上級者用エニアグラム理論              

 
関心を持たれたい&関心を持たれたくない気質・パート2

  前回は、「自分に関心を持たれたい性格・タイプ7」を発表して
います。今回の文と併せて、お読み下さることを願っています。
 また、関心を持たれたいのは、タイプ7だけとは限らず、タイプ
3にもある傾向です。さらに、タイプ8にもある傾向と言えます。
 ですから、この3タイプは「自己顕示欲の強いタイプ」と分析で
きるでしょう。エニアグラム性格学では、この3タイプを、「世界
と私は否定的に結びついているタイプ」と呼んでいます。そして、
角度を変えながらさまざまに解析しています。機会がありましたら
「エニアグラム性格学の基本理論」を、ぜひともお読みください。

 
http://www.mirai.ne.jp/~ryutou-m/eneagram/static/theory.htm


    自分に関心を持たれたくない・タイプ4

1 母親にしか関心を向けていない!

  タイプ7は母親の関心を自分にだけ向けさせようとするタイ
プです。それと比べると、タイプ4は母親にだけ強く関心を向
けるタイプです。ですから、この2つのタイプは、母親への方
向性が逆になっています。


     タイプ7   母親→関心を向けてほしい→自分       
  タイプ4   母親←関心を向けている←自分


 ただし、タイプ7も母親に関心を向けており、タイプ4も母
親から関心を向けて欲しいと願っています。割合として見てい
くべきもので、両者とも「5対5」という割合にはならないで
しょう。つまり、気質というものは、違いというものがあり、
同じ割合ならば、気質の違いは生まれて来ないからです。
 例えば、8対2・7対3・6対4というように、5対5に近
くなることはあっても、この割合が逆転しにくいと考えられます。

 別の言い方をすると、「基調」として、母親に関心を向けて欲
しいと強く願うのが、タイプ7です。「基調」として、強い関心
を母親に向けているのがタイプ4となります。さらに、他の言葉
で表現すると、関心を向けて欲しいという欲求がまず「作用」し
て、その「反作用」として、「関心を向けられたくない」が働く
のが、タイプ7とも言えます。

 従って、タイプ4は母親に関心を向けているのが強く、それが
強く「作用」していると認められます。しかし、同時に反作用が
出てきますから、母親に関心を向けて欲しいと願っています。

  
    
「基調」・「作用」                     「反作用」         
7‥母親に関心を向けてほしい‥自分に関心を向けて欲しくない
4‥関心を母親に向けている‥ 関心を自分に向けて欲しい



2 乳幼児は母親に関心を向ける

  さて、生まれたばかりの乳児は、全て母親に関心を向けていま
す。目が見えなくても母親の声を識別しており、母親の臭いや感
触なども、よく知っています。       
 最近の調査によれば、胎児の頃から母親の声を識別しているら
しいとも言われています。母親からの関心をなくしては、乳幼児
にとって、生存の可能性はありません。従って、そのような識別
は、かなり初期の頃から備わっていると考えられます。

 そして、成長するごとに、次第に父親にも関心が向けられます。
次には兄弟姉妹に、さらに隣の小母さんへと広がり、関心が周囲
に広がります。人間たちだけでなく、家の様子や雰囲気など、全
てにわたって、関心が広がります。
       
 しかし、タイプ4は母親への関心から、他の人たちにふり変え
ていくのが最も遅いタイプだと見受けられます。かなり年長にな
っても、母親しか視野になく、母親の後ろ姿を追っており、視野
から外れて見えなくなることを恐れます。
 タイプ4の子どもを持つと、極端に母親べったりで、少しも離
れることができない子どもであることを、知っていることでしょ
う。

 一方、タイプ7は母親の関心を自分にだけに絞るようにと要求
し、かつ、母親以外のところに、関心が急激に広まって行きます。
 タイプ7は好奇心の塊といって良いほどで、新奇なものを見つ
けるとすぐに駆け寄ります。が、同時に母親から遠く離れること
はできません。心配となって、母親が近くにいることを確認しま
す。ですから、新奇な物と母親を交互に、忙しく行き来して、見
ています。

