悪い・・・汚い・・・

だが、続けなければ二人を怒らせてしまう。

私はぐちゃぐちゃと音を立てて、必死に社長を愛撫した。

「ほう! なるほど、これは・・・いいな」

「でしょ? ・・・よかったっすね、部長。社長に気に入ってもらえましたよ?」

私は一刻も早く解放されたくて、吐き気を堪えて怒張した社長のチンポに舌を這わせる。

「おおっ」

嬉しそうに、社長は腰を振った。

ああ、そうなんだ。

私は今、レイプされている。男に口を犯されているのだ。

そのことにようやく気付き、私の包茎チンポが嬉しそうに震えた。

「・・・ふーん・・・なるほど」

遠野君が、私のゲイ雑誌を読んで頷いている。

ぱたん、とゲイ雑誌を閉じると、彼は私の背後に回り込んだ。そのまま私の身体を抱き、そっと仰向けに横たえてくれた。

正直ずっと立ち膝で疲れていたので、ありがたかった。

そんな私の口を逃すまいと、顔の上に跨ってくる社長。抵抗はするだけ無駄だ。私は自ら社長をくわえ込んだ。

「ワシのちんぼはそんなに美味いか? ん?」

「・・・う・・・はい・・・」

そう答えるしかない。

嬉しそうにニヤリと笑って、社長は四つん這いになり、腰を振った。

汗ばんだ社長の腹が顔面に押しつけられ、息苦しい。それに、暑い。

遠野君が私の包茎チンポを握り、玉をもみしだいた。

「んんっ・・・!」

気持ちよくて、私は呻いてしまう。

私は大量に汗をかいていた。・・・きっとこの部屋はワキガ臭いんだろうな・・・。現実逃避でどうでも良いことを考える。

「どれどれ?」

私の足が持ち上げられた。社長の腹と私自身の腹で見えないが、遠野君だ。

・・・そんな格好をさせられたら、私の肛門が丸見えになってしまう。きっと今頃、遠野君の目の前に晒されているだろう。

「・・・!?」

私はようやく理解した。

ゾッとしてさらに脂汗が出る。

遠野君は、私の尻を犯そうとしている!

「・・・だっ! だめだっ! そこは・・・そこだけはっ!」

社長を吐き出し、私は悲鳴を上げた。

社長は一瞬ムッとしたようだが、遠野君がしようとしていることに興味を持ったのか、私の胸に腰を下ろした。おかげで私は身動きが取れない。

「ひっ! だめだ! お願いだ! 許してくれ! そっ、それだけはだめだっ!」

暴れる私に手を焼いて、社長は背後に回り込んで羽交い締めにした。

遠野君は私の股を広げて、ニヤリと歯を見せる。彼の背中越しに尻尾が振られているのがわかった。

恐怖で、私の全身が総毛立つ。

「やめて、お願い・・・ッ!」

「えー、ダメっすか? 写真じゃ気持ちよさそうにしてるっすよ?」

それはゲイ雑誌の話だ。私にはとても真似できない!

「面白そうだ。続けたまえ」

「そんな! 社長・・・っ!」

遠野君の指が、私の肛門にあてがわれる。

今までの二人の仕打ちに容赦はない。

「そこ」はデリケートな場所だし、もともとそういう目的である穴ではないのだ。乱暴にされたら、壊れてしまう! ましてや遠野君のような巨根を受け入れられるワケがない! 内臓まで壊されてしまう!

