くさかべ整形外科新聞(1)

当院で発行した院内報の一部を以下に記載します。

2002年1月号 整形外科について

 皆さんが経験したことのある腰痛、肩こり、神経痛、関節痛など、そして骨折、捻挫、打撲、切り傷、挫創等の患者さんを治療するのが整形外科です。すなわち整形外科は四肢(手足)と体幹(せぼね)を治療する診療科です。また高齢化社会の到来とともに手足の動きが悪くなった患者さんを、リハビリテーションで動きやすくなるように治療するのも整形外科の役割の一つです。

●以下の例に示すような場合には、整形外科専門医による治療が必要です。

骨が折れたとき

 骨折はギプスや、必要があれば手術で治療します。骨折が治り骨がついた後に関節が動かなくなったり、骨が曲がっていたり、最悪の場合骨がつかないこともあります。このような不都合なことが起こらないように整形外科専門医による治療が必要になります。

スジ(腱)が切れたとき

 この場合、診断が難しいことがあります。肩があがらなくなったり、指の動きが悪くなったりしますが、診断が遅れると治療結果が悪くなることがあります。

肩こり、腰痛、神経痛のとき

 肩こりの場合にはくび(頚椎)か肩に、腰痛の場合には、主に腰に原因がありますからレントゲン等で骨の状態を検査します。神経痛も多くは、くび(頚椎)やこし(腰椎)に原因があります。又、時には(稀ですが)癌の転移による痛みもあります。したがって、しっかりした診断のもとに治療することが、大切です。

関節が痛いとき

 原因が、外傷やスポーツと関係がないか、リウマチではないか、老化によるものかなど診断しなければなりません。それによって、治療も異なってきます。原因としては、年をとったり、体重がふえて関節が変形することによる関節痛が最も多くみられます(変形性関節症)。多くの人は関節のまわりの筋肉の力を強めたり、関節を暖ためたり、体重を減らすことで症状は軽くなります。しかし、病状が進行すると手術に頼らなければ治らない場合もあります。(人工関節など)

骨が痛いとき

 骨腫瘍などにより痛くなることがあります。また高齢者では骨がもろくなって(骨粗鬆症)痛むことがあります。骨粗鬆症の場合、折れ易いので倒れないように注意し、予防的に骨を強くする為の治療が必要になります。   

 日本臨床整形外科医会JCOAホームページより

 

2002年5月号 足関節捻挫について

<捻挫をバカにしない> (以下、図は省略しております)

 一番多いスポーツ外傷は、足関節の捻挫です。軽いものでもしばらく満足にスポーツができなくなり、ひどいものでは、痛みが残ったり、運動能力が落ちてしまうことがあります。レントゲンで「骨に異常はない」「ただの捻挫」と聞いて、安心してしまってはいけません。

<足関節捻挫とは>

捻挫 足関節の捻挫は、可動範囲を越えた為に靭帯を傷める(過度に伸ばす、断裂)傷害です。大部分が外果(外くるぶし)から距骨につく前距腓靭帯(上図)を傷めます。さらに傷めると踵腓靭帯を傷めます。

<症状>

  傷めた靭帯の部位や、関節全体に腫れ、痛みが現れます。

<けがの程度をチェックする>

 腫れ具合、痛みの程度、足首を前後に動かして痛みはどうか、歩けるか、走れるか、などをチェックします。腫れがひどい時や、歩いても痛いときは、中等症以上です。痛みは外くるぶしの前方にあることが多いですが、それ以外の場所にもあるときは、複数の損傷がある可能性があります。

