cinema eye

『東京日和』

鑑賞日98/8/3(ビデオ)
 竹中直人の監督第3作。写真家アラーキーこと荒木経惟とその亡妻陽子さんの結婚生活を淡々と描いた作品。竹中の過去の監督作品『119』『無能の人』と同じく自ら主演しながら撮っている静かな映画です。陽子役に中山美穂。フジテレビが共同製作しているだけに松たか子ほか人気俳優や監督など映画仲間がちょこちょこ出演していますが、ほとんど竹中と中山の2人だけで映画は完結しています。

 映画としてははっきり言って面白いものではありません。芸術映画を愛好する映画青年が、ちょっとメジャーを意識して作った、というような印象で、説明不足な印象です。言葉も不足しているだけではなく、映像の表現力ももの足りないので、2時間の映画ですが、かなり途中退屈します。これならまだコメディタッチの『119』の方が見ていて楽しかったですし、訳の分からない度合いでは『無能の人』の方が妙ちくりんで、かえって惹きつけるものはありました。

 唯一の救いは中山美穂のプロモーションビデオとしては綺麗に撮れているということでしょうか。もっとも演じているキャラクターは、ちょっと切れかかっている変な人なので(純粋な人として描きたかったのかも知れませんが、変な人にしか見えません)、完全に彼女に魅了されるというほどでもありません。同じ中山美穂なら『Love Letter』の方が遥かに魅力的です。

 世の中の一部では竹中直人を監督として高く評価しているようですが、僕にはここまでの3作品とも決してそれほどの評価を与えるようなものとは思えません。もっと娯楽に徹するか、さもなくば芸術に走るか、いずれにしろ中途半端なままなら監督なんかやらなくてもいいと思います。

今回の木戸銭…600円