さかべ整形外科新聞(2)

 

2001年1月号 <インフォームドコンセントとは何かご存知ですか・・・?>

 昨年も、同じ様な題で述べましたが、これは医者から説明を受けて、自分自身が納得した上で 治療を受けることを言います。手術など受けるときは特に大切なこととなります。現代は、昔と違い、わからないことがあれば何でも質問して、疾病に対する正しい知識を得て、納得して治療を受ける時代です。自分自身も 治療に参加することが大切です。整形外科では幸い難しい疾患は少ないですが、もし よくわからない事があれば、遠慮せずに質問して下さい。可能な限り わかりやすく説明する所存であります。

2001年4月号 骨粗しょう症について

 60歳以上になると、腰や膝の痛い人が多くなりますが、やや強い腰痛の時は、脊椎圧迫骨折のことがよくあります。(以下、図は省略しております)

  ここ3〜4ヶ月の間、当院へ、圧迫骨折による腰痛で通院した方は、10人余りあり、尻もちをついたとか、重い物を持ってから、という方のほか、特に思い当たる原因がなく、『単なる腰痛』と思って受診された方が、半分以上でした。圧迫骨折の治療としては、座薬などによる痛みの軽減のほか、ギプス固定や、コルセットなどが必要となります。

 右図1は、尻もちをついたあと、強い腰痛があると訴えていたある患者さんの側面のレントゲン写真ですが、本来四角い形であるべき脊椎(矢印)は、くさび形を呈しています。この方は、ある方法で整復し(図2)、ギプス固定しました。骨折後早期だったので、右図2のように(矢印)、骨折でくさび形をしていた腰椎は、本来の四角い形になっており、もとの形に戻すことが可能でした。

 骨粗しょう症があると、容易に骨折します。やや強い腰痛があるときは、『単なる腰痛』と思わずに、上記の骨折も念頭において下さい。

 骨粗しょう症は、60歳代より急に多くなります。

下図3は若者の脊椎です。骨の中は緻密で、大変硬いのです。それに対し、下図4は、典型的な骨粗しょう症の脊椎です。まさに、大根に"す "が入った感じで、指で押さえても、壊れそうな感じです。

 骨粗しょう症は、若い頃から、食生活や運動などを含めて、いろいろ心がけるべきことがありますが、それはまた、別の機会にしたいと思います。(希望される方は、パンフレットを差し上げます。)

 60歳前後で、骨粗しょう症と診断された方は、食生活や運動だけでは、足りず、薬物療法(注射、内服薬)が必要です。薬剤の組み合わせの違いによる、骨密度の変化の違いも、最近は、よく研究されています。どうぞ、なんなりとご相談ください。 

 

2001年6月号 ジェネリックについて

 全く同じ保険(負担0割は除く)で、全く同じ病気で、全く同じ効果の薬を、全く同じ量、同じ日数投与されていて、全く同じ治療を受けているのに料金が異なることがあるのをご存知ですか?

 投与されている薬の成分名は全く同じなのに商品名が異なると薬価が全く異なることがあります. 何倍も異なることがあります. 先発品(最初に発売された薬品)と後発品(ジェネリック)の違いです.

 ジェネリックは保健薬として認められていて、効果と副作用は先発品と全く同じですが、安い薬価になっています. 仕入れ価格が安いこと、患者さんの負担が少ないことが大きな利点です. ジェネリックは、開発に費用がかからないため安くできるのです. しかし、ジェネリックには発売に制限があり、新薬は先発品にしかありません. 現在の保険制度では、薬価以外にも薬剤負担の制度もあるため、処方の組み合わせ方によっても、さらに患者さんの負担が変わります.

 ジェネリック医薬品は、欧米でよく使われています. 医療先進国の欧米では、医療費の抑制は、日本より一歩先に、すでに重要課題となっています. もちろん日本でも、本格的な高齢化社会の到来を目前にして、避けては通れない問題です. 欧米では高騰する医療費抑制のためにも、ジェネリック医薬品が重要視され、活用されています.

 下のグラフは世界の医療先進国での、全医療品に占めるジェネリック医薬品のシェアです.(数量ベース)

 欧米では、全市場の約半分近くをジェネリック医薬品が占めています.特許が満了した製品に関して言えば、60〜80%がジェネリック医薬品に替わるといわれています.

 …沢井製薬ジェネリックハンドブックより…

 当院も、一部薬剤で、ジェネリックを積極的に採用し、患者様の負担を減らすよう努力しています.