軽症 靱帯が一時的に伸びた状態 痛みは軽い 腫れはない

中等症 靱帯の部分断裂 痛みが強い 腫れは中等度

重症  靱帯の完全断裂 痛みが強い 腫れも強い

 ほとんどは、過度に足を内側に捻り、外くるぶしの靱帯が伸びます。音がしたときや、何かが切れた感じがしたときは重症である時が多いのです。

<受傷後の応急処置、治療>

 RICE(ライス)の原則

 痛めたらすぐにおこなってください。あらゆるスポーツ外傷の原則であり、初期治療としてとても重要です。     

 R (rest) 患部安静です

 I(icing) 冷却です

 C (compression)圧迫です

 E(elevation) 挙上です

RICE(ライス)による応急処置とは、具体的には、(間欠的に)水か氷で冷やし(低温やけどさせないように!)包帯などで軽く圧迫したり、テ−ピングなどで固定します。なるべく心臓より上に挙上し(上図)、痛みが引くまで経過を見ます。痛みの強い場合、腫れが著明な場合は、骨折の事もありレントゲン検査が必要です。

<症状別治療法>

軽症:痛みがなくなり次第運動を開始します。

中等症のとき

 約1−2週包帯・テーピングなどの軽い固定を行います。痛みがあれば、さらに固定を1−2週続けます。痛ければ動かさないようにします。(無理に動かせば伸びた靱帯が、ますます伸びてしまいます) 痛みがとれてくれば、足首の曲げ伸ばしを行います。

重症のとき

 約2−3週間ギプスを巻き、その後は、リハビリとなります。 手術治療を行うことは少ないですが、重症のとき行われることがあります。

 痛みがなくなればすぐ下腿筋力トレーニングを行います。さらにジョギングとすすめ、現場復帰となります。トレーニング開始時に、痛みや不安定感があれば、伸縮テープを使ったテーピングを巻いてトレーニングを行います。

 

2002年6月号 手根管症候群について

 手根管症候群は手関節部で横手根靱帯によって正中神経が圧迫されることにより,その支配領域である母・示・中指 と環指の橈側の部に知覚異常が現われ,放置すると,母指球筋の萎縮をきたす疾患であり,整形外科では,よく見かけます.

<解剖>

 手根管とは,掌側凹の弓状湾曲配列を呈する手根骨と,それによって弦のように張る横手根靱帯で囲まれたトンネル状の管腔をいい,その中を通る主なものは指屈筋腱と正中神経です.

 手根管は狭い管であり,しかも横手根靭帯は厚く弾力性に乏しいために,手根骨損傷,靭帯,腱の病変がおこると手根管の狭窄をきたし,正中神経は圧迫され,いわゆる手根管症候群が発生する.横手根靭帯は近位縁がいちばん厚く強靭なので,このレベルで圧迫を受ける場合が多い.(図2)

<原因および基礎疾患>

 手をよく使う職業の人,とくに 中年の婦人で多くみられる。明瞭な原因が認められないで発症する例では、軽度の腱鞘炎によるものが多い.

<症状>

 初期には指先のピリピリした感じ,疼痛あるいはシビレ感(図1のA)を訴え,時には前腕部にも放散する.安静時にも存在し,疼痛はしばしば夜間に強く,そのため数回も目を覚ますと訴える患者も少なくない.また長時間にわたって,手を使用したり,物を握ったり自動車の運転をすると疼痛が増強する.これらの症状が漸次進行すると,母指球部の筋に萎縮(図1のB)が発生し,指先の細かい運動が障害され,「つまみ」動作ができないと訴えるようになる.

<理学的検査>

 手関節屈側部で,正中神経走行に一致する部分をハンマーで軽く叩くと,疼痛が指先に向かって放散する.手関節を屈曲位として1分間保つと指のシビレが増加し,正常位に帰すとただちに消退する.神経伝導速度の低下などを認める.

<診断>

 以上述べた症状および徴候により診断する.初期には診断は必ずしも容易ではなく,年齢,性,職業,疼痛・シビレの状況により本症を疑いなが経過を観察する必要がある.

<治療>

 症状が軽度で,ことに母指球部の萎縮がない場合には,手関節の副木固定,手根管内への副腎皮質ホルモンの注入などで軽決する場合もあるが,症状が再発したもの,母指球筋の萎縮を認めるものなどでは横手根靱帯の切離を行なう.

