昔話や童話からタイプを理解する方法
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  千一夜物語」に登場する王はタイプ7w8か?


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千一夜物語とは

 
千一夜物語は、遠い異国で語り継がれた物語ですが、私たちには馴染み深いものです。「アラジンと魔法のランプ」というお話は、世界中の子どもたちが知っていると思われます。その他、「シンドバッドの冒険」「アリババと40人の盗賊」も有名です。

 冒険と恋愛もの、奇想天外な物語などが多く、ワクワクしながら読んだのではないでしょうか。 岩波文庫では、全26冊もあり、解説には“民話集”であるというような趣旨のことが載っていました。

 この物語の舞台は、エジプトのカイロや、イラクのバグダッドなどが有名ですが、ペルシャやインドだけでなく、中国やモロッコあたりも舞台になっているようです。また、現実の国や都市が舞台になっているとは限らず伝説や空想の国もたくさんに登場します。

 そして、これらの物語の大枠の元になる物語がありますが、あなたは聞いたことがあるでしょうか。それはササン朝ペルシアの時代で、美しい娘が、結婚した王の夜伽〔よとぎ〕を務めるために、千夜も語り継いだという前段の物語です。王の名前はシャフリヤール、姫の名前はシャハラザードです。



2 千夜も語り続ける姫 
 
 
さて、この物語の主人公・シャフリヤール王には、弟がいます。弟は兄王に招かれて城を出ますが、兄への贈り物を忘れたことに気づき城へ戻ります。すると、自分の妃が黒人奴隷と一緒に眠っていました。弟王は激怒して二人を斬り捨てると、兄王のもとへと急ぎました。

 シャフリヤールは、弟が沈んだ顔をしているので理由を尋ねましたが、何も話そうとしません。仕方なく弟を残して狩りに出掛けました。一方、弟は兄の妃や女奴隷たちが、男奴隷たちと庭で抱き合っているのを見てしまいました。兄王でさえこんな目にあうのかと思うと、気分が軽くなりました。

 さて、シャフリヤールは帰城すると、弟が元気になっているので不思議に思い訳を尋ねました。弟から事の次第を聞かされ、王は失意のあまり弟とともに城を出ていきます。

 二人は旅の途中で、巨大な魔物と出会いました。隠れて見ていると、魔物がひつぎを開け、その中から美しい女が出てきました。

やがて魔物は女の膝枕で眠ってしまいましたが、女は二人の王を見つけ、自分の欲望を満たすようにと命じます。言うことをきかないと魔物を起こすというのです。

 そこで二人は言われたとおりに女を満足させました。すると女は二人から指輪を取り上げ、コレクションに加えました。それは魔物の目を盗んで女と交わった男たちから取り上げた指輪のコレクションで、その数は570にもなっていました。

 この女たちは、閉じ込められて暮らしているのに、その魔物の目を盗んで男たちと密通を重ねてきたというのです。兄弟は、魔物でさえも女にだまされるのだと驚きます。二人は城へ帰りますが、すっかり女性不信になっていました。

 女性への憎しみというか復讐心からなのか、シャフリヤールは、毎晩若い娘をめとっては、朝になれば殺すということを3年間続けました。そのため国には娘がいなくなってしまいました。それでも王は、大臣に若い娘を連れて来るよう命じるのです。

 さて、その大臣には才色兼備な娘シャハラザードがいて、父から事情を聞いて、「自分を王のもとへやってくれ」と言い出します。父は反対しましたが、娘はきかず、ついに王のもとへと嫁いでいきました。

 その夜、シャハラザードは妹と組んで、打ち合わせをします。妹が姉になにか面白い話をするようにとせがむというものです。打ち合わせ通りにうまく行き、王が乗り気になりました。シャハラザードは王の許しを得て話を始めました。

 その話はとても面白く、王も気に入るのですが、シャハラザードは朝になると途中で話を終えてしまうのです。

 王は話の続きが聞きたいのでシャハラザードを殺さずにおきました。こうしてシャハラザードは様々なおもしろい話を千一夜にわたって披露することになったようです。


3 女性不信に陥りやすいタイプ

 
当会の理論には、「女性を強く意識するタイプ8・3・7」について解析しています。

 
「この3つのタイプは、母なるもの、女性性、女一般などに対して、とかく意識が向きやすく、過剰反応するタイプです。母親に愛されたがり、自分だけ愛して欲しいという思いが強くあります。しかし、母親はいつも自分の期待通りの愛情を与えてくれません。従って、母に対して欲求不満があり、満たされぬ思いを抱えやすいタイプです。さらに、女性性に厳しく、女性を慕い追い求めているのに、憎んだり、さげずむなど、女一般に注文が多く、とかく複雑な心理となりがちで、複雑な対応をする傾向があります」 

