cinema eye

『冬冬の夏休み』

鑑賞日91/7/27(ビデオ)
 注目の台湾映画『冬冬の夏休み』がビデオ・レンタルされたので、早速見ました。監督は侯孝賢。映画はこの夏小学校を卒業した冬冬(トントン)が、妹と一緒に夏休みに祖父母の家へ預けられ、体験する様々な出来事を淡々と描いています。

 舞台こそ台湾なのですが、風景も様々なエピソードも実に日本、それも20年位前の日本に似ていて、妙に懐かしい映画です。小学生から中学生へと進む微妙な時期、都会(台北)の少年が初めて触れ合う田舎の生活、叔父の結婚、強盗事件、そして母の病気。これらの出来事とその回りの人々が全て冬冬の目の高さで描かれます。まさに僕たちが子供の頃、夏に田舎の祖父母の家に預けられたのと同じ感じで、冬冬の気持ちがせつないまでに響いてきます。

 例えて言えば『スタンド・バイ・ミー』と『となりのトトロ』を組み合わせたような映画、でしょうか。で、これが日本映画でなくて台湾映画なのがまた良いんですね。と言うのも、平成日本では最早こうした懐かしい世界はちょっと存在しそうにないし、これを20年前の設定として作っても、きっと単なるナツメロ映画になってしまい、嘘臭くなりそうな気がします。ところが台湾では、これがリアルタイム。だからこそ作り事めかないでリアリティがあるのだと思います。

 まだ見ていない皆さん、特に30代の方、決して高くありませんから、ぜひご覧ください。

今回の木戸銭…1000円