特集シリーズ                 
 2008/01/03  
      タイプ8のイヌ・名前はジム


 会っていないタイプのイヌがいる。タイプ8である。犬も9つ
のタイプに分けられるということ、それが事実であると確信しな
がらも実際には会っていないタイプのイヌがいる。それはかなり
気がかりなことです。
 人間でも、タイプ8に出会う確率は少なく、受講生たちから報
告されることも少なく、通信受講生からはゼロである。タイプ判
定を仕事にして大量に判定できるようになっても、めったにこの
タイプと判定できず、残念に思っておりました。

 Q&A室でも、7年近くタイプ判定を依頼されていますが、タイプ8
らしいと判定できた人は、ただ一人です。また、昨年から、小学校
の卒業文集も頼み込んでよく読んでいますが、タイプ8ではないか
と感じさせられる文章は、これまでのところ皆無です。

 ところが、インターネットの犬種図鑑などを観ているうちに、「
ドッグガイドbyアニマルプラネット」のなかに、ボーダーコリーに
関しての記述と出会いました。以下です。
  http://www.animal-planet.jp/dogguide/directory/dir02900.html

 
 「1873年、最初の牧羊犬競技会が開かれ、この時の競技会に出場して目を
見張る活躍を見せた「ヘンプ」という名の犬が、後のボーダー・コリーへと
つながっていくことになります。ヘンプは吠えたり家畜を咬んだりせずに、
目で睨みをきかせて怯えさせることで家畜を誘導させていました。この競技
会での活躍によって、ヘンプは後に“ボーダー・コリーの父”といわれるよ
うになります」

 ヘンプという名のイヌは、目で睨みをきかせて家畜を誘導すると
いうのです。「このイヌはタイプ8ではないか」と思いつつ、エニ
アグラム講座にて、ボーターコリーの話をしてみました。すると、
ある受講生から「目で威嚇するだけで、決して吠えないイヌを牧場
で見たことがある」と告げられました。
 
 イヌの気質を読み解く本を出版したいので焦っていましたが、た
またまタイプ8らしいイヌがいると受講生から聞き込んで、現地に
取材に行きました。昨年春のことです。先に電話で問いあわせて聞
いたお話では、タイプ8と判定できそうでした。そして、遠いとこ
ろでも無駄足にはならなかったようで、幸運でした。

 今回は、「タイプ8のイヌって、一体、どんなイヌなのかなあ」と
思っていた方がいると思います。そんな方にも納得できるような情報
ではないかと思い、まとめてみました。
    
   

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 1 ジムは牧羊犬

 そこは観光牧場の一角です。約200匹の羊の群れをコントロールして、
いろいろな場に引率する役目をするイヌたちが、たしか4匹くらい飼わ
れていたと思います。その様子が見事ゆえ、観に来た人たちは拍手喝采
します。ここの牧羊犬はニュージーランドから取り寄せているようで、
訓練されてから日本に送られてきます。

 さて、ジムという男名ですが、実はメスです。犬種は、ストロング・
アイ・ヘディング・ドッグといいますが、犬種登録がされていないので、
この犬種の歴史などはわかっていません。ニュージーランド・オースト
ラリア・アメリカ・イギリスなどでは、この犬を使って牧羊犬の能力を
競う大会が各地で開催されているようです。この牧場でも「シープドッ
グショー」といい、一日に2回ショーが開かれています。

 羊飼いが使うホイッスルの音を合図に、牧羊犬が放牧場をワンワンと
吠え立てながら ヒツジたちを目的の場所に誘導します。私が現地に到
着した時もショーは始まったばかりで、二匹の犬が盛んに吠え立ててい
ました。しかし、私が目指しているジムは、吠え立てないイヌだと聞い
ていたので、タイプ8ではないのかもしれないと不安になりました。

 しかし、この2匹の次に、次なる出番のイヌが2匹登場しました。こ
の2匹は、前のイヌとは違い、吠え立てません。とくに、ジムと名づけ
られたイヌは、全く吠えないだけでなく、見事な引率ぶりを発揮してい
ました。目で威嚇するだけで、羊たちを思うままに従がわせることがで
きるみたいです。それでも、列を乱したり従わない羊もいるようです。
実際に、その現場を見て確認することもできましたが、他のイヌは、足
に歯をあてるだけだが、ジムだけは羊の毛を噛んで引っ張り従わせてい
るように見えました。

 
2 目で威嚇して羊を誘導

 観光牧場ですから、ショーの後は、触れ合いの時間になっています。
子どもたちがイヌに近づいて撫でたり、ベタベタと触りたがります。こ
のイヌの係をしている女性が、ジムから目を離さないで見ています。ど
うやら、子どもがしつこくジムを触ると、うーーっと低い声で唸ること
があり、その唸り声だけで、子どもを泣かせてしまうようです。しつっ
こい客には威嚇もするので、気をつけて見ていないといけないのだそう
です。他のイヌもいますが、子ども好きなイヌがいるなかで、ジムの子
ども嫌いはクッキリと出ていました。

