幹事クリタのコーカイ日誌2013

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10月12日 ● 面接重視の入試のデメリット。

 政府の教育再生実行会議が国公立大学の入試において、2次の学力試験を廃止し、人物重視で面接や論文により選抜するという方向で検討するというニュースがありました。うーん、これ、どうなんでしょう?パッと考えてもデメリットばかりが思い浮んでしまいますが。

 まず今の学生に一番足りないものは何かと大人が聞かれたら大半が「学力」と答えるのではないかと思います。今の学生は昔に比べてはるかに対人スキルは向上しています。昔の学生なんて大人とまともに話せる人間なんかそれほど多くいませんでした。今の世の中ほど「コミュニケーション能力」を求められていなかったので当然です。いまどきの学生は一見謙虚で親切で柔和です。挨拶もきちんとできます。昔に比べて今の若者は上品で常識もわきまえています。そこは僕は高く評価しています。

 逆に昔に比べて足りないのは学力であり知識であり教養です。早稲田のような有名私大でも一般入試の枠を減らして、推薦入試などで学生を入れています。ましてその下のランクの大学は学生を確保するために推薦やらAOやらばかり。必然的に頑張って勉強している高校生よりも、得意科目でちゃっかり推薦に足りる点をとって後は面接技術を磨いている子どもばかりが増えています。結果、学力が足りないのに偏差値ばかり高止まりしている大学が増えて「学歴のインフレ」を起こしています。なのにこれ以上学力を低下させるような施策をとってどうするのかと。

 採用する企業としてはこれまで大学名によって「地頭の良さ」とか「努力する才能」をフィルタリングしてきたのに、それができなくなっていますし、大学側としても面接重視で学生を入れたら、学力が揃わない学生を前にして教員が困ることでしょう。そもそも大学教育に必要なのは面接をクリアできる「人間力」なんでしょうか?それは優秀な営業マンを育てるには必要かも知れませんが、優秀な研究者を育てるにはあまり関係ないでしょう。

 面接でどこまで入試の公平性が保てるのかという問題もあります。見た目が爽やかなイケメンや美女が有利なのはもちろんですし、面接官との相性が大きく印象を左右します。対人業務の販売員の採用面接ならルックスも大事ですが、大学入試に見た目は必要ありません。面接のスキルを磨けるのは裕福な都会の家庭で育った子女であり、田舎の公立高校出身者には大きなハンデになりかねません。

 だいたい面接って手間暇かかるので、大量の学生を相手にするのはかなり大学側にとって負担です。じっくりと面接できないとますます第一印象で合否が左右されてしまいます。ペーパーテストをやめて面接で、というのは本当にロクでもない提案だと思います。むしろ昔のようにしっかり勉強させてペーパーテストだけで合否を決める方向に戻すべきです。勉強は誰にでもできるし、シンプルで簡単で公平なのですから。



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