特集シリーズ                                
                                  

 
        JR新大久保駅転落事故! 

  
……救助に駆けつけた人は、タイプ2(人を助ける人)か?……


1 救助に駆けつける人

 
2001年1月29日夜7時過ぎ、JR新大久保駅での出来事
です。泥酔してプラットホームから転落した人を救おうと、二人
の男性がホームから飛び降りました。しかし、間に合わずに列車
に轢かれてしまい、結果的に
人の死者を出した事故です。 
 その一人である李秀賢さんは、韓国からの留学生で、27歳。
もう一人はカメラマンの関根史郎さん、47歳でした。どうやら
二人は、後先考えずに、救い出そうと飛び降りてしまったようで
す。

 さて、 とっさに体反応として助ける行動を取るのは、タイプ
2のもっとも著しい特長であると、当会では分析しています。す
ると、このお二人はタイプ2の可能性があります。

 しかし、本当にタイプ2であるのか、もしかしたら 他のタイ
プかもしれませんから、確かめねばなりません。李さんの母親が
「息子よ!」(潮出版社)という著書を出しており、そこに李さ
んの性格が書かれています。関根さんの母親も「婦人公論」に手
記を載せています。以下の箇条書きは、その中の性格に関する情
報だけを抜粋したものです。

                      
2 李秀賢(イ・スヒョン)さんの性格(気質) 
                             
・友人たちとマウンテンバイクをするが、遅れている友人を迎え
  に行き、 その荷物を持つやさしさがあるが、友人が追いつく
  のを待っていられない性格と言われる。     
・山で弁当を忘れたことを知ったが、「あきらめちゃダメだ、食
  べ物くらい、どうにでもなるさ」と李君は言う。何かにつけて、
  そういうところがあると友人が語る。    
・そして、見知らぬ登山者に「食べ物をわけてもらえないか」と
  李君が頼み込んだ。友人たちより率先して頼みこめる人らしい。
・朝6時から正午まで勤務して午後から学校に通う厳しい生活を
  長くしており、かなりの頑張り屋。
・「ワールドカップでは、韓国語も日本語もできるから、きっと
  俺たちは何かで力になれる。絶対何かやろう」と熱っぽく友人
  に語る。
・空き缶を自分の自転車のカゴに入れるので、友人が尋ねると「
  一人が捨てると、いつのまにか皆が捨て始める。一人が拾い出
  すと、やがて皆が拾うようになって、街はきれいになる」と言
  ったという。 
・小学生の頃、遠足の弁当を三つ用意して欲しいと母親に言う。
 「クラスにお弁当を持ってこれない子がいるから、その子の分
  だよ」母親が言うには、幼い頃から、弱い人、困っている人を
  みたらほうっておけない性質。
・父親は親の権威で上から押さえつけようとするが、李君はよく
  反発して、母親は息子と夫の間にはさまれて、苦労することが
  よくあった。
・ひとたび興味を持つと、熱中するタイプ。  
・賞状を壁に貼ったが、勉強も武道も積極的に取り組み、優等生
 を目指し てがんばり、自ら賞状を壁に貼るようになった。    
・賞状の貼り方にこり、母親が壁が一杯になった賞状を剥がすと、
 李君は すぐに気づく。大学に入り、賞状を全部剥がして持っ
  て行くので、賞状への思い入れが大きいらしい。
・友だちがルール違反をすると怒りまくる。曲がったことが大嫌
  いな子。担任教師が授業で不正確なことを言ったので、それを
  指摘した。しかし、教師が自分の間違いを認めなかったので、
  職員室に行き詰め寄ったために、その女の先生を泣かせてしま
  った。  
・初めてのスキーで、いきなり山頂から滑降した。危ないことが
  好きで、自分の体力に過信があるのではないかと母親が語る。
・流行のヘアスタイルをするが、学校の校則に違反しない程度で、
 うまく切 り抜ける。 
・ビリヤードに夢中になり、学業がおろそかになる。次にエレキ
  ギターに懲り、その費用をねだるためには、熟達したセールス
  マンのように、親をその気にさせる説得術にたけた子。
・受験勉強は、高校3年の二学期から、その気になったようで、
 猛勉強をするようになり、見事に希望大学に入学。青春を満喫
  した高校生だったらしい。
・焼きイモ売りのバイトをしている友人に、「頑張っているな、
  寒いだろう!」と言って、自分のジャンバーを脱いで、肩にか
  けてあげた。    
・体を鍛えることが好きで、ちょっとした合間を見つけては、ト
  レーニングしており、運動をしない日はないと、妹が語る。  
・友だちと食事に行くと、「オレがおごるよ!」と言い、気前の
  いいところを見せたがる
・家族への誕生プレゼントを毎年、忘れない。 
・大学生の頃、年寄りが自転車にはねられて倒れていたが、そ
 の場にいた学生はおろおろとして呆然と見守っているだけであ
  った。そこに李君が通りかかり、年寄りをだき抱えて病院へ走
  った。翌日、大学の掲示板に「なぜみんな黙って見ていたんだ!
  なぜ一秒でも早く行動を起こさなかったんだ!」と李君は貼り
 紙を出したという。             
・借りた部屋を自分でお金をかけてリフォーム。部屋はいつも綺
 麗。
・けっこうマメに自炊する青年。         
・大学の友人が、「とにかく几帳面な男だった。なにしろ朝布団
 をたたむとき、布団の皺一つないほどピーンと張っていた」と語
 る。 
・「自分のスタイルを守り、型破りで大胆なところもあり、生き方
 を楽しんでいるようで、まあなるようになるさという感じの男で
 したね」と友人は語る。

