High & Low (後編)
視聴覚室の一件以来、南原くんは私の授業に出席するようになった。
そんな事は当たり前なのだが、私は気が気でなかった。
今日も居眠りせずに私のことをじっと見ている。
私はもちろんそれに気づいていたが、視線を合わせる事ができない。
結局今回も最後まで彼を避けてしまった。
「はあ……」
終業のチャイムと同時に、逃げるように廊下に出て、ため息をつく。
このままではいけない。それはわかっているのだが、何をどうすればいいのかがわからない。
無策のまま彼と話をして、また勢いに流されてしまったら……
あの日、私は確かに興奮していた。
大勢の生徒の前で性行為を行うことに。
抵抗はもちろんあった。だがそれ以上に興奮してしまった。
初めての行為だからというのもあっただろう。しかし、授業中に私を見つめる南原くんをみると、どうしてもあの時のことを思い返してしまい、劣情を催してしまうのだ。
もう一度迫られたら、今度は脅迫などされずとも股を開いてしまうかもしれない。
それはいけない。引き返せなくなる。
だから私は、情けなくも彼から逃げることしかできなかった。
「大丸先生」
「はいっ!」
不意に呼ばれて私は飛び上がった。
振り向くと、そこには小柄な生徒がいた。
南原くん……ではなかった。
相撲部主将の、杉山くんだ。
絆創膏といい鬣といい、南原くんと特徴がよく似ていた。もっとも彼は猪人で、体型も相撲部員らしく横によく育っている。
「最近道場来ないじゃん。また稽古つけてよ」
「今じゃもうあなたのほうが強いじゃないですか。稽古をつけてもらうのはこちらですよ」
そもそも相撲部には立派な監督だっている。私の出る幕などない。
「そうかもしれないけどさ。オレの知る中で一番重いんだよ、大丸先生」
あまり嬉しい言葉ではないが、相撲部的には最上級の褒め言葉だ。
杉山くんは体格には恵まれているが、背が低いので体重はそれほどでもない。それは相撲部員としては大きなハンデだった。
「そうですね。ではまた近いうちにお邪魔します」
「やった。待ってるからなー」
無邪気に喜んで、杉山くんは去っていく。
その背後に、南原くんがいた。ギクリとする。
「……ど、どうも」
「……ふーん」
「な、なんですか?」
「別に。……オレには見せてくれないのに、金太郎には見せるんだ? マワシ姿」
金太郎というのは杉山くんの名前だ。
「……それは……彼は相撲部員なのだから、仕方ないじゃないですか」
「……」
南原くんの視線は鋭かった。
その迫力に怖気づいてしまう。
「……ちょっと付き合ってよ」
断れない雰囲気を醸し出しながら、南原くんは歩き出す。
私は生唾を飲み込んで彼のあとに続いた。
やってきたのは屋上。
今は休み時間中なので他の生徒の姿もある。
いきなり殴りつけられる事は無さそうだったので、私は安堵した。
「……さすがにさあ、シカトされると傷つくよ」
「シカト……」
無視ということか。
そんなつもりはなかったが、私はまた彼を傷つけてしまった。
乱暴者とはいえ、南原くんだって揺れる思春期の生徒だ。私の配慮が足りなかった。
「すみませんでした。そんなつもりはなかったんですが……どうしても顔を合わせづらくて……」
「だろうけどさ」
南原くんはまだ不貞腐れていた。
私はもう一度謝った。
「まあいいや。どうせ「またやらせろ」って言われるのが怖かったんだろ?」
「……はい」
たしかに怖かった。
きっと頷いてしまうであろう自分が。
「安心しろよ。もういわねえから」
「え?」
そうなのか。
安心したが、同時に落胆した。
私は心のどこかで、また彼に愛してもらいたいと願っていたから。
「ガッカリした?」
「し、してませんよ」
見透かされたようで思わず言葉に詰まる。
「ちぇっ、駄目かー。童貞もらっちまえば簡単に落ちると踏んでたんだけどなー」
「大人はそこまでチョロくありません」
落ちかけてたけど。
「……え? っていうかちょっと待って下さい」
「なに?」
「童貞……じゃないんですか? 今の私は」
「さあ? そこは人によるんじゃないの? 他人の手でイかされたら童貞喪失って人もいるし、穴にツッコむまでは童貞って人もいるし、中で出すまではって人もいるんじゃね?」
うーむ。私はどれなんだろう。
少なくとも、あれを筆卸しと呼ぶのは違う気がする。
「じゃあ次は中でイカせてやるよ。そうすりゃ文句なしに童貞卒業だろ?」