 

2001年7月 よく見かける皮膚腫瘍について

 よく見かけるものを、思いつくままに、述べますと、粉瘤、ガングリオン、脂肪種、腫大したリンパ節、べーカー嚢種などといったところでしょうか。このうち特に多い粉瘤、ガングリオンについて述べます。

Q>ガングリオンとは?

 関節の周辺に米粒大からピンポン玉ぐらいまでの腫瘤ができます。手を使いすぎると腫瘤は大きくなることがあります。手首の甲に出来ることが多く、柔らかいものから硬いものまであります。不快感がありますが、多くの場合強い痛みはありません。

原因・病態

 関節包(関節をつつむふくろ)や腱鞘(腱をつつむさや)の変性により生じます。女性に多いですが、必ずしも手をよく使う人に多いとは限りません。

診 断  

 腫瘤を穿刺し、内容物が黄色のゼリー状ならガンクリオンと診断されます。

治 療

 診断がはっきりすれば放置しておいても心配はありません。大きくなるもの、痛みが強いもの、神経を圧迫する症状などが出るものには治療が必要です。注射で内容物を吸引したり、ガンクリオンのふくろを皮膚の上から押しつぶすなどの方法がおこなわれます。しかし、繰り返し内容物が貯まる場合には手術により摘出することもあります。

Q>粉瘤(アテローマ)ってなんですか?

 粉瘤(ふんりゅう)=アテローマというのは皮下にできる良性腫瘍の一種で、体のどの部分にでもできる可能性があり顔面、背部等に好発します。内部は嚢腫状になっており中には垢と脂がたまっていますので、しばしば細菌感染を起こして感染性粉瘤になることがあります。

Q>どういった構造をしているのですか?

 粉瘤(アテローマ)の一般的模式図(上図)をしめします。

 皮膚が袋状に皮下に入り込んでいるため、皮膚の表面からとれるべき垢が袋の中にたまってしまいます。こうして内容物をたくわえながら徐々に大きくなっていき、皮膚表面にあいた穴から細菌が入って2次感染を起こし著明な疼痛と発赤を生じるようになります。

治 療 は

 その時の症状や経過により、以下のような治療を選択します。

<放置する>

 粉瘤はある程度の大きさで落ち着いてしまう場合もありますので、炎症を起こさないのであれば放置して経過をみるのもひとつの方法です。

<内服、注射などで炎症をおさえ様子をみる>

 炎症をおさえる治療だけでも、とりあえずは痛みなどの炎症症状はとれます。しかし、この場合再発の可能性が残ります。

<切開して内容を除去する>

 強い炎症をおこしウミがたまっているような場合は切開し、内容を排除する処置をします。しかし、この方法では内容を出すことはできても「ふくろ」が残るため、再発もあり得ます。

< 全部切除する>

 もっとも確実な方法ですが、麻酔をして摘除し、縫合するという手術となりますので、それなりの時間がかかり、傷が残るというデメリットがあります。

 

2001年9月号 狭窄性腱鞘炎について

 腱とは、手足などを動かす筋肉の動きを骨に伝える細く丈夫な組織です。腱鞘はトンネル状に腱の周りにあり、腱がスムーズに動くためや、腱が浮き上がらないようにするための役割をしています。

 腱鞘炎とは、そこの腱および腱鞘の炎症をいいます。

腱鞘炎を起こしやすい部位

 手指では、親指のつけねの内側が多く、中指、薬指がこれに次ぎ、よくみられます。

 手首では、手首の親指側に多くみられるドケルバン腱鞘炎があります。

ばね指(弾発指)

症状と原因

指には腱(けん)というヒモがあり、それによって指の曲げ伸ばしをすることが出来ます。さらに屈筋腱には、腱の浮き上がりを押さえる靭帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)というトンネルがあります。

屈筋腱と靭帯性腱鞘の間で炎症が起こると、指の付けねに痛み、腫れ、熱感が生じます。これを腱鞘炎と呼び、進行するとばね現象が生じます。これがばね指です。

主に妊娠時、産後や更年期の女性に起こることが多く、右手の母指に最も多く発生します。

病 態

腱鞘と腱が引っかかるようになるのは、指の使いすぎによる刺激のため腱鞘が肥厚したり、腱が肥大硬化したりして、そのために一層刺激が強くなるといった悪循環を生じるためだと考えられています。

治 療

1.保存的療法:

