マンガ時評vol.7 97/1/21号

原作が悪い?絵が悪い?

 この世には原作付きのマンガというものがあります。大抵は大した 話が作れない漫画家のために原作者をつけるというものらしいですが、 時には、専門的な知識を必要とする世界を描くための原作者、という こともあるようです。例えば『釣りバカ日誌』や『美味しんぼ』『M ASTERキートン』などがそうですね。少年マンガよりも職業もの やうんちくの多い青年マンガに顕著です。また数は少ないですが『あ したのジョー』のように、超一流の原作者と漫画家の個性のぶつかり 合いから生まれた名作も希にはあります。

 しかし、僕の見るところ、やはり多くの原作付きマンガは、漫画家 の力量不足のせいか、どうしてもマンガとしてつまらない作品が数多 く見られるような気がしてなりません。モーニングで連載中の『ぷっ ぷちゃん』がその典型例でして、会社の社長物語である原作は結構専 門的な知識もわかりやすく解説されているし、何と言っても社長を中 心に、経営に携わる社員達を個性豊かに描いていてそれなりに面白い と思うのですが、なにせ永松潔の絵がほのぼのギャグマンガ風の3頭 身。もう少しシリアスな、例えば石の森章太郎とか細野不二彦の絵で 描いたら、きっと面白いに違いないのに、どうしてあんなに内容とギ ャップのある絵で描かねばならないのでしょう。実験的試みとしても ちょっと辛すぎます。

 過去に『ツヨシ!しっかりしなさい』などのヒット作があったとは 言え、今回の原作を生かし切れないところを見ると、やはり永松潔の 力量はこの程度のものだったのか、と思わざるを得ません。できるこ となら、すぐにでも絵を変えて(できたらタイトルも変えて)『ぷっ ぷちゃん』はやり直して欲しいですね。

 原作ではないのですが、取材協力を得ながら話が最低で思いっきり つまらないのが同じくモーニング『みのり伝説』。これは漫画家の力 量も疑問ですが(この尾瀬あきらって、一体どこが良くて人気がある んでしょうか?)、ストーリー自体もどうしようもなくリアリティの ない馬鹿馬鹿しい作品です。こんなにも非常識な話がどうしてまかり 通るのか不思議です。同様に取材協力を得ながら描かれているスピリ ッツの『おたんこナース』の面白さ・ユニークさを思うと、やはりこ れも漫画家の力量の差かと思わざるを得ないですね。

 つまり取材協力を得ながら、いったいマンガとしてどこを取り上げ どんな話にすればいいのか、というポイントがちゃんと把握できてい るか否か、ということだと思うんです。佐々木倫子は原作なしでもや っぱり面白いマンガを描ける人ですから、良いネタを貰えば面白いに 決まっています。

 安易に原作者をつけたり職業物として専門的な世界の裏話を見せて おけばいいや、みたいな、お手軽な志の低い作品は、所詮それだけの もの。もうちょっと編集者も考えて組み合わせて欲しいですね。