幹事クリタのコーカイ日誌2012

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2月18日 ● 『J・エドガー』の感想。

 先日映画『J・エドガー』を見てきました。レオナルド・ディカプリオ主演、クリント・イーストウッド監督作品となれば注目せざるを得ないと思うのですが、その割にあまり評判になっていません。なぜ?と思って見てきて、なるほどと理解できました。

 この映画はFBIの初代長官として48年にわたって君臨したジョン・エドガー・フーバーが主人公です。1919年から1972年までのアメリカを描いた作品で、実在した人物がどんどん出てくるノンフィクションに近い映画です。画面は暗く、メイクは少々チャチで、構成は平板。ドラマチックに作り上げられたエンタメ作品ではなく、フーバーという人間のリアルさを追求した伝記映画です。だからディカプリオがカッコ良いわけでもないし、思い入れができるわけでもありません。良くも悪くも、主人公の人間性を見つめていった作品です。

 企画段階ですでに多くの人を喜ばせたり感動させたりということを考えていません。口当たりの良いハリウッド映画を求めている人には、何とも微妙なホロ苦い感情をもたらすことでしょう。それに加えて、アメリカの近現代史を知らないと、ストーリーを追っているだけで疲れてしまいます。ルーズベルトとかリンドバーグとかJ・F・ケネディとロバート・ケネディの兄弟、キング牧師、ニクソン。彼らがどういう人間か、その業績や性格、どういう最後を迎えたかまで知っていれば面白いでしょうが、映画では親切に説明などしてくれません。

 51歳の僕はこれらの人物を知っていますから、すんなりと映画に入っていけましたが、若い世代にしてみれば歴史の教科書でしか見たことがない人ばかり。そもそも歴史の授業もこのあたりまで行きつかずに終わってしまいます。だからJ・F・ケネディは知っていてもニクソンを知らないのは仕方ありません。リンドバーグだって「聴いたことがある」(それはロックバンドのリンドバーグ)程度かも。でも僕の子どもの頃の米大統領はニクソンでした。キング牧師やロバート・ケネディが暗殺された時も覚えています。なによりフーバーが死んだ時にはもう小学校6年生でした。僕にとって彼らは歴史上の人物ではないのです。

 そういう点でも『J・エドガー』は日本の、特に若い世代には受けない、そして理解しづらい映画であることは確かです。でも面白いです。人はドラマのように単純に善とか悪とかでは割り切れません。間違っているかも知れないけれど正しいと信じて行動をし、そしてその真実さえ自分でもわからなくなっていってしまう。そういうものだということを、一人の強烈な人物に仮託してイーストウッドは描きました。深みのある映画だったと思います。



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