「まあ、それなら確かに文句なしですね。……って、もう言わないんじゃなかったんですか!?」
「それはそれ。これはこれ」
ニカッと白い歯を見せる。
迂闊だった。南原くんの言うことは信用出来ない。
私は改めて思い知らされた。
……だけど、同時に少しだけ期待に胸が膨らんだ。
「まったく……」
「そういやセンセって素人童貞ですらないのな?」
「なんでわかるんですか……」
「そりゃあの反応見りゃ誰だってわかるよ」
そんなにウブな反応をしただろうか。
まあ、そのとおりなのだが。
「先生連中と風俗とか行かないんだ?」
「行きません」
「仲いい先生っていねーの?」
「いますよ。柏木先生とか戦場跡先生とかと仲いいです。タバコ仲間ですし」
「あー、あの二人かー。そりゃ風俗なんか行かねーわな」
南原くんは妙に納得したように呟いた。
だが私には意味がわからなかった。
「……なぜですか?」
「それは秘密。そのうちわかるようになるんじゃね? ……ってか、わかるようにしてやんよ」
「?」
首を傾げているとチャイムが鳴った。予鈴だ。
「……さあ、教室に戻りなさい」
「ええー。次国語なんだよー」
「なおさらです。戻りなさい」
「……わかったよ。センセは?」
「次は空き時間ですね」
「くそ。いいなー。どうせ職員室で一服すんだろ」
「ええ。そのつもりです」
久しぶりに南原くんと話ができた。しかも割りと親しげに。
美味しいタバコが吸えそうである。
「じゃあセンセ、メアド教えてよ」
「構いませんけど、授業中にメール送ってこないでくださいよ? まあもっとも電源入れてませんけど」
「オッケー。授業中以外ならいいんだな?」
「節度は守ってくださいね」
少々安易な気もしたが、こちらが節度を守ればいいだけの話だ。
私は南原くんとアドレスを交換した。
「っし。んじゃあ教室戻るよ。じゃあな」
「はい。さようなら」
嬉々として帰っていく南原くんを見送って、胸の支えが取れた気がした。
あまり何かが解決したという気はしないが、なんにせよよかった。
私は愚かだった。
解決どころか、悪化していることにも気付かずに。
職員室に戻ると、他の先生達は授業に出払っていて、人の姿はなかった。
……と思ったが、いた。
喫煙室に柏木先生が。
「お疲れ様です」
「おう。おつかれー」
私も喫煙室に入って、タバコに火をつける。
……うん、やっぱり美味い。
「なにー? なんかイイコトあった?」
「な、なにがですか?」
「いや、なんとなく。ニヤニヤしとらしたで」
いけないいけない。ニヤニヤしていたのか。
私は咳払いをして、そんなことありませんよと否定した。
しばらくすると、携帯が短く鳴った。メールを着信したのだ。
「……って、いきなりですか……授業中は携帯切るように言っているのに……」
「ん? 生徒からか?」
「そうでしょうね」
思い当たる人物は一人しかいなかった。
まったく。注意してやらなくては。
そう思って携帯を開いた私は、おもいきり吹き出していた。
「うお!?」
柏木先生が驚く。だが私には彼をフォローする余裕がなかった。
メールに添付されていた画像。
それは大写しにされた無修正の男性器だったのだ。
先端まで皮の被った包茎。粘液に濡れていて、皮の余った先端からは白い精液が糸を引いて垂れている。灰色の陰毛がへそまで続いていて……って、ちょっと待て。……その腹の被毛は純白で……腹は大きく出ていて、いわゆるデブ……これは……まさか……!?
「私の!?」
間違いない。
私のアソコだ。
あの視聴覚室での情事。あの時、南原くんは私の秘所を撮影していたのだ!
「……え?」
柏木先生の声が耳元でして、私は初めて彼が携帯の画面をのぞき込んでいた事に気がついた。
慌てて携帯を閉じる。取り落としそうになって更に焦った。
「……今の……?」
「違います!」
聞かれる前に否定した。
「……えーっと……な、なにが?」
すっとぼけているのか、それとも見えなかったのか。
「な、なにか……み、見ま……見ましたか……?」
「さあ? ワシなーんも見とらせんよ?」
よかった。見られなかった……。
顔面蒼白になりながら、私は安堵した。
それにしても……
なんてことをしてくれるんだ、あの不良生徒は!
危うく私の人生が台無しになるところだった。
いやそんなことより!
これはいけない。
金玉よりも圧倒的に致命的な弱みを握られてしまった……!
