ベルギー・オランダを自転車で走る
1997年9月6日

追記. ベルギー・オランダ自転車事情

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I. ベルギー自転車事情

1. 坂が無い

 ベルギー東部はよく知らないが、少なくともフランダース地方には、坂が一つも無い。これは自転車に乗る場合に重要なこと。体力の不安が無く、多くの人がサイクリングを楽しめる。しかし、坂を登ることを無上の楽しみとしているパスハンター達には残念な事だろう。坂を下る爽快さも捨てがたいが、登り坂は下りの楽しみ以上に苦しい。
 登り坂、向かい風、自動車の通行が、多くの人からサイクリングを遠ざける問題になっている、と私は思う。ここフランダースでは、風向きはしかたが無いが、残りの問題はほぼクリヤーされている。

2. 自転車専用道路がほとんどの自動車道に付属している

 殆どの自動車道には自転車レーンが作られている。街の中でも自動車通行量の多い道は、自転車レーンを設定してある。郊外の幹線道路は専用自転車道を両側に設けてある。ブルージュの街で、右折車が自転車レーンに侵入してきたら、前にいた自転車のじいさんがその車の運転席窓をたたいて開けさせて怒鳴っていたのが印象に残った。
 車がめったに通らないような田舎道は自転車道は必要ない。万が一車が来る様なことがあっても、だいたいは自転車を優先してくれるようだ。

3. 自転車専用の信号がある


ベルギーの自転車信号
 自転車道や自転車レーンのある道路では信号交差点に自転車専用信号がついている。つまり自動車信号、歩行者信号に加えて自転車信号がある。最初はその信号があるのが気づかず自動車信号を見ていたので道路を渡るタイミングがわからず、他の自転車の後について渡っていた。
 自転車とは関係ないが、フランスでは自動車の速度制限標識を見かけなかった。しかし、ベルギーにはそれがある。

4. サイクリングコースが整備されている

 例えば西フランダース地方だけで35Kmから50Km程の短距離サイクリングコースが15コース設定されている。また長距離自転車旅行用のコースがフランス・オランダをも含めて設定されている。

サイクリング地図
 全ての短距離コースは、そのコースのルートが示された1/25000の地図がBF60(\190)程でインフォーメーションで入手できる。その地図には地形図だけでなく、そのコース中の名所旧跡、歴史建造物、美術館、観光案内所、カフェやレストランの場所、地理的特徴などが説明されている。但し、現地人向けであるからフラマン語(オランダ語)で書かれているので、私にはさっぱりわからない。オランダの地図も現地語だけ書かれている。
 各コースの何カ所かには必ずレンタサイクル店があり、電車や車で来てサイクリングすることも気楽に出来る。鉄道で来た場合、駅のレンタサイクルでは帰りの切符を持っていればレンタル料金を半額近く割り引いてくれる所もある、らしい。
 このようなサイクリングコースを休日には多くの自転車が走っている。以前はロードレーサーの集団が走っているのをよく見かけた。今回は平日だったので、他の自転車にはあまり会わなかった。
 また、ブルージュ周辺を走る、観光客向けのコースが設定されている。ブルージュ発着の18.5Kmから29Kmの5コースがあり、英語の説明がある。また、各コース間での相互接続ルートも設定されているので、体力と時間に応じたコース・アレンジもできる。このコース説明図もインフォーメーションで入手できる(BF20=\63)。
 自転車コース以外に、歩行者コースも整備されている。短距離の森林ウォーキングコースと、徒歩旅行用の長距離フットパスが作られている。長距離フットパスはベルギーだけでなくオランダやフランスへと続いている。

5. 人間のペースでの観光旅行

 日本と全く違う風景の中を自転車で走ることで、適当なペースでの観光旅行ができる。自動車や電車では景色の変化が速すぎ、歩いては変化が遅すぎて退屈する。自転車では、ある風景を満喫した頃に次の風景が現れる。また、いつでもどこでも自転車を止めてゆっくり観察することもできる。興味深い小路があれば入って行ける。遠くに見える教会の塔が少しづつ近づいて来るのをわくわくする気持ちで味わえるのは自転車旅行だから。これはオランダを自転車で走る場合も同じである。
 もちろん、このような利点は国内サイクリングでも同じ事だが、自動車に注意しながらでは、興が半減する。自転車旅行が市民権を得ている国だからこそ楽しみに集中できる。