 
これらは、以下のページの末尾のほうに載せていますから、併せてお読みください。

http://www.mirai.ne.jp/~ryutou-m/eneagram/static/theory5.htm

 
 
 例えば、小学校で女子のスカートめくりをする男子がいますが、その多くはタイプ7の男子です。むろん、他のタイプの子も真似しますから、このタイプだけとは限りませんが。好きな女の子をからかう男子で、その子に振り向いて欲しいとか、からかって遊びたい気分になっているのです。

 成人すると、職場で気に入った女性に、なにかと因縁をつけたり注意したがる男性がいます。相手の女性に意味不明のことをするかもしれません。つまり、女性に対して屈折した思いがあり、複雑な心理状態になっているため、訳の分からないことをしてしまうのです。

 さて、タイプ3とタイプ8は人数的に少なくて、なかなかお目にかかれない人たちです。とくにタイプ8のようなごう慢で勝気なボスタイプがたくさんにいたら、世の中は争いが多くなると考えられます。

 タイプ3も講座で話題に登ることは少なく、当会へのアクセスも少なく、相談の対象になることも少ないのです。従って、タイプ3もかなり少なそうであると見ています。従って、上記のような行動パターンを取る人の多くは、タイプ7だと考えたほうが確率的には高いのです。



4 女を守るが、女が信じられないタイプ8

 タイプ8の男性は、女には目が無いというほどに露骨に女性を求
める気持ちがはっきりと見える人たちです。かの織田信長(タイプ8と判定済み)には初恋の年上の女性がいたようです。その女性を亡くした時は、三日三晩大声で泣き明かして、家来がいても隠さなかったようです。激しい恋情を持ちやすい人たちです。

 タイプ8は強い人間にならねばらないという意識に囚われているタイプですが、それゆえに、弱い人間を理解できず嫌悪したりもします。女性は「弱い人間」の代表格であり、弱い人間のずるさを忌
み嫌います。
 女性を求めつつも、女性を嫌悪してしまうという複雑さが、作品などにしばしばでます。女性を冷たく突き放したり、追いかけて、また無視したりなど、とても複雑な行動を取ります。タイプ8の「女性に意識が向く」という当会の性格分析を知れば、納得できるでしょう。

 さて、あるタイプ8の高校生男子が、好きな女子と交際したいために、知り合いの教師宅を訪れたようです。その女子の親が交際に反対しているために、教師にとりなして欲しいためです。いつもはデカイ態度の男子が、女子と交際したいがために、体を小さくして遠慮がちにつぶやいたそうです。その様子が普段とあまりにも違い、うぶな青年風であったために、驚いたということです。
 
 タイプ8は男女に関わりなく、女性に意識が向き、女性に対して厳しく批判的になります。女性を強く求め、女に対する憧れも強いタイプですから、女性に裏切られると激怒して、女性不信になりやすい性格を元々に持っています。


5 女性の気を引きたいタイプ3

 タイプ3も、女にもてたい意識が強いほうで、小さな幼稚園生の頃から、女子を強く意識しています。よく観察している母親ならば分かるはずです。タイプ3はシャイですから、そっと相手の気を引く方法をとり、押し出しが強くないので、なかなか相手に察してもらえないほうです。 

 ある小学生のタイプ3の男子が、大急ぎで帰宅しました。玄関でローラー靴に履き替えて、その紐を結ぶのももどかしく、急いで外に飛び出して行きました。どうやら、気に入った女子が家の前を通ることを知っていたようです。焦ったので汗まみれでしたが、間に合ったらしいのですが、なんと、その子の前では何食わぬ涼しい顔つきをして、軽やかに滑り出したそうです。けっして汗など見せません。

 ある30代の男性が、妻に頼みごとをしたようです。妻の友人たちを集めて、自分のことを話題にして、それをテープにとって、そのテープを起こして文集を作りたいという趣旨だったみたいです。自分では頼めず、妻の力で友人たちを集めて欲しいようです。

 タイプ3は目立ちたいという意識が強すぎて、かつ、周囲の人たちを押し退けてまで、自分をアッピールできない性格です。

 むろん、タイプ7も目立ちたがりで素早く行動に移せるタイプですが、タイプ3は、このような人たちと同じ土俵には立たないようにしています。また、なかなか一歩を踏み出せず、決断しにくい性格ですから、自分の出番はないかと探しているだけで終わってしまうのです。

 タイプ3を「次男タイプ」と呼んでいますが、その性格は攻撃的ではなく、遠慮がちで、自分を強く押し出せません。とかく女性頼みになる傾向はあります。


6 相手が幸せなら、自分は落ち込む??