 しかし、タイプ4は、母親がどこかに行ってしまわないかと不
安なので新奇なオモチャがあっても、母親が自分を見守っている
状態でないと、心ここにあらずとなります。たとえ、オモチャで
遊んでいても、そこに意識はありません。

 少し長じてくると、自分を監視する怖い母親がいないほうが、
安心して遊ぶかもしれません。つまり、母親次第であり、母親の
存在の大きさがあります。母親と良い関係でないと、母親の周り
をウロツキ回り、オキチャの周りをうろついて、落ち着きがあり
ません。奇声を発したり、おかしな行動をして、独り言ばかり、
ぶつぶつ言う子がいます。なお、最も独り言の多いタイプと言え
るでしょう。

3 母親が生殺与奪の権利を持っている

  タイプ7は母親からの関心を得たいと、何らかのアクションを
起こします。しかも、しつこく何度も要求し、そのアクションは
多岐に渡ります。
 一方、タイプ4は、母親からの関心を得るためのアクションを
起こすことが少ない傾向があります。ただ、泣くだけであるとか、
眠り続けます。

 なお、タイプ4はネオテニー(幼形成熟)的な形質の強いタイ
プであるとホームページ上の別のところで発表しています。

  
http://www.mirai.ne.jp/~ryutou-m/eneagram/active/page15/15-201~/15-209.htm

 
簡単に言うなら、童顔でポチャポチャ体質、声がかん高い、頭
が大きいなど、幼形的な風貌が色濃く残るタイプです。
 著名な動物学者ローレンツによれば、ネオテニー的な特徴があ
ると、愛らしく抱きしめたくなり、保護の気持ちを引き出す効果
があると言います。つまり、タイプ4は、その形質によって、既
に母親からの保護を引き出しています。ですから、とくに母親に
対して、何らかのアクションをしなくても良いのではと考えられ
ます。

 また、タイプ7にとって世界は脅威と暗闇の差し迫る恐ろしい
ところですから、母に愛され守られているなら、自分の安全を確
保できます。ですから、どうしても母親の関心を自分に向けさせ
ねばなりません。

 しかし、タイプ4は「世界と両価的に結びついているタイプ」
と分析しています。タイプ4にとって、世界は否定的であり、肯
定的であり、そのどちらとも言えないものです。
 従って、母親が自分の生殺与奪の権利を持っており、母次第に
よっては、肯定的になり否定的なものに変わります。自分の生死
を決めるのは母であり、母が全権を持っていると心の奥で感じて
いるのです。

 いわば、母が太陽で、自分はその光に照らされている月のよう
な存在であると言えましょう。あるいは、母親が閻魔大王で、自
分の言動を見張っているかのように感じていることもあります。
母親の気に入る良い子でいれば、天国に入ることができ、そうで
はないと、地獄に振り落とされる恐れがあります。従って、母親
がOKと言わない限り、自分の存在はOKにはなりません。


4 母親の顔色をいつも見ている

  タイプ4の子どもは、母親のほんの少しの異変にも気づき、心
配して顔を覗き込みます。母親の状態いかんによって、タイプ4
の子の精神状態も変化します。
 
 従って、 母親から拒絶されたり、きつく叱られると、存在し
てはいけないと母親に言われているように感じます。または、混
乱して、母親の言動の一つひとつに警戒心を働かせ、ビクビクす
ることもあります。このように怖い存在ですから、母親よりも父
親になつくとか、おばあさんになつくことが多いのが特長的です。
タイプ4は祖母と同居しているなら、「おばあちゃん子」になる
ことが最も多いでしょう。 

 こうしたことは、違うタイプと比較すると分かります。例えば、
兄弟にタイプ4の子とタイプ2の子がいるとしたら、タイプ4の
子どもは著しく母親べったりです。
 一方のタイプ2は、母親が入院して二週間しても、その様子に
変化はなく、なんと母親の顔さえも忘れた、という実例さえしば
しば聞きます。

 タイプ2の子どもは、他家に預けられても、悲しい素振りもな
く、夜もすぐに寝入って、可愛がってくれる人なら、誰ともなつ
きます。しかし、タイプ4は泣き寝入りして、疲れ果てるまで泣
きじゃくり、食事もとれず、父親やよく見知っている人がなだめ
ても、効果はありません。母親以外は受け付けないのです。


5 母親が主体で、自分は客体!

