アサヒビール名古屋工場

日経産業99-4。1973年稼働。敷地面積158,500平方m。従業員182人。工場長は、小倉貞男取締役。「スーパードライ」を中心に「富士山」「名古屋麦酒」を生産。主力商品のドライは中部地方を中心に北陸にも出荷。首都圏に比べると保守的とされる名古屋ではキリンビール、サッポロビールのシェアが高かったが、3年前にサッポロを抜いてシェア3位。生産量も10年前は年間約12万klだったのが、現在は約33万klにまで成長。アサヒの国内9工場のうち2番目の規模の工場に成長。
 4月に年間9300kgのフロンの全ての使用を止め、他の冷媒に切り替えた。工業用冷凍機だけでなく一般冷蔵庫や自動販売機、エアコンなどフロンを冷媒として使っている機器全てをフロン以外の冷媒に切り替えた。麦汁に酵母を投入し発酵させてビールにする工程は、低温を維持して酵母が活動しやすい環境をつくる必要がある。冷凍機はビール生産に欠かせない設備だ。一般フロンスクリュー冷凍機に代えて設置したアンモニア吸収式冷凍機はビル3階程度の高さがあるうえ、4つの大きなタンクが連結されている。「アンモニアは高圧ガス取締法で規制が厳しく、換気装置や散水装置、漏洩検知器などいろいろな機器類が必要になりました」とエンジニアリング部の佐々木靖仁氏。
 業務用エアコンは冷温水を熱交換して温度調節する方式のため、冷房から暖房、暖房から冷房への切り替えに4−7日かかるとのこと。臭化リチウムを冷媒にしているためフロンのようにスイッチひとつで切り替えというわけにはいかず、季節の割に極端に暑い日や寒い日は大変(?)
 最後の難関は清涼飲料を販売する自動販売機。ノンフロン系の家庭用冷蔵庫はドイツからイソブタンを冷媒にした機種を60台輸入。屋外設置の自販機はプロパン使用機種に変更した。自販機には赤いサイレン灯をつけ万が一プロパンが漏れたとき自動検知して警告する。ただ、屋内に設置する自販機には防災上プロパン冷凍機は使えない。そこで、アイスコーヒなどのアイス系ドリンクの供給は停止し、ホット飲料だけが買えるプロピレングリコール熱交換式自販機に改良した。
 名古屋工場のノンフロン計画を立案してから実現まで1年半。「ビール工場がフル稼働する夏場をうまくクリアできないと成功とはいえない」と佐々木氏。ノンフロン化の投資額は約38億円。省エネも同時並行して進めているので10年で回収できるという。(江村亮一氏記事より)
・・・アサヒに限らないのですが、企業の当然の義務として各社環境対策を実施し始めています。ただ実際にやってみると、これまでの設備がどれほど環境を無視したものであるかが実感できます。今回のアサヒの取り組みでも、「お役所への申請」が足枷のひとつになっています。行政はもっと柔軟に対応してほしいものです。  

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