上級者理論            

2004/08/20
  タイプ9の不可解な行動  

  
 
タイプ9を「オアシスの人」と呼ぶことがあります。落ち着きが
あり精神が安定しているように見えるので、なんとなく、一緒にい
るとホッとするのです。癒し系に見られる人も少なくありません。

 また、他人を決め付けてみないとか、意見したりもせず、傷つけ
られる心配がなく、安心して付き合えそうです。癖がなく、個性的
とも言えず、万人向きのタイプと言えるかもしれません。

 タイプ9は人柄が良いと思われていたり、お人好しみたいなイメ
ージを持たれることもあります。決して怒らないとか、辛抱強い人
だと思われて感心の的にされたりもします。また、 何を考えてい
るのか分からないとか、覇気がなくて、おとなしいだけに見られる
こともあります。いてもいなくても、どちらでも同じに見られて、
存在感が薄い人もいます。

 また、鷹揚で寛容で、かなりできた人物に見られている人も結
構います。タイプ9w8のほうは、いつかデカイことをする大物か
もしれないと期待されたりします。タイプ9w1も、奥ゆかしいイ
メージがあり、秘められた能力があると思われて、「宝の持ち腐れ
にならないように」などと言われている人がいます。

 しかし、身近な家族からは、意外に厳しく見られているようです。
外では辛抱していても、家族に対しては、多少なりと攻撃的にな
るからです。これは、タイプ9だけに限ったことではありませんが、
普段、あまり感情的にならず、めったに怒らない人なので、攻撃的
になると意外に感じたり、驚かされるのではないでしょうか。

       
    

1 依怙地で頑固な一面

 
大抵は素直で、どちらかというと素朴な人柄ですが、ときにタイ
プ9は不可解な言動をします。それが依怙地(意固地)とか、頑固
と言える面です。とりあえず、言葉の意味をはっきりさせたいので、
広辞苑で調べてみました。


依怙地・意固地→かたくなに意地を張ること。えこじ。
意地  →気立て。心根。自分の思うところを通そうとする心。
かたくな→すなおではなく、ねじけているさま。融通がきかぬさま。
頑固  →頑なで意地を張ること。かたよって事理に通ぜぬこと。

 
このように、辞典で調べても埒があかず、どのような行動なのか
説明するのが難しく感じられます。けれども事例を取り上げれば、
少しは理解しやすくなるでしょう。

 あるタイプ9w1の夫が、妻から生活ぶりについて攻撃されてい
ます。夫は黙ったままですが、いつまでも妻の追及が続きそうな
ので、「明日は仕事があるから、もう寝たい!」と、打ち切ろうと
しました。けれど妻のほうでは、今夜はどうでも引かないという様
子を示します。たまりかねたのか、夫は「眠い! 目が痛いから!
」などと言います。

 すると、妻は「眠くても、目など痛くならない」と語気を強めま
す。「いや、痛いから痛いんだ。目の奥のほうが痛むのは嘘じゃな
い!」と主張。
 とうとう「眠くなると目は痛くなるのか」ということに争点に移
ってしまい、それでは、翌日は目医者に行って決着をつける、とい
うことになったようです。


 
タイプ9は平和主義者ですが、妻から投げかけられたものには、
それなりに返します。しかし、始めは少しばかり言い合いになって
も、長くなると押し黙ったままとなり、夜が更けると就寝時間が気
に掛かります。寝ることだけ省かないタイプなのです。体内時計が
しっかりと働いているからではないかと思われます。また、いつし
か争点がズレルのも良くあることです。


      

2 「這っても黒豆」

 
あるタイプ9の妻は、昨夜の夫のいじわるが忘れられません。帰
宅した夫に対して、何か言いたい気分でした。夫が歌番組をみて、
機嫌よく歌を口ずさんでいると、その歌詞が間違っていると思って、
それを夫に指摘しました。夫は、妻のほうが断然に間違っていると
思い、自分の正しさを立証しようと、インターネットで歌詞を調べ
たようです。

 そうしたら、妻のほうが間違いだと分かりました。しかし、妻に
それを示しても、「それを書いた人が間違えている」と主張して退
きません。夫は腹を立てながらも、再度、他のページをも調べて、
自分の正しさを証明しようとしました。しかし、相変わらず妻は、
自分の過ちを認めないのでした。夫からすれば、こんな些細なこと
でケンカになるとは思いがけぬことで、日頃は素直な妻なのにと、
その頑なさに驚いたようです。