<予後>

 予後は普通良好で,手術直後より指のシビレ,疼痛は消失し,母指に力も入り,運動も容易となる.しかし,陳旧例で神経の絞扼が強く,神経末梢側に萎縮をみるような症例では回復は遅く,数年を要する場合もある.

椎体が直下の椎体に対して前方にすべっている状態の総称で、症状としては、腰や臀部に鈍痛があり、腰椎椎間板ヘルニアにみられるような激しい痛みは余りない。腰の動きの障害も少ない。

 

2002年7月号 腰椎すべり症について

 腰椎すべり症には、腰椎分離症に続発して椎間関節の上下にある関節突起の間で骨が分離して起こる「腰椎分離すべり症」と、分離は伴わず椎間板変性、椎間関節の変性に基づいて生じる「腰椎変性すべり症」、先天的な形成異常に基づいて生じる「先天性腰椎すべり症」、明らかな外傷により関節突起間部に骨折が生じて前方へすべり出す「外傷性腰椎すべり症」、悪性腫瘍や感染によって生じる「病的脊椎すべり症」がある。

 このうち、「腰椎分離すべり症」「腰椎変性すべり症」が特に臨床的に頻度も多く、重要である。

腰椎分離すべり症

 若年層に多く(体質的に骨が弱い、成長期に激しい運動をしていた結果生じる疲労骨折が原因等)、5つある腰椎の中で5番目の第5腰椎によく起こる。分離に伴うすべりの程度は比較的軽度のものが多い。

 主な症状は腰痛や臀部痛で、労作時や前屈位で腰の部分の突っ張り感や不安定感を自覚するが、安静にしていると消失する。

 治療に必要なのは、第一に安静。生活指導や運動療法、温熱療法、薬物療法、装具療法など、保存療法が効果的である。6ヶ月以上の保存療法にもかかわらず、腰痛症状が持続して生活に支障を来すようになると手術(腰椎の分離した部分の除去、分離した部分の修復、隣りの腰椎との固定など)が適応となる。

腰椎変性すべり症

 加齢などにより椎間板、椎間関節が変性し、椎体が前方にすべる。40〜50歳代の中高年の女性が多く、第4腰椎によく起こる。

 症状としては、労作時や長時間立っていることなどで腰痛、臀部痛が増悪する。安静にしていると軽快するが、しばしば脊柱管狭窄により下肢にしびれ感を呈することがある。

 腰椎分離すべり症と同様に、安静、生活指導や運動療法、温熱療法、薬物療法、コルセットの装着などの保存療法が中心であるが、日常生活に支障を来すようであれば手術的治療が適応となる。

コルセットについて

 コルセットを単なる痛みの症状の軽減のために用いる場合は、痛みに応じて付けたり外したりしてかまわないと思います。

 装着している時間、期間が長くなりますと、脊椎を支える筋肉の力、すなわち腹筋力や背筋力が弱くなり、かえって痛みの症状が退きにくくなり、コルセットが手放せなくなったりします。

どのような運動をすればよいのでしょうか ?

 丈夫な腰背筋は、腰椎を守る自然のコルセットのような物で、腰痛には、腹筋、背筋は大切です。腰に負担をかけない方法で腹筋力、背筋力を鍛えたり、ストレッチングで筋肉をリラックスさせたりします。

水泳は ?

 一番いいのは、水中で歩いたり軽く動き回って遊んだりすることです。背泳でも、平泳ぎでも腰の痛みなく、無理なく泳げればよいでしょう。バタフライは腰への負担が大きいしょう。

普段行うスポーツとしては、どのようなものがよいのでしょうか ? 

 ジョギング、ラジオ体操のような体操でも、何でも結局、腰に負担がかからず、楽しくできればよいのです。ゴルフは、腰に負担がかかりそうで、どうかと思いますが、テニス、その他、痛くなければいいでしょう。