彼がその気になったら、私の人生は文字通り指先一つでダウンだ。
一刻も早く手を打たなければならない。
「す、すみません。急用ができたので失礼します」
「ほうかね? ……がんばりゃあよ」
「はい」
頑張るしかない。
早くなんとかしないと。
私はまだ少ししか吸っていないタバコを灰皿に放り込むと、慌てて喫煙室を飛び出す。
「……あの堅物がねえ……」
柏木先生が何か言ったような気がしたが、私の耳には届かなかった。
3−Bの教室の前まで来た。
当然、今は授業中だ。南原くんの言うことには国語の授業。終わるまでまだ30分以上ある。
携帯を開くと、私のアソコの写真が目に飛び込んできた。恐ろしいことによく撮れている。
写真を削除し、震える指で返信ボタンを押す。
授業中の生徒にメールを送る羽目になるとは、私も落ちるところまで落ちたものだ。
タイトルは「re:」、本文は「とても重要な話があります。授業が終わったらすぐに教室から出てきて下さい」。
送信。
さて、あとは授業が終わるまでここで待ち伏せだ。
「……今でもいいけど?」
背後から声がした。
確認するまでもない、小さな悪魔の声だ。
「……授業はどうしたんですか」
「サボった」
悪びれもせずに言う。
普段ならすぐに教室に放り込んでいただろうが、今の私にはありがたかった。
「お願いします。あの写真を……」
「まあまあセンセ。ここで話すと教室に聞こえちまうよ?」
それはマズイ。
「……場所を変えましょう」
「あれ? 教室戻れとか言わないの?」
わかっているくせに、意地悪な事を言う。
私は無言で歩き出した。
やってきたのは先程と同じく屋上。
ここしか思いつかなかった。
「センセ、脇汗すげえよ? 大丈夫?」
彼の指摘通り、私のワイシャツの腋は汗で濡れて透けていた。だがそんなことを気にしている場合ではない。
「お願いします。写真を削除してください」
私は頭を下げた。
ここから先は慎重な対応が求められる。失敗はできない。
「写真? ……これのこと?」
彼が手にした携帯には、先ほど私に送りつけられた淫猥写真が映し出されていた。
自分でも驚くほどの速さで取り上げようとしたが、彼の素早さはそれを上回っていた。ひょいとかわされてしまう。
「……お願いします! 消して下さい!」
土下座でもしそうな勢いで私はもう一度頭を下げた。
いっそ本当に土下座しようか。それで済めば安いものだ。
「えー。誰にも見せないからいいじゃん、別に」
「困るんです。お願いですから消して下さい」
「これすげえお気に入りなんだよ。待ち受けにしたいくらい」
「やめてください! ……お願いします。なんでもしますから。なんでも言うこと聞きますから!」
「センセ、そういう滅多な事言わないほうがいいよ?」
……たしかに今の発言は迂闊だった。
現状が最悪だと思っていたが、彼のことだから更に最悪な状況に持ち込んでくるかもしれない。
「あ……いや……一回だけ、ですけど。あと撮影は厳禁で。それと、痛いのは勘弁して下さい」
「なんでもって言った割りには結構条件付くのな」
「そ、それは……じゃあ、少しくらいなら痛くされても我慢します。……あ、代わりにその、複数人プレイとか、人前で、というのはナシでお願いします」
「条件増えてるじゃん!」
仕方ないじゃないか。
私は涙目になった。
「っていうかなに? オレの出す条件は「やらせろ」で決まりなの?」
「……違うんですか?」
それ以外に南原くんが私に望むことなんてあるのだろうか。
今更数学の成績を上げてくれ、なんて言うとも思えないし。
……まさか、お金をせびるつもりだろうか。
「私はそんなにお金持ってませんよ……?」
「ひでえな! オレそんなワルに思われてんの!?」
「い、いえ、そういうわけでは……ただ、他に思いつかなくて……」
とすれば、やはり私の身体くらいしか差し出すものがない。
「つーかさ、それって遠回しにケツ掘ってくれ、って言ってるワケ?」
「ち、違いますよ!」
本当に違うのだろうか。
私は本心では、彼に抱かれたがっているのではないだろうか。
……わからない。
しかし、以前ほど同性同士での行為に嫌悪感がなくなっているのも確かだ。
そんな私の葛藤を見透かしたように、彼は言った。
「エッチしてもらった上に写真も処分してもらえるなんて、センセにとっては願ったり叶ったりじゃね?」
「うう……」
その通りかもしれない。
「……じゃあ……じゃあどうすれば許してもらえるんですか……?」
「そうだなあ……でもまあ、結果的には同じ事かな」
「?」
「ただ、センセが想像してるのと立場は逆だけどね」
「……逆?」
「うん。……センセ、オレの事、抱いてよ」
抱く?
……そんなささやかな事でいいのだろうか。
私はそっと、彼の小さな身体を抱き締めた。
身長差があるので、彼の顔は私の胸の位置に来る。彼は嬉しそうに私の腰に腕を回すと、、胸に顔を埋めてきた。
「すみませんでした。……一方的見解でひどい事を言ってしまって」
まさか南原くんがこんなにも純粋だったとは。
言われてみれば相手はまだ高校生。エッチなことよりも、ただ他愛のない抱擁のほうがずっと嬉しいものかもしれない。
「……センセ、すっげえ勘違いしてる」
顔を上げた南原くんの目は……呆れていた。
「そりゃ抱きしめられんのは嬉しいけどさ。こんなんで満足するワケねえじゃん」
「……はい?」
「抱いてくれ、ってのは、タチってくれ、って意味だよ!」
「タチ……?」
「あーもう。要するに! オレの……ケ、ケツ……掘ってくれって、意味だよ……」
顔を赤くして、南原くんは目をそらした。
