特集コーナー・特集シリーズ                         

 タイプ4にあるネオテニー的な形質(改訂版) 


内容   ・ネオテニーの意味
    ・ タイプ9が真上に位置する意味を解明しています
    ・タイプ4とタイプ9の見分け方が分かります
    ・図の対極にあるタイプは、性格も対極にあります 
            
    
 
エニアグラム性格学を学び、正しくタイプを判定できるようになる
と、タイプごとに、さまざまな特長があることを発見します。これか
ら紹介するものは、発見されたものの中でも、特異なケースです。

 ネオテニーとは、「幼形成熟」または「幼形進化」とも呼びます。
要するに幼児や胎児(さらには私たちの原始的な祖先の子どもや
胎児)に見られる特徴が、成人にも保存されていることを指します。

 そして、エニアグラム図では、タイプ9が真上に位置していますが、
なぜ、タイプ9が真上に位置しているのか、不思議に思っている人は
少なくないでしょう。エニアグラム性格学では、ネオテニーの概念に
よって、その意味を解明できたと考えています。

                                        
  
     
                                        

         


1 タイプ4に多い童顔・中性的な顔   
                    

 まず、タイプ4はグループとして見た場合、童顔で小柄な体格の
人が多い傾向があります。
 また、女性のタイプ4は少年のような出で立ちをしたり、男性のタ
イプ4は長髪にしたり、スカーフを巻いたりなど、男性らしくない雰
囲気を出そうとしているかに見えます。

 つまり、中性的な印象をかもし出しています。また、実年齢より十
〜二十歳はゆうに若く見えたり、年齢不詳の人もしばしばいます。
あるいは、万年青年とか、万年少女風とも言えるかもしれません。

 また、太った体型の人も多く、骨格が細い人も少なくありません。
水分が多い皮下脂肪のある赤ちゃんのような柔らかい皮膚をして
いる人もいます。

 頭が身体に比べて大きく、額が大きくて丸い、体毛が少ない傾向
もあります。
 さらに、声がかん高く、あまったれた声や、脳天から声を出してい
る人がいます。また、つぶやき声やささやき声、喉を押し殺した金
属的な声を出す人もいます。


 しかし、これはグループとして見た場合であって、個々人で見てい
くと、タイプ4もその他のタイプと同様にさまざまです。野太い声で
イカツク男性的に見える人もいます。女らしいたおやかさを持ち、愛
らしく可憐な女性もいます。
 背が高く、体つきもゴツク、挑戦的な目つきをしている男性もいます。
消え入りそうで、はかなげに見える女性もいれば、声が低音で太く、
堂々たる体格で、大きな声を張り上げる女性もいます。  
          

 しかし、それでもタイプ4はグループとして見ると、ネオテニー的
な形質を持つ人が多いと見受けられます。

                   
有名人にあるネオテニー的要素の多いタイプ4の人たち 
 
(頭が大きい、額が大きくて丸い 年齢不詳 童顔 中性的 かん
  高い声 ささやき声 小柄 万年青年風 太って水分の多い皮膚
  などが顕著な人) 

竹中直人 宮本亜門 森進一 稲垣吾郎 武田真二 
渡部篤郎 吉岡秀隆 ジミー大西 森田童子    
きたろう 田口浩正 中原中也  石川啄木 
山田花子 岡本真夜 金子みすず 
マイケル・ジャクソン ジェームス・ディーン 
ウッディ・アレン   トム・クルーズ




                         

2 ネオテニー(幼形成熟)とは          
                       

 ネオテニーという用語を初めて用いたのは、1884年、アメリカ
のバーゼル大学の動物学の教授ユリウス・コルマンと言われて
います。
 そして、1894年にハヴロック・エリスが「ヒトと類人猿の胎児
や子どもは、それらの成人同士よりも、互いにはるかに似ている」
ことを指摘しました。
 さらに、1926年にアムステルダム大学の解剖学の教授ルイス・
ボルクが「幼児化」という名称をつけています。

 ボルクは「ヒトはサルで言うなら胎児の状態のままで産まれて来ま
す。ヒトは胎児から幼児、子どもから大人への発育の速度が、他の
霊長類のどの種と比べても遅いようです。