 
3 関根史郎さんの性格(気質)        
                          
・通っていた幼稚園を気に入っていて、帰宅してからも幼稚園に遊
 びに行った。小学校に行くようになっても、まだ行っていた。園
 長先生のお手伝いをしていたようだ。   
・おっとりとして、いつも他の人より遅いので、大器晩成だねと言
 われていた。
・小学校の頃、年下の子どもたちが史郎をよく待っていた。面倒見
 がよくて慕 われていた。
・可愛がるものを欲しがったようで、動物好きもそのせいかもしれ
 ない。
・ケンカして帰って来ることもあるが、泣き顔を親に見せない子だ
 った。
・6年の担任の男先生とウマが合ったようで、「人が見ていないと
 ころで、溝の木の葉が詰まっていると、それを黙々と取っている
 ような子」と褒められた。
・子どもの頃、獣医になりたいと語った。 
・普段から家では口数の少ない子で自分のことをあまり話さない。
・ひとたび仲良くなると、長いお付き合いを続ける子。
・人のことでも、一生懸命やりますね。世話好きなんです。
・亡くなった父親は、つまらないことで史郎を怒鳴りつけるが、史
 郎は黙って聞いている。
・世渡り下手なところがあり、人を押し退けても自分がやるという
 性格ではない。
・「まあ、あの行動(助けに出た行動のこと)は、当然のことだっ
 たんじゃないですか、あの子にしてみれば……。皆さん、関根だ
 ったらやるだろうなって言ってくださる」と母親の弁。
                 

4 二人のタイプは? 
                             
 上記以外にも、お二人の性格(気質)に関する情報はないかと、イ
ンターネットなどで探しましたが、これまでのところ見つかってい
ません。欠点らしいところが見つからず、少ない情報では確実な判
定にはなりにくいと言えます。
  
 しかし、李さんについては情報が多く、タイプ2と判定できます。
かなり1寄りで、1のウイングの重い気質だと考えられます。

 向上心が強く、ガンバリ屋で、しかも、友人も多く、人づきあい
の良い活発な情熱家です。世話焼きで、家族思いで、人生を楽しん
だ学生だったようです。高校三年の二学期から猛勉強するなど、か
なり呑気なところもあり、心配性が見えず神経質とは言えない面も
多々見えます。ここはタイプ2らしい記述です。

 そして、タイプ1らしいところは随所に見えます。ルールや礼儀
を守り、潔癖で清潔好きなところです。しかし、タイプ1は父親を
恐れており、反発心が起きても、それを父には現せません。また、
先生を泣かすなど、かなり攻撃的です。
 タイプ1は、先生には従順となり、いつも優等生的に接しますか
ら、このエピソードは、最もタイプ1らしからぬものです。李君は当
会の基準で見ると、典型的な2w1と言えるほどで、2w1によく
ある人物群に入ってしまいます。