えーと。
「つまり……私が、南原くんのお尻の中に、アレを挿れるってわけですか?」
「……そうだよ!」
「で、できませんよ……!」
というか、そっちのほうが私の条件としては容易いのではないだろうか。
痛くないわけだし。
「もちろん満足できなかったら写真は消してやんねえけどな」
「うう……」
甘かった。
童貞歴35年の私が、初めてのセックスで相手を満足させられるわけがない。
「どうすんの? ……やっぱりオレの事抱くなんて、イヤか?」
「そんなことはありません。でも、満足させられる自信がないんです……」
「なっさけねえなあ。男だろ!?」
男だから男を満足させられないんですよ……
しかし、この条件を蹴ってしまったらあの写真は消してもらえない。
私には最初から断ることなどできないのだ。
「……わかりましたよ……やるだけやってみます。ですから、採点は甘めでお願いします……」
「よっし。交渉成立な!」
南原くんはいつものニヤリ笑いで答えると、私から離れた。
「いつ、どこでしようか? センセって一人暮らし?」
「いいえ。学校の独身寮です。ですから、生徒は連れ込めませんよ」
「連れ込んでるセンセもいると思うけどな」
……そんな不届きな教師がいるのだろうか。
「とにかく私の部屋はダメです。南原くんは寮生ですか?」
「いや、実家。けど親もいるし、ウチもムリだなー」
「困りましたね」
やはりホテルを取るしかないか。
ラブホテル……は無理だ。誰の目に留まるともわからない。
やはり普通のビジネスホテルが無難だろう。
「温泉旅館とかでもいいけど」
「旅館は部屋に鍵かからないからダメです。高いし」
「高いかー」
「まあ、ホテル代くらいは私が持ちますよ」
「マジ? さすが太っ腹!」
「それ、褒め言葉で言ってませんよね……」
「へへへ。じゃあ次の土曜日な。……あ、それまでオナニー禁止な」
「……わかりましたよ……といっても証拠は出せませんけど」
「そこはセンセを信じるしかないかな。貞操帯なんてもってねえし」
男の貞操帯なんてあるのだろうか。
まあいずれにせよ話はまとまった。
「じゃあ約束」
「……はい?」
南原くんは顔を上げると、いつぞやのように私のネクタイを引っ張った。
顔が近づき、口と口が触れる。
「へへへ。忘れんなよ!」
「……忘れるわけないじゃないですか。……今の、初めてのキスだったんですからね……」
「キスもまだだったのかよ!? どんだけ童貞こじらせてんだよ!」
……返す言葉もなかった。情けない……
そして、決戦の日がやってきた。
念のため地元から離れた駅前のホテルに部屋を取り、私と南原くんは今、二人きり。
「……えーと……」
「じゃ、さっそくおっぱじめるか?」
「ええっ。いきなりですか? ……まずはお風呂から、とかじゃないんですか?」
「風呂かー。まあいいけど。でもオレ、センセのニオイ好きなんだけどな」
「え? 私って臭いですか?」
ワキガではないつもりだったが、自覚がなかっただけだろうか。
不安になって腋辺りのニオイを嗅いでみるが、わからない。
「いや、臭くはないけどさ。体臭は誰にでもあるじゃん」
よかった。
それに、私の体臭が好きと言ってもらえて嬉しかった。
「けどまあいっか。……一緒に入る?」
「遠慮します。お先にどうぞ」
ビジネスホテルの小さな浴槽は、私一人でも狭い。
いくら南原くんが小柄とはいえ、二人は入りきれないだろう。
「それもそうだな。じゃあお先」
南原くんは服を脱ぎ捨てると、バスルームに消えた。
「……」
落ち着かない。
ベッドに腰掛けてタバコを吹かす。
「……」
鍵はちゃんとかけただろうか。
確認する。大丈夫だ。
「……」
シャワーの音。
鼻歌も聞こえる。呑気なものだ。
「……」
こちとらは生きた心地がしないというのに。
今のうちに彼の携帯の写真を削除して逃げてしまおうか。
「……」
そんなことをすれば、きっともっとヒドイことになるだろうな。
それに、南原くんを裏切ってしまう。
「……」
2本目のタバコに火をつける。
まさか生徒と一線を越えてしまうとは。
私の初めての相手が、まさか生徒で、それも男だなんて、あんまりだ。
「……」
だというのに。
私はさっきからずっと……勃起しっぱなしだった。
ガチャリとドアが開いて、南原くんが出てきた。
当然のように全裸だった。
「……」
「お先に失礼。センセもシャワー浴びる?」
「当たり前です」
「オレはそのままでもいいよ? さっきも言ったけどセンセのニオイ好きだし」
「……嬉しいですけど、やっぱり身体は綺麗にしておきたいですね。なにせ初めてですし」
「やっと童貞捨てられるな! おめでとー」
「……ありがとうございます」
複雑だ。
私は入れ替わるように浴室に入る。
「……覗かないでくださいよ?」
「いまさら何言ってんだよ。今からセックスするんだぜ? オレ達」
「……とにかく。覗かないでください」
「へいへい。タバコもらっていい?」
「絶対ダメです」
「ちぇー」
入念に体を洗い、部屋に戻ると、南原くんはベッドの上にいた。
シーツを被って寝ている。
「……失礼します」
「……うん」
シーツをめくって私もベッドに入る。
「へへ。なんだかんだ言ってもうギンギンじゃん」
腰に巻いたタオルの上からでもハッキリとわかってしまうほど、私は勃起していた。
男を相手に勃起を維持できるかが不安材料だったが、杞憂だったようだ。
「し、仕方ないじゃないですか……一週間も我慢させられたんですから」
彼の言いつけ通り、私はあの日からオナニーをしていない。