 さて、千一夜物語での弟王は
「兄王でさえこんな目にあうのかと思うと気分が軽く」なるようです。この心理が容易に分からないとしたら、あなたは「8・3・7」以外のタイプということになるでしょう。

 例えば、落ち込んでいる「8・3・7」に該当いる人を慰めるには、自分はもっと不幸であると告げたほうがよいのです。「こんなにふうにしたら、私のように元気になれるわよ!」などと言うと、とたんに不機嫌になり、怒り出す可能性もあります。

 タイプが違えば価値観が違いますが、それは対処法も違ってくることを意味しています。落ち込む場面や気分が良くなる状況も各々に違ってきます。

 「この関係では、このような言動をする」というところに、そのタイプらしさがでます。つまり、下線にあるような心理から、この物語は「8・3・7」の気質が色濃く出ていると判定できるのです。

 「世界と否定的に結びつくタイプ(837)」にとって、この世は辛くて恐ろしいところです。愛し愛されたい願望が、他のタイプより強いようです。

 従って、相手がラブラブの幸せだと知ると、自分が格別に不幸せではなくとも、落ち込むことがあります。そうなると、自分が不幸せな時、相手がもっと不幸であれば、浮上できるのです。

 さて、物語にあるように、
魔物でさえも女にだまされる」のですから、「女というものは信用できない」という一面はあるかもしれません。

 しかし、千一夜物語は、その女性たちが活躍する場面がとても多く、女性を求めているとよく分かりますから、複雑な心理と言えます。
 
 才色兼備の姫・シャハラザードは、ワクワクするような寝物語を結末まで語りませんから、その先を知りたい王は、姫〔妻〕を処刑することができないようです。

 タイプ7は、楽しい話や現実にはない奇想天外な話を好みます。また、大人よりも子どものほうが非現実的な話を好みますから、子どもタイプ「1・7・6・3・4
のほうが、面白い寝物語で釣ることができるでしょう。


7 男性性の強いタイプ「8・3・7」

 千一夜物語に出てくる女たちは、みな性的な魅力があります。黒い髪で、豊か
な胸と引き締まった腰で、男心をとろかすような心得を持っているようです。

 性戯や性技にも長けていて、賢くて機転が利き、当意即妙に答えられる美人です。男性顔負けくらいに大活躍しているのも、このような美人です。
 男性がナイトぶりを発揮して女性を助けるというよりも、女性に男性が助けられるという物語がかなりあります。

 男性たちにとっての理想の美人像のようですが、とりわけ、タイプ7の男性たちにとっての理想
像と考えられます。

 また、タイプ7自身が、機転が利いて、アドリブも得意としますから、機転の利かない女は理想的には見えないのです。

 そして、物語のなかには、破廉恥なものもあり、性の場面が克明によく描写されているのも特長的です。子ども向けではない原作に近い物語を読んで、確かめてほしいと思います。

 性的な関心が高いのは、一般的には、女性よりも男性のほうだと言われています。エニアグラムで見ると、「世界と否定的に結びついているタイプ837」のほうが、その他のタイプより性的な関心が高いと考えられます。

 タイプ8の本質性は「お父さん」であり、タイプ7は「長男」、タイプ3は「次男」です。本質性は「男性」なのですから、いわば、男性性が強いのですから、当然のことかもしれません。また、日常的にも性に関する会話が多いのも、この3つのタイプです。

 たとえば、結婚が決まった娘に、夫婦の夜の生活でのたしなみを伝授したり、夫を気持ち良くさせる性戯を娘に教えたタイプ7の母親がいるようです。

 年頃の娘に彼氏ができたのか、まさか生理が止まっているのではないだろうかと、早くも妊娠の心配をしていたりします。

 
さて、一夜物語の大枠の物語に登場する主人公・シャフリヤール王は、タイプ7w8の性格が色濃く出ています。冒険好きで、女性好き、ワクワクするような面白いストーリー展開になっていて、タイプ7好みの物語と考えられます。

 タイプ7の「楽しまねばならない」という気質が躍如していて、「楽しい冒険と女」がテーマであると言えそうです。

 映画「インディー・ジョーンズ」は、スピルバーク監督〔7w8と判定済み〕の作品ですが、全体として、とても似通っているように思われます。

 昔も今も、人間の欲望に変わりはなく、また性格も同様のようです。