幹事クリタのコーカイ日誌2008

[ 前日翌日最新今月 ]


 
5月3日 ● 「最強」伊達公子の役割。

 クルム伊達公子がカンガルーカップで第1シード、日本3位、世界80位の中村藍子に勝ち4強に進出しました。7−6、4−6、6−3というスコアは接戦でしたが、相手のショットに慣れるにしたがって調子が上がってくるあたりは、かつての全盛期と同じ。12年経ってもその粘り強さは変わっていないということでしょう。

 相手の中村藍子は決して弱い選手ではありません。今は世界80位ですが、かつては最高54位まで上がったことがありますし、昨年の全豪オープンでも3回戦に進んでいます。それほどの実力者を復帰第1戦で破るとは伊達恐るべしと言うべきでしょう。

 もちろんまだまだ額面通りには受け取れない部分はあります。今回の伊達は負けて元々の気楽な立場なのに比べて、中村は「負けられない」とかなりのプレッシャーがかかっていたはずです。たださえ伊達というビッグネームに気圧されるところもあるでしょうし、会場の雰囲気も伊達を応援していることでしょう。マスコミの期待も含めてアウエーに感じることは間違いありません。

 しかも伊達は長年テニス解説を通じて中村の特徴を知り尽くしているし、きちんと分析していることでしょうが、24才の中村は伊達の現役時代のプレーを知りませんから、その点でも伊達に有利なことは否めません。名前で負けて、雰囲気で負けて、情報量で負けている中村にとってはかなりやりにくかったと思われます。

 それでも、です。それだけ伊達に有利な状況があったとしても、12年もブランクがある37才の選手に脂の乗りきった日本のトップランカーが負けて良いわけはありません。中村は未だにツアー大会での優勝経験がありません。「ここ一番」の重圧がかかった試合に弱いという印象があります。改めて中村の精神的な脆さ、勝負弱さを見せられたような気がして残念でした。もちろん中村は現役選手としてのプライドを粉々にされて相当に悔しかったでしょうし、ここから何かを得て一層飛躍してくれることを期待したいと思います。

 そして伊達が復帰した狙いは、まさにそこにこそあります。伊達や沢松、神尾、長塚らが引っ張った日本女子テニスは今やすっかり弱体化しています。大ベテランの杉山愛が孤軍奮闘しているだけでは未来がありません。もう一度若い選手たちを奮い立たせ、日本テニスが盛り上がるために伊達は自らコートに立って陣頭指揮を振るおうとしているのです。

 それにしても伊達の最強ぶりには恐れ入ります。苦手なペースの遅い人工芝コートで、しかも連日連戦にも関わらずこれだけの強さを見せつけるとは超人的です。もし得意の有明のハードコートでちゃんと体調を調整しながら戦ったら、杉山愛にも勝ってしまうんでしょうか?未だに日本ナンバー1だったら恐ろしいですが、こうなったら遠慮しないでグランドスラムにも挑戦して欲しいものです。世界のテニス界をダテック復活で驚かせて欲しいとオールドファンは思います。