その前の日から数えると、約一週間分の精液が私の金玉には蓄えられていることになる。
視聴覚室の時よりも大量に発射するであろうことは明白だった。
「へへ。嬉しい」
「……」
南原くんは私に抱きついて、胸に顔を埋めた。
そのままチロチロを舌を伸ばして乳首を舐めてくる。
くすぐったい。
「センセ、胸感じねえんだな」
「男ですから。……くすぐったいですけど」
「男でも乳首は性感帯なんだぜ?」
そうなのか。
だが残念ながら気持ちいいとは思えなかった。
赤ん坊のように乳に吸い付いてくる南原くんの頭を撫でる。
「……あの、やっぱり女性のほうがいいんじゃないですか?」
おっぱいを吸われていると、そんな風に思えてくる。いくら私の胸が豊満でも女性にはかなわないのだから。
「んなわけねえじゃん。オレ、男の胸の方が好きだぜ」
「……方が?」
ということはまさか、女性の胸でもこういったことをしたことがあるのだろうか。
「南原くんは、女性経験も豊富なんですか……?」
「豊富じゃねえけど。……したことはあるよ」
……そんな。
それじゃこの子は名実ともに非童貞ではないか。
私の半分にも満たない歳で、女性とも男性とも経験があるなんて、ズルイ。
「……まさかと思いますけど、決まった相手とかいませんよね? もしそうなら、私は間男ということになってしまいます」
「いねえよ。カノジョもカレシも。……でもセンセがなってくれたら嬉しいな」
「こ、今回だけって約束でしょう?」
「ちぇー」
拗ねたフリをして私の胸で甘える南原くんは、とても可愛かった。
「初めての相手って、どっちだったんですか? 男性? それとも……女性? 今でもその人のこと、好きですか?」
「ねえセンセ、エッチの最中にそういうこと聞くなよ。野暮にも程があるぜ?」
「す、すみません」
だって気になるじゃないか。
私だけ初めてだと知られているのは不公平だ。
「今はさ、オレのことだけ見てよ」
「……はい」
顔を上げた南原くんとキスをする。
前回の触れ合うだけのキスとは違う、相手を求め合う本気のキスを。
「……センセ、タバコの味がする」
「あ、すみません」
歯も磨いておくべきだったか。
「いいよ。大人っぽくて好き。……センセのくせになんか男らしい」
私のくせにとは聞き捨てならない。
私だって男だということを思い知らせてやらなくては。
シーツを蹴飛ばして覆いかぶさる。
大きな身体で身動きを取れなくして、強引に唇を奪ってやった。
「んっ……」
「はあ……」
何度も舌を絡め合う。
息が上がり、じわりと汗が滲んだ。
「んう……重い……」
「す、すみません」
「あやまらないでよ。嬉しいんだから。……もっと体重かけていいよ」
私のようなデブにのしかかられて喜ぶとは、本当に変わった子だ。
手足を回して更にきつく抱きついてくる。
私は言いつけ通り、遠慮なく体重をかけてやった。
大きく股を開いた彼の金玉の下に、私の竿の先端が押し当てられる。
「……センセ、堅いのが当たってるよ」
「仕方ないじゃないですか……」
「うん……オレで興奮してくれてんだ、嬉しい」
確かに私は興奮していた。
腰に巻いたタオルを取り去って、コンドームを着けようとすると、南原くんに止められた。
「生でいいよ」
「え? でも……」
「女じゃねえんだから避妊なんて気にすんなよ」
それは当たり前だ。しかし、セックスには妊娠だけでなく病気の心配もあるだろうに。
「センセは童貞なんだからそんな心配ねえじゃん」
「……そういう南原くんはどうなんですか?」
「大丈夫だよ」
本当だろうか。
信用していないわけではないが、やはり安全のためには着けたほうが……
「生のほうが気持ちいいぜ?」
「……」
結局私は生ですることにした。
……気持ちいいと言われたからではない。今回はあくまで南原くんの希望を尊重しなくてはいけないからだ。
「……じゃあ、このまま挿れますね」
「ちょ、ちょっと待った……!」
「え?」
「いや、童貞丸出しも大概にしろよ……いきなりそんな太いの入るわけねえじゃん」
そ、そうなのか。
男性でも前戯は必要なんだな。
しかし、ではどうすれば入るようになるんだろうか。
「ケツ舐めろとまでは言わないけどさあ、せめて指でほぐすくらいのことはしてくれよ」
「あ、はい、そうですね」
「……まさかいきなりブチ込まれそうになるとは思わなかったよ……」
反省したんだからいいじゃないか。
私は少し身体を離すと、南原くんの股下に手を入れた。
少し探って、彼の肛門に指を当てる。
「……まさかとは思うけど、そのまま挿れるつもりじゃねえよな?」
そのまさかだった。
「……ち、違いますよ。場所を確認しただけです」
肯定してしまったらどんな謗りを受けるかわかったものじゃない。
わたしは咄嗟に誤魔化して、枕元に用意していたローションを取った。
指に取り、南原くんの肛門に塗りたくる。
その際に、少しだけ指先を入れ、中にローションを浸透させていく。
「んっ……そう、そんな感じ……」
「はい」
少しづつ、ローションと一緒に指を沈めていく。
第二関節まで入ると、南原くんが背を反らせて呻いた。
「あっ、すみません、痛かったですか?」
「ううん……違う……いいよ……気持ちいい……」
本当だろうか。
女性器じゃあるまいし、お尻に指を入れられて気持ち良くなるとは、とても思えなかった。
きっと稚拙な私のために、演技をしてくれているのだろう。
そんな健気な心遣いに答えるように、慎重に指を抜き差しする。
「はあッ……あ……あっ……ッ」
熱い吐息がこぼれる。
……もしかして、本当に感じている?
