cinema eye
鑑賞日92/7/6(劇場)
話題(?)の超大作『おろしや国酔夢譚』を見てきました。ご存知の方もいるでしょうが、この映画はかの井上靖の歴史小説を原作にしており、そのスケールの大きさ、ソ連崩壊のタイミングといい、なかなか話題性は十分の作品です。で、実を言いますと、僕はこの映画の広告作りにほんの少しだけ絡んでいた一瞬がありまして、結局プランは没になったのですが、会社から招待券を貰ったこともあって見に行ってきたのです。
ストーリーは江戸時代にロシアに漂流した漁師が、帰国したい一心でロシア中を駆け回りながら異文化に触れていく、という実話を基にした歴史モノで、原作はなかなか読みごたえのある面白い作品です。
で、映画の方はというと、これがほとんど原作の筋を追っているだけなんですね。わずか2時間余にまとめるにはロシアは広すぎた、というべきかも知れませんが、とにかく忙しい。次々とシーンが変わっていき、全体にどうしても平板な感じが否めません。原作を知っている人間には、本当に映画にしただけ、と映ります。また知らない人には、きっと薄っぺらな内容と思われるのではないでしょうか。本当ならもっと日本の漁師たちとロシアの人々や文化・技術といったものたちとの出会いを丹念に描くべきだと思います。異文化との触れあいと理解こそが、真の国際人を作るのであるというテーマをもっと出して欲しかったし、そのためには3時間を 超えても良かったのでは、と思います。
各シーンにはお金もかかっていますし、日本映画としては海外ロケが多いせいか絵も綺麗です。もう少し人間の描写を掘り下げていって欲しかったな、といった ところです。
今回の木戸銭…600円