cinema eye
鑑賞日91/5/29(劇場)
公開からずいぶん経ちましたが、ようやく『レナードの朝』を見に行くことができました。大変に感動的で寸分のスキもない、まさにデ・ニーロらしい映画でしたが、僕が見る前に予想していたよりは、ずっと分かりやすい映画でもありました。
テーマは「生きていることの素晴らしさ」でしょうか。レナードが目覚めてから五感で世の中を感じ、そしてママと抱擁するシーンがこの映画の全てと言ってもいいくらいです。そのシーンに集約されているテーマがさまざまに形を変え各シーンとなってなんども生きることの素晴らしさを謳い上げている、そんな映画でした。
二人の主役の完璧な演技も、この映画を成功させたおおきな要因でしたが、それ以上に凄いのは、やはりこの映画が実話を基に作られた、ということでしょう。もしこれが完全にフィクションであったなら、「奇跡の夏」はまさに「生きることの素晴らしさ」を言うためのファンタジーにしか過ぎなくなり、たんなる「おとぎ話」に堕してしまう危険を多分にはらんでいます。それほどこの映画は感動的であり、ともすればご都合主義的にドラマチック過ぎて見えるのです。実話という歯止めがあってこその「奇跡の夏」だという感じがします。最初にも書いたようにスキがない、なさ過ぎる映画なのです。
最近『ふたり』『ダンス・ウィズ・ウルブス』と長い映画を続けて見たので、ずいぶんとこの『レナードの朝』は短い映画のように思えましたが、それは出来が良すぎたためでもあると思います。人間の尊厳と人生の美しさに感動してみたい人向けの佳作です。
今回の木戸銭…1300円