見ると、彼の包茎チンポはピンと勃起し、先端から蜜をこぼしていた。
さすがにこれは演技でなんとかなるものではない。本当に感じてくれているのだ。
「南原くん……」
嬉しかった。
私のような男の指で感じてくれるなんて。
なんとかお礼がしたくて、私は南原くんの包茎にキスをした。
「あッ」
いつか彼がしてくれたように、舌を出して舐め上げる。
初めて口にする先走りは、ほんの少ししょっぱかったが、抵抗は全くなかった。むしろ嬉しい。いや、もっとしたい。
竿全体をくわえて、舌と口腔で愛撫する。
「う、あっ……ああ……ッ……いいよ、センセ……上手」
前と後ろを責められて嬌声を上げて悦ぶ彼の姿は、とても可愛かった。
気がつくと私の包茎チンポも悦びの蜜を垂らし、シーツの上に水溜りを作っていた。
「センセ……そろそろ……いいよ」
「はい。そうみたいですね」
南原くんの肛門はすっかり準備を終え、いまや私の太い指が根本まで簡単に入るほど広がっていた。
「あ、待った。挿れる前に、舐めたいな」
「そうですか? ……はい。どうぞ」
さすがにお尻に挿入した後に舐めることは出来ない。
私は南原くんの顔に跨って、ギンギンに勃起した包茎チンポを差し出す。
彼は嬉しそうに目を細めてしゃぶりついてきた。
いつかの視聴覚室での行為のように。
「ああ……センセ……」
「うっ」
否。今日は周囲に気を配る必要がない。あの時よりも本気だった。
私はあっという間に昇り詰めてしまう。
このまま射精できたらとても気持ちいいだろう。だが今日は私よりも彼を悦ばせてあげなくてはいけない。
私は腰を引いて彼の口から逃れ、ローションを塗る。
「……じゃあ、今度こそ挿れますね」
「うん。……来て……」
足首を掴んで開くと、南原くんの肛門が顕になった。
ローションでしとどに濡れたそこは、とても扇情的だった。
覆いかぶさってキスをする。そのまま、腰を進めると金玉の下にぐいと押し当たった。
「……あれ?」
「もっと下……」
「下、ですね」
角度を修正して腰を入れる。
今度は尻の割れ目をズルリと滑った。
「今度は下すぎ。見ながらでいいよ」
……と言われても。
体を起こして股間に目をやるが、大きな腹が邪魔をして肝心な場所が見えない。
「もう。デブっつーのは不便だな」
「うう……」
「そのままじっとしてろよ?」
彼の方から位置を合わせてくれた。
チンポの先端に肉の蕾の熱が伝わってくる。
「ほら、そのまま挿れて」
「……はい」
生徒にリードされるとは、なんとも情けない。
しかし私だって男だ。
なんとしても彼を悦ばせてみせる。
「……じゃあ、挿れますね」
「うん」
ぐい、と腰を入れる。
抵抗で皮が剥けるが、亀頭は外気には触れずに南原くんの中に侵入していく。
亀頭が肉壁を乗り越えると抵抗が薄れ、ずるっと深く穿つ。
「……ぅあッ!」
「あ、すみません。痛かったですか?」
「い、いちいち謝らなくてていいから!」
「はい……」
腹が邪魔だったので、持ち上げて彼の上に置く。
おかげで私たちはより深く繋がり、やがて私自身は完全に南原くんの中に埋没した。
……全部、入ったのだ。
「……へへへ。童貞喪失、おめでとう」
「あ、ありがとうございます……」
南原くんの中は柔らかくて暖かくて、とても気持ちよかった。
こうしているだけで達してしまいそうだったので、私は焦る。
「う、動いてもいいですか?」
「いいよ。っつーかいちいち聞くなって……」
「はい……」
腰を引くと、中で皮が被る。
が、腰を入れると皮が剥け、南原くんの肉壁は私の敏感な亀頭を余すことなく刺激した。
「ううっ」
だめだ、もう我慢できない。
私は無意識に腰を動かしていた。
「ハッ……ハッ……! あ、あ……出る……ッ!」
「え? ちょ、センセ……早いって……!」
彼の声は届かなかった。
「うううううッ!!」
私は憚ることなくうめき声を上げ、南原くんを深く突き上げると、最奥で射精した。
「うッ……!」
どくん、どくっ、どくん。
ポンプのように金玉から精液を吸い上げ、胎内に放つ。
南原くんの中で脈打ち、その都度大量の精液を噴き上げる私のチンポ。
「うあ……すげえ……っ」
それがわかるのか、南原くんが嬉しそうに呟いた。
「はあ……はあ……うッ」
どくん、と最後の精液を吐き出して、私のチンポはようやくおとなしくなった。
「大丸センセ……」
名を呼ばれ、南原くんに身体を預ける。
腹が邪魔をして私のチンポは彼の中からズルリと抜け落ち、白い糸を垂らした。
「ああ……すごく気持ちよかったです……」
「だろうね。っつーか早えよ、センセ」
「め、面目ない……」
まったくもう、とぼやきながらも、彼は私の身体を抱いてくれた。