 ずっと観察していると、どうも若い女性客には自分から近づいている
ように見えました。しかし、子どもに触れられると、スルリとうまくか
わしているように見えます。また、羊の中にも気の荒い気質の羊がいる
ようで、水飲み場でジムと一触即発、慌しく激しい動きとなり、周囲の
人たちをギョッとさせる場面もありました。

 ジムの世話係をしいる女性から、ジムについて取材していると、私の
傍に来てジッと耳を傾けているように見えました。自分のことが話題に
なっているとわかるみたいです。礼儀正しく、立ち居振る舞いに落ち着
きがあり、とても風格のあるイヌだと感じました。
 さて、この世話係から聞いたジムに関することを以下にまとめていま
す。


3 ボス犬・ジム(メス)

 取材当日(2007/3)。ジムは6歳ですが、3歳の時に母親と一緒に日本
に連れて来られました。神経質なところがあり、「気が強くて我が強い
性格」と言います。そんな気質ゆえか、若い頃は他のイヌとよくケンカ
となり、噛みあいで血まみれになることがしばしばあったようです。ま
た、母親とケンカすることもよくあったと言います。

 また、若いオスの中に、このジムに惹かれて、ちょっかいを出したイ
ヌがいたようです。しかし、ジムは嫌っており、自分の2倍も大きい若
いオス犬をねじ伏せてしまったようです。オスをひっくり返して、その
腹の上に乗ってしまうほどだとか。威嚇したり脅すなどで、他のイヌの
上位にいるイヌだそうです。
 仕事は安心して任せられるようで、仕事(シープドッグショー)が終わ
っても、羊から目を離さず、ずっと仕事モードのままで、いつもピリピ
リと見張っています。あまりにも仕事に熱中するのか、スタッフの指示
を聞いていないときがあるほど。女性のスタッフには、たまにじゃれつ
いて遊ぶことがあると言います。

 大変に食いしん坊で、食事中は個々に柵で区切られたところで食べて
いますが、食事が終わると柵がとられるので、食べ残しのあるイヌの小
屋に入って食べるそうです。一緒にしたら他のイヌのエサを横取りする
恐れがあるからのようです。他のイヌが柵越しに様子を見に来ただけで、
自分のエサが取られると思うのか、よく威嚇しているとか。

 しかし、雷だけは怖がり、机の下に隠れて出てこないことがあり、そ
んな時は仕事ができなくなるようです。なお、ジムが吠えている声は、
まだ聞いたことないそうです。


4 ジムと組んでいるオスは、タイプ7w8

 ジムと組んで仕事をしている同じ犬種のオスは3歳。ジムが大好きで、
ジムの姿を見つけると、よく追いかけています。このオスは、みなから
「変わり者」と思われているようで、なぜかと問うと、「顔を撫でられ
るとなんとも言えない変な顔をする」からだそうです。たぶん、嫌がっ
ているのではと思われます。

 ジムと同じく羊を威嚇して誘導しますが、毛を噛むことはなく、仕事
が終わるとのんびりモードになります。女性スタッフと遊びたがり、甘
えることも多いとか。大きな物音がすると、ビクビクして神経質。子ど
もの頃、人間に慣れるのに時間がかかったようです。

 また、トラブルが多いイヌだそうで、客と触れ合いをしていると、突
然オシッコをかけたり、時に客に吠えるので困っていると言う。なぜか男
性スタッフが夜一緒にいるときに限って脱走する。「脱走犯」だそうで、
一晩脱走するが、朝になると、あきらめて帰ってくる。

 どこか自己アピールしているようで、「オレが一番、羊をうまく動かし
ているんだ」という様子を見せることがあるそうです。食事時間が近づ
くと、焦っているのか、待てない様子が見える。そして、スタッフに叱
られそうだと察して、逃げるのがうまいとか。また、オスにはライバル
心を出し、強いメス犬が好みらしい。

 取材中は、自分のことが話題になっていると近づいてきて、話が自分
のことから移ると離れていくので、とてもわかりやすいイヌでした。私
がジッと観察していると、姿勢が「優等生お座り」になり、世話係の女
性が、「まあ! この姿勢 見て、凄い!」などと感嘆しておりました。
なぜなんでしょうか。やはり女性が怖い、人間の女はとくに怖い、ので
はないかと予想します。


5 「8w7」と「7w8」

 この2つのタイプは、エニアグラム図内では隣り合わせで、気質が似
ています。しかし、基本タイプが違いますから、似ているところはあっ
ても気質の違いは大きい。

 タイプ8w7は、「お父さん気質」、別名「ボスタイプ」ですから、群
れの中ではいつもボスになりたがる攻撃的で大胆な気質です。一方、タイ
プ7w8は「長男気質+お父さん気質」です。ボスになりたいほうではあ
りますが、タイプ8ほどではありません。怖がりで神経質でもあり、強い
ボスがいて、そのボスに従うほうが適している気質と分析しています。
 
