cinema eye
鑑賞日96/1/30(ビデオ)
ロバート・レッドフォード監督の意欲的な社会派映画。とは言え小難しい映画ではなく、なかなか迫力のあるエンターテイメント性の高い作品です。
ストーリーは、1950年代のアメリカのまだ草創期と言っていい頃のTV界が舞台。視聴者参加のクイズ番組で人気取りのために、ユダヤ人のチャンピオンにわざと間違えさせて、WASPの新しいスターを作り上げたことから、ドラマは始まります。この番組の裏を追う連邦の捜査官。TVの作り上げた虚像に酔いながらも、インチキでスターになったことに悩む名門出身の大学教授。TVの強大な力を、その役割とは何かを、レッドフォード監督は鋭く切り込みます。
最後に喚問に答える番組制作のプロデューサーがいいます。「みんな喜んでいて誰も損していないのに、どうしてそれが犯罪なのか。TVは娯楽であって政府の規制するものではない」と。インチキなクイズ番組を作ることの道義的責任を言いつのるのは簡単かも知れませんが、それを盾にお上が介入するのも問題です。単なる内幕ものにとどまらないこの映画の骨太さ・強さを感じるシーンです。誰が正義で誰が悪か。世の中は簡単には決められません。「フォレストガンプ」のような「絶対善」である存在もおとぎ話としてはいいですが、こういう迷いとまどいながら生きる人間の物語の方が、やはり大人の世界だな、と僕は感じ興味深かったですね。まあただ映画として面白いのは「フォレストガンプ」かも知れないけど。
今回の木戸銭…1500円