汗でびっしょり濡れているにもかかわらず、嬉しそうに密着してくる。
「へへ、すげえ汗」
「すみません……」
申し訳なくキスをすると、額を伝った汗が彼の顔にポタリと落ちて弾けた。
しばらくそうして抱き合っていたが、やがて離れる。
タオルで汗を拭いていると、南原くんは不満気に言った。
「……まさかこれで終わりじゃねえよな?」
「えっ」
「……うん、まだ大丈夫みてーだな」
私の股間をギュッと握り、彼は歯を見せた。
彼の言う通り、私の勃起はまだ収まっていない。
「えーと……はい、まだいけます」
「そうこなくっちゃな」
軽くキスをして、今度は私の身体を横たえる。
大きな腹に跨って、彼は嬉しそうに私の胸を揉みしだいた。
「う……ちょっと、痛いです……」
「我慢しろよ。これは勝手にイッた罰だから」
ピンと立った乳首を手のひらでこするように弄び、鷲掴みするように胸の肉を揉む。
痛みとくすぐったさが同時に襲ってきて、私は首を振った。
「少しは感じるようになったかな?」
「わ、わかりません……」
「そこは嘘でも頷いてくれよな」
そうするべきだったのだろうか。
しかし嘘をつくのは誠実ではないような気もする。
「まあいいや。んじゃ、2発目行くよ」
腰を上げ、屹立した私の包茎チンポの上に腰を落とす。
いわゆる騎乗位というやつだ。
チンポも肛門も、ローションと精液でヌルヌルになっていたので、今度はすんなりと入っていく。
「うああ……!」
イッた直後の敏感な亀頭を刺激され、私は身を捩らせた。
「我慢してろよ……っ」
ずぶ、ずぶと入っていく。
もう少し痩せていればその様子が見えたのだろうが、残念ながら私の腹はその光景を見せてくれない。
「く……う」
ぺたり、と南原くんの尻が私の内腿に乗った。
「へへへ。やっぱセンセのチンポ、でっけえな」
「う……ありがとうございます」
そういう南原くんのチンポも、今は私の目の前で屹立し、よだれを垂らしている。
アングルがアングルなだけに、かなりの迫力だ。
これを挿れられたら、痛いだろうか。それとも……気持ちいいのだろうか。
好奇心が湧き上がる。
次は、私にこれを挿れてほしい……。
「んじゃ、今度は我慢しろよな」
そんなふしだらな思いをよそに、南原くんが腹に手を置いて腰を上げた。
そして再び腰を落とす。
「ああッ」
刺激に思わず声が出た。
「まだイクなよ? オレがいいって言うまで我慢してろ」
上下に動きながら南原くん。
「ううっ……はい……」
我慢……できるだろうか。
いま射精したばかりだというのに、早くも私は自信が無くなってきた。
私が悪いのではない。南原くんのテクニックが上手すぎるのだ。
長いストロークで先端から根本まで刺激してくる。その刺激も単調にならないように、たまに腰をスイングする。
私はその度に嬌声を上げることを余儀なくされた。
これではどっちが犯されているのかわからない。
「へへ。かわいいよ、センセ」
「ああ……気持ちいい……ッ」
目の前で南原くんの包茎が揺れている。
溢れた先走りは私のへそに溜まり、揺れた拍子にこぼれた。
「ふッ……ふッ……」
額に汗して南原くんが動く。
その汗がポタリと胸に垂れたが、嫌悪感はなかった。
「じゃあ次はセンセが動いてよ」
少し腰を上げた所で南原くんは動きを止め、催促してきた。
私は言われたとおりに腰を振って彼を突き上げる。
ズン、ズン。
リズミカルに、とはとても言えない稚拙な動きだったが、それでも彼は悦んでくれた。
それは震える包茎を見ればわかる。
「あ……すげ……いいよ、センセ。その調子」
「はあ、はあ」
全身に汗して私は必死に動く。
騎乗位というのは楽だと思っていたが、とんでもない思い違いだった。
先ほどの正常位よりずっとハードだ。
背中のシーツはすっかり汗で濡れて湿っていた。
「はあ、はあ……も、もう無理……」
体力の限界が来て私は動けなくなってしまった。
大きく腹を上下させて息を整える。
「なんだよ、いいカンジだったのに」
「す、すみません……」
「だらしねえなあ」
再び南原くんのほうが動き出した。
ぬっちゃぬっちゃと卑猥な音が響き、その音で精液とローションが白く泡立っているのがわかった。
「ああ……! いい……!」
「まだだぞ? 頼むからもうちょっと我慢してくれよ……!」
そう指示する南原くんの声にも、焦燥感が現れていた。
「だ、だめです……イ、イッちゃう……ッ!」
「もう少し……もう少しだから……ッ!」
なにがもう少しなのだろうか。
腹に目をやると、そこで揺れる南原くんの包茎に変化が起きているのがわかった。
透明な先走りの中に、白く濁ったものが混じっている。
これは……精液?
