上級者理論              


      タイプ8・3・7の行動原理

1 お金に対する構えが強い人たち

 性格タイプが違うと、世界は全く違うものに見えているよう
です。「世界と私は否定的に結びついているタイプ〔8・3・7〕
」にとって、世界はとても恐ろしいところに見えているのです。
 彼らにとって、人間というものは信用できないもので、誰も
が自分のことしか考えていないエゴの塊です。表面的には仲良
くしていても、裏では別のことを考えているかもしれないと予
想します。

 誰もが、我こそはと考えており、自分さえ良ければ、他人は
どうなっても構わないと考えているに違いないと想像してしま
います。そして、誰もが少しでも上位に行こう、スキあらば蹴
落とそうと狙っているので、用心にこしたことはないと考えて
います。

 さて、人を信用できないのですから、お金だけが我が身を守
るものだと思うのは必然的なことです。「8・3・7」に守銭
奴が多いのは確かです。お金持ちになることが、人生最大の目
標になる人がしばしばいます。
 大胆に危険な綱渡りをしながら金儲けしたがる人がいる一方
で、地道にコツコツと貯める人もいます。散財して、「宵越し
の金は残さない」と派手に使う人もいれば、一銭の出費も惜し
む倹約家もいます。

 つまり、お金に対する構えが、他のタイプよりも執拗で強い
と考えられます。お金のトラブルを起こしやすく、愛情問題も
こじれると、お金で解決するというように、お金に固執しやす
い人たちです。金勘定にはしたたかで、損をしないように敏捷
にうまく動ける人たちが多いようです。
 しかしながら、お金で問題解決が図れるのですから、ドライ
にもなれ、それで心が整理されるとしたら、つきあいやすい人
たちかもしれません。結論的に言えるとしたら、いつも「お金」
「金勘定」を強く意識しているタイプだと考えたなら、理解し
やすいでしょう。



2 自分だけを愛して欲しい人たち

 「8・3・7」にとって、世界は脅威と暗闇の支配する恐ろし
いところです。お金があれば幸福になれると思いやすいのですが、
お金ではどうにもならないものがあることも強く意識しています。
それは愛し愛されることです。そんなに怖い社会なのですから、
愛を渇望するのは当然のことです。

 まず、母親こそは自分が生まれるのを望んだのですから、きっ
と愛してくれるに違いないと思っています。つぎに、女たちから
愛されることであり、世話を受けたり構われたり、チヤホヤされ
ることを望んでいます。

 愛されるには、目立つこと、華やかであること、性的な魅力が
あること、有能に見えることが必須条件だろうと予想します。見
かけで判断されやすいので、服装なども気配りをよくするほうで
す。必然的に、そういうことに高い価値があると考えやすいので
す。従って、自己顕示欲の強い人たちで、それが顕著に表面的に
もよく見えるタイプです。

 「8・3・7」の気質を総合して考えて見ると、家族名として
は、お父さん〔8〕、長男〔7〕、次男〔3〕となります。つまり本
性は「男性」であり、いわば「男性性」の強い人たちです。女性
好みがクッキリと出ていますが、その女性を怖がる傾向もあるの
ですから、事は複雑です。「母性と女性コンプレックス〔=複雑〕
」と分析したのは、このような傾向が強いと読み取れたためです。

 彼らにとって、女性は信用できないのですが、その女性に愛され
たがり、仲良く楽しい生活を送りたいという願望があります。女性
に優しく親切な人が多いのですが、その女性に対して、訳の分から
ない言動をしたり、いじわるになるのも、このタイプに多いのです。

 女性に無視されると怒り狂い、拒絶されると絶望的にもなります。
妻に逃げられるなどは、最悪事態なのですから、離婚話が順調に進
まないのは、この3つのタイプの男性によくあるケースです。妻が
実家に帰るとか別居されると憔悴しきるのも、このタイプの男性た
ちのほうが顕著です。
 逆に、女性たちの輪の中心にいて、注目を浴びてチヤホヤされて
いる時ほど、嬉しそうに見えます。美しい妻に愛されているこのタ
イプの男性ほど、幸せそうな様子を見せる人たちはいません。

 兄弟姉妹も、我が子もライバル!

 
自分だけを愛して欲しい人たちなのですから、兄弟姉妹はライバ
ルです。母親の愛やエネルギーは、全て自分に注がれるべきなので
す。
 たとえば、兄弟がともにタイプ7であったなら、母親の愛を獲得
するため激しい争奪戦になりがちです。兄弟ゲンカをしている時に、
母親が小さい弟のほうをかばうと、兄の憎しみはつのり、よけいに
弟をいじめるようになります。母親の愛が弟にあるのは耐えられま
せん。従って、兄弟姉妹の一人として、公平に扱われるのは不満に
なります。自分だけ特別扱いを受けないと満足できません。母親の
愛情を独り占めにしたいのです。

 また、みんなの関心が他の人たちに行き、その人ばかりチヤホヤ
されていると、不満になります。たとえ父親でも、妻が子どものこ
とばかりかまけていると、我が子に嫉妬したり、ひがみます。たと
え母親でも、娘ばかり注目されていると、娘に対して嫉妬してしま
うのです。そして、娘に負けないような派手な華やいだ服装をして
娘と競争します。

