cinema eye

『さよならゲーム』

鑑賞日94/3/5(ビデオ)
 ケビン・コスナー主演の野球映画。ハリウッドの野球映画は傑作が多いのですが、その大半は痛快な逆転劇なんかがあって見ている観客のストレスを発散させてくれるような作品が主流です。しかし、この『さよならゲーム』はどちらかというと、成功していく若者ではなく、それを支える本来なら脇役である人物が主人公のところが新しくて、しかも渋いところです。

 物語はずば抜けた才能がありながら生かし切れないでいる若い投手を育てるためにベテランのキャッチャーであるケビン・コスナーが呼ばれ、彼を大リーグに送り出す過程を描きます。前半はなかなか物語が淡々として盛り上がらず、しかもなんだかバラバラとしていて散漫な感じで少々退屈でしたが、後半になるにしたがって映画全体のハーモニーが調和してきて話がころがり出して面白くなります。

 とは言え、この映画はあくまでも脇役が主役な映画ですから、あまり派手な展開はみせません。ぱーっと痛快になるような娯楽映画というよりも、どちらかというと人生の苦渋や退屈を感じさせるような大人の映画です。これがヨーロッパの映画だったら、もっとシニカルで暗い映画になっていたのではないかと思われるほどです(もっともヨーロッパで野球映画は作らないでしょうが)。  全体に知性を感じさせる映画作りなだけに、その分野球映画らしい脳天気さが乏しくそれが残念でした。僕としてはもう少し明るい楽しい映画を期待していただけに、ちょっと期待はずれだったかな。

今回の木戸銭…1000円