だがしかし、私も彼もそこには触れていない。
いくらなんでも、チンポに刺激を与えずに射精などできるはずがない。
「センセ……! ああッ、先生ッ!」
初めて先生と呼んでくれた。
嬉しさで胸が苦しくなる。
その胸のすぐ上で精液混じりの先走りを垂らす南原くんの包茎チンポは、とても魅力的だった。
「ん? ……なんだよセンセ。物欲しそうな顔して」
「うあ……ああ……ほ、欲しい……」
「んー? なにがだよ? ヨダレ出てるぜ?」
「くぅ……」
わかっているくせに、南原くんは意地悪に笑う。
「ほらほら、言わないとやめちまうぞ?」
本当に腰の動きを止めてしまう南原くん。
冗談ではない。こんな所でやめられたらたまらない。
「ああ……い、いや……やめないで」
快感を楯に脅され、私はあっさり折れた。
「これ……このチンポ……南原くんのチンポ……ほしい……っ」
せっかく恥ずかしいセリフを言ったというのに、彼はつれなかった。
「へへへ。また今度な」
「そんな……っ!」
「今日はオレを満足させてくれるんだろ?」
再び腰を動かし始める南原くん。
胸を焦がす刺激に、私は思わず悲鳴にも似た喘ぎ声を上げてしまう。
「いいよ、センセ……もっと声聞かせろよ」
「ああっ! あっ! あっ!」
ベロリと舌なめずりをして、南原くんはいやらしく腰を振る。
その包茎チンポの先から、トプッと白い先走りが漏れて腹に垂れた。。
やはりこれは精液だ。
まさか本当に触れずに射精してしまうのだろうか。
「ハッ、ハッ……ハッ、あ……!」
私の疑問をよそに、南原くんは腰を振り続けていた。
その動きには先程までの余裕はなく、一心不乱という言葉がぴったりの動きだった。
「ああっ! も……無理、です……イク……ッ!」
そんな激しい動きをされてはたまらない。
私は二度目の発射体制に入ってしまった。
「ああっ、ふてえ……っ」
「イクッ!!」
刺激を貪るように腰を突き上げ、私は再び射精した。
ビュッ! ビュルッ!
南原くんの中に、これでもかというほど精液を叩きつける。
「ああああッ!」
それを感じたのか、一際大きく南原くんが吠えた。
同時に、誰も触れていないチンポの先から白く濁った精液を飛ばす。
彼はチンポに触りもしないで射精したのだ。
「うわ、すごい……!」
まっすぐに飛んだ精液が、私のメガネにビシャリと当たって顔に垂れた。
熱い。
ビュッ、ビュ、と精液を飛ばして、彼の包茎チンポはその都度跳ねあがる。
私の白い毛皮に、彼の白い精液が広がった。
「すごい……」
「へへ……大丸センセ……好き……」
「わ、私もです……好きです、南原くん……」
お互いに告白しあって、私たちは今日何度目かのキスをした。
「へへへ……センセ、童貞くれてありがとな」
「……こちらこそ。もらってくれてありがとうございます」
身体を綺麗にして、私たちは汗と精液に汚れたベッドの上に腰掛けていた。
お互いにまだ全裸のままで。
「タバコ吸ってもいいですか?」
「いいよ」
許可をもらってタバコに火をつける。
行為の後に味わう紫煙は、至高の一服だった。
「ねえ、オレにもちょうだいよ」
「……みんなにはナイショですよ?」
私は箱ごと彼にタバコを渡す。
「え? マジでいいの?」
違法? 不道徳?
知ったことか。今更だ。
「めちゃくちゃ美味しいですよ。今のタバコ」
「……うん。めっちゃ美味え」
煙を吐き出して、ニカッと笑う。
私も笑った。
「……満足させてあげられましたか?」
「おう、大満足! すっげえよかったよ。やるじゃんセンセ。童貞のくせに」
よかった。
「ありがとうございます。でも、今の私はもう童貞じゃありませんよ」
「そういやそうだな」
「じゃあ約束通り、あの写真は削除してくださいね?」
「しょうがねえなー。ま、約束だかんな」
約束云々よりも、彼を満足させられたことが嬉しかった。
「けどオレだって実は初めてだったんだぜ? トコロテンなんてさ」
「……トコロテン?」
激しい動きをしてお腹がすいたのだろうか。
言われてみれば私も腹が減った。
「ごはんまだでしたからね」
「メシ? 食いに行こうか。……なんか精の付くモン」
「まだ頑張るつもりですか……」
「あったりまえだろ? 今夜は寝かさないぜ?」
嬉しいような、悄然とするような。
「センセだって、まだイケるだろ?」
二発も出して、さすがに萎えた私の包茎チンポを握りながら、彼は笑った。
確かに。
この調子ならもう一回、いや、二回くらいは行けそうだ。
それでも私は、嘘をついた。
「もう無理ですよ……」
「ええー、情けねえ事言うなよー」
彼の手の中でむくりと反応する私自身。
だからこの嘘は間違いなく見抜かれている。
「ですから次は……私の……バージンを貰ってくれませんか?」
私と彼の物語は、まだ始まったばかりなのだ。
おしまい