 さらに、自分と競合するような相手は確実にライバルになってし
まいますから、互いに遠ざけて近づかないようにします。目立ちた
がる人は、目立つ人を嫌うのは必然的なことです。しかし、その目
立つ人が美しい女性であると、ねたみと同時に憧憬もあり、とかく
女性に対して複雑な心理に陥りやすいのです。

 妻が、タイプ7の夫の親戚の人たちをもてなし、親切を尽くして
も、夫に感謝されないどころか、嫌がられることもあります。妻の
時間とエネルギーは、全て夫である自分に注がれるべきものと考え
てしまうのでしょう。しかしながら、妻の愛情を独占していて、恵
まれた境遇の夫ならば、率先して多くの人たちに情愛を注ぐように
なるのですから、同じタイプでも、同じには見えないくらいに違い
があります。
          


4 みんなと同じは最悪!

 
「千一夜物語」の大枠の物語(以下のアドレス)は、弟王が、兄
王の不幸を知って、自分の不幸を乗り越えられるという設定になっ
ています。他人の不幸を知ると、自分が不幸でも少し気持ちが上向
きになるのです。その逆ならば、みんなが幸福で自分もその一人に
過ぎないならば、あまり幸福に感じられなくなるでしょう。

 
http://www.mirai.ne.jp/~ryutou-m/eneagram/active/page15/15-201~/15-229.htm


 つまり、いつも「差」というものが必要で、その差によって幸福
になり、不幸にもなってしまいます。目立ちたがる人たちにとって、
みんなと同じであるとか、公平に扱われるのはあまり気持ちの良い
ものではありません。仕方ないとあきらめたり受け入れる場合もあ
りますが、それは精神的に安定している時です。精神が安定してい
ない不安時ほど、上位に行きたがり、特別待遇されたり、差を付け
られないと不満がつのります。

 たとえば、ライバルが怪我をして、舞台で主演できなくなったら、
代役は自分に廻ってくるのですから、その人の不幸を願う人の気持
ちは理解できるでしょう。
 また、資源に限りがある場合は、争奪戦が激しくなるのも理解で
きることです。つまり、「8・3・7」にとって、いわば世界はた
びたび「戦時下」になってしまうようなものです。厳しい社会で、
生き残れる可能性が低いとしたら、どのタイプであっても、「世界
は否定的」に見えてしまいます。

 なお、「世界は否定的」とは、パイは変わらず、パイの争奪戦で生
き抜くことを考えやすいということです。パイを増やしてみなで生き
ながらえようという考え方は、「世界は肯定的」だと思い込んでいる
人たが考えやすいものです。

 「8・3・7」も幸福な人たちは、他人の幸福をともに喜び合える
のであり、そのような人たちもしばしばいます。しかし、不幸になる
にしたがって、他人との差を意識して、上昇志向も強くなり、他人の
不幸を願い、公平に扱われると、怒りが爆発します。同じ8・3・7で
あっても、状態はそれぞれに違うのであり、同じタイプには思えない
ほどにさまざまで、とても一括りにして語れるものではありません。

5 敵の敵は味方 

 
戦時下の価値観が、「8・3・7」の価値観に近いと分かったなら、
この3つのタイプの行動パターンが少し理解できるでしょう。現在の
イラクの状況を見るならば、敵の敵は味方だという考え方はよく理解
できます。仮に、アメリカがイラク人にとって敵だとしたならば、ア
メリカの味方をする日本は、イラク人にとって敵になってしまいます。
アメリカの敵を仮に、ドイツだとしたならば、ドイツはイラク人にと
って、味方だと捉えられるでしょう。

 「8・3・7」にとって、母親が弟の味方をしたら、母親さえも、
敵に見えてしまいます。夫が子どもの行動を叱っている時に、妻が子
どもをかばうと、妻は自分を裏切ったことになりますから、腹立ちが
大きくなってしまいます。
 
 また、夫が不幸な時に、妻が「友人と会食する」などと楽しそうに
告げると、不快な表情をして、妻の外出を許可しないかもしれません。
逆に、友人が不幸で、その相談で会う予定だと告げると、気持ちよく
外出を許可したりします。しかし、本人が幸福であれば、妻の楽しみ
を奪うことはなく、ともに喜べる夫に変わるのであり、要は、夫本人
の状態如何に拠ると分かるでしょう。

 このように、「8・3・7」の行動原理を知れば、理解できなかっ
た言動が、少しずつわかるようになります。しかし、他のタイプにと
っては、理解不能に見える人たちで、物事をネガティブに捉えたり、
わがままな人に見えていたりします。苦手なタイプだと見ている人は
少なくないようですが、それは彼らの行動原理を全く知らなかったた
めではないでしょうか。

 愛情のある生活は、まず家族関係にあり、暖かい家庭がないと生き
て行かれない人たちなのです。自分の幸福は母親や妻たち、女性たち
がもたらしてくれたものと気付き、深い感謝の念を抱くのも、このタ
イプの人たちのほうが深いかもしれません。否定的な世の中で、やっ
と巡りあえた素晴らしい人たちとの関係は、お金には変えられないも
のだと知った、このタイプの人たちは少なくありません。