II. オランダ自転車事情

1. 坂が無い

 フランダース地方同様、オランダには坂が無い。他の地方は知らないが少なくともホラント州には坂がない。砂丘地帯の僅かな傾斜と陸橋の登り下り、天井川状態の運河の土手に登る道ぐらいが最大の坂か。

2. 自転車専用道路が殆どの自動車道に付属している

 主要自動車道や都会の道は自転車道が着いている。自動車道では、歩道のように脇に自転車道がついているのでなく、自動車道の近くに独立した道路として自転車道がある。街中では車道脇に歩道と並んで自転車道がある。
 自転車道の無い道路を自転車で走っていると、出会う多くの車は徐行してやり過ごしてくれる。
 車道は自転車の通行が出来る。しかし歩道は自転車は走れない。車道の一歩通行は日本では「軽車両は除く」などの但し書きがあるが、オランダでは自転車も一方通行である。一度、ハーレムの街で一方通行を自転車で逆走して、前から来たパトカーに怒られた。歩道を走ろうとしたら、また同じ警察官にしかられて、自転車を引いて一方通行区間の終点まで歩いた。

3. 自転車のまま列車や地下鉄に乗れる


シアトル市バス
 アムステルダムの地下鉄には、自転車のまま乗れる。地下鉄プラットホームへの階段の脇に自転車を引いて登り下りするためのスロープがついている。多分自転車料金は必要ない。地下鉄車両にそのまま自転車を持ち込める。他国でも、米国シアトルの市バスのように、前に自転車取り付け器が付いていて2台までなら自転車を運んでくれる、という例もある。
 オランダ国鉄は、自転車をそのまま運んでくれる。列車の端に自転車を積む車両が連結されている。プラットホームを自転車が走っている。鉄道の場合は多少の自転車料金が必要である。日本では、自転車を解体して容器に入れた状態にして、自転車振興会の証明書を見せて手荷物料金を払わないと自転車をJRに乗せることができない、ようだ。

4. 運河には橋が非常に少ない


回転橋(ベルギー)
 オランダに非常に多い運河には橋が少ない。橋は船の通行を妨げるために、最小限しか橋がない。跳ね橋や回転橋が多いのは船の通行のため。一つの橋を渡り損ねると数Km行かないと次の橋が現れない。地図であらかじめ橋の位置を確かめておく必要がある。しかし、地図上で運河を道が横切っているように書いてあっても、橋の記号が書いてない所は橋がない!。
 アムステルダムから北海までの北海運河は橋が一つもない、国道も鉄道も高速道路も全てトンネルで運河をくぐっている。

5. ブレーキの構造に注意、自転車盗難に注意

 オランダで借りた自転車は、ヨーロッパに多い、ブレーキレバーのついてない自転車。ペダルを後ろに回すと後輪だけがブレーキがかかるタイプ。慣れていない人にはかなり乗りにくい。とっさの時にブレーキレバーを探しているうちに障害物に突っ込んでしまう、という事故を防ぐためには、十分練習する必要がある。急ブレーキをかける時は全体中を後ろ側のペダルに乗せるつもりでないと、上手く行かない。フリーホィールが働いている状態からブレーキが効く状態までに、角度で15度程の遊びがあるのも、とまどいの原因となる。

 ベルギーオランダとも、盗難は日本よりだいぶ頻繁らしい。自転車を借りるとき、鍵を2つ渡される。一つは自転車そのものに鍵をかけ、もう一つは自転車のフレームを道路上の柵などに固定するため、と説明される。ワイヤケーブル鍵のワイヤの太さは25mmほどで、鍵の重さに閉口する。走行中に車体に巻き付けた鍵が邪魔になる。
 都会の路上には自転車固定用の柵が所々に設置してある。コの字形の直径50mmほどの鉄パイプが地面に取り付けてあり、そこに自転車のケーブル鍵を巻き付けるようになっている。日本で私の自転車が我が団地の階段下に置いてあるのを見ると、欧米の知人達は日本の安全性を羨ましがる。彼らの故郷では、そんな保管方法では一晩で無くなってしまうという。自転車はスポーツ車でなくても、室内か、鍵のかかるガレージに保管するらしい。でも、日本でもたまには盗難に遭う。

   

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