私は必死で叫んだ。

「だめだ! は、初めてなんだ! 私は、そこは初めてなんだ!」

「え? 部長、バージンっすか? その歳で?」

「なんだ、きみ。女だけじゃなくて男にもモテないのか?」

「そうじゃない! わ、私は最近までホモじゃなかった! つ、つい最近なんだ! ホモに目覚めたのは!」

私はとうとう認めてしまった。

自分がホモであると。

「そうか、初めてか。・・・では遠野君、優しくしてやりたまえ」

「はい」

「いや! 嫌なんだ! 本当に! 許してくれ!」

「そんなんじゃ部長、いつまで経ってもバージンっすよ? いいかげん観念してください」

「許してくれ・・・! 許してくれ・・・! 他のことなら何だってする・・・! だ、だから、尻だけは・・・! 頼む、後生だからッ!」

私の必死の嘆願も、やはり二人は聞き入れてくれない。

おもちゃを与えてもらった子供のように、残酷に私の尻に指を突っ込む遠野君。

「ぅああっ!」

「弓塚君、あんまり叫ぶと、人が来てしまうぞ?」

「そうっすよ。こんな格好、俺達以外には見られたくないでしょう?」

指を抜き差ししながら、遠野君。

「あっ! 痛っ! だめだ、痛いッ!」

激痛と異物感に、私は泣き叫んで暴れた。

社長は私を羽交い締めにしながら、面白そうにそれを眺めている。

このままでは私の尻は、本当に壊されてしまう。

「お願い、です・・・っ! あぁっ! どうか、せめて・・・せめて、優しくしてください・・・ッ!」

「わかってますって」

私が暴れるのを諦めると、社長は投げ出されたゲイ雑誌を拾い上げ、読む。

「ふむ。・・・最初はよくほぐしてやるそうだ。・・・前戯を充分にしろ、って所は女と同じだな」

「了解っす」

「あ、ああっ! ・・・ひ、い、痛い・・・っ!」

痛みに泣く私の頭をそっと撫で、社長はなんと私にキスをしてくれた。

嬉しくて、私は社長の舌を吸った。

「ああ、社長! 社長ッ!」

「うむ、大丈夫だ。ホラ、力を抜きたまえ」

「はい・・・あの・・・」

「ん?」

もっと、キスして欲しい・・・

社長は珍しく私の願いを聞き入れてくれて、キスしてくれた。

猪人の大きな鼻から漏れる社長の吐息が嬉しい。

私が社長とのキスに夢中になっている間も、遠野君は私の尻を開発していた。

いつの間にか取り出したローションを指に塗りたくり、出し入れする。指はいつの間にか二本になっていたが、ローションによる潤滑のおかげか、痛みはあまりなかった。

・・・後から考えたら、用意が良すぎる。普通、なぜそんなローションを持っていたのか不思議に思うところだが、その時の私には余裕が無くて、とてもそこまで疑問を抱くことができなかったのだ。それに何より、ローションの存在はとてもありがたかった。

「はぁっ・・・! ん・・・っ! うぅん・・・っ!」

「気持ちいいっすか?」

「は、はい・・・あっ、あっ・・・あぁっ!」

「ほらみろ。案ずるよりも産むが易しだ」

「はい・・・あああっ! い、いい・・・っ!」

完全に女になって喘ぐ私を抱きしめ、社長は何度もキスしてくれた。

それどころか、遠野君も顔を上げ、私にキスしてくれる。

「よし、じゃあそろそろ本番行きますか」

「え、いやあの、まだ・・・」

「弓塚君、これ以上若者を焦らすんじゃない」

「で、でも・・・!」

「もう充分に優しくしてやったじゃないですか。・・・んじゃ挿れますよー」

ま、待ってくれ! まだ、心の準備が・・・!

しかし二人は待ってくれない。

迂闊だった。少し優しくされただけで、私はすっかりこの二人に気を許してしまった。なんたる失態・・・!

「い、いやだっ・・・! そんな・・・! 生で・・・っ!」

遠野君の巨根が、コンドームも付けずに私の尻にあてがわれる。

ローションでぬるぬるになった私の尻は、やすやすと彼の先端を受け入れてしまう。

しかし、痛みが無いわけではない。

彼の巨大なチンポを受け入れるには、指で慣らされた程度ではとても追いつけないのだ。

「い、痛いっ! 痛いっ! 許して!」

泣きながら許しを請う。

そんなことをしても、この二人には逆効果だと知りつつも、そうせずにはいられなかった。

「へへへ・・・どうっすか? 初めての男の味は?」

ずぶずぶと、遠野君が私に侵入してくる。

「ひいっ! い、ひいいぃぃっ!」

「よかったなあ、弓塚君」

痛い!