 
諺に、「這っても黒豆」というものがあります。台所の隅に小さ
な黒いものが見えたので、何か分からず尋ねると、「あれは黒豆だ」
と答える人がいます。そうかなと思って見ていると、その黒豆らし
きものが動き出したので、「なんだ、ゴキブリじゃないか。君の見
間違えだよ」と告げます。すると、相手はまだ取り下げずに、「黒
豆だ!」と言い募るのです。


 このようなことを指して、「依怙地」とか「意地になっている」
などと言うのでしょう。とくにタイプ9だけにあるとは限りません
が、日頃のこだわりのない気質を知っていると、その落差に驚いて
しまうのです。しかし、よくよく考えたならば、そうなる原因は必
ずあります。

 

3 依怙地や頑固、マイペースと思われている 

 
「頭がどうかなりそうだ」と、ある家族から訴えられることがあ
ります。どうやら、タイプ9に、よく理解できない言動があるよう
です。意外にグチをこぼしたり皮肉を言うことも多いタイプです。
それも不満の表れであり、その不満を出す時期が、外れているため
に、タイプ9の言動が理解できなくなるようです。

 会話しているときも、テーマとなっていることから外れることが
あります。自分も何か話さねばならないと思い、思いついたことを
口にするのです。それで、「トンチンカンなことを言わないで!」
と敏捷なタイプから、注意されてしまい、内心はムッとしていても、
表情に出しません。しかし、その直後か、数日経ってからなのは分
かりませんが、機会を捉えて反撃したりします。

 タイプ9が意地を張ったり、依怙地になるとしたら、その前に不
快な出来事があるからです。
その前とは言っても、直前のこともあ
れば、一週間前のことかもしれません。一ヶ月前のことでも有り得
ます。
 また、結婚式を挙げて以来、夫婦のコミュニケーションが上手く
行かず、不平不満が溜まっている方がいます。そうなると、ずっと
依怙地のままになっていて、相手から、生まれつきそういう人だと
思われているのです。
 
 タイプ9は、不満を言いたいとか、その時に吐き出したいと思っ
ても、つい何も言えなくなってしまうタイプです。しかし、不平不
満は心にくすぶっていますから、出口を求めています。そんな時に、
おかしな言動をしてしまうのでしょう。また、なんとなく小バカにさ
れたような口調だと感じると、ムッとして、同様なことになると考
えられます。


 
また、夫婦ゲンカとなれば、負けたくない思いはありますが、ケ
ンカが激しくなり、関係が険悪になると予想しやすいために、黙
ったままになるタイプです。しかし、相手の言いなりにもなりたく
ないのであり、一矢報いたい気持ちも持っています。それがある時
に出るのであり、依怙地な態度に見えているものです。


      

4 認知能力は低いか

 
ある夫婦が、新幹線のとある駅で下車しました。大勢の人たちと
コンコースを歩いていましたが、偶然に著名な俳優が前から近づ
いてきました。妻は気づいて、通り過ぎた後で振り返りつつ夫に
「○○さんが通ったね。格好いいねえ」などと語り出します。夫も
自分と同じところを見ていたはずだと思ったようです。しかし、夫
は驚いて、「言ってくれればよかったのに、サインが欲しかった」
などと言います。

 テレビや映画で活躍する有名人と、偶然に町角で出会っても、
気づかない人はいますが、どうやらタイプ9に気づかない人たち
が多いと思われます。あらかじめ、このレストランは○俳優がよ
く来るところと分かっていたら、その心積りになり、見つけ出せ
るみたいです。
 しかし、突然に予想できないことに出会っても、視線を合わせ
てさえも、なぜか識別できにくい傾向を持っています。
 
 ある家庭菜園をしている家族には、息子が一人います。老齢
の母親は息子に草取りを頼んだようです。息子が全部雑草を
取ったと言うので、母親が畑に行くと、なんと苗まで取られてい
ました。真中に一列、きれいに苗を植えており、雨がよく降った
ためか急激に草の丈が伸びてしまって、苗が草に埋もれていた
ようです。
 しかし、母親は、息子に苗があると言わなくとも分かるはずだ
と思っていたようです。息子は、タイプ9で、しかも畑仕事を普
段からよく手伝っていたのですから驚きです。年若い10代の男性
ではないのですから、母親は息子を罵倒したようです。

 苗と雑草では明らかに違いがあり、識別できるはずですが、あ
らかじめ苗があると注意を喚起しておかないと、識別できないま
まになる人たちがいます。それがタイプ9の人たちに起きやすい
困った傾向です。

 その他、タイプ9の受講生から質問されることが、極端に少な
いのも特長としてあります。質問することが分からないとか、あ
まり問題に感じない方が多いとも言えます。また、問題を問題だ
と認知できないために、批判力のない方も多そうです。それゆえ、
批判的な雑誌や週刊誌を読んで、批判精神の高めようとする人た
ちが少なくありません。

     
     
5 自分のことだけが心配?!
 