 関根さんについては、母親の書いた文章しか、性格の分かるもの
が見つかっていません。李さんより、静かで落ちついた雰囲気のあ
る方のように思われます。ただ、李さんが父親への反発を出してい
ますが、関根さんは父親に怒鳴りつけられても黙っています。どち
らかというと、父親への反発心を強く出すのがタイプ2です。しか
し、同じタイプ2でも、w1が父親に対して反発心を出し、w3は
あまり出さない傾向があります。(これについては、当サイトのバッ
クナンバーにある「仲間たちのつぶやきシリーズ」の「私から見た
タイプ9の父」が参考になりますから、一度、お読みください。
以下です)
  
http://www.mirai.ne.jp/~ryutou-m/eneagram/active/page15/15-101~/15-114.htm
  


 なお、父親のタイプが違うと、子どものほうも対応が違ってきま
す。全てのタイプ2の息子が父親に反発するのではなく、父親が息
子をよく理解して受け入れているとか、父親の状態がよければ、息
子のほうも反発しないでしょう。李さんの父親は、同じタイプ2の
可能性があり、互いに短気で攻撃的ですから、ぶつかり合いが多く
なると考えられます。

 関根さんは教師を慕い、年下の子をかわいがり、清潔好きで真面
目なのですから、タイプ2の可能性はあります。ウイングは1寄り
かもしれませんが、判定できるまでには至りません。結論的には、
あまりにも情報が少ないので、この段階ではタイプ2だと判定はで
きません。


                         
5 他のタイプの可能性

 
それでは、タイプ2以外の人は、とっさに人を助ける行動を起こ
さないのでしょうか。例えば、タイプ2と線の繋がっているタイプ
は、共通の気質を色濃く持っていますから、可能性があるかもしれ
ません。つまり、タイプ8とタイプ4です。

 タイプ8は家族や自分の仲間を守る意識が高い性格ですからあり
得ます。しかし、タイプ8は血縁の家族とか、自分と関わりのあり、
自分にとって大切な人間、借りのある人を守る傾向があります。面
識のない人間を守るために、とっさに動くとは考えにくいのです。

 タイプ4は面識のない人間でも、助けねばならない時は、駆けつ
けるような気質です。事実、借金をして困っている知り合いのため
に、調べもせずに多額のお金を貸しています。道端で倒れている人
を介抱して、そのために仕事で損害を受けた人もいます。入院した
友人を尋ねて、真っ先に見舞いに行くのも、タイプ4の人たちに多
いと、しばしば耳に入ってきます。
 タイプ4は、辛い人たちを座して見ておれないやさしい気質です
から、人を助けることがよくあると予想できます。しかしながら、
怖がりな気質を考慮すると、線路に転落した人を助けるような行為
は、予想しにくいとは言えます。
 タイプ4が助けるのは、自分の身に危険が及ばないことであり、
他人の借金を背負うとか、懸命に看病するなどであり、伝え聞いて
いる情報のほとんどは、身の危険がない場合です。タイプ4は感情
タイプで、心情的なことで共感するため、素早く助けに駈け寄るの
ではと考えられます。

 次に、タイプ
は、「おじいさんタイプ」であり、家族や仲間を
守る意識は高いほうだと考えられます。しかし、タイプ5は智恵で
人を助けるだろうと予想でき、行動的とは言えず、かなり腰の重い
人物です。

 例えば、交通事故の現場に居合わせたなら、ケガ人に駈け寄るよ
りも、救急車や警察の手配をする可能性のほうが高いでしょう。で
きるだけ関わり合いたくない気質ですから、黙って、その場から立
ち去るような人です。
 なお、タイプ5は、タイプ8のように血縁の家族や仲間を守るよ
りは、もっと広い視野に立っています。例えば、日本人とか、人類
などという自分と直接の繋がりのない人たちに関心を寄せています。
身近な人の苦難を全く知らないとか、知っても何もしないままであ
るなど、周囲の人たちからは、かなり薄情な人に見られています。

 実際、その類の話題には事欠かず、家族からは「人の心を全く察
しない人物」だと評価されがちです。また、タイプ5自身が自立的
ですから、苦難の時に他人の助けを求めることがまずないため、他
人を助けるという発想も思いつかないのです。もっとも、これは5
w4には該当せず、かなり機敏な手助けもあり得るだろうと考えて
います。 
                      
 タイプ1とタイプ7も、人助けをよくするらしく、その話題には
事欠きません。例えば、タイプ1もサラ金に困っている知り合いに
多額の金を貸しています。騙されていることも知らず、また騙され
ても、騙された自分のほうが悪いと自分を責めているほどです。隣
人が病気だと知ると、すぐさま車を提供して医者の手配をしていま
す。貧しい人に多額の援助をしている人も存在します。

