【アルバム名】
HERE COMES (BMG)
【リーダー名】
EARL HINES (1966/1/17)
【パーソネル】
EARL HINES (p) RICHARD DAVIS (b) ELVIN JONES (ds)
【収 録 曲】
SAVE IT PRETTY MAMA / BYE BYE BABY / SMOKE RINGS /
SHOE SHINE BOY / THE STANLEY STEAMER / BERNIE'S TUNE / DREAMS OF YOU
【内   容】
 昨日の原稿にもちらっと書きましたが、これを書いている7月5日は「家燃えた 記念日」です。私が小学校5年生だったから今を去ること20年前。学校から帰ると、 空き家になっていたお隣の元電気屋さんから黒い煙が出ておりました。
「あかんやん。燃えとるやん!」
ただちに我々は避難しましたが、塩サバ2号(当時高校1年生)は風呂場でバケツ 1杯の水を汲むとただちに2階にかけのぼり、隣家のトタン屋根めがけて水をぶっかけ たんだそうです。(この時に足の裏を火傷。)ところが水は「じゅ〜ぅ」という音をた て、一瞬にして蒸発してしまったそうで。
「この時ほど“焼け石に水”ということわざの意味を痛感したことはなかった。」
彼は当時の様子を振り返って、しみじみとそう語ってくれたものです。この彼の英 雄的な行為は現代に至るまで、「なんちゅう無駄なことを。」と、語り継がれておりま す。結局、火元の元電気屋と私の家、反対隣の熔接屋の3件が全焼、約1名の軽度ヤケ ド男が発生という大惨事に至ったのでした。みなさんも火の元には十分に気をつけまし ょうね。
 
 @ さて、唐突ながらボーカル編は昨日で終わり、今日からまたピアニスト編に 戻ります。だって、飽きちゃったんだもん、ボーカル編。ということで本日はアール・ ハインズ。バド・パウエルがモダン・ピアノの開祖だとすれば、アール・ハインズこそ はジャズ・ピアノの父とも言える存在である。なんてことがCDの解説に書いてありま すね。えーと、解説は佐藤秀樹センセーです。ジャズの評論やってなかったら、ただの オッサンやん、というような平凡至極な名前ですが、それはさておきジャズ・ピアノの 父。ルイ・アームストロングのトランペット・スタイルをピアノに移した「トランペッ ト・スタイル」の考案者として知られています。ルイ・アームストロングかぁ。
 
  桜木ルイ「あーん。」 ムスっとロン毛男優と絡む
 
あんまり乗り気じゃないのかルイ?あ、よい子の皆さんはあまり深く考えなくって いいです。さて、アール・ハインズ。このアルバムを録音した1966年の時点で当年 とって60歳。赤いちゃんちゃんこが似合うお年頃。そんな爺ィの演奏、古臭くて聴い とれんのとちゃうか?と心配なさる気持ちはよくわかりますが、だいじょうぶです。ジ ャケットを見てください。リチャード・デイビス、エルビン・ジョーンズといったバリ バリの「元気モノ」を配下に従え、堂々とした態度で立派なモノではございませんか。 エルビンなんか思わず、「なんだか知りませんが、とりあえずゴメンなさいです。」と 頭を下げてしまっております。いいなぁ、この威厳。銅像にして「きんじろう」の隣に 並べたいほど。
 
 さて1曲目、「セイヴ・イット・プリティ・ママ」。ヤンキー・ママとプレティ ・ママではどっちがいいかと聞かれたら、個人的にはプリティ派ですね。ハインズの演 奏はやっぱり「バリバリのモダン派」というワケではなく、古きよきアメリカを感じさ せる「ほのぼの」タッチです。2曲目の「売買ベイビー」も同様。赤ん坊を売り買いし ちゃあいかん。カクテルピアノ風に弾くガーランド、みたいな感もありますね。影響の ベクトルはもちろん逆方向なんですが。3曲目、4曲目も「小粋にスイングする」って 感じで、楽しんでるなぁ、御大。
 
 ワタシ、こんなソフトタッチじゃ満足できないの、という人には「ザ・スタンリ ー・スティーマー」がお薦め。リチャ・デビの強力無比(虫さされに効きそう)なウォ ーキング・ベースも素晴らしい「モダンな」ピアノトリオが満喫できます。特にベース ソロの後半にハインズが絡んでいくあたり、本アルバムの白眉と言える盛り上がりをみ せます。恐るべき60歳!
 
 「バーニーズ・チューン」はこのアルバムで最もポピュラーな曲。これまたスイ ンギーな快演。「ドリーム・オブ・ユー」はラストを飾るにふさわしいくつろいだ演奏 。玉を転がすようなタッチがカワイイ。若者よ、そんなに「はしゃぐ」でない。と戒め ているような感じ。酸いも甘いもかみわけた、オトコ60ここにあり!といった感じの 1枚でありました。


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