仲間たちのつぶやきシリーズ                          


             私から見たタイプ9の父
                               
                       by/block .タイプ9の父親を持って

 私は子供の頃から、父親をかなり厳しい目で見ており、5−6歳
くらいの頃には、父親を見下すような態度を取っていました。育て
てもらっているので恩はあるが、自分の方が一枚上手だといった感
じです。それでも、父に教え導いてもらいたい気にもなり、近付い
て行きます。しかし、やっぱり何もしてもらえないので、つい見下
したり無視したり、批判的になってしまいます。
  一方、母親に対してはそうはならず、友達のような感覚で、自然
につきあっています。ちなみに私はタイプ2w2、父親はタイプ9
w9、母親はウイングの軽い9w8です。

 以前は、私は父親のことをほとんど無視していましたから、父に
意識が向いていないのだと思っていました。しかし最近になってや
っと、自分は父親を強く意識しているので、期待はずれによる失望
が耐えられず、無視していたのだと理解できました。成人した現在
でも、こうして父を思い出しながら文を書いていると、特定の理由
が無いのに、自然と批判的になってくるのです。分かっていても、
父親コンプレックスは直せないのかも知れません。  
2.私から見た父の特長 

 父は無骨で無口ですが、頑固オヤジ風には見えません。飾り気が無く
、素朴で親しみやすい雰囲気です。顔の表情は豊かでなく、穏やかな目元
で、いつもやや笑顔を見せているといった感じです。話し方はゆっくりで、
いつも落ち着いているように見え、喋っているうちに興奮するということは、
まずありません。「口が災いの元」になることは無いといってよいでしょう。
喋りだけでなく、無我夢中になるということがありません。人当たりは非常
によく、初めて会う人にも鷹揚さを見せ、屈託なく接しているように見えます。
他人に緊張感やプレッシャーを与えることはありません。他人から何か難
しいことを頼まれても、あからさまにダメとは言いません。自分から人に面
倒な事を頼むこともありません。不器用で気も利きませんが、その反面、
計算高さや、したたかさが無く、周りからは好人物に見えるらしいです。  
3.日常生活

 まず、家族サービスということを行いません。サービスというもの
に全く関心がないように思えます。休日には遅くまで寝ているだけで
時間があれば、一人で寺などの地味な所へ散歩に行き、すぐに帰って
きます。何か、寺や神社で祈願をすることで、ささやかな安心感を得
ているような他力本願的なところがありそうです。時々「お守りを買
ってきたから」とつぶやくように言って、家族に配ることがあります。
しかし配るだけであり、「いつも持っていなさい」などとは決して言
いません。  
健康には気をつけているようで、毎日、駅までの長い距離を、黙々
と歩いて、会社に行きます。バスなどは使いません。仕事については
一切話をしないので、会社で苦労しているのか、仕事が楽しいのか、
また、会社での役割などについても分かりません。家では、家族が同
席していようがいまいが、黙って酒を飲んでいます。私が色々と話し
かけてもリアクションが悪く、会話が続きません。しかし、沈黙が続
いても、淡々とした平和な雰囲気なので、周りは皆、居心地は良いの
です。  
 食事中は料理へのコメントも無く、ただ黙々と食べるだけです。相
当に好きなはずの酒の銘柄にも、特にこだわりがなさそうです。私が
実家に帰ると、毎回、同じ銘柄の酒を準備してくれます。そういうと
ころに芸のなさと親切さを感じます。酒で酔ったときは大抵機嫌がよ
くなり、洒落などを言いますが、喋り方に抑揚が無いため、ほとんど
ウケません。  
また、家事全般については一切行いません。全く興味がなく、出来
ないのだと思います。それに、例えば新しいテレビや車、パソコンを
買うなど、そこは父親の出番だろうと思えるような場面でも、全く前
に出てこず、他人まかせです。衛星放送もどうしても見たかったわけ
ではなく、電気屋が勧めるのでアンテナ等を買ったという具合です。
広告で性能や値段を見比べたり、そういった細かい事はしません。  
その他、服装や髪型も全く気にかけません。何十年も同じ髪形です
し、服も全部地味なものばかりです。一家の主なのに、主たる威厳や
存在感は有りません。家族の近況に少しだけ関心を向けます。しかし
「最近、どう?」のように、かなり抽象的、大雑把な質問しかしませ
ん。しかも近況を話したところで、やや笑顔で「ああ、そう」と言う
だけですから、話す甲斐がないのです。家族の内面には興味がないら
しく、自分自身の内面についてさえも、強い関心があるようには感じ
られません。  
4.父の興味