 また、8w7は「大人タイプ」ですから、仕事モードのままになりやす
く、7w8は「子どもタイプ」ですから、仕事が終われば遊びたがります。
8w7のイヌは人間の女性と遊びたがりますが、甘えることはたぶんしな
いでしょう。「甘える」など、その辞書にない気質です。しかし、7w8
は子どもタイプゆえ、甘えたり依存的になりやすい気質です。

 そして、タイプ7を「外回りの人」ということもあるくらいで、狭いゲ
ージの中では息苦しくて落ち着けない気質です。人間の女性がともにいて
くれるならば、我慢することも考えられますが、そうでなければ脱走した
くなると予想します。実際、人間でもタイプ7の人たちは、終日事務所内
で働くという仕事はあまり向いていません。営業などで外を駆け回ってい
るほうが性に合うようです。

 タイプ7は子どもタイプゆえ、イタズラすることは当然によくあること
です。人間の子どもも、悪童と言えば、タイプ2w1と7w8に最も多い
もの。また、タイプ7は、せっかちで待てない気質ですから、お座りをし
て餌を与えられるまでずっと待つことができにくいでしょう。その他、
「優等生気質」と呼ぶこともあり、礼儀正しいところがあります。

 基本の自己防衛戦略は、「素早く逃げて身を守る」ですから、逃げるの
はうまいほうです。目立ちたがりで、自己アピールもよくするほうです。
ですから、このイヌは、人間のタイプ7と行動パターンとほぼ同じだと言
っていいくらいです。


6 目で威嚇するタイプ8

 総合的に見ると、ジムはタイプ8w7と判定できます。タイプ8のイヌ
とやっと出会えたという訳です。「愛玩犬」にタイプ8はいないだろうと
予想していましたが、牧羊犬の中でタイプ8がいたとは、さも有りなんと
いうところでしょうか。

 さて、タイプ8とタイプ7は、どちらも「女性を強く意識するタイプ(83
7)」ですが、この2匹も、それらしいところが見えています。

 仕事モードのままで夜中まで、他の人たちが帰宅しても一人仕事を続け
ていたタイプ8の友人を思い出します。交通事故で亡くなってしまいまし
たが、本当によく働く人でした。仕事の取り引き先の人から聞かされたこ
とですが、「彼女からは、協力という名の指導をよくされた」のだそうで
す。

 あるタイプ8の男性がいて、新入してきたばかりの若い女性を生意気だ
と思っていたらしく、何年もその女性社員を目で威嚇していたようです。
この女性からの情報で、タイプ8だと確認しています。また、職場にタイ
プ8の先輩とともに仕事をしたことがありますが、「目でものを言う人」
ではありました。口で叱られるよりも怖いかもしれず、その職場では最も
存在感のある威圧的な女性でした。
 
 ところで、タイプ8の自己防衛戦力は、「敵を威嚇する」と基本理論に
載せています(以下に載せています)。従って、イヌも、あまり吠えず威嚇
しているのではないだろうかと予想していました。そして、実際にも、ジ
ムは吠えず目で威嚇するイヌなのでした。
   http://www.mirai.ne.jp/~ryutou-m/eneagram/static/theory3.htm


7 気合を入れれば、勝てるのか?

 ところで、人間ならば、トレーニングジムなどに通って筋肉トレーニン
グをしたり、ボンシングなどを習って強くなることができます。知り合い
にも、密かに心の弱さを補完するつもりなのか、腕力をつけて、ケンカに
強くなりたいとトレーニングを積んでいる男性がいます。

 しかし、ジムは特別に筋トレをしているのではありません。メスなのに、
自分の倍もあるオスイヌをねじ伏せることができるのは、何故なのだろう
と思わざるを得ません。イヌは人間よりも男女差がない動物のようですが、
それでも、ジムの強さを知ると、どうして可能なのだろう? と‥‥。

 「絶対に負けたくない」、「勝ってみせる」という意地があるからなの
でしょうか。そのためには、やはり「気合」とか「気迫」というものが必
要なのでしょうか? 「強い」とは、強くなりたい、勝ちたい、負けたく
ない、という気持ちだけで、強くなれるということなのでしょうか。いろ
いろと考えさせられることではあります。


 さて、同じ犬種であっても、気質はそれぞれに違うはずなのに、どうし
てか、犬の本には、「この犬種は従順」とか「明るく人なつっこい」など
と性質がみな同じみたいに紹介されています。
 しかし、ここを最後まで読まれた方ならば、イヌもそれぞれに気質があ
り、その気質がおおまかには9つあるかもしれないと、なんとなく感じさ
せられたのではないでしょうか。あなたの周りにいるイヌたちを観察して、
それは本当のことなのか、一度、確かめてみてほしいと思います。