 また、ヒトの成人の特徴の中に、胎児の特徴でもあるものが多い。
例えば、平面な顔、少ない体毛、大きな脳容積、手足の構造、骨
盤の形態など、数多くの身体特徴が、成長とともに他の動物では
変化する。しかるに、ヒトは成人まで、そのまま持ち越される」と指
摘し
ています。                                   
                                 
     

                                        
                                        
                                        

3 人間進化の鍵はネオテニー

 上記は、アメリカの人類学者アシュレー・モンターギュの著書、
「GrowingYoung」から抜粋した文章です。      
 モンターギュは「胎児や幼児の特徴が保たれること(発達の減
速と延長)。つまり、ネオテニーこそが複雑な脳の発達を可能に
し、ヒトの今日の成功をもたらした人類進化の秘密であった」と結
論づけています。 
                       

 また、彼はヒトの行動の発達も「ネオテニー」で説明できるとして
います。例えば、子どもは好奇心が強く、よく遊び、創造力がある、
感受性が鋭いなどがあります。これらも、最も人間的な特徴であり、
同時に子どもの行動上の特徴であると言います。

ヒトのネオテニー的な身体特徴(抜粋)                
 ・脳屈曲を保っている        ・頭蓋が大きい       
 ・頭が脊柱の上にある        ・歯が小さい        
 ・眉稜は発達しない         ・骨格がきゃしゃ      
 ・平坦な顔             ・体毛が少ない       
 ・頭骨の縫合閉鎖が遅い       ・身体上の性差が少ない   
 ・脳が大きい            ・頭が丸い         
 ・あごが小さい                       
   


 また、「個体発生は系統発生を繰り返す」という著名な言葉でよく
知られているグールド教授(ハーバート大学の地質学)は語ってい
ます。「ネオテニーはヒトの進化の主要な決定要因であった。……
ヒトの成長は遅くなった」と。 

 ところで、成人へと成長するには時間がかかり、大人になるのが遅
い動物は、寿命も長くなるようです。
 ヒトはチンパンジーより、成長が遅い霊長類ですが、寿命はチンパ
ンジーより、はるかに長いと言えます。そして、寿命が長くなったた
めに、知識が集積されたり、その智恵を次代に残すことができるよう
になりました。
 従って、ネオテニーは、人類進化に寄与しており、その原動力と言
えるかもしれません。 
              

                                        
4 タイプ4とタイプ9は対極 
                         

 モンターギュの調査によれば、このネオテニー的な形質は、男性よ
り女性に多いと言います。女性は男性に比べて、小柄、体毛が少な
い、皮膚に水分が多い、骨格が繊細、寿命が長い、身体に比べて脳
が相対的に大きい、心拍数が多い、声の調子が高い等々。
   

 また、人種としてはコーカソイド系よりも、モンゴロイド系の方がネオ
テニー度が進んでいると言います。
 つまり、私たち日本人や中国人などの人種を指しています。確かに、
欧米人より日本人の方が、小柄、骨格が繊細、より脹らんだ丸い額、
脳容量比が大きい、偏平な顔、体毛が少ないなどがあります。

女性のネオテニー的な身体特徴  
 ・骨格がせんさい                 ・身体が小型   
 ・眉稜などの突出部が少ない          ・寿命が長い  
 ・あご関節がせまい(あご小さい)       ・心拍数が多い  
 ・身体全体に対して、脳が相対的に大きい  ・涙が大粒   
 ・毛深くない                    ・声の調子が高い 
 ・皮膚がせんさい
       

  

コーカソイドよりも、モンゴロイドの方がネオテニー的な形態が多い
   
 ・大きな脳            ・頬筋の幼形の存続   
 ・平坦な顔            ・上唇筋の幼形の存続  
 ・眉稜を欠く           ・永久歯の崩出完了が遅い
 ・きゃしゃな骨格         ・毛深くない          
 ・胸線が成人まで存続        (性差が少ない)

  

 
このネオテニー形質をエニアグラム性格類型で見るなら、明らか
にタイプ4に多い形質です。もっとも、これはグループで見たら、傾向
としてあるものです。個々人で見ていくと、タイプ9の中にもネオテニ
ー的な傾向のある人は存在します。もちろん、その他のタイプにもあ
ります。童顔なので、タイプ4なのかなと予想していたら、タイプ8で
あったとか、タイプ2であることもあります。 
      

