cinema eye
鑑賞日94/2/20(ビデオ)
相米慎二監督の話題作『お引越し』をビデオで見ました。結構良いという映画評だったと思うので、それなりに期待して見たのですが、意外や少々期待はずれ。
映画は両親(中井貴一・桜田淳子)が別居することになった京都の小学生の女の子の心理を、ずっと彼女に密着して描きます。前半はそれなりに早いテンポで、いかにも両親が別居したらありそうな事件がいろいろと展開していきます。しかし、映画のクライマックスとなる琵琶湖への1泊旅行から映画は全然違う雰囲気になってきます。主人公は1晩1人で山の中をさまよい歩き、その次の朝に吹っ切って一歩大人となるのですが、この描写が妙に退屈でかつわかりにくい。全然違う映画ながら、僕は『稲村ジェーン』を思い出してしまいました。あれも肝心のところで変な心理描写をして、なんだかつまんない映画になってしまいましたが、この『お引越し』もまた同じ轍を踏んでしまいました。リアルでもなく前衛的でも芸術的でもない。ただの独りよがり。これは日本映画が外す時の共通したパターンですよね。こういう映画を見ると、本当にがっくりきます。
役者は、桜田淳子はイマイチ。中井貴一はまあまあ。主演の田畑智子だけは日本の子役としては良くやっていました。この映画、一応不十分ながら子供の視点で描いているせいか、子供の方が大人よりも大人なんですよね。もっとここを徹底させれば、もっとシニカルにもヒューマンにもなれたのに、と思うと残念です。
あとこの映画は某大手広告代理店(笑)の関西支社が企画に絡んでいるためか、きわめて日本情緒あふれる美しいシーンがやたらめったら出てきます。つまり外国人受けしそうな観光映画になっているわけ。もちろん、綺麗な絵を撮るのはいいん だけど、それもやりすぎるとあざといってもんです。JR西日本には受けたかもしれんが、まるでCMのようでした。
今回の木戸銭…600円