 
家族が夜更かしすると、タイプ9は「早く寝なさい」と言い、風
邪気味であると、なおさら「早く寝なさい」となります。健康のた
めには、寝るのが一番だと思っており、寝ることにはかなり執着し
ます。それゆえ、寝つけないとかなり気します。就寝時間が短いと、
それも気になります。昼間、元気で過ごしているのに、就寝時間が
足りないと、それだけで病気になりそうな気分になるようです。

 (ここと関連した投稿文が以下にありますからお読みください。


http://www.mirai.ne.jp/~ryutou-m/eneagram/active/page11.htm)

 
また、タイプ9は、あまり興奮しないほうで、人への好き嫌いも
少なく、こだわりも少なく、淡々とのんびり過ごしている人に見え
ます。
いろいろなことが、どうでもいいことのようです。けれど、
自分の就寝時間だけは、気にかけているように見えます。

 タイプ9が最大に気にかけるのは健康で、病気なることが最大
の恐怖のようです。むろん、家族が病気すれば、心配で気にかけ
てはいるのです。しかし、その気にかけ方が切羽詰ったりせず、
真剣とか必死という言葉がピッタリしません。例えば、家族が病
気にかかると、医者に行きなさいと薦めます。家族から、体調が
悪いと訴えられると、「検査に行ったほうが良い」と薦めるので
す。しかし、「うん、そうしてみる」と言って、そのまま行かず
にいると、再度行ったのか確かめることを失念してしまうようで
す。

 または、「あの人に薦めても、ちぃっとも医者に行かないから、
もう言わないことにした!」と言います。それだけでお終いにな
るのです。家族としては、なんだか心配はしてくれるが、通り一
遍で、それほど心配しているようには見えません。
 

 一方、自分自身の体調がちょっとすぐれないだけでも医者の診
察を受けに行きます。医者に行きたがらないタイプ9もいますが、
かなり気にしている様子がミエミエです。自分の病気に対してだ
け、異常に大きな反応があるのです。他のことでは反応があまり
無いのですから、家族にとって不思議に感じるところです。大袈
裟に反応して、傷などもかなり深いのだと訴えます。
 ある妻が訴えます。「息子たちは母親に心配かけさせないように
と、ケガをした時に隠したりしますが、タイプ9の夫は、心配か
けさせたいみたいで、隠すなんて発想はないようです」


     

6 穏やかな人たち


 
さて、タイプ9は、家族に心配をかけさせたいのではありませ
ん。しかし、自分があまり心配にならない人間ですから、他人も
心配するだろうと予想しません。それゆえ、強く訴えないと相手
には伝わらないと思うのではないでしょうか。
 つまり、タイプ9には、しっかりと、こちらの容態や辛い状況
を訴えないと、察してくれる可能性は少ないのです。他人の悲し
さ辛さを察することができにくく、家族が深刻な状況にいても、
それを認知できにくいという傾向がたぶんにあると考えられます。

 テレビドラマで、家族愛をテーマにして、泣かせるような筋書
きであると、はまってしまって、よくもらい泣きはします。しかし、
目の前にいる人間が、淡々と苦しい胸をうちを語っている場合は、
もらい泣きをしない可能性があります。どうしたらよいのかと戸
惑うだけで、困惑した表情を浮かべる可能性があります。冷静で
感情的にならない人たちに見られるのは、このような一面がある
からでしょう。
 

 
自分と関わりないところでは、安心して、ともに悲しみ苦しみ
共感したりしますが、どうやら、自分が関わっている現実の場面
では、妙に冷淡になるという一面があります。それもつまりは、
自分の判断で状況を認識できにくいためと考えられます。 