肛門が張り裂けてしまいそうだ。

排便感が高まって、漏らしそうになる。

「痛い! やめて、お願い! 痛い! や、やめてえっ!」

社長は泣き叫ぶ私の腋の下に鼻を当てて、ワキガの匂いを嗅ぐ。

「くう・・・臭くてたまらんな」

その匂いで興奮したのか、社長は再び私の顔に跨り、ギンギンに勃起したチンポで口を犯す。

痛いと叫ぶこともできなくなってしまい、私はもう、うーうー唸る事しかできない。

「ふう・・・やっぱり弓塚くんの口はいいな・・・」

嬉しそうに腰を振る社長。

その言葉を裏付けるように、私の口の中で、社長は蜜を溢れさせる。

「・・・ハッ、ハッ・・・ケツの穴も、気持ちいいっすよ・・・!」

下では、遠野君が腰を振っている。

私は上の口と下の口を同時に犯され、声にならない叫び声を上げ続けていた。

やがて、最初に達したのは、社長だった。

「はっ・・・ああ・・・! ゆ、弓塚君・・・っ」

私の頭を抱え込み、社長が吠える。

その腰使いに容赦はなく、彼は私の喉奥深くまで何度もチンポを突き刺した。

「い、いいか! 弓塚君! だ、出すぞッ!」

ああ、早くイッて・・・!

私は一刻も早く楽になりたくて、舌を使って社長を愛した。

「う、があああぁぁぁッ!」

雄々しい雄叫びを上げ、社長は果てた。

太いチンポの先から、ビュルッ、ビュルッ! と精液が噴き出す。

「・・・!」

ものすごい量だった。

口の中いっぱいに社長が広がる。

「ごぶっ! げはっ!」

注がれる社長の精液を口の端から吐き出す。

「うッ! ・・・うッ! っ!」

だというのに、社長の射精は止まるところを知らず、まるで小便のように次から次へと私の口に精液を流し込む。

ゴクリ、と喉を揺らし、私はとうとう社長の精液を飲み込んでしまった。

気持ちの悪い体液が、喉にからみつきながら胃へ落ちていく。

「ううっ!」

ようやく射精の終わった社長のチンポが、口の中でびくっ、びくっと痙攣する。

私は一刻も早く吐きたいのに、彼はまだ口から出てくれない。

「ああ・・・部長・・・! ハッ、ハッ・・・! お、俺も・・・!」

遠野君も絶頂が近く、一心不乱に腰を振り続けている。

私の肛門はすっかり麻痺してしまい、ただ熱い感覚だけが伝わってくる。

パン、パンと肉と肉のぶつかる音がいやらしく響いて、私たちを興奮させた。

「イ、イク・・・ッ!」

私の太った身体を抱き、社長の尻に顔を埋めて、遠野君は一際深く私を貫いた。

同時に、彼の巨根がさらに太く膨れあがる。

ビュッ、ビュッ、と彼が射精したのがわかった。

「ひ・・・あ・・・!」

上と下から雄汁を注ぎ込まれ、私は泣いた。

おそらく錯覚だろうが、腹がふくれる。まるで、そう、孕んでしまったかのように。

「は・・・ぁあ・・・っ」

二人のチンポがズルリと抜き取られた後も、私は放心してしまって動くことができなかった。

それもそのはずである。

「ハァ・・・ハァ・・・ん? 社長、これ・・・」

「・・・はぁ・・・はぁ・・・どうした・・・?」

二人は私の包茎チンポを見つめていた。

「部長、イッちゃってますよ」

「おお、本当だ」

私はいつの間にか果てていたのだ。

「よっぽど気持ちよかったんすね」

「よかったな、弓塚君」

私は何も言い返すことができず、ただ泣き続けた。

 

 

 

そして、陵辱の日々が始まった。

残業の終わったオフィスで、私は毎晩のように彼らの相手をさせられている。

「・・・っ・・・出すぞ、弓塚君っ! ・・・全部飲みたまえよ・・・っ!」

社長は私の口が気に入ったようで、必ず口の中で射精する。

私が彼の精液を飲み下すと、ようやく満足できるのか、それまでは決して許してもらえない。

「ハッ・・・ハッ・・・部長・・・! イク・・・ッ!」

遠野君のお気に入りは私の尻で、おかげでそこはすっかり開発されてしまった。

どれだけコンドームを付けてくれと懇願しても、二人は聞き入れてくれない。

今日も腹がふくれるほどに種付けしてくれた。

「あぁ・・・は・・・うッ!」

そして私は、二人に犯されながら射精する。

情けない包茎チンポから精液をこぼし、私は大きな腹を震わせる。

 

私の名前は弓塚孝太郎。

当年取って37歳。働き盛りのサラリーマンだ。

株式会社ボヤージで営業販売部長を務めている。肩書きだけ聞けばご立派だが、その実体は中小企業のしがない中間管理職。上からは押さえつけられ、下からは突き上げられる、快楽と戦う悲しい企業戦士である。

 

 

 

 

 

 

 

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