(1)局所の安静で刺激を少なくしましょう。時には副木を当てて固定することがあります。

(2)腱鞘内に局麻剤入りステロイド注射をして、症状を押さえます。

2.手術療法:

1.の方法で治らないときや曲がったまま動かないときなどに行います。切離するのは腱鞘の一部だけです。小さな傷で済みます。

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)

症 状

母指には幾つかの腱(けん)というヒモがついていますが、そのうちの二本が手首の母指側にある腱鞘の中をいっしょに通ります。腱鞘の部分(図のB)で腱の動きがスムーズでなくなり、炎症が起こると痛みや腫れがでてきます。

@短母指伸筋腱 主に母指を伸ばす働きをする腱の一本です。

A長母指外転筋腱 主に母指を広げる働きをする腱の一本です。

原 因

妊娠時、産後や更年期の女性に起こることが多く、スポーツマンや指をよく使う仕事の人にも多い。

病 態

母指の使いすぎによる刺激のため、腱鞘が肥厚したり腱の表面が傷んだりし、そのために一層刺激が強くなるといった悪循環が生じます。 

治 療

・保存的療法:最初に行う治療です。次のような方法が主なものです

(1)局所の安静で刺激を少なくしましょう。時には副木を当てて固定することもあります。

(2)腱鞘内に局麻剤入りステロイド注射をして、炎症、痛み、腫れを押さえます。

・手術療法:上記の療法で治らないときなどに行います。腱鞘を切離し、腱を開放します。

 

2001年10月号

慢性関節リウマチってなに?

慢性関節リウマチとは、慢性に多発性に関節の炎症をおこして徐々に関節が破壊されていく病気です。全身の関節にひどい痛みをおこします。

慢性関節リウマチは、免疫の異常によっておこる病気です。免疫というのはもともとは外から体に入ってきた敵(細菌やウイルスなど)をやっつける体の反応で、人間ではおもに白血球(リンパ球)がこれをやっています。ところが、リウマチの患者さんでは、この免疫の反応が自分の体をやっつけようとしているのです。特に滑膜(関節の内張りの膜で関節液をつくっている膜または腱のまわりにあって腱のすべりをよくしている膜)で炎症をおこしてその結果、関節が腫れて痛みをおこします。それで関節炎と腱鞘炎をおこすのです。

2.どうしてそんな病気になるの?

現在のところ、本当の原因はわかっていません。原因としては

 *未知のウイルスや細菌の感染

たとえば、エイズも免疫の異常(免疫不全)をおこすウイルスですが、リウマチもなにかの感染症がきっかけでおこるのではないかと考えられています。エイズでは感染の原因が特定しやすいのですが、リウマチでは、ありふれた風邪のウイルスのようなものが、何年かの潜伏期間をすぎて発病するために原因がつきとめにくいのではないかといわれています。

 *遺伝体質

リウマチそのものは遺伝しませんが、リウマチになりやすい体質の遺伝はあるようです。たとえば、リウマチ患者さんの3分の1の人に近親者にもリウマチ患者がいることや、一卵性双生児(まったく同じ遺伝子)がふたりともリウマチになる確率が50%ということがあります。また、リウマチ患者さんに、白血球の遺伝子(HLA)のDR4をもっている人が多いことなどがわかってきています。ただリウマチになりやすい体質といっても、必ずリウマチになるということではありませんので、あまり神経質にならないようにしてください。

 *女性ホルモン

リウマチは男性1人にたいして女性4人と明らかに女性に多い病気です。それで女性ホルモンが病気の発症に関係しているといわれています。

 *ストレス

リウマチ患者さんの約3分の1がストレス(出産、過労、体の冷えなど)が原因となって発病したと答えています。最近の研究では、ストレスが過多になると免疫能力の異常をきたすという報告もあるようです。

以上の4つなどが考えられています。

3.どのくらい患者さんがいるの?

リウマチの発生頻度は、1000人に4人位といわれています。1億3千万人の日本人がいれば、50万人くらいの患者さんがいる計算になります。40〜50才台の女性が多いのですが、子供から老人まですべての年齢層で発病します。男性と女性では1:4で女性に多い病気です。

4.リウマチの自然経過は?

 *単周期型 35%

急性にリウマチが発症してもそのまま症状が落ち着いてしまう予後良好なタイプ。

 *多周期型 50%

単周期型と多周期型の中間で症状の改善と悪化を繰り返していくタイプ。

 *進行型 15%

ゆっくり発病してそのまま悪化していくタイプ。の3種類の型に分けられます。