 現在、ゴルフが唯一の趣味らしく、それ以外に熱中していることは
ないようです。それでも、昔は相当な読書家だったらしく、家には文
学、哲学、宗教関係の本が山のようにあります。しかし、ここ15年
くらいは、そういった本を読んでいるところは見かけません。たまに
本に詳しいのかと思って、なにかオススメはないかと尋ねても、うや
むやな答えしか返ってきません。ですから、実は本など読んでなかっ
たのではないかと思うほどです。音楽も、昔は歌謡曲などを少し聴い
ていましたが、今は全く聴きません。  
また、好んで寺で座禅をやっていたようです。私はこれを不思議に思
いました。なぜなら父は座禅をやらずとも、初めから心が落ち着いてお
り、無欲に見えたからです。とすれば、タイプ2の私とタイプ9の父では
座禅の目的が全く違うのかも知れません。以前に、何故座禅をやるのか
と聞いたことがありますが、ハッキリしないのです。言いたくないのか
ハッキリした理由はあるが上手く説明できないのか分かりませんでした。
ただ「座禅をすると良いんだ」と、抽象的な答えが帰ってくるのみでし
た。  
他に好きなことといえば、親類同士で会うのが好きらしく、親類には
積極的に電話をかけています。ところが、家に招いても、ホストの父は
何もせず、盛り上がるということは一切ないのです。皆でテレビを見て
食事をするだけで、その間、世間話にも大した花が咲きません。しばら
くすると、親戚はあっさり帰っていきます。それでも、会うだけで満足
なのか、事あるごとに家に招きます。楽しいから会うというわけではな
さそうですから、家族や親戚には、何か特別な安心感のようなものがあ
るのでしょうか? 私には、親類間の特別な絆のようなものを感じる感
覚がないのかもしれません。  
5.父に対する不満

 父が、子供の私に向かって言う言葉は、「勉強しろ!」「将来何になりたいん
だ?」ではなく、「キャッチボールをしないか?」など、その場限りの軽いことば
かりでした。私は、人生のあり方や生き方などについて、教え導いてもらいたか
ったのですが、父は雄弁でもなく、立派な行ないや振る舞いをするわけでもなか
ったので、昔から不満だったのだと思います。今では、そういったことを望むの
は、無いものねだりであると分かりましたが、割り切れず、つい批判的になって
しまいます。  
私は子供の頃、父に酷い暴言を吐きました。すると、父は、「お父さ
んに向かって、な〜んてこと言うんだ」と、ぼやくように言いました。
しかし、そのあと言葉が続きません。それを見て、当時は、何を言って
も何も感じない人だと思っていましたが、今思えばあれが精一杯の怒り
の表現だったのかも知れません。
 そのような不満を持つ私ですが、父と口喧嘩をすることはまずありま
せん。ぶつかり合っても、私が勝ってしまいそうに思えるからです。そ
れに父は攻撃的になりませんから、争いの火種がありません。ただ、私
は不満を感じ、無視するだけです。
 ちなみに、タイプ2w1らしい妹がいるのですが、父の些細な口出し
に対し、激しく反応し、罵倒します。私は、少し言い過ぎだと感じるの
ですが、妹にとっては、それが普通なのでしょう。同じ父親に対しても
ウィングの違いで、このように反応が違うとのことですから、驚いてし
まいます。  
6.父の代わりとして

 このように、実際の父は、自分を導いてくれる理想の父親ではありま
せんでした。それでも、やはり理想的な父親像を求めていたようです。
その例として、わたしは常に自分の身近にいる人の中で、父親を補完す
るような権威的な人がいると、過敏に反応していました。高潔で深遠な
人物に仕立て上げ、尊敬し、慕っていく傾向があったと思います。  
例えば、クラスのガキ大将など、自分の身近にいる権威的な人間を強
く意識していました。年齢が進むと、少しずつ現実的な目で人を見るよ
うになり、身近な人物を、実際以上の人物に仕立て上げることはなくな
りました。その代りに、歴史上の大人物を手本にしようなどと考え始め
ました。これも、父親に導いてもらいたいということと、同じかも知れ
ません。私の中でごく自然に、本能的に行っていることのように感じら
れます。
7.終わりに

 父に批判的かもしれませんが、感心する性質も多くあります。例えば
忍耐強く、無欲で善良、懐が深いので、見方によっては、理想的にも見
えますから、そのようになりたいと思うこともしばしばです。

 しかしながら、よく見ると、タイプ9w9の父は、のらりくらりとし
て、夢や目標に向かうということも無く、失敗は少ないが、あまりに単
調で、平穏です。人生を成り行きに任せ、ぼんやり立ち止まっているだ
けのようにも見えます。それを「良し!」と出来るなど、私には考えら
れません。見れば見るほど、同じ人間でありながら、他のタイプは、こ
うも違うのかと不思議に思います。 
 例えば私が悪事をしても、父は常にノーコメントで、怒りもしませんでしたし
受験の時も「勉強をしなさい!」などと一度も言われたことがありません。この
ような放任主義とも取れる父の態度は、私にとっては非常に快適でもありまし
た。 

 私が我儘勝手に振舞っていたにもかかわらず、家族内の争い事がほとんど
起こらなかったのは、父親のお陰だとも考えられ、とても感謝しています。ちな
みに、私が交通事故にあった時も、事故について何も聞いてこず、「死ななくて
運がよかったなあ」と言うだけで、轢いた人を咎めることもありません。そのよ
うな安定した態度によって、私が精神的に不安定な時も安心させられ、救われ
るような気もしました。  
 今でも実家には、変化のない淡々とした空気が流れています。性格が
原因と考えられるような深刻な問題や争い事は一度も起こりませんでし
た。誰でも気軽に訪れやすく、居心地が良いらしいので、様々な人が訪
ねて来ては、「この家は平和でうらやましいなあ」などと言っています。

 これまで私は、父はものを考えず、従って、あまり不安などないだろ
うと思っていました。しかし、エニアグラムを学び、あらためて思い起こ
してみると、父は表面に出しませんが、想像以上に人間関係での気疲れ
様々な不安などがあるのではないかと考えられます。すると、今まで私は
父に対し、本能的にとは言え冷たい態度を取っていたことを、申し訳なか
ったと思うようになりました。ですから、今後はもっと上手に父と接する
ことができるのではないかと、自分に期待しています。