  タイプ4の子どもは、母親の一挙手一投足に、関心を向けて、
一喜一憂しています。母が自分の生命線を握っているため、母
の価値観や考え方をよく知らねばなりません。そして、母に気
に入られるようないい子を演じているなら、母親は自分を守っ
てくれると思うのです。しかし、“いい子”を演じることがで
きず、それどころか、演じることが苦痛になることがあります。
                               
 なお、タイプ4の創作品には、自分が客体になっているよう
な台詞がいたるところに出てきます。
 例えば、「君の時間の中で、もう僕は存在しないのだね」「
あなたの人生の中に、私を置いてほしい」などです。つまり、
その逆の「僕の時間の中に、君は存在しない」「私の人生に、
あなたの存在は必要ではない」というような台詞ではないので
す。

 ある創作童話には、「おかあさん、ぼくがどんな子だったら、
一番うれしい?」という台詞があります。つまり、「ボクのお母
さんが、こんなお母さんだとうれしい!」という発想が少ないの
です。母親とか他者が「主体」で、自分は「客体」とでもいうよ
うな発想です。


 
タイプ4は幼い頃は母親が主体であったのが、長じてくると、
妻や夫や、社会の人々が主体となります。そして、自分はその社
会や人々の価値観や決まりに縛られているだけの存在で、自由が
欲しいと強く望みます。ですから、人からコントロールされるか
もしれない、操られるかもしれない、傷つけられるかもしれない
と、警戒します。いつも自分らしく生きられず、全てのことが押
しつけられていると感じる傾向があります。


母親から見張られる→人々から監視される→コントロールされる自分


6 タイプ4の作品から

  例えば、《血と言葉》というフランスのある作家の作品には、
「いつも他人、ことに母が主役になるように、私は自分の過去を
演出していた。自分は従順な実行者、人に操られ、それに従うお
となしい少女に過ぎなかった・私は母に気に入られたかったし、
母の望むような生き方をしたかった。それなのに、その従うべき
道から、自分をはじき出そうとしている恐るべき力の存在を意識
していた・母が発したわずかな言葉が、私の目をくり抜き、鼓膜
に穴を開け、頭皮をはぎとり、手を切断し、膝を割り、腹をさい
なみ、性器を切り取った・自分が選んだものでもなければ、自分
にふさわしくもない人間のモデルにできる限り似るように、隅々
まで仕込まれてきた・誕生以来、来る日も来る日も、私の立ち居
振る舞い、言葉遣いがつくられていった」

 オーソン・ウェルズの脚本と演出、監督作品である《市民ケーン
》は有名で、観たことのある人は多いことでしょう。彼はタイプ
4w5です。新聞王ケーンのいまわの言葉である「バラの蕾」の
意味を探っていくうちに、ケーンの生涯が分かるというストーリー
です。

 「バラの蕾」は母親との別離の日に、遊んでいた雪ゾリに描かれ
た絵でした。ケーンは母親に金で売られたようなもので、その体験
から人を愛せなくなったようです。また、妻となった女性のために、
オペラ劇場を建てますが、その女性が、母親にオペラ歌手になるこ
とを期待されていたというシーンがあります。 

 
 
しかも、この映画の中では、妻から「あなたは自分のことしか考
えていない人だ。あなたは欲しいものはなんでもやるから、自分を
愛せよと言っている。でも、自分は誰も愛さない」という台詞があ
ります。ウェルズは自分をよく見つめていたのでしょう。自分がい
つも自分のことに夢中になる性格だと自覚していたようです。また、
母親との関係が核になっていると、この映画からも読み解くことが
できます。タイプ4は作家を多く輩出しているため、こうした例を
とり上げるなら、数え上げられないぐらいあります。

7 関心を持たれると危ない!

  タイプ4は幼児期に母親と愛情でしっかりと結ばれていると、
心が安定しますから、そんな子どもは、友だちと遊びたいという
思いが出てきます。幼稚園にも行きたがります。しかし、そうで
ないなら、母親から離れることはできず、友だちと遊びたいとい
う気持ちも少ないでしょう。たとえ、遊んでも、一人遊びであり、
他の子どもたちの様子を全く見ていないことが多いでしょう。

 まさに、母親以外は眼中にない!といった様子であり、母親が
いないとなると、パニックになり、その姿を懸命に探します。安
定した幸福な環境に育った子どもでも、大勢の人がいると興奮し
て、何か恐ろしいことに出会うのではないかと、恐れを抱いてい
るような様子を示します。
       
 例えば、初めて都会の群衆を見た四歳の子どもは、興奮して犬
のように四つんばいで歩いたと言います。夜になっても興奮が静
まらず、寝てもうなされたり、癇癪や夜泣きが強かったと言いま
す。タイプ4の子どもは、幼稚園にはなかなか馴染まず、先生に
声をかけられても、返事をしないことがあります。また、視線を
合わせないなど、無視しているかのようです。 
                  
 学校で大勢の中にいると、自分だけが他の子と違うとか、疎外
感を抱き、その中になかなか入っていけません。記念写真を取る
ときは、隅の離れたところに行き、教室ではなるべく隅の方を望
み、隠れられるような位置につきたがります。

 ある子どもは作文に「透明人間になりたい」と書いていました。
ある子どもは「自分に級友たちから声をかけてもらいたくない」
とも言います。関心を持たれたり注目を受けると、いじわるされ
たり、非難されるかも知れないという恐れがあると考えられます。 

8 一人遊び!

  タイプ4の子どもは、担任と親しくなっていないと、担任から声
をかけられることを嫌がることがあります。クラスの子が声をかけ
ても、ソッとしておいてほしいと言わんばかりの様子を示すことも
あります。ですから、一人遊びが多く、自分のしたい遊びに夢中に
なって、他の子どもたちが別のところに行って、置き去りにしても
気づきません。周囲の子どもたちを少しも見ておらず、自分だけの
世界にはまってしまう傾向があります。

 授業中でも、自分の世界にはまって、先生の話を聞いていないこ
とがあります。そんなときはボウッとして、表情もなく、全く周囲
を見ていないため、異質な行動を取るでしょう。従って、奇行をし
たり、バカ騒ぎしたり周囲と違和感のある言動をしているかもしれ
ません。

 また、タイプ4は遅刻が多く、大人になっても、遅刻しやすい傾
向があり、生あくびが絶えないかもしれません。授業中も寝ぼけま
なこで、あくびを連発して、やる気のなさをよく見せます。

 さて、あるタイプ4の二年生が、一年経っても、担任の教師の名
前を知らないということがありました。それどころか、同じクラス
の子どもの名前も一人か二人しか知らなかったという例もあります。
つまり、知りたいという気持ちがなく、関心が担任にもクラスの子
どもにも向かっていないために、このような事態が起きると考えら
れます。

 従って、集団行動が極端にできにくい子は、タイプ4にもっとも
顕著です。遠足も運動会も好まず、掃除や当番などもしたがらず、
とかく、個人行動を取るために、誤解を受けやすいでしょう。もち
ろん、まさに“よい子”と言える、活発で賢い子どももいますから、
タイプ4といっても、さまざまです。


9 誰もがいち早く隠れてしまう!

  なお、エニアグラム性格学では、タイプ4は危機が迫る前に、敏
感に感知して、いち早く身を隠す行動プログラムを、根源的に持つ
タイプだと発見しています。ですから、学校の教師やクラスに馴染
めないままでいたり、誰かにいじめられると、ひきこもりしやすく、
不登校になることがあります。つまり、人との関係を絶っていくこ
とで自分を守るのが、タイプ4の根源にある自己防衛戦略です。例
えば、学校ではトイレに隠れて出てこないとか、家では押し入れの
中に隠れて、そのまま寝入ってしまうなどです。
 自分がそうであるため、人間は誰もが危機が近づく前に、身を隠
していくものと思い込んでいます。また、母親もある時、自分の知
らない間に忽然といなくなるかもしれないので、いつも母親の姿を
視野に入れておかないと安心できません。 

 あるタイプ4の女性の作家は、その著書で「母から額に十字を切ら
れ、いってらっしゃいと言われて学校に向かった。額の十字は烙印で、
誰の目にも見えるのではないかと私は恐れた」  
 まさに、母の存在の大きさを表現した文であり、母に気に入られず、
愛されないことを「不毛感」と言い、母の世界を理解できないことを、
「絶対的な無力感」と書いています。
 
 次に、母に対する思いは、大人になると妻や夫に対して向けられま
す。あるタイプ4の作家も、その小説の中で書いています。
 「妻といっしょにいることがうれしくて、ときに赤ん坊のように、妻に甘
え、
ちょっとでも彼女の姿が見えないと、辺りを探し回ったりもした」

10 母に嘘をつく子

  タイプ4は、母親からはぐれて迷子になる不安があり、母の待つ家
に帰れなくなる恐怖心なども、心の奥深くにあるでしょう。母親の許
可や承認が必要である一方で、なぜ母親に従わなくてはならないのか
と、反発心も強く働きます。
 従って、とかく母親に批判的であり、母親の方が自分を非難してい
ると受け取る傾向もあります。父と母が同じことで同じような口調で
叱責しても、その効果はまるで違っています。母親がほんの少し注意
しても、「絶対にしなさい!」と命令されていると受け取ります。つ
まり、母親に対しては過剰反応をしているのです。そして、父親がか
なりいじわるで批判的であっても、それほど気にならないでしょう。

 母の前では緊張して、母の良い子になろうと嘘をつき、正直に本意
を話せません。そして、成長するごとに、周囲にいる全ての人たちの
前で、いい子を演じなければならないタイプ4もいます。そして、何
重もの嘘で自分を塗り固めてしまうために、いつしか耐えられず、自
分を責めたり自己嫌悪におちいり、自虐的になる人もいます。 
         
 例えば、学校へ行きたくないのに、母親がそれを望んでいるはずだ
と見て、「学校に行きたい」などと言います。嫌いなことでも、「好
きだよ」と言う場合もあります。友だちにいじめられているのに、母
に尋ねられると、「いじめられたことなどない!」「僕のほうがやっ
つけているんだよ!」と、かなり積極的な嘘を言うかもしれません。 
 そして、別の時にはそんな嘘も言えずに、聞こえないふりをしたり、
無視したり、質問にとぼけて答えないなどもあります。

11 孤独が深まるほどに人を求める

  タイプ4は成長していくに従って、絶対権力者は母親から、人々や
社会へと移行します。それらが、自分の前に立ちはだかっていると感
じるのです。自分の自由を縛り抑圧して、自分を操ろうとしているか
のように感じています。歌手・尾崎豊はタイプ4ですから、詩の中に、
しばしば、このテーマが取り上げられています。一度、お読みくださ
い。

 タイプ4にとって、自分をいつも高見から見下ろす人々がいます。
見られている自分を強く意識しており、自分に関心を持たれると、
何かを押しつけられるかもしれず、自分の存在を隠したがります。
どうか、自分に関心を持たないで、自分を見ないでと、自然に身を
隠すような所作をします。

 また、人々としっかりと視線を交じ合わせず、帽子を目深にかぶ
り、サングラスをしたり、始めから拒絶するような態度を取る人も
少なくありません。自動車は黒色カラー、黒色のシールドを貼って
外から見られなくします。イヤホンで音楽を聴いて、そこに集中し
ているから、話しかけないで、というポーズを取る人もいます。
 しかし、そうすればするほど、孤独に陥り、誰か自分を理解して
受け入れて欲しいと、強く願うようになります。カプセルの奥深く
に入るほどに、人間を求めて行きますが、その人間が、自分を傷つ
ける可能性もあるため、簡単には近づけません。  
       
 タイプ4は関心を向けられたくないのですが、関心を向けてくれ
るやさしい包容力のある人物を求めています。つまり、最初に拒絶
する「作用」があり、反作用として、孤独を癒してくれる人を求め
る気持ちが深まるのです。


関心を持たれたい        7  3  8  
(注目を浴びたい欲望が、比較すると他のグループより高い)

関心を持たれたくない       4  9  5
(注目されたくないという欲望が比較すると他のグループより高い)

どちらでもありどちらでもない  1   6    2
(それらに無関心で、そんなことに構えがないタイプ)


12 無意識的な言動を指します

  さて、「関心を持たれたい」と「関心を持たれたくない」の意味
が理解できましたでしょうか。これは意識的にしていることではあ
りません。ですから、タイプ4の人が「関心を持たれたいと思って
いるから、私はタイプ4ではない」と言うかもしれません。タイプ
7の人が「僕は、注目を浴びたいと考えたことは、一度もない!」
と言うことがあります。

 意識して言っていることと、無意識的にしていることが反対にな
ることがあります。ここで指していることは、無意識的な言動です。
よくよく観察すれば、タイプ4・9・5は、関心を持たれたくない
ように行動しているのです。全ての言動を長期間に渡って観察しな
いと、見えて来ません。一時の傾向や、数回の目立つ言動だけを見
て、タイプ7・3・8ではと、予想すると間違えます。

 なお、タイプ7は母親や人々から関心を得たいために、さまざま
なアクションをしますから、エピソードが多く、母親に関心が高い
ことが、すぐに発見できます。しかし、タイプ4は母親に関心を向
けいるほうで、かつ行動的ではありませんから、エピソードも少な
く、ここに記した傾向は、発見できにくいでしょう。

 また、タイプ1も父親に関心を向けて行く方です。タイプ1は母
親といたほうが気持ちが楽なために、「お母さん子」に見えるかも
しれません。母親にはわがままになり、父親の前だと緊張するのが
タイプ1です。ですから、表面的に見ていると、父親に関心が高い
タイプだと発見できません。
  
 また、「関心を持たれたくない」として、タイプ4を紹介してい
ますが、次には、タイプ5にその傾向が顕著です。さらには、タイ
プ9にその傾向があります。この3タイプは、「世界と両価的に結
びついているタイプ」と呼んでいます。
 
 「こころ」って、面倒でやっかいなものです。しかし、心には簡
単な法則性があり、その法則さえ分かれば、面倒とは言えず、複雑
でもありません。「心」や「性格」で悩んでいる人たちは、予想以
上にいます。エニアグラムを学ぶと、そんな自分の心を客観的に見
ることができます。


付録 

     いい子って、どんな子?

         
ジーン・モデシット作  もきかずこ訳
                (冨山房刊行)より 

     
  「ねえ、おかあさん、いい子って、どんな子?」
  うさぎのバニーぼうやがたずねました。

 「ぜったいなかないのが いい子なの?」
 「ぼく、泣かないようにしたほうがいい?」


  おかあさんはこたえました。
 「ないたっていいのよ。でもね、バニーがないていると、
  なんだかおかあさんまで、かなしくなるわ」

 「じゃあ、いい子って つよい子のこと?」
 「なんにも こわがらない つよい子になってほしい?」
 「まあ、バニーったら。こわいものがない人なんているかしら」

 「おこりんぼは いい子じゃないよね。ぷんぷんおこっている
  ぼくなんか、おかあさん きらいでしょ?」
 「とんでもない。ぷんぷん おこっているときも
  にこにこ わらっているときも おかあさんはバニーがだいすきよ」

 「でも、ぼくが ばかなことばっかり していると、
  おかあさん いやに なっちゃうよね」
 「どんなにおばかさんでも、バニーはおかあさんの たからもの」

 「びっくりするような おばかさんでも?」
 「どんなに あきれるほどの おばかさんでもよ」

 「それじゃぼくがもっとかわいいこなら おかあさんうれしかった?」
 「まさか!」
  おかあさんはくびをふりました。
 「バニーは いまのまんまでいいの」

 ちいさなバニーは、だまって、しばらくかんがえました。
 「じゃあ、おかあさんはぼくがどんなこだったら いちばんうれしい?」

  おかあさんはにっこり わらってこたえました。
 「バニーは、バニーらしくしていてくれるのがいちばんよ。
  だって おかあさんはいまのバニーがだいすきなんですもの」