 タイプ7も困った人がいると大慌てになって、家族を総動員して
助けています。ある女児は、友だちの服が濡れていると知り、自分
の服と交換しました。友人のために、よい病院はないかと調べ出し、
朝方まで寝ずにネットで調べまくった人がいます。そして、何度も
病状を確認したがり、あれこれと世話を焼くので、タイプ2の妻の
ほうが、呆れたほどだったようです。
 しかし、タイプ1もタイプ7も、タイプ4と同様に怖がりで、危
険なことを目の前にすると体がすくみ動けない傾向があります。従
って、可能性としては、防御タイプは少ないと考えられます。

 つぎに、人助けに関する話題が少ないのは、タイプ5w6に引き
続いて、調和タイプ(3・6・9)です。普段は、周囲の人たちに気を
遣っていますが、過度な親切はなく、面識のない人には用心してい
るため、助けが要る人を見ても、すぐに近寄れません。

 防御タイプのように、大慌てとなり、準備万端となり、他人のた
めに異常によく働いたという類の話もあまり聴きません。つまり、
やさしい気持ちはあっても、頃合いの親切だとか、適切な付き合い
方であり、一方的な親切や手助けができません。周囲の人たちが助
けに出ると、自分も助けに出るのであり、突出した行動を取らない
傾向があります。そして、調和タイプも危険を目の前にすると、パ
ニックになりやすく、とっさの判断ができにくい性格です。また、
優柔不断で決断力が足りないのは、つとに知られており生来の気質
です。

                   
6 タイプ2の可能性はある 
                            
 攻撃タイプ(8・2・5)と防御タイプ(7・1・4)は、相手との関係で
一方的になりやすい気質です。双方向的になりやすいのは、調和タ
イプ(3・6・9)です。それは、調和タイプと名づけているように、
協調性があり、他人との関係を調整する機能が発達しているからと
言えます。

 例えば、相手に一方的な思いを寄せるのも、攻撃タイプと防御タ
イプに多く、悪い状況ならば、ストーカーにもなりやすいタイプと
言えます。つまり、矢印が一方向になりやすいのですから、親切心
も同様に、一方向的になりやすいと考えられます。

 調和タイプが親切心を発揮するのは、親しい人間関係が築かれて
いる場合に多く、相手から嫌われていると知れば、自分の気持ちも
冷めるでしょう。従って、ストーカーにはなりにくいタイプと考え
られます。しかしながら、これも人それぞれであり、軽度のストー
カーなら、このタイプからも見つけ出せます。

 そして、家族や仲間を守る意識の強い攻撃タイプは、危険が近づ
くと、普段よりも冷静になりやすく、パニックにはなりにくいと言
えます。しかし、それでも、バニックに陥る人は実際、存在します。
攻撃タイプの中でも、体力があり自信と余裕のある人が、パニック
になりにくいのであり、全ての人とは言えません。李秀賢さんと関
根さんは、自分の体力に自信があったのではないかと思われます。
                   
 結論的に言うならば、駅のホームの転落者を助ける行動をとる可
能性は、調和タイプに最も少ないと考えます。つぎに、タイプ5w
6です。可能性の高いのは、タイプ2と5w4、そして、防御タイ
プのほうでしょう。
 そうなると、かの二人の性格を見れば、5w4と防御タイプらし
い記述は全く見られません。つまりは、消去法でみると、関根さん
もタイプ2の可能性が高いのです。 
                  
 ところで、消防隊員などのタイプを見ると、知っている範囲では、
タイプ2だけではなく、タイプ7、タイプ9も存在しており、自分
の仕事に誇りを持って従事していると思います。他人を救助するこ
とは、誰にとっても誇りの持てる行為です。また、その必要に迫ら
れたら、助けに駆けつける可能性は、どのタイプにもあり得るので
はないでしょうか。

 江戸時代には、百姓一揆があり、首謀者は獄門磔となりましたが、
自己犠牲のきわみのような行動を取った勇気ある人たちがいました。
また、アウシュビッツで、ガス室に行くのに身代わりとなった神父
がいたり、犠牲的精神の強い人たちがいて、「聖人」と呼ばれても
います。その人たちの気質(性格タイプ)を、いずれは調査したいと
考えており、タイプ2の可能性はありますが、そうでないかもしれ
ません。従って、今後の調査が必要だと考えています。