                                         
5 「末っ子気質」と「おばあさん気質」 
                  

 さて、タイプ4のことを、エニアグラム性格学では「末っ子気質」
と名づけています。これは、その本性が、最も子どもっぽいから
です。また、末っ子のように最後に登場したため、自分の役割が
見つからず、自分の居場所が無いと感じる人たちが多いのも事
実です。
 
 「子どもっぽい」という言い方ではあまり説得力はありませんが、
「少年のような心を持つ人」という表現ならば、しばしば聞いたこと
があると思います。身近にも、同年齢の人と比べると、「幼い」と感
じさせられる人たちがいます。しかし、会ったことがないならば、わ
からないのかもしれません。

 「自分の母親は、家族の中で一番子どもっぽい」と言われたり、
兄が一番年長なのに、実際には一番子どもっぽい」と言うような
ことは聞いたことがあるのではないでしょうか。
 精神年齢が小学生だとか幼稚園児みたいな行動をしている青
年や年寄りが、実際にはいます。ただ、本人はそれは知られたく
ないことゆえ、隠していることが多く、身近に暮らしていないとわ
からないでしょう。

 依存的で自立することが難しく、周囲の人たちの中に入りにく
いらしく、すねたりひがんだり、一喜一憂しており、感情的でよく
泣きます。好奇心が強く、天真爛漫で、遊びたわむれることが大
好きです。さびしがりやで、孤独を恐れます。

 
6 永遠の少年少女・タイプ4 
                          

 
 タイプ4の子どもは母親にしがみついて、母親から叱られると、
数時間も泣き続け、泣き寝入りします。大人になっても、感受性
は強く、少しの異変にも気づきやすいでしょう。また、よく眠り、
目覚めが悪い傾向もあります。

 また、よく質問をします。「なぜ?」「どうして?」「何のため?」
「人はなぜ生きるの!」「死ぬって、どういうこと?」 際限のない
質問を浴びせたり、簡単には答えられない質問が多く、親や教
師たちを困らせているかもしれません。
 中学生になると「なぜ、丸刈りにしなければいけないの?」「学校
にどうして行かなきゃいけないの?」と、決まりごとに疑問を向け
ます。
大人になると「その会議を開く意味はあるのか?」など、難癖とも
取られるような発言をしているかもしれません。

 タイプ4は表現力が豊かで、さまざまな遊びを思いつくことがで
き、一人遊びを何時間でもします。また、幼児のように、大人にな
ってもフラフラと好奇心の赴くままに出掛けて、行方不明になるか
もしれません。
 お菓子が好き、ゲーム好き、虫が好き、電車が好きなど、まさ
に子どもらしいことが好きです。絵を描くのが好き、お話を作るの
が好きであることも多く、凝り性です。

 また小石など、何の変哲もなく一見すると価値もない物、子供
っぽい物を収集したがる傾向もあります。大人になっても、子ど
もっぽい趣味を持ち、その趣味を生活の中心にすることがあり、
働きたがらず、実社会にも出たがらない人が多々います。

 そして、昼夜逆転した生活をして、遅刻したり、なまあくびの絶
えない人も少なくありません。タイプ4は明日のことを考えず、自
分のしたいことがあると、熱中して、途中で止められないほうです。
それで遅刻してしまい、勉学意欲がないとか、仕事への責任感
が低いと攻撃されるかもしれません。

 中年になっても「永遠の少年少女」と言えます。趣味に凝って、
いつまでも自分だけの世界で遊びたがる傾向があります。
 一方、趣味が仕事になると、死に物狂いに熱中するかもしれま
せん。タイプ4は、偉大な小説家や科学者を多く輩出しています
が、それは、こうした気質が基盤にあるからではないでしょうか。


 さらに、タイプ4は母親に対して、関心を寄せる期間が最も長い
タイプです。どのタイプであろうとも、幼児は母親なくしては生きら
れない生き物ですから、母親にもっとも関心を向けています。
 そして、成長するごとに、関心が他の方に向けられて行きます。
しかし、タイプ4はグループで見ると、母親への関心から他に振り
向けることが、どのタイプよりも遅いと認められます。

 また、その傾向は母親だけでなく、誰かを好きになると、その人
だけを受け入れて、他をシャットアウトしてしまう、そんな傾向もみ
えます。
 

 なお、人類の未来はネオテニー度が一層に進むことを暗示して
います。身体がきゃしゃになり、頭が大きく体毛は少なくなり、声
が一段と高くなっていることが、いろいろな調査結果から予測され
ています。