 家族が大変に苦しい状況にいても、「全く知らなかった!」と
答えるタイプ9の方が結構います。毎日一緒に暮している人たち
の苦しい表情なども、見ていないのです。「娘の様子が変だった
のは知っている」と語ってくれたタイプ9の父親もいます。変だ
ったと分かったら、相手に確認したり心配となって尋ねて欲しい
ものです。しかし、そのようなことは「思いつかなかった」という
返事です。

 一方、家族が、大変に辛いと切々と語れば、その語ってくれた
ままを聞き入れるだけで、自分なりの観察を続けたりはしないの
です。家族たちから、「自分のことしか気にならない人なのでは」
と言われていたりします。

      
7 感情の起伏が少ない

 
当会では、心理や感情などを説明するときに、数値を使うこと
がよくあります。数値で示さないと理解できにくいためです。た
とえば、うれしい楽しい満足などという肯定的な感情について、
数値にして説明します。タイプ9が10ある場合、タイプ4や7な
らば、100あるように考えると、これらのタイプの違いがうまく
説明できます。

 同じ体験をしていても、タイプ4や7はテンションが高くなり、
興奮して容易に冷めないほうです。しかし、タイプ9は、ちょっ
と高揚しているくらいにしか見えません。興奮して寝つけられず
に、いつまでも騒ぎまくるのがタイプ4や7に多いのです。しか
し、タイプ9は早く寝たいという気分になってしまい、興奮状態
が長く続くことはありません。

 悲哀・寂寞・落ち込みなどいう否定的な感情についても同様です。
「死にたい!」と訴えていたタイプ9が、そのすぐ後で、洗濯物が
たまっていると気づくようです。明日のための用意をしなければと、
すぐに生活者としての資質が顔を出して、いつもの生活に戻りやす
いのです。

 一方、タイプ4や7ならば、死に場所や方法を探したり、寝付く
こともできず食欲など全く無くなってしまいます。洗濯物のことな
ど到底思い出すはずはありません。つまり、辛い気持ちを数値に表
すと、タイプ9が10となれば、タイプ4や7のほうは、100という
くらいに差があると想像します。それくらいの差があることを示さ
ないと、これらのタイプの様子を理解できないからです。

 さて、「夫の性格・妻の性格」の中に、「タイプ9は穏やかな人
でタイプ4はやさしい人」と掲載しています。逆に言うなら、「タ
イプ9はやさしくない人で、タイプ4は穏やかではない人」と言え
るかもしれません。この二つのタイプは、表面的にはよく似ていて、
間違えられやすいタイプです。

 タイプ9は心が安定しており、波立ちにくいために、いつも穏
やかでいられる人たちです。しかし、身近に知ると、やさしいと
ころがあまり無いと分かるのではないでしょうか。「人柄が良い」
とか「あんないい人はいない」と思われることが多いので、意外
に感じられるかもしれませんが。

 というのも、オアシスに浸れば癒されるのですが、オアシスは
辛く悲しい状態にいる人たちに、駆け寄ったりはしないものです。
タイプ9は、他人の置かれた状況を見て、その気持ちを察知する
という能力は低いと考えられ、積極的に助ける行動を取る方は希
です。また、訴えられない限り、相手の心理が分からないという
傾向も、しばしば見えます。

 一方、タイプ4は心が不安定なために、心が逆巻きよく大波に
揺られているようです。それで自分のことで精一杯になりやすい
ので、他人のことまで思い至らない場合があります。しかし、他
人が辛い状況に置かれていることを素早く察知するほうです。と
くに不幸な人への共感能力は高くて、余裕のあるタイプ4は、真
に人のために助ける行動が取れる人たちであり、どのタイプより
もやさしい人たちと言えるかもしれません。

     


 
しかしながら、人間としての「やさしさ」とは一体何かと、よ
く考えると分からなくなりませんか。本当に優しい人間などいる
のかと不信に思う方もいると思います。9
つのタイプを熟知した
ならば、誰もがタイプ9と似たところを見つけ出せるでしょう。

 当会では、タイフ9は「原型タイプ」と呼んでいます。それは、
全てのタイプの源だからであり、どの人もタイプ9と共通した性
格を持って
いるからです。

 人間は、とかく他人の冷たさには素早く気付きますが、自分の
冷たさには気づかない傾向があります。タイプ9の冷淡さを知っ
たならば、自分の冷淡さにも、気付くようになって欲しいと思い
ます。そして、9つのタイプを知ると、自分という人間が段